相続放棄と借金の相続 / Q&A

相続放棄しても受け取れるもの:生命保険・遺族年金・未支給年金

この記事のもくじ
  1. 相続放棄しても受け取れるもの・受け取れないものの分け方
  2. 生命保険の死亡保険金:受取人の指定で決まる
  3. 遺族年金と未支給年金:法律が受け取る人を決めている
  4. 死亡退職金・埋葬料など、そのほかのお金
  5. 受け取る前に確かめる3つのこと

相続放棄をしても、受け取る人を法律や契約が直接決めているお金は受け取れます。代表は、受取人に指定された人の死亡保険金(保険法42条)、法律が遺族に支給する遺族年金(国民年金法37条・厚生年金保険法58条)、遺族が自分の名で請求する未支給年金(国民年金法19条)です。反対に、亡くなった人が受け取るはずだったお金(未払いの給与、税金の還付金、本人が受取人の給付金など)は相続財産なので、放棄すると受け取れず、受け取れば放棄できなくなるおそれがあります。

相続放棄しても受け取れるもの・受け取れないものの分け方

相続人は亡くなった人の「一切の権利義務」を引き継ぎ(民法896条)、放棄した人は初めから相続人でなかったことになります(939条)。つまり、放棄で受け取れなくなるのは「亡くなった人の権利」です。最初から別の人の権利として決まっているお金は、この流れの外にあります。

お金の種類 誰の権利として決まっているか 放棄した人
受取人に指定された死亡保険金 受取人(保険法42条) 受け取れる
遺族基礎年金・遺族厚生年金 法律が定める遺族(国民年金法37条・厚生年金保険法58条) 要件を満たせば受け取れる
未支給年金 生計を同じくしていた遺族が「自己の名で」請求(国民年金法19条) 請求できる立場にある
健康保険の埋葬料 生計を維持されていた人で埋葬を行う人(健康保険法100条) 要件を満たせば受け取れる
預貯金・不動産・株・車 亡くなった人 受け取れない
未払いの給与・家賃収入・貸したお金 亡くなった人 受け取れない
所得税などの還付金 亡くなった人 受け取れない
本人が受取人の入院給付金・保険金 亡くなった人 受け取れない
お金の行き先の見分け方
  1. 請求書や案内の「受取人」「請求者」欄を見る
  2. 亡くなった人の名前 → 相続財産。放棄を考えているなら受け取らない
  3. 自分や遺族の名前が法律・契約で決まっている → 放棄と別に受け取れるお金
  4. どちらか読めない → 請求の前に支払う側に確かめ、専門家に相談

生命保険の死亡保険金:受取人の指定で決まる

死亡保険金は、契約で受取人に指定された人のお金です。保険法42条は、受取人が契約の当事者以外の人であるときは、受取人が当然に契約の利益を受けると定めています。受取人が配偶者や子と指定されていれば、その人が相続放棄をしても、保険会社に自分で請求して受け取れます。

気をつけたいのは、次の3つの場面です。

  • 受取人が亡くなった本人になっている。 本人が受け取るはずだったお金なので、相続財産に入りえます。生前に請求していた入院給付金なども同じです。
  • 受取人の指定がない、または「相続人」とだけ書いてある。 誰の権利になるかは約款と事情で変わるので、保険会社に確かめ、専門家に見せます。
  • 相続税。 亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税の対象になります。相続人が受け取る場合の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、放棄した人には使えません(国税庁 No.4114)。非課税枠を計算するときの人数には、放棄した人も数えます。

保険と相続の関係を広く知りたいときは生命保険は相続財産?受取人固有の財産と相続税での扱いの違いを読んでください。非課税枠の計算は生命保険の相続税の非課税枠で扱っています。

遺族年金と未支給年金:法律が受け取る人を決めている

遺族年金は、国民年金法と厚生年金保険法が受け取る遺族を定めている年金です。遺族基礎年金は亡くなった人の「配偶者又は子」に(国民年金法37条)、遺族厚生年金は「遺族」に支給され(厚生年金保険法58条)、その遺族の範囲は死亡当時に生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母と決められています(同59条)。相続人として財産を受け継ぐ仕組みとは別に支給されるので、受け取れるかは相続放棄ではなく、生計維持や年齢などの要件で決まります。

未支給年金は、亡くなった人に支払われるはずだったのに、まだ支払われていない年金です。日本年金機構は、年金は亡くなった月の分まで支払われると案内しています。国民年金法19条(厚生年金は厚生年金保険法37条)は、死亡当時に生計を同じくしていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・それ以外の3親等内の親族が、自己の名で請求できると定めています。日本年金機構の案内では、請求できる遺族には順位があり、先の順位の人がいると後の順位の人は受け取れません。

項目 遺族年金 未支給年金
根拠 国民年金法37条・厚生年金保険法58条 国民年金法19条・厚生年金保険法37条
受け取る人 生計を維持されていた遺族(要件あり) 生計を同じくしていた遺族(順位あり)
請求の名義 遺族本人 遺族本人(自己の名で)
時効 5年(国民年金法102条) 5年(同)
税の扱い(日本年金機構の案内) ― 受け取った遺族の一時所得

手続きの窓口と必要書類は親が亡くなった時の相続手続きと年金:受給停止・未支給年金の請求にまとめています。

死亡退職金・埋葬料など、そのほかのお金

死亡退職金は、勤務先の退職手当の規程が、誰に支払うかを定めていることがあります。規程で受け取る遺族と順位が決まっているか、決まっていないかで扱いが変わりうるので、勤務先から規程を取り寄せ、放棄を考えていることを伝えたうえで専門家に見せてください。相続税では、死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金は相続税の対象になり、非課税枠(500万円×法定相続人の数)は放棄した人には使えません(国税庁 No.4117)。

健康保険の埋葬料は、亡くなった人に生計を維持されていた人で埋葬を行う人に支給されると、健康保険法100条が定めています。国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費は、市区町村や広域連合の条例で決まるので、額と請求できる人はお住まいの自治体で確かめます。請求には期限があり、国民健康保険法110条は、保険給付を受ける権利を行使できる時から2年で時効によって消滅すると定めています。葬祭費も保険給付にあたるため、葬儀のあとは早めに申請します。後期高齢者医療の期限は広域連合の案内で確かめます。

受け取れるお金がある一方で、亡くなった人の財産から葬儀費用を払うことや、遺品を持ち帰ることは別の問題です。こちらは財産の処分に当たるかが問われるので、相続放棄の前にしてはいけないこと:預金の引き出し・解約・処分で確かめてください。

受け取る前に確かめる3つのこと

放棄を考えている人が、案内の届いたお金を受け取る前に確かめたいのは次の3点です。

  1. 受取人・請求者が誰になっているか。 支払う側(保険会社・年金事務所・勤務先)に、受取人の名義と、誰のお金として支払うのかを聞きます。
  2. 亡くなった人の口座に振り込まれるお金ではないか。 亡くなった人名義の口座に入るお金は、相続財産として扱われるものが多くあります。口座から引き出して使わないようにします。
  3. 税金がかかるか。 死亡保険金や死亡退職金は相続税、未支給年金は所得税の対象になりえます。申告の要否は税務署や税理士に確かめます。

相続放棄の手続き全体と期限は相続放棄とは?期限3か月の手続き・費用の全体で確かめられます。迷うお金があるときは、通知書や約款を持って司法書士・弁護士に相談すると、受け取ってよいかを具体的に聞けます。

よくある質問

Q. 相続放棄をしても、遺族年金はもらえますか?

遺族年金は、国民年金法・厚生年金保険法が「配偶者又は子」「遺族」に支給すると定めている年金で、亡くなった人の財産を相続人として受け継ぐものではありません。受け取れるかどうかは、相続放棄ではなく、生計維持や年齢などの要件で決まります。要件に当てはまるかは年金事務所で確かめてください。

Q. 相続放棄した人が受け取った生命保険金に、相続税はかかりますか?

亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税の対象として扱われます。放棄した人は非課税枠(500万円×法定相続人の数)の対象外なので、受け取った額がそのまま課税の対象に入ります(ほかの財産と合わせた合計が相続税の基礎控除の範囲内なら、税額は出ません)。申告が要るかは、ほかの財産も含めて税理士か税務署で確かめてください。

Q. 亡くなった親の入院給付金を受け取ってもよいですか?

受取人が亡くなった本人になっている給付金は、本人の権利として相続財産に入りうるお金です。受け取ると財産の処分に当たるおそれがあるので、放棄を考えているなら請求の前に保険会社に受取人を確かめ、専門家に相談してください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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