相続税と申告 / Q&A

親が老人ホームにいた場合の小規模宅地等の特例:使える要件

この記事のもくじ
  1. 老人ホームでも対象になる3つの条件
  2. 要介護認定は「亡くなる直前」で判定する
  3. 対象になる住まい・施設の種類
  4. 入所後の自宅の使い方で外れる場合
  5. 誰が取得するかの要件と、申告で添える書類

親が老人ホームに入って自宅が空き家になっていても、亡くなる直前に要介護・要支援認定(または障害支援区分の認定)を受けていて、法律で決められた施設に入っていたなら、入所前の自宅の土地は「亡くなった人が住んでいた土地」として小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減)の対象になりえます。ただし、入所後に自宅を人に貸したり、事業に使ったりすると外れます。そのうえで、土地を取得する人ごとの要件(配偶者・同居親族・家なき子)も満たす必要があります。

老人ホームでも対象になる3つの条件

国税庁 No.4124 と「相続税の申告のしかた」は、亡くなる直前に自宅に住んでいなかった場合でも、次の条件を満たせば、入所直前まで住んでいた家の土地を居住用として扱うとしています。

条件 内容
1. 認定 介護保険法の要介護認定・要支援認定、介護保険法施行規則140条の62の4第2号に該当、または障害者総合支援法の障害支援区分の認定を受けていた
2. 施設 下の表の住まい・施設に入居または入所していた
3. 入所後の使い方 入所後に、事業に使ったり、亡くなった人と生計を一にしていた親族以外の人が新たに住んだりしていない

3の「生計を一にしていた親族」には、入所の直前に亡くなった人と生計を一にし、その家に住み続けている親族も含みます(国税庁 質疑応答事例の注記)。たとえば、父の入所後も同じ家計で暮らしていた母や同居の子がそのまま住んでいるのは問題ありません。

要介護認定は「亡くなる直前」で判定する

認定の時期は、誤解の多い点です。国税庁の質疑応答事例と通達(69の4-7の3)は、認定を受けていたかどうかは相続開始の直前で判定するとしています。

  • 入所したときは自立していて認定がなかったが、その後に要介護認定を受けた → 対象になりうる
  • 認定の申請中に亡くなり、死亡後に認定が出た → 認定は申請日にさかのぼって効力が生じるので、亡くなる直前に認定を受けていたものとしてよい
  • 亡くなるまで一度も認定を受けていない(自立のまま入居していた)→ 条件1を満たさない

なお、老人ホームではなく病院に入院したまま亡くなった場合は、別の考え方です。国税庁の質疑応答事例では、退院後は元どおり住める状況にあり、入院後に他の用途に使っていなければ、空き家の期間の長さを問わず入院前の自宅を居住用と扱うとしています。

対象になる住まい・施設の種類

「相続税の申告のしかた」に列挙されている住まい・施設です。

早見表:小規模宅地等の特例で対象になる住まい・施設
根拠の法律 住まい・施設
老人福祉法 認知症対応型老人共同生活援助事業の住居(認知症グループホーム)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム
介護保険法 介護老人保健施設、介護医療院
高齢者住まい法 サービス付き高齢者向け住宅(有料老人ホームに当たるものを除く)
障害者総合支援法(障害支援区分の認定を受けていた人) 障害者支援施設(施設入所支援が行われるもの)、共同生活援助を行う住居

親族の家に身を寄せていた場合や、表にない住まいに移っていた場合は、この扱いには当たりません。入居先の種類は、入居契約書や施設の重要事項説明書で確かめられます。

入所後の自宅の使い方で外れる場合

空き家になった実家の扱いで、よくある判断の分かれ目を整理します。

入所後の実家 特例の扱い
空き家のまま管理していた 条件3を満たす
生計を一にしていた母がそのまま住んでいた 条件3を満たす
第三者に貸して家賃を受け取っていた 外れる(新たに被相続人等以外の人の居住の用)
別居で生計も別の子が引っ越して住み始めた 外れる
店舗や事務所として使った 外れる(事業の用)

「親の介護費用の足しに実家を貸す」のは家計としては自然な判断ですが、相続税の特例とは両立しません。貸す前に、相続税がかかる見込みと特例の効果を比べておくことが大切です。相続税がかかるかの目安は相続税の基礎控除で一次判定する方法で確かめられます。

誰が取得するかの要件と、申告で添える書類

条件を満たして「住んでいた土地」と扱われても、取得する人の要件は別にあります。

  1. 配偶者が取得する。 要件なし。
  2. 入所前から同居していた親族が取得する。 申告期限までその家に住み続け、土地を持ち続ける。
  3. 別居の子などが取得する(家なき子)。 亡くなった人に配偶者がいない、その家に住んでいた相続人がいない、3年以内に自分や親族の持ち家に住んでいない等の要件を満たす。詳しくは家なき子特例の要件へ。

申告書には、通常の書類(計算明細書、遺産分割協議書の写しなど)に加えて、国税庁「相続税の申告のためのチェックシート」が挙げる次の書類を添えます。

  • 亡くなった人の戸籍の附票の写し
  • 介護保険の被保険者証の写し、または障害福祉サービス受給者証の写しなど(被保険者証は保険者番号と被保険者番号をマスキングする)
  • 施設に入所したときの契約書の写しなど

自宅の土地の特例全体の仕組みは小規模宅地等の特例をわかりやすく、入所後に貸したケース以外の外れやすい場面は小規模宅地等の特例が使えない場合の落とし穴にまとめています。実家を売るときの譲渡所得の特別控除は相続税とは別の制度で、老人ホームに入っていた場合の要件は老人ホームに入っていた親の家と空き家の3000万円控除で扱います。

施設の種類や入所後の使い方が要件に当たるか、個別に判定して申告書を作るのは税理士の業務です(税理士法52条)。相談の前に、認定の通知書、入居契約書、入所後の実家の使い方(空き家・貸した期間など)をそろえておくと、判定が早く進みます。

紹介サービスを使う場合、判定と申告をするのは紹介先の税理士です。紹介先が登録税理士かは税理士紹介サービスを使う前に確かめる4つの点で確かめます。見積もりでは、入所後の実家の使い方に応じた判定が報酬に含まれるかを聞いてください。

「小規模宅地等の特例 老人ホーム」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。

よくある質問

Q. 老人ホームに入ったときは要介護認定を受けていませんでした。特例は使えませんか?

国税庁の質疑応答事例では、要介護認定などを受けていたかは「相続開始の直前」で判定するとしています。入所の時点で認定がなくても、亡くなる直前に認定を受けていれば、入所前の自宅は亡くなった人の居住用として扱われます。

Q. 要介護認定を申請している途中で親が亡くなりました。

国税庁の質疑応答事例は、申請中に亡くなり、死亡後に認定があった場合も、認定の効力が申請日にさかのぼることから、亡くなる直前に認定を受けていた人に当たるとしてよいと回答しています。

Q. 空き家になった実家に、別居していた子が引っ越して住んでもよいですか?

入所後に「被相続人等」(亡くなった人と、生計を一にしていた親族)以外の人が新たに住むと、その土地は特例の対象から外れます。生計を別にしていた子が住み始める場合はこれに当たるので、住む前に税理士に確かめておくと安心です。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

小規模宅地等の特例をわかりやすく:自宅の土地の評価が80%減る要件

家なき子特例とは:持ち家のない子が小規模宅地等の特例を使う要件

小規模宅地等の特例が使えない場合:よくある7つの落とし穴

老人ホームに入っていた親の家と空き家の3000万円控除の要件