仲介手数料800万円以下の特例:33万円と事前の合意(空き家に限らない)
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売買代金が800万円以下の家や土地を仲介で売るとき、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限は、2024年7月1日から特例で33万円(30万円の1.1倍・税込)まで引き上げられました。これを「低廉な空家等」の特例と呼びます。ただし33万円は上限であって決まった額ではなく、特例の分を受け取るには、媒介契約を結ぶ前に不動産会社が金額を説明し、依頼者が合意していることが前提です。安い空き家ほど手数料の割合が高く見えるのはこのためなので、契約前に金額と内訳を聞いておきましょう。
800万円以下だと仲介手数料はいくらまで?原則と特例の差
仲介手数料(法律上は媒介の報酬)の上限は、宅地建物取引業法46条に基づく国土交通大臣の告示で決まっています。原則は、売買代金(税抜)を区切って、200万円以下の部分に5.5%、200万円超400万円以下の部分に4.4%、400万円超の部分に3.3%を掛けて合計した額です(課税事業者の不動産会社の場合・税込)。計算式の詳しい説明は仲介手数料の上限と計算式にまとめています。
800万円以下の物件では、この原則の額と、特例の33万円とで次のような差が出ます(筆者の計算)。
| 売買代金(税抜) | 原則の上限 | 特例を使う場合の上限 | 差 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 5万5,000円 | 33万円 | 27万5,000円 |
| 200万円 | 11万円 | 33万円 | 22万円 |
| 300万円 | 15万4,000円 | 33万円 | 17万6,000円 |
| 400万円 | 19万8,000円 | 33万円 | 13万2,000円 |
| 500万円 | 23万1,000円 | 33万円 | 9万9,000円 |
| 600万円 | 26万4,000円 | 33万円 | 6万6,000円 |
| 800万円 | 33万円 | 33万円 | 0円 |
検算:300万円なら、200万円×5.5%=11万円と、100万円×4.4%=4万4,000円の合計で15万4,000円。500万円なら、11万円+200万円×4.4%(8万8,000円)+100万円×3.3%(3万3,000円)=23万1,000円。800万円ちょうどでは原則も33万円になるので、差が出るのは800万円未満の物件です。
「安い家なのに手数料が高い」と感じる理由はここにあります。たとえば200万円の空き家では、特例の上限いっぱいだと代金の16.5%に当たります(33万円÷200万円、筆者の計算)。売却代金から手数料を引くと、手元に残る額が大きく変わるので、査定を受けた段階で手数料の見込みも一緒に聞いておくのが大切です。
なぜ特例があるのか:対象になる物件と「空き家」の意味
国土交通省の説明資料によると、価格の低い物件でも、現地の調査や権利関係の確認、買い手探しにかかる手間は高い物件と大きく変わりません。報酬が少ないと不動産会社が引き受けにくく、空き家が流通しないままになるため、「当該媒介に要する費用を勘案して」原則を超える報酬を受け取れるようにしたのがこの特例です。
対象の決まり方は、名前から受ける印象と少し違います。
- 基準は売買代金だけ:消費税を含まない売買代金が800万円以下の宅地または建物なら対象になる。
- 使用の状態は問わない:国土交通省の資料は「使用の状態は不問」としている。人が住んでいる家や、更地の土地でも、代金が800万円以下なら対象になりうる。
- 売主に限らない:告示は「依頼者から」受け取る報酬の上限を定めている。売主と買主の双方が同じ会社に依頼していれば、それぞれの依頼者について上限が考えられる。
- 代理の場合:仲介ではなく代理を頼む場合は、特例で計算した額の2倍以内が上限になる。
相続した田舎の家、古い家付きの土地、再建築が難しい土地など、相続の場面で出てくるこうした物件は、代金が800万円以下に収まることも珍しくありません。こうした物件の売り方の全体は、空き家の売却の流れで、古家付き・更地・買取の選び方と合わせて確かめてください。
特例を使うには事前の説明と合意が要る:契約前に確かめること
国土交通省の解釈・運用の考え方では、特例の報酬を受け取る場合、媒介契約を結ぶときに、あらかじめ特例の上限の範囲内で報酬額を依頼者に説明し、合意することを求めています。つまり、契約した後や売買が決まった後に「800万円以下なので33万円です」と言われるのは、この考え方に沿いません。
媒介契約の前に、次の順で確かめておくと安心です。
- 見積もりの段階で聞く:査定の結果と一緒に「この価格帯だと仲介手数料はいくらを考えていますか。特例を使いますか」と聞く。
- 原則の額と比べる:上の早見表で、自分の物件の価格での原則の上限を出し、特例で上乗せされる額を確かめる。
- 上乗せの理由を聞く:遠方の現地調査、境界や権利の確認、残置物の多い家の対応など、どんな手間がかかる見込みかを聞く。
- 媒介契約書の報酬欄を見る:媒介契約書には報酬に関する事項を書くことが法律で決まっている(宅建業法34条の2第1項)。合意した額がそのまま書かれているかを確かめる。
- 売れる価格が下がった場合を決めておく:値下げして代金が変わったとき、報酬をどう計算し直すかも聞いておく。
不動産会社に聞くときは、次のように伝えると話が早く進みます。
文例:「売り出し価格が500万円前後になりそうなので、仲介手数料の見込みを先に教えてください。低廉な空家等の特例を使う場合は、原則の額との差と、その理由を媒介契約の前に説明していただけますか。」
なお、宅建業者は不当に高額の報酬を要求してはならないと定められています(宅建業法47条2号)。合意していない額を求められて困ったときは、媒介契約書と、やり取りのメールやメモを残しておきましょう。値引きの頼み方は仲介手数料の交渉はできる?で扱っています。
特例の33万円と、別の名目の費用の違い
仲介手数料とは別に「調査費」「コンサル料」などを請求されることがあります。ここは、媒介の報酬に含まれるものと、別の契約の報酬とで扱いが分かれます。
| 費用の名目 | 扱い | 確かめること |
|---|---|---|
| 媒介にかかる手間(現地調査・買い手探しなど) | 媒介の報酬に含まれる。低廉な空家等なら特例の上限33万円の中で考える | 媒介契約書の報酬欄の額 |
| 依頼者が特別に頼んだ広告の料金 | 告示の報酬とは別に、実費を受け取れる | 依頼した広告の内容と見積もり |
| 空き家の管理(通風・清掃・郵便物の転送など) | 媒介契約と別に書面などで結んだ契約なら、媒介の報酬の規制の対象外 | 別の契約書があるか、仕事の中身と料金 |
| 相続の相談・利活用の助言などのコンサルティング | 同上(別の契約で区分されている場合) | 媒介と区別された契約か。登記・税務・法律事務は司法書士・税理士・弁護士の仕事 |
国土交通省は、媒介契約と区別して、別に書面などで結んだ契約に基づく報酬なら、宅建業法の報酬規制の対象にならないと整理しています。言い換えると、別の契約がないまま「調査費」として上乗せされる費用は、媒介の報酬として上限の中で考えるものです。請求の名目に迷ったら、何の仕事への支払いか、どの契約書に書かれているかを聞いてください。
手数料の安さを打ち出す会社と比べる場合は、仲介手数料無料・半額の会社は得?で、買主側の報酬で成り立つ仕組みを確かめておくと比較しやすくなります。
安い空き家を売るときの手数料以外の費用と、売り方の比べ方
800万円以下の物件では、手数料だけでなく、解体・測量・残置物の片付けといった費用の重みも大きくなります。仲介で売るか、不動産会社に直接買い取ってもらうかで、かかる費用の種類が変わる点も比べておきましょう。
- 仲介:仲介手数料がかかる。買い手が見つかるまでの固定資産税や管理の手間も続く。
- 買取:不動産会社が自ら買主になるので、仲介手数料は通常かからない。価格は仲介の査定額より低くなりやすいので、両方の金額を並べて比べる。売主にはクーリング・オフがない点にも注意する。
売却にかかる費用を一覧で見たい場合は、次の不動産売却にかかる費用一覧に、仲介手数料・印紙税・登記・測量・解体・税金をまとめています。
一括査定を使う場合、返ってくる査定額は成約を約束する額ではなく、各社が示す見込みです。媒介契約に書く価額について意見を述べるときは、不動産会社に根拠を明らかにする義務があります(宅建業法34条の2第2項)ので、根拠は遠慮なく聞いてください。800万円以下になりそうな物件なら、査定額と一緒に「仲介手数料の見込みと特例を使うかどうか」を各社に聞くと、手取りで比べられます。
よくある質問
Q. 800万円以下の物件なら、仲介手数料は33万円と決まっているのですか?
決まってはいません。33万円(税込)は特例で受け取れる額の上限で、その範囲でいくらにするかは不動産会社と依頼者が媒介契約の前に話し合って決めます。特例を使わず、原則の計算による上限以内で引き受ける会社もあります。
Q. 買主も33万円を払うことになりますか?
報酬告示の特例は「依頼者から」受け取る額の上限を定めていて、売主に限っていません。買主が不動産会社に仲介を頼む場合も、事前に説明と合意があれば特例の範囲で報酬を受け取る可能性があります。買主側の条件は、買主が自分の媒介契約で確かめることになります。
Q. 媒介契約を結んだ後で、特例の分を上乗せすると言われました。
国土交通省の運用の考え方は、媒介契約を結ぶときに、あらかじめ報酬額を説明して合意することを求めています。後から言われた場合は、媒介契約書の報酬の欄に何と書いてあるかを確かめ、合意していない額なら理由を書面で求めてください。納得できなければ、不動産取引の公的な電話相談などを使えます。窓口は[不動産売却の相談先](/baikyaku-soudan/)にまとめています。
出典・参考にした公的な情報
- 宅地建物取引業法 第34条の2・第46条・第47条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(令和6年7月1日施行)(国土交通省)
- 不動産業による空き家対策推進プログラム(報酬規制の見直しの説明資料)(国土交通省)
- 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方の改正(媒介以外の関連業務の報酬)(国土交通省)
- 空き家等に係る媒介報酬規制等の見直し(報道発表 令和6年6月21日)(国土交通省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。