相続放棄と借金の相続 / 悩み整理

相続した親の借金の督促が届いたら:払う前に確かめることと相談窓口

この記事のもくじ
  1. 先に:怖いとき・脅されているときの連絡先
  2. 督促が届いたら払う前に:単純承認と時効の2つの落とし穴
  3. 請求が正しいかを確かめる:差出人・中身・本物の裁判所の書類
  4. 時効になっていないかを確かめる
  5. 債権者への返事の仕方と、放棄が受理された後

亡くなった親あての借金の督促が届いても、すぐに払う必要はありません。相続人には、借金を引き継ぐかどうかを決める3か月の期間があり(民法915条1項)、その間に請求が正しいかを確かめられます。払ってしまうと、相続を承認したと扱われたり、時効が一から進み直したりする原因になりえます。脅されている、怖くて眠れない、という場合は、まず下の窓口に連絡してください。

先に:怖いとき・脅されているときの連絡先

督促の中身を考える前に、身の安全と気持ちの安全を先に確保します。

  • 身の危険を感じる、家に押しかけられている:110番
  • 電話や訪問で脅される、つきまとわれる(緊急ではない):警察相談専用電話 #9110
  • 身に覚えのない請求、業者名がはっきりしない請求:消費者ホットライン 188(近くの消費生活センターにつながる)
  • 借金のことで死にたい気持ちがある:#いのちSOS 0120-061-338(24時間)

各窓口の受付時間は、相続手続きの無料相談窓口一覧で確かめてください。番号を直すときは、その一覧と同時に直します。

法テラスや弁護士会、司法書士会の窓口の番号と受付時間は、相続手続きの無料相談窓口一覧にまとめています。

取り立てには法律の決まりがあります。貸金業者とその委託を受けた者は、人を脅したり、正当な理由なく午後9時から午前8時までに電話・訪問したり、借りた本人以外の家族に代わりに払うよう求めたりしてはならないと定められています(貸金業法21条1項、同法施行規則19条1項)。相続放棄をした家族は、借りた本人の立場を引き継いでいません。ただし銀行など貸金業者でない債権者には、この条文が直接には及びません。

督促が届いたら払う前に:単純承認と時効の2つの落とし穴

督促状を見ると「とにかく払えば終わる」と考えがちですが、払う前に知っておくことが2つあります。

1つ目:亡くなった人のお金で払うと、相続を承認したとみなされうる。 相続人が相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認をしたものとみなされます(921条1号)。親の預金を引き出して借金を返すことは、この処分に当たりうる行為です。単純承認になると、後から相続放棄ができなくなり、ほかの借金も全部引き継ぐことになります。自分のお金で払う場合の扱いも、事情によって見方が分かれうるので、払う前に専門家に確かめます。

2つ目:一部でも払うと、時効が一から進み直しうる。 時効は、権利の承認があった時から新たに進行を始めます(152条1項)。条文は承認の中身を並べていませんが、一部を払う、分割払いを約束する、借金があると認める書面に署名する、といった行為は承認に当たると考えられており、時効の期間がまたゼロから数え直しになる可能性があります。古い借金ほど、この点が大きく響きます。

督促を受けてやりがちなこと 起こりうること 代わりにすること
親の預金から払う 相続財産の処分として単純承認(921条1号) 払う前に放棄するか決める
少額だけ払って様子を見る 承認として時効が進み直す(152条) 請求の中身を書面で確かめる
「分割で払います」と約束する 同じく承認になりうる 「検討中」とだけ伝える
督促を放置する 裁判所の手続を起こされると不利になりうる 差出人と中身を確かめる

借金を引き継ぐか自体を決める考え方は親の借金は相続する?相続放棄の前に借金を調べる方法と払う義務の考え方で整理しています。

チェックリスト:督促が届いたら払う前に
  • 差出人の会社名・住所・電話番号を、自分で調べた公式の連絡先と照らした
  • 契約日・借入額・残高・利息と遅延損害金の内訳が書かれているか見た
  • 裁判所からの書類なら、裁判所の代表番号を自分で調べて問い合わせた
  • 最後に払った時期と、裁判を起こされたことがあるかを確かめた
  • 相続放棄・限定承認・単純承認のどれにするか、3か月の期限を確かめた
  • 払う・約束する前に、弁護士・司法書士・消費生活センターに相談した

請求が正しいかを確かめる:差出人・中身・本物の裁判所の書類

督促には、本物の請求と、亡くなった人の情報を悪用した架空請求が混ざることがあります。次の順で確かめます。

差出人を確かめる。 書かれている電話番号にかけるのではなく、会社名で公式の連絡先を自分で調べてからかけます。法務省は、実在しない機関名(「法務省管理局」「民事訴訟通達センター」など)や実在しない文書名(「民事訴訟最終告知書」など)を使った架空請求に注意を呼びかけています。

中身が書かれているかを見る。 貸金業者の督促状には、商号・住所・電話番号、送った人の氏名、契約年月日、貸付金額、利率、支払期日、請求額などを書く決まりがあります(貸金業法21条2項)。残っている債務の額と、元本・利息・遅延損害金の内訳も書くことになっています(同法施行規則19条3項)。これらが書かれていない請求は、うのみにせず確かめる材料になります。

取引の記録を取り寄せる。 貸金業者の帳簿は、相続人も閲覧や写しの交付を請求できます(貸金業法19条の2、同法施行規則17条の2)。いつ借りて、いつまで返していたかが分かれば、残高や時効の見当がつきます。ほかに借金がないかは、信用情報機関への開示請求で調べられます。

裁判所からの書類は放っておかない。 本物の裁判所からの書類(支払督促や訴状など)を放置すると、言い分を出す機会を失って不利になりえます。封筒にある電話番号ではなく、裁判所の代表番号を自分で調べて、事件があるかを問い合わせてください。

時効になっていないかを確かめる

古い借金なら、時効が完成している可能性もあります。現在の民法では、借金などの債権は、権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年のどちらか早いほうで時効によって消えます(166条1項)。ただし、次の点に注意が要ります。

  • 時効は援用しないと使えない。 期間が過ぎても自動的には消えず、時効の利益を受けると相手に伝える(援用する)必要があります(145条)。
  • 裁判で確定した借金は10年。 判決や、確定判決と同じ効力のあるもので確定した権利は、時効期間が10年になります(169条1項)。
  • 契約の時期で決まりが違う。 2020年4月1日の改正法の施行より前に結んだ契約から生じた借金は、改正前の時効の決まりが使われることがあります(法務省の債権法改正の案内)。
  • 相続した後の支払いや約束は承認になりうる。 上で書いたとおり、払ったり約束したりすると時効が進み直す可能性があります。

時効が完成しているかどうかは、最後に払った日、裁判の有無、契約の時期によって決まる個別の判断で、弁護士・司法書士の仕事です。取引の記録と督促状を持って相談してください。

債権者への返事の仕方と、放棄が受理された後

督促の電話や手紙に返事をするときは、払う約束をせず、事実の確認を求める言い方にとどめます。

返事の例:「亡くなった〇〇の家族です。相続をどうするか検討しているところです。請求の内容が分かるよう、契約日、借入額、残高と内訳を書面で送ってください。」

相続放棄を選んだら、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述します。手順と書類は相続放棄の手続き:期限・費用・申述から受理通知までで確かめてください。受理された後は、受理した家庭裁判所に申請すれば受理証明書をもらえます(収入印紙150円分)。裁判所の家事事件Q&Aは、債権者から請求されている場合は受理されたことを債権者に連絡するのがよいと案内しています。

受理後の連絡の例:「〇〇(被相続人)の相続について、〇年〇月〇日に〇〇家庭裁判所で相続放棄の申述が受理されました。受理証明書の写しを同封します。」

親が誰かの保証人になっていて、その請求が届いた場合は、親が連帯保証人だった場合の相続も合わせて読んでください。督促が続いて心がすり減っているときは、一人で対応せず、最初に挙げた窓口や弁護士・司法書士に、届いた書類をそのまま見せて相談することから始めてください。

よくある質問

Q. 督促の電話で「相続人なら払う義務がある」と言われました。本当ですか?

相続人は借金も引き継ぐのが原則ですが、家庭裁判所で相続放棄が受理されれば初めから相続人でなかったことになります(民法939条)。放棄するかどうかを決める期間は、相続の開始を知った時から3か月です。その場で払うと約束せず、検討中であることだけを伝えて電話を切ってかまいません。

Q. 相続放棄が受理されたのに、まだ督促が来ます。どうすればよいですか?

受理した家庭裁判所に申請すると、受理証明書を出してもらえます(収入印紙150円分)。裁判所の家事事件Q&Aも、請求されている場合は受理されたことを債権者に連絡するのがよいと案内しています。証明書の写しを送っても請求が続くときは、弁護士や消費生活センターに相談してください。

Q. 親の借金を少しだけでも払っておいたほうが、取り立てが和らぎませんか?

払う前に、相続放棄を考えているかを決めてください。亡くなった人の預金から払うと相続財産の処分に当たりうるほか、一部の支払いは借金を認めたものとして時効が一から進み直す原因になりえます。どちらも後から取り消すのが難しいので、払うかどうかは弁護士・司法書士に相談してからにします。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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