相続放棄と借金の相続 / Q&A

親が連帯保証人だった場合の相続:保証債務は引き継ぐのか

この記事のもくじ
  1. 親が連帯保証人だった場合、保証債務は相続される
  2. 連帯保証と保証の違い:相続人に来る請求の重さ
  3. 根保証は亡くなった時点で元本が確定する
  4. 保証人だったかの調べ方と、後から分かったとき
  5. 相続放棄・限定承認を決める材料

親が連帯保証人だった場合、その保証債務も相続人が引き継ぐのが原則です。相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を承継するからです(民法896条)。借りた本人が返済を続けている間は表に出ませんが、返済が止まると相続人に請求が来ます。ただし、個人が保証人になった賃貸などの「根保証」は、親が亡くなった時点で保証の元本が確定し、その後に生じた債務は保証の範囲に入りません。引き継ぎたくない場合は、3か月以内に相続放棄や限定承認を検討します。

親が連帯保証人だった場合、保証債務は相続される

Q. 親が知人の借金の連帯保証人になっていた。親が亡くなったら、子が代わりに払うのか。

A. 子が相続すれば、保証人としての立場も引き継ぎます。保証人の責任は、借りた本人(主たる債務者)が払わないときに代わりに払うことです(446条1項)。この責任は財産上の義務なので、預金や家と同じく相続の対象になります。

相続人が数人いれば、それぞれの相続分に応じて引き継ぎます(899条)。たとえば相続人が母と子2人なら、法定相続分は母1/2、子は各1/4です。保証の残高が800万円なら、母400万円、子は各200万円ずつ保証の責任を負う形になります(筆者の計算:800万円×1/2=400万円、800万円×1/4=200万円)。

例外として、就職の際の身元保証のように、保証した人と本人の信頼関係に強く結びついた保証は、相続の対象になるかどうかが個別に判断されます(896条ただし書の「一身に専属したもの」)。保証の種類で扱いが変わるので、契約書の題名と中身を確かめることが出発点です。

借金全体の選び方は親の借金は相続する?相続放棄の前に借金を調べる方法と払う義務の考え方で整理しています。

連帯保証と保証の違い:相続人に来る請求の重さ

親の契約が「連帯保証」か、ただの「保証」かで、相続人が請求されたときに言えることが変わります。

言えること 保証人 連帯保証人
先に借りた本人に請求してと言う(催告の抗弁) 言える(452条) 言えない(454条)
借りた本人の財産から先に取ってと言う(検索の抗弁) 言える(453条) 言えない(454条)
借りた本人が主張できる言い分(抗弁)を使う 使える(457条2項) 使える(457条2項)
時効の援用 自分で援用できる(145条) 自分で援用できる(145条)

連帯保証人は、借りた本人に余力があっても、いきなり全額を請求されることがあります。相続で引き継いだ場合も、この性質はそのまま残ります。

時効にも特有の動きがあります。借りた本人に対する請求などで時効の完成が猶予されたり更新されたりすると、保証人に対しても効力が生じます(457条1項)。借りた本人が借金を認めて返済を続けていれば、保証の側の時効もそれに合わせて進み直しうる、と考えておくと見通しを誤りません。

保証の請求が実際に届いて、払うかどうか迷っているときは、相続した親の借金の督促が届いたら:払う前に確かめることを先に読んでください。払い方によっては、相続を承認したと扱われうるからです。

根保証は亡くなった時点で元本が確定する

賃貸住宅の連帯保証や、取引が続く事業の保証のように、範囲が決まっていない債務をまとめて保証する契約を「根保証」といいます。根保証には、普通の保証と違う決まりがあります。

極度額の範囲までしか責任を負わない。 個人が保証人の根保証(個人根保証契約)では、元本・利息・損害賠償などを合わせて、契約で決めた極度額が責任の上限です(465条の2第1項)。極度額を定めない個人根保証契約は効力を生じません(同条2項)。

保証人が亡くなると元本が確定する。 個人根保証契約の元本は、借りた本人または保証人が死亡したときに確定します(465条の4第1項3号)。親が保証人として亡くなった場合、その時点までの元本が保証の対象として固まり、それ以後に生じた新しい債務は保証の範囲に入りません。相続人が引き継ぐのは、確定した元本と、それに付く利息などの部分です。

保証の種類 親が亡くなった後の扱い
普通の保証・連帯保証(金額が決まった借入れ) 保証の責任を相続人が相続分に応じて引き継ぐ
個人の根保証(賃貸の保証など) 亡くなった時に元本が確定。それまでの分を引き継ぎ、後の分は対象外
身元保証など信頼関係に基づく保証 相続の対象になるかが個別に判断される

契約の時期を確かめる。 法務省の資料によると、極度額の定めが要るのが貸金等の根保証だけだった改正前の決まりが、2020年4月1日施行の改正で、賃貸の保証など個人の根保証全般に広げられました。改正法の施行より前に結んだ保証契約には、改正前の決まりが使われます。古い契約書を見つけたら、日付と、極度額の記載があるかを確かめ、扱いは弁護士・司法書士に相談してください。

事業用の借入れの保証は、公正証書の有無も見る。 事業のために借りたお金(貸金等)の保証は、契約の前1か月以内に、保証人になる人が公証人の前で保証の意思を述べた公正証書がなければ、保証契約が効力を生じません(465条の6)。親が兄の事業の借入れを保証していた、という場面では、この証書があるかが確かめどころです。会社の取締役や議決権の過半数を持つ人、共同して事業を行う人、事業に現に従事している配偶者などは対象外で(465条の9)、2020年4月1日より前の契約にも適用されません。当てはまるかは、契約書と関係を示す書類を持って弁護士に確かめます。

早見表:親が保証人だったときに確かめる4点
  1. 契約の種類:保証か連帯保証か、根保証か(契約書の題名と条項)
  2. 金額:保証の残高、根保証なら極度額
  3. 時期:契約日が2020年4月1日より前か後か。事業用の借入れなら公正証書の有無
  4. 借りた本人の状況:返済が続いているか、滞っているか

保証人だったかの調べ方と、後から分かったとき

保証は、親本人が借りた借金と違って、通帳の引落しなどに表れにくい債務です。次のような手がかりを探します。

  • 契約書・控えの書類。 金融機関や貸主との「保証契約書」「連帯保証人」の記載がある書類、賃貸借契約書の保証人欄、施設の入居契約書を探します。保証契約は書面でしなければ効力を生じないので(446条2項)、契約のときに書面が作られているはずです。親の手元に控えがなければ、貸主に写しを求めます。
  • 借りた本人に聞く。 親が誰の保証人になっていたか心当たりがあれば、借りた本人に、残高と返済の状況を聞きます。
  • 郵便物と信用情報。 金融機関からの通知や、信用情報機関の開示で分かる保証もあります。調べ方は相続財産の調べ方:預金・不動産・借金を見つける照会先一覧にまとめています。

問題になりやすいのは、相続の開始から時間がたってから保証が分かる場合です。相続放棄や限定承認の期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です(915条1項)。3か月の間にほかの財産を調べても決められないときは、期限内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます。3か月を過ぎた後に保証の請求が来た場合に放棄が認められるかは、家庭裁判所が事情を見て判断します。請求が届いた時点で、書類を持って弁護士・司法書士に相談してください。

相続放棄・限定承認を決める材料

保証債務がある場合の選び方は、借りた本人の返済の見通しで変わります。

状況 考えられる選択 確かめること
借りた本人の返済が滞っている、または見込みが薄い 相続放棄を軸に考える ほかの財産を失っても放棄するか
返済は続いているが、残高が大きい 相続放棄か限定承認を比べる 将来請求されたときに払えるか
財産が多く、保証の残高は小さい 単純承認も選択肢 残高と極度額、契約の時期
保証の額が分からない 調査と期間の伸長 契約書と借りた本人への確認

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったことになり(939条)、保証債務も引き継ぎません。ただし家や預金も受け取れず、同じ順位の全員が放棄すると次の順位の親族が相続人になります。限定承認なら、受け取った財産の範囲でだけ責任を負います(922条)が、相続人全員の一致が条件です。仕組みは限定承認とは?借金がどれだけあるか分からない時の選択肢で説明しています。

保証のほかに、親に税金の滞納があった場合の扱いは故人の税金の滞納は相続する?固定資産税・住民税と放棄の関係で扱います。保証は契約ごとに中身が違うため、どの選択がよいかは、契約書と借りた本人の返済状況を持って弁護士・司法書士に相談して決めてください。

よくある質問

Q. 親が保証人になっていた借金は、借りた本人が払い続けていても相続人に関係ありますか?

関係します。保証人の地位は相続で引き継がれるので、借りた本人が払えなくなった時点で、相続人に請求が来る可能性があります。今は滞りなく返済されていても、残高と返済の見通しを借りた本人に確かめておきます。

Q. 親が兄の事業の連帯保証人でした。兄弟の私だけ放棄することはできますか?

相続放棄は1人ずつ家庭裁判所に申述できるので、あなただけ放棄することはできます。放棄すれば初めから相続人でなかったことになり、保証債務も引き継ぎません(民法939条)。ほかの相続人の負担や次の順位への影響が出るので、家族で事情を共有してから決めてください。

Q. 賃貸アパートの連帯保証人だった親が亡くなりました。その後の家賃の滞納も相続人が払うのですか?

賃貸の保証のように範囲が決まっていない債務を保証する個人の根保証は、保証人が亡くなった時に元本が確定します(民法465条の4第1項3号)。2020年4月1日以後に結んだ契約なら、亡くなった後に生じた家賃の滞納は確定した元本に入らないのが条文の読み方です。それより前の契約は適用される決まりが違うので、契約書の日付を確かめてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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