故人の税金の滞納は相続する?固定資産税・住民税と放棄の関係
この記事のもくじ
亡くなった人(被相続人)に税金の滞納があった場合、その税金を納める義務は相続人が引き継ぎます。国税は国税通則法5条、住民税や固定資産税などの地方税は地方税法9条が定めていて、延滞金や滞納処分費まで含まれます。引き継ぐ額は相続人ごとに法定相続分で割った額です。一方、家庭裁判所で相続放棄をした人は初めから相続人でなかったことになるので、滞納税も引き継ぎません。
結論:滞納税は相続人が法定相続分で引き継ぐ
「相続すると故人の税金の滞納まで払うのか」という問いへの答えは、単純に相続すれば払う義務を引き継ぐ、です。借金と同じく、税金の未納も「一切の権利義務」(民法896条)の一つとして相続人に移り、税法がそれを個別に定めています。
| 税の種類 | 根拠 | 引き継ぐもの |
|---|---|---|
| 国税(所得税・消費税など。相続税は相続人自身の税なので含まれない) | 国税通則法5条 | 被相続人に課されるべき国税、被相続人が納付すべきだった国税、その滞納処分費 |
| 地方税(住民税・固定資産税・自動車税など) | 地方税法9条 | 地方団体の徴収金。地方税法1条で、督促手数料・延滞金・加算金・滞納処分費を含むと定義されている |
相続人が複数いるときは、一人が全額を負うのではありません。滞納税の総額を、民法900〜902条による相続分(法定相続分、遺言で指定があればその割合)で按分した額を、各相続人が引き継ぎます(国税通則法5条2項、地方税法9条2項)。
たとえば、父の固定資産税の未納と延滞金が合わせて24万円あり、相続人が母・長男・長女の3人だとします。法定相続分は母1/2、子は各1/4なので、母12万円、長男6万円、長女6万円になります(筆者の計算)。ここで長女だけが相続放棄をすると、相続人は母と長男の2人になり、母1/2・長男1/2で各12万円に変わります(同)。
注意したいのは、按分の基準が遺産分割の結果ではない点です。「実家を継いだ長男が全部払う」と話し合いで決めても、条文上の各自の額は相続分で計算されます。さらに、相続で得た財産の価額が自分の承継額を超える相続人は、その超える価額を限度に、ほかの相続人の分も納める責任を負います(国税通則法5条3項、地方税法9条3項)。多く受け取った人ほど、ほかの人の未納分も追いかけられうる仕組みです。
固定資産税は「1月1日」の前に亡くなったかで分かれる
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)の所有者に、その年度の1年分が課されます(地方税法359条・343条)。そのため、亡くなった日によって「故人の税を引き継ぐ」のか「相続人自身に課される」のかが分かれます。
| 亡くなった時期 | その年度の固定資産税 | 相続人から見た扱い |
|---|---|---|
| 1月1日の時点で存命だった | 被相続人に課される | 未納の期別分は、相続人が相続分で引き継ぐ(地方税法9条) |
| 1月1日より前に亡くなった | 1月1日に現に所有している者に課される(343条2項) | 相続人自身の税になる。遺産分割前で共有なら、共有者が連帯して納める(10条の2) |
| 前の年度以前から滞納していた | 被相続人に課されていた | 延滞金も含めて相続人が引き継ぐ |
登記簿の名義が亡くなった人のままでも、市区町村は相続人などを調べて納税通知書を送ります。市区町村によっては条例で、亡くなった名義人の不動産を現に所有している人(現所有者)に、住所・氏名などの申告を求めています(地方税法384条の3)。届いた書類に申告書が同封されていたら、期限を確かめて出します。
滞納していた期間が長いほど、延滞金がふくらみます。固定資産税の延滞金については、納期限までに納められなかったことにやむを得ない事由があると認めるとき、市町村長が減免できるという規定もあります(地方税法369条2項)。相続で初めて滞納を知った事情は、窓口で率直に伝えてかまいません。
実家を相続するか迷っている段階なら、固定資産税は滞納分だけでなく、これから毎年かかる費用でもあります。相続放棄した空き家の管理の範囲は相続放棄した空き家はどうなるかで整理しています。
住民税と所得税:亡くなった年の分の扱い
住民税も1月1日が賦課期日で、その日に住所がある人に、前年の所得をもとに課されます(地方税法39条・318条・313条)。この仕組みから、次のように整理できます。
- 年の途中で亡くなった場合:1月1日に住所があったので、その年度の住民税は本人の分として課されます。残りの期別分が未納なら、相続人が引き継ぎます。会社員で給与から差し引かれていた人は、残りの扱いを勤め先と市区町村の税務課に確かめます。
- 1月1日より前に亡くなった場合:翌年度の住民税は、1月1日に住所がない人には課されません。前年度以前の未納があれば、それは引き継ぎます。
- 所得税:亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得は、相続人が準確定申告をします。申告して納める税額も、相続人が引き継ぐ国税です。期限や手順は準確定申告とは?4か月の期限とやり方で扱っています。
地方税の承継には、申告や報告の義務も含まれます(地方税法9条4項)。税額だけでなく、出していなかった申告を相続人が代わりに出す場面がある、ということです。
滞納の調べ方と、通知が届いたときの順番
滞納があるかどうかは、相続するか放棄するかを決める材料になります。決める期間は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条)。次の順で動くと、期限内に材料がそろいやすくなります。
- 郵便物を集める:納税通知書、督促状、催告書、差押えの通知、口座振替不能の通知を探します。1年分さかのぼると、年1回の固定資産税の通知も拾えます。
- 市区町村の税務課(納税課)に問い合わせる:不動産のある市区町村と、住んでいた市区町村の両方です。相続人であることが分かる戸籍と本人確認書類を求められることが多いので、持参するものを事前に電話で聞きます。
- 国税は税務署に問い合わせる:住所地を所轄する税務署です。事業をしていた人は消費税などの未納にも目を向けます。
- 一覧表にまとめる:税目・年度・本税・延滞金・宛先の自治体を並べ、ほかの借金と合わせて判断します。財産全体の調べ方は相続財産の調べ方:照会先一覧にあります。
- 3か月で足りなければ延ばす:家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。手順は相続放棄の期間の延長:伸長の申立てのやり方を見てください。
文例(電話):「○月に亡くなった父○○の長男です。父の名義で未納の市税があるか、税目と年度、本税と延滞金の額を教えていただけますか。相続放棄も考えているので、払う前に全体をつかんでおきたいと思っています。」
相続人が複数いるときは、税務署や市区町村からの書類を受け取る代表者を相続人の中から決めて届け出られます(国税通則法13条、地方税法9条の2)。兄弟が離れて住んでいる家族では、通知の行き違いを減らせます。
放棄を考えている間に、故人の預金を引き出して滞納税を払うと、相続財産の処分に当たるかどうかという問題が生じることがあります(民法921条1号)。払う前に相続放棄の前にしてはいけないことを読んでおいてください。一度に払えない場合は、災害や病気などの事情があれば徴収の猶予を申請できる制度もあります(地方税法15条)。
放棄・限定承認と滞納税:選ぶときの判断材料
放棄の効果と手続きの全体は相続放棄とは?期限3か月の手続き・費用・してはいけないことの全体にまとめています。滞納税だけを切り離して放棄することはできません。どの選択でも、預金や家など他の財産と一緒に扱いが決まります。
| 選択 | 滞納税の扱い | ほかの財産 |
|---|---|---|
| 単純承認 | 相続分に応じて全額を引き継ぐ | すべて受け取る |
| 限定承認 | 相続で得た財産の限度で納める(国税通則法5条1項、地方税法9条1項) | 清算の後に残れば受け取る。相続人全員で申述する |
| 相続放棄 | 引き継がない(民法939条) | 何も受け取れない。次の順位の親族に相続人が移る |
| 全員が放棄 | 相続人がいなくなり、相続財産は法人になる(民法951条)。滞納税は財産の清算の中で扱われる | 清算人の選任など、家庭裁判所の手続きが要る |
限定承認の流れは限定承認とは?借金がどれだけあるか分からない時の選択肢に、相続人が誰もいなくなった後の財産の扱いは法定相続人がいない場合の財産にまとめています。税以外の借金も含めた選び方は親の借金は相続する?3つの選び方で比べています。保証人の立場を引き継ぐかどうかは別の論点なので、親が連帯保証人だった場合の相続を見てください。
ここから先の線引きもはっきりさせておきます。準確定申告の税額や、相続税で差し引ける額を自分の場合で計算するのは税理士の業務(税理士法52条)です。放棄が認められそうか、滞納税を含めて放棄すべきかの見通しは弁護士、家庭裁判所に出す申述書の作成は司法書士に頼めます。違いは相続手続きの専門家の違いで、無料で相談できる窓口は相続手続きの無料相談窓口一覧で確かめられます。相談には、集めた通知書と一覧表を持っていくと話が早く進みます。
よくある質問
Q. 遺産分割で実家を継いだ兄が、父の滞納税を全部払うと決めてもよいですか?
相続人どうしで負担を決めること自体はできます。ただ、法律が定める各相続人の納付額は法定相続分(遺言で相続分の指定があればその割合)で計算されるので、兄が払わなければ、ほかの相続人にも自分の割合分の請求が来る仕組みです。合意した内容は書面に残し、実際に完納されたかを納付の記録で確かめておくと安心です。
Q. 相続放棄が受理されたのに、市役所から固定資産税の通知が届きました。
放棄した人は初めから相続人でなかったとみなされるので、相続人として滞納税を引き継ぐ立場にはありません。市区町村は戸籍などで相続人を調べて通知を出しているため、放棄の受理を把握していないことがあります。受理通知書や受理証明書を手元に置いて税務課に連絡し、扱いを確かめてください。
Q. 亡くなった人の未納の税金は、相続税の計算で差し引けますか?
国税庁は、亡くなった時点で確定していた未納の税金だけでなく、死亡後に相続人が納めることになった所得税なども、債務として遺産総額から差し引けると説明しています。ただし、相続人の責任で生じた延滞税や加算税は差し引けません。自分の場合にいくら差し引けるかの計算は、税理士に頼む領域です。
出典・参考にした公的な情報
- 国税通則法 第5条(相続による国税の納付義務の承継)・第13条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方税法 第1条・第9条・第9条の2・第10条の2・第15条・第39条・第313条・第318条・第343条・第359条・第369条・第384条の3(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第896条・第915条・第921条・第939条・第951条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 税理士法 第2条・第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.4126 相続財産から控除できる債務(国税庁)
- 相続の放棄の申述(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。