相続放棄と借金の相続 / チェックリスト

相続放棄の必要書類:立場ごとの戸籍の範囲と取り寄せの順番

この記事のもくじ
  1. 立場ごとの必要書類の早見表
  2. 取り寄せの順番:3か月の期限から逆算する
  3. 誰がどこで請求できるか:広域交付と郵送の使い分け
  4. 書類を減らせる場面と、申述先ごとの違い
  5. 提出前のチェックリスト

相続放棄の必要書類は、どの立場の人も出す3点(申述書・被相続人の住民票の除票または戸籍附票・申述人の戸籍謄本)に、立場ごとの戸籍を加えたものです。配偶者と子は「被相続人の死亡の記載がある戸籍」だけで足りますが、父母・祖父母と兄弟姉妹・甥姪は「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍」が必要になり、取り寄せに時間がかかります。この記事では、裁判所の案内の区分どおりに立場ごとの範囲を表にし、3か月の期限から逆算した取り寄せの順番と、提出前のチェックリストを示します。

立場ごとの必要書類の早見表

裁判所の「相続の放棄の申述」のページの区分を、立場ごとに並べ直すと次の表になります。「共通の3点」は全員が出します。

申述する人 共通の3点に加えて出す戸籍
配偶者 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
子 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
孫・ひ孫(代襲相続人) 上に加え、本来の相続人(亡くなっている親)の死亡の記載がある戸籍謄本
父母・祖父母 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍/亡くなっている子(とその代襲者)がいればその出生から死亡までの戸籍/自分より下の代の直系尊属に亡くなった人がいればその死亡の記載がある戸籍
兄弟姉妹 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍/亡くなっている子(とその代襲者)がいればその出生から死亡までの戸籍/被相続人の父母・祖父母の死亡の記載がある戸籍
甥・姪(代襲相続人) 兄弟姉妹の欄の戸籍に加え、本来の相続人(亡くなっている兄弟姉妹)の死亡の記載がある戸籍謄本
早見表:立場で変わる戸籍の範囲
  • 配偶者・子:被相続人の「死亡の記載がある戸籍」1つから始められる
  • 孫・甥姪:上の書類に、亡くなっている親の死亡の記載がある戸籍を足す
  • 父母・兄弟姉妹:被相続人の出生から死亡まで全部。子がいないこと(父母も亡くなっていること)を示すため

範囲が広がるのは、後の順位の人が相続人であることを示すには、先の順位の人がいないことを戸籍で示す必要があるからです。父母が申述するなら被相続人に子がいないこと、兄弟姉妹が申述するなら子も父母・祖父母もいないことを示します。順位の基本は相続の順位の早見表で確かめてください。

なお、同じ被相続人について先の順位の人がすでに同じ家庭裁判所に戸籍を出していれば、提出済みの書類は不要です。子の全員が放棄した後に兄弟姉妹が申述する場合などに当たるので、先の順位の人の事件番号を聞いておくと申述先に伝えやすくなります。

取り寄せの順番:3か月の期限から逆算する

書類は、手元に近いものから集めていくと迷いません。次の順番で進めます。

  1. 被相続人の住民票の除票を取る:最後の住所地の市区町村で請求します。本籍の記載ありで取れば、戸籍を請求する本籍地も分かります。甲府家庭裁判所のようにマイナンバーの表示のないものを指定する庁があるので、請求の窓口で個人番号を載せないよう伝えておくと安全です。
  2. 被相続人の死亡の記載がある戸籍を取る:配偶者・子はここで被相続人側の書類がそろいます。
  3. 自分の戸籍謄本を取る:今の本籍地か広域交付の窓口で取ります。
  4. (父母・兄弟姉妹など)出生までさかのぼる:死亡の記載がある戸籍から、一つ前の戸籍の本籍と筆頭者を読み取り、出生の記載がある戸籍まで順に請求します。読み方は相続手続きの戸籍謄本の集め方、古い様式の戸籍は改製原戸籍とは?で説明しています。
  5. (兄弟姉妹・甥姪)父母・祖父母の死亡の記載がある戸籍を取る:父母が亡くなっていることを示します。
  6. 期限が近ければ先に申述する:裁判所の案内では、申述前に入手できない戸籍等は申述後に追加で出せます。そろった分で申述書を出し、残りは届きしだい送ります。

被相続人の死亡日から3か月を過ぎてから申述する場合は、相続の開始を知った日が分かる書面も用意します。静岡家庭裁判所は、金融機関や市役所からの督促状・通知書で負債を知った場合、その写しを出すよう案内しています。通知が複数あるときは最初に受け取ったもので、被相続人と申述人の氏名、作成日付があるものが望ましいとされています。封筒ごと捨てずに残しておきます。

誰がどこで請求できるか:広域交付と郵送の使い分け

2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できる「広域交付」が始まりました(戸籍法120条の2)。ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍で、窓口に本人が行く必要があり、郵送や代理人による請求はできません。コンピュータ化されていない一部の古い戸籍・除籍も、広域交付の対象外とされています。出生までさかのぼる途中でこの古い戸籍に当たったら、その本籍地の市区町村に郵送で請求します。この線引きが、相続放棄の立場ごとに次のように効いてきます。

申述する人 被相続人の戸籍 自分の親・祖父母の戸籍
子・孫 親(直系尊属)の戸籍なので広域交付で取れる 広域交付で取れる
配偶者 配偶者の戸籍なので広域交付で取れる —
兄弟姉妹 広域交付は使えない。本籍地に郵送か窓口で請求 亡くなった父母は自分の直系尊属なので広域交付で取れる
甥・姪 広域交付は使えない。本籍地に請求 祖父母・亡くなった親は直系尊属なので広域交付で取れる

兄弟姉妹や甥姪が被相続人の戸籍を本籍地に請求するときは、戸籍法10条の2により請求の理由を明らかにします。請求書の理由欄には、たとえば次のように書きます。

理由欄の例:「兄○○(令和○年○月○日死亡)の相続放棄の申述を家庭裁判所にするため。私は兄の弟で、兄には子がなく、父母は死亡している」

手数料の標準は、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本が1通750円です(地方公共団体の手数料の標準に関する政令)。実際の額は市区町村の条例で決まるので、請求先の手数料表で確かめます。郵送で請求するときは、定額小為替と返信用封筒の入れ方を請求先の案内で確かめておきます。

書類を減らせる場面と、申述先ごとの違い

必要書類は、次の決まりを使うと減らせます。いずれも裁判所や各家庭裁判所の案内にある扱いです。

  • 同じ書類は1通:兄弟が同時に申述するなら、被相続人の戸籍は共通の1通で足ります。まとめて出す方法は相続放棄を兄弟まとめてする方法で説明しています。
  • 法定相続情報一覧図の写し:戸籍等の代わりに出せる場合があります。大阪家庭裁判所は、一覧図を出しても必要に応じて戸籍の提出を求めることがあると案内しています。
  • コピーでの提出:神戸家庭裁判所は戸籍謄本等の写しでの提出と原本返却の申出の方法を案内しており、岡山家庭裁判所も「戸籍謄本等のコピーの提出について」の案内を出しています。
  • 名称の違い:戸籍謄本は「全部事項証明書」「除籍謄本」「改製原戸籍謄本」の名で発行されることがあります。名称が違っても、求められているものは同じです。

申述先によって追加の書類を求められることもあります。審理のために必要なときは追加提出を求める、とどの裁判所も書いているので、求められたら期限内に出せば足ります。

提出前のチェックリスト

申述書と一緒に封筒へ入れる前に、次の項目を一つずつ確かめます。

  • 相続放棄の申述書(成人用か未成年者用か。書き方は相続放棄申述書の書き方)
  • 収入印紙800円分を申述書の印紙欄に貼った(貼った印紙には押印しない)
  • 申述先の家庭裁判所が指定する額の郵便切手、または保管金の納付
  • 被相続人の住民票の除票(マイナンバーの表示の要否は申述先の案内で確認)または戸籍附票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 立場ごとの被相続人の戸籍(早見表の範囲)
  • 代襲相続なら、亡くなっている親の死亡の記載がある戸籍
  • 死亡日から3か月を過ぎていれば、相続の開始を知った日が分かる書面の写し
  • 申述書の「添付書類」欄の通数と、実際に入れた通数が合っている
  • 窓口に持参するなら、認印(甲府家庭裁判所はスタンプ式を不可としています)と本人確認書類
  • 甲府家庭裁判所のように申述書の各ページ上部余白への捨印を求める庁では、押した
  • 送る前に全部のコピーを取った

出した後の流れ(照会への回答と受理通知書)は、正本の相続放棄の手続き:期限・費用・申述から受理通知までの5段階で確かめてください。

よくある質問

Q. 兄が亡くなり、弟の私が相続放棄します。兄の戸籍は広域交付で取れますか?

取れません。広域交付で請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍で、兄弟姉妹は含まれていません。兄の戸籍は本籍地の市区町村に、相続放棄の手続きに必要という理由を書いて郵送か窓口で請求します。一方、亡くなった父母の戸籍は、子であるあなたが広域交付で請求できます。

Q. 戸籍謄本はコピーで出してもいいですか?

裁判所ごとに扱いが違います。神戸家庭裁判所は戸籍謄本等の写し(コピー)での提出と原本返却の申出を、岡山家庭裁判所もコピー提出の案内を出しています。扱いは庁ごとに決まっているので、申述先の家庭裁判所のページで確かめてから出してください。

Q. 住民票の除票は、マイナンバーが載ったものでもいいですか?

甲府家庭裁判所は、個人番号(マイナンバー)の表示のない住民票除票を出すよう案内しています。請求するときに、市区町村の窓口でマイナンバーを載せないよう伝えてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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