老人ホームに入っていた親の家と空き家の3000万円控除の要件
この記事のもくじ
結論から言うと、親が老人ホームなどに入って空き家になった実家でも、一定の要件を満たせば空き家の3000万円控除(被相続人居住用財産の特例)を使えます。ポイントは3つです。入所の直前に要介護認定や要支援認定などを受けていたこと、入った先が対象の施設であること、入所後から相続の開始まで、家を貸さず、他の人が住まず、物の保管などに使っていたこと。この記事では、国税庁 No.3307 に沿って、この3つを順に確かめます。
老人ホームに入っていても、控除の対象になりますか?
通常、この特例の対象になるのは、相続の開始の直前まで被相続人(亡くなった人)が住んでいた家屋です。施設に入っていて相続の開始の直前には住んでいなかった家屋は、そのままでは対象外ですが、国税庁 No.3307 の要件をすべて満たせば、施設に入る直前まで住んでいた家屋が対象になります。
要件は3つのまとまりでできています。
- 特定の事由があること(認定を受けた人が、対象の施設に入っていた)
- 入所後から相続の開始の直前までの、家屋の使い方
- 家屋そのものの要件(建築年・登記・入所前の同居者)
3の家屋の要件は、施設に入っていなかった場合と同じで、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築されていること、区分所有建物の登記がされていないこと、住まなくなる直前に被相続人以外に住んでいた人がいないことです。全体の要件は相続した空き家の3000万円控除の要件と期限にまとめています。
対象になる施設と認定は、どう決まっていますか?
国税庁 No.3307 では、被相続人が次のどちらかの認定を受けていて、挙げられた住居・施設に入っていたことが求められます。認定を受けていたかどうかは、家屋に住まなくなる直前の時点で判定します。入所した時点ではありません。
| 区分 | 対象の住居・施設 |
|---|---|
| 老人福祉法関係 | 認知症対応型共同生活援助(認知症グループホーム)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム |
| 介護保険法関係 | 介護老人保健施設、介護医療院 |
| 高齢者住まい法関係 | サービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームにあたるものを除く) |
| 障害者総合支援法関係 | 障害者支援施設(施設入所支援が行われるもの)、共同生活援助を行う住居(障害支援区分の認定を受けた人の場合) |
認定の対象は、要介護認定または要支援認定を受けていた人(または介護保険法施行規則第140条の62の4第2号に該当していた人)です。障害者総合支援法関係の施設に入っていた人は、障害支援区分の認定を受けていることが前提です。病院や、列挙されていない施設は、国税庁の説明には出てきません。当てはまるか迷う場合は、施設の種類が分かる書類を持って、家屋の所在地の市区町村の窓口へ相談します。
入所後の家屋は、どう使われていないと対象外になりますか?
入所後から相続の開始の直前まで、家屋は次の状態であることが要件です(国税庁 No.3307)。
- 物品の保管などに使われていた(引き続き被相続人の持ち物の置き場として使われていた)
- 事業や貸付けに使われていない
- 被相続人以外の人が住んでいない
- 被相続人が主として住んでいた家屋が、入所した老人ホーム等になっていた(入所後に別の家へ主な住まいを移していない)
国土交通省は、親族の家や一般の賃貸住宅に転居して亡くなった場合は対象外と明記しています。入所中に子どもが住み着いた、人に貸した、事務所にした、といった使い方も、要件から外れます。反対に、時々風を通しに行く、荷物の保管場所にする、一時的に泊まるといった使い方は、物品の保管その他の用にあたるとされています(国土交通省)。
実家が条件に当たるか、順番に確かめるには?
入所のいきさつを時系列で並べると、確認が早く済みます。次の順で整理してみてください。
- 家に最後まで住んでいたのはいつか:住まなくなった日付(入所した日)を、施設の入所契約書などで確かめる。
- その直前の認定:要介護認定または要支援認定の有効期間が、住まなくなった日の直前にかかっているか。介護保険の認定の通知書で確かめる。
- 入所した先の種類:上の早見表のどれにあたるか。名称ではなく、法律上の種別を施設に聞く。
- 入所後の家の様子:誰か住んだか、貸したか、事業に使ったか。電気・ガス・水道の使用状況、郵便物の転送先、住民票の動きで確かめる。
- 家屋そのもの:登記事項証明書で建築年と区分所有登記の有無を確かめる。
この整理が済んだら、家屋の所在地の市区町村の窓口に、確認書の申請方法を聞きます。老人ホームに入っていた場合の確認書には、入所の事情と入所後の家屋の使い方も書かれます。申請の手順は空き家の3000万円控除の確認書の申請に載せています。
相続人が複数いる場合の控除額は、相続人の数で決まります。兄弟で相続する実家の控除額は空き家の3000万円控除を共有名義で使うで確かめてください。
相続税の「小規模宅地等の特例」とは、何が違いますか?
老人ホームに入っていた親の家は、相続税の評価を下げる「小規模宅地等の特例」でも扱われることがあります。名前が似ていますが、別の制度で、税の種類も、要件の組み立ても違います。
| 比べる点 | 空き家の3000万円控除 | 小規模宅地等の特例 |
|---|---|---|
| 税の種類 | 売ったときの譲渡所得(所得税・住民税) | 相続税 |
| 使える場面 | 相続した家屋・敷地を売ったとき | 相続税の申告で土地を評価するとき |
| 要件の判定 | 国税庁 No.3306・3307 | 国税庁の相続税のページ |
相続税の特例の要件は親が老人ホームにいた場合の小規模宅地等の特例にあります。両方を検討する場合も、それぞれ別に要件を確かめます。
要件を満たしそうだと分かったら、売り方の選択肢を比べる段階です。家屋が古い場合は、耐震や取り壊しの扱いも関わります。その場合は耐震基準と取り壊しの比較も合わせて確かめてください。複数の不動産会社の査定額を比べたいときは、一括査定を使う方法があります。
よくある質問
Q. 入所してから要介護認定を受けた場合も対象ですか?
国税庁 No.3307 は、要介護認定・要支援認定を受けていたかを、家屋に住まなくなる直前の時点で判定する、としています。したがって、入所した後で初めて受けた認定は、この要件の根拠にはなりません。入所前に申請していて認定が後から出たなどの場合は、申請日と認定日の書類を持って市区町村の窓口に相談してください。
Q. 入院や、親族の家へ移って亡くなった場合はどうなりますか?
国土交通省は、親族の家や一般の賃貸住宅へ転居して亡くなった場合は対象外と明記しています。病院への入院は国税庁の説明にある施設の一覧に入っていないため、入院が長かった場合は、窓口に事情を伝えて対象になるかを確かめます。
Q. 入所中に家を一時的に片付けのため使うのは問題ですか?
国土交通省は、一時滞在や家財道具の保管に使うことは、要件にある「物品の保管その他の用」にあたるとしています。ただし、親族が住み始める、人に貸す、事業に使うといった使い方は要件を外れます。
出典・参考にした公的な情報
- No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋(国税庁)
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
- 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)(国土交通省)
- 租税特別措置法施行規則 第18条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。