相続放棄と借金の相続 / 文例

相続放棄申述書の書き方:記入例に沿った各欄と放棄の理由の選び方

この記事のもくじ
  1. 書式の入手と全体の形:2ページ・太枠・番号に丸
  2. 1ページ目の各欄の書き方
  3. 2ページ目:相続の開始を知った日と放棄の理由の書き方
  4. 財産のことはどこに書く?照会に備えたメモの作り方
  5. 書き終えた後の確認と、作成を頼む場合

相続放棄申述書は、裁判所の書式ページにある「相続の放棄の申述書(成人)」をダウンロードし、記入例のとおりに太枠の中だけを書くものです。2026年10月時点の書式は2ページで、1ページ目に申述人と被相続人のこと、2ページ目に「相続の開始を知った日」と「放棄の理由」を書きます。番号を選ぶ欄が多く、自由に書くのは「その他」を選んだ場合の括弧の中だけです。この記事では、記入例に沿って欄ごとの書き方を示し、迷いやすい知った日と放棄の理由の選び方を文例つきで説明します。申述書の作成をこのサイトが代わりに行うことはしません。

書式の入手と全体の形:2ページ・太枠・番号に丸

書式は、裁判所ウェブサイトの書式ページから PDF か Word で入手できます。申述人が18歳未満の未成年者のときは、別の未成年者用の書式を使います(法定代理人が代わりに申述します)。書式は改訂されることがあるので、古い書式を写して使わず、申述する時点のものを取ってください。

書式の欄外の注意書きは2つだけです。

  • 太枠の中だけ記入する:受付印・収入印紙・予納郵便切手・準口頭・関連事件番号の欄は裁判所が使います。
  • ※の欄は当てはまる番号を○で囲む:被相続人との関係の「7 その他」、法定代理人の「3」、申述の理由の「4 その他」、放棄の理由の「6 その他」を選んだときは、括弧の中に具体的に書きます。
図解:申述書の2ページの中身

1ページ目

  • 上:収入印紙800円分を貼る欄(書式に「貼った印紙に押印しないでください」とある)
  • 中:提出先の家庭裁判所名・作成日・申述人の記名押印・添付書類の通数
  • 下:申述人(本籍・住所・電話・氏名・生年月日・職業・被相続人との関係)、法定代理人、被相続人(本籍・最後の住所・氏名・死亡日) 2ページ目
  • 申述の趣旨(「相続の放棄をする。」と印字済み)
  • 申述の理由:相続の開始を知った日(1〜4から選ぶ)と、放棄の理由(1〜6から選ぶ)

申述書に必要な事項は、家事事件手続法201条5項で「当事者及び法定代理人」と「相続の放棄をする旨」と決められています。書式の申述の趣旨に「相続の放棄をする。」と最初から印字されているのは、このためです。

1ページ目の各欄の書き方

1ページ目は、戸籍や住民票を見ながら書き写す欄が中心です。岡山家庭裁判所は、本籍・氏名・生年月日・被相続人の最後の住所・死亡年月日を、戸籍謄本などの記載どおりに書くよう案内しています。

欄 書くこと 迷いやすい点
家庭裁判所名・日付 提出先の家庭裁判所(支部なら支部名まで)と作成日 申述人の住所地でなく、被相続人の最後の住所地の裁判所
申述人の記名押印 申述人本人の氏名と押印 未成年者などは法定代理人が記名押印する
添付書類 戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本の合計通数、住民票除票か戸籍附票に印 同じ書類は1通で足りる
申述人の本籍・住所・電話 戸籍どおりの本籍、今の住所、平日の日中に連絡がつく電話 記入例は携帯電話でもよいとしている
申述人の氏名・生年月日・職業 フリガナつきの氏名、元号の生年月日と年齢、職業 職業は「会社員」など簡潔に
被相続人との関係 1子 2孫 3配偶者 4直系尊属 5兄弟姉妹 6おいめい 7その他 から選ぶ 孫・おいめいは代襲相続の場合
法定代理人 申述人が未成年者・成年被後見人のときだけ書く 成人の申述では空欄でよい
被相続人の本籍・最後の住所・氏名・死亡日 除籍謄本・住民票除票の記載どおり 最後の住所は住民票の除票で確かめる

甲府家庭裁判所のように、申述書の各ページ上部の余白に捨印を押すよう求める庁もあります。申述先のページに個別の案内がないかを、書き始める前に見ておきます。必要な戸籍の範囲は相続放棄の必要書類:立場ごとの戸籍の範囲を参照してください。

2ページ目:相続の開始を知った日と放棄の理由の書き方

相続の開始を知った日は、3か月の期限の起点として裁判所が見る日付です。次の4つから選び、日付を書きます。

番号 選ぶ場面 日付の書き方
1 被相続人死亡の当日 同居していた、亡くなった日に知らせを受けた 死亡日
2 死亡の通知をうけた日 疎遠で、後日に連絡や書面で死亡を知った 連絡・書面を受けた日
3 先順位者の相続放棄を知った日 子の全員が放棄して父母や兄弟姉妹が相続人になった 放棄の連絡を受けた日
4 その他 上のどれにも当たらない(借金の存在を後から知った等) 括弧に事情を書き、その日付

死亡日から3か月を過ぎていて2〜4を選ぶ場合は、その日付が分かる書面(債権者からの通知書の写しなど)を添えるよう求める家庭裁判所があります。「4 その他」の括弧には、たとえば次のように事実を短く書きます。

文例(知った日・その他):「令和○年○月○日、○○株式会社から被相続人あての督促状が私に届き、被相続人に借入金があることを知った」

放棄の理由は、1被相続人から生前に贈与を受けている、2生活が安定している、3遺産が少ない、4遺産を分散させたくない、5債務超過のため、6その他、から当てはまる番号を選びます。記入例では「5 債務超過のため」に丸がついていますが、借金がない場合でも1〜4のどれかを選べます。どれにも当たらないときだけ、6の括弧に書きます。

文例(放棄の理由・その他):「被相続人とは長年交流がなく、財産の内容を知らないまま相続手続きに関わることを望まないため」 文例(放棄の理由・その他):「実家の土地建物を兄が継ぐことを家族で話し合って決め、私は相続しないことにしたため」

理由の書き方で、受理されたときの効果が変わることはありません。気をつけたいのは、後で届くことがある照会への答えと食い違わないことです。照会書の答え方は相続放棄の照会書が届いたらで説明しています。

財産のことはどこに書く?照会に備えたメモの作り方

2026年10月時点の成人用の書式には、財産の内訳を書く欄がありません。書式ページの注意書きには、家庭裁判所が判断のために書面で照会したり直接事情を尋ねたりすることがある、と書かれています。財産について聞かれたときに慌てないよう、提出前に次のメモを作っておくと役立ちます。

  1. プラスの財産:分かっている預貯金・不動産・車など。金額は分かる範囲で構いません。
  2. マイナスの財産:借入金・カードの未払い・税金の滞納など。督促状の写しを一緒に保管します。
  3. 手を付けたもの:預金の引き出し、遺品の売却や処分、解約など、死亡後にしたことと日付。
  4. 葬儀費用の出どころ:自分のお金か、被相続人の預金からか。

3と4は、民法921条の「相続財産の処分」に当たるかが問題になりうる事柄です。当たるかどうかは個別の事情で決まり、判断するのは家庭裁判所です。申述書を書く前に心配な行為がある場合は、相続放棄の前にしてはいけないことで線引きを確かめ、必要なら司法書士・弁護士に相談してから出します。財産を隠すことは、放棄の後でも単純承認とみなされる理由になります(921条3号)。

書き終えた後の確認と、作成を頼む場合

提出前に、次の点を見直します。

  • 被相続人の氏名・本籍・最後の住所・死亡日が、除籍謄本や住民票の除票と一字一句同じか。
  • 相続の開始を知った日の番号と日付が合っているか(3か月の計算が合うか)。
  • 収入印紙800円分を貼り、印紙に押印していないか。
  • 添付書類の通数を書いたか。申述人の欄に押印したか。
  • 全ページのコピーを取ったか(照会への答えをそろえるため)。

自分で書くのが難しい場合、裁判所に出す書類の作成は司法書士の仕事です(司法書士法3条1項4号)。弁護士に頼むと、書類の作成に加えて代理人として手続きに関わってもらえます。費用の違いは相続放棄の費用:自分でやる実費と司法書士・弁護士に頼む場合で比べています。出した後の流れは相続放棄の手続き:期限・費用・申述から受理通知までの5段階にまとめています。

よくある質問

Q. 申述書は手書きでないといけませんか?

裁判所の書式ページには PDF と Word の両方があり、Word に入力して印刷することもできます。ただし「申述人の記名押印」の欄は、申述人本人が記名して押印します。家族の分をまとめて作っても、押印はそれぞれ本人がします。

Q. 放棄の理由で「債務超過のため」を選ばないと、受理されませんか?

書式の放棄の理由は1〜6から当てはまる番号を選ぶ形で、借金がなくても「生活が安定している」「遺産を分散させたくない」などを選べます。理由の欄は相続放棄の効果を左右するものではありませんが、照会で事情を尋ねられることがあるので、事実どおりに選んでください。

Q. 押印は認印でいいですか?

書式の欄は「記名押印」で、実印とも印鑑証明書とも書かれていません。甲府家庭裁判所は、窓口に持参するときの認め印についてスタンプ式は不可と案内しています。朱肉を使う印鑑で押すのが無難です。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続放棄の必要書類:立場ごとの戸籍の範囲と取り寄せの順番

相続放棄の費用:自分でやる実費と司法書士・弁護士に頼む場合

相続放棄の照会書が届いたら:回答の書き方と受理証明書の取り方

相続放棄の手続き:期限・費用・申述から受理通知までの5段階