生命保険の相続税の非課税枠:500万円×法定相続人の計算と注意
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相続で受け取る死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があります。 法定相続人が配偶者と子2人の3人なら1,500万円までは相続税がかかりません。ただし、この枠を使えるのは相続人が受け取った保険金だけで、相続放棄をした人や、孫・内縁の配偶者のように相続人でない人が受け取った保険金には使えません。保険料を誰が払っていたかによっては、そもそも相続税ではなく所得税や贈与税の対象になります。
非課税枠は「500万円×法定相続人の数」:人数別の早見表
被相続人が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金は、民法上は受取人自身の財産ですが、相続税の計算では相続で取得したものとみなされます(相続税法3条、国税庁 No.4114)。そのうえで、相続人が受け取った保険金のうち次の額までは課税されません(相続税法12条)。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
| 法定相続人の数 | 非課税限度額 | 家族の例 |
|---|---|---|
| 1人 | 500万円 | 子1人 |
| 2人 | 1,000万円 | 配偶者と子1人 |
| 3人 | 1,500万円 | 配偶者と子2人 |
| 4人 | 2,000万円 | 配偶者と子3人 |
| 5人 | 2,500万円 | 配偶者と子4人 |
この「法定相続人の数」は、遺産全体の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)で使う人数と同じ数え方です。基礎控除で相続税がかかるかを判定するときは、保険金から非課税部分を引いた残りを財産に入れて計算します。基礎控除の数え方は相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定で扱っています。
受取人が複数いるときの分け方:国税庁の例で計算
非課税限度額は家族全体で1つの枠です。相続人が受け取った保険金の合計が限度額を超えるときは、各相続人が受け取った額の割合で枠を分けます(相続税法12条1項6号ロ)。
各相続人の非課税金額=非課税限度額×その相続人が受け取った保険金÷相続人全員が受け取った保険金の合計
法定相続人が妻と子の2人(限度額1,000万円)で、妻が4,000万円、子が1,000万円を受け取った場合を計算します(筆者の設定と計算)。
| 受取人 | 受け取った保険金 | 非課税金額 | 課税される金額 |
|---|---|---|---|
| 妻 | 4,000万円 | 1,000万円×4,000/5,000=800万円 | 3,200万円 |
| 子 | 1,000万円 | 1,000万円×1,000/5,000=200万円 | 800万円 |
| 合計 | 5,000万円 | 1,000万円 | 4,000万円 |
合計が限度額以下なら、受け取った保険金の全額が非課税です。たとえば法定相続人が3人(限度額1,500万円)で、子1人だけが1,200万円を受け取った場合、1,200万円すべてが非課税になります(筆者の計算)。受取人が1人に偏っていても、枠は家族全体の人数で決まります。
法定相続人の数え方:放棄した人・養子・相続人でない人
非課税枠でつまずきやすいのは、「人数に数えるか」と「枠を使えるか」が別の話になる点です。
| 立場 | 人数に数えるか | 受け取った保険金に枠を使えるか |
|---|---|---|
| 配偶者・子などの相続人 | 数える | 使える |
| 相続放棄をした人 | 数える(放棄がなかったものとして数える) | 使えない |
| 養子 | 実子がいれば1人まで、いなければ2人まで | 相続人なので使える |
| 孫(子が健在で、養子でもない) | 数えない | 使えない(相続人でないため) |
| 内縁の配偶者 | 数えない | 使えない |
相続放棄をしても、受取人として指定された死亡保険金は受け取れます。ただし相続税の計算では、放棄した人は「相続人」として扱われず、遺贈で取得したものとみなされるため、非課税枠を使えません(相続税法3条1項・12条、No.4114)。放棄と保険金の関係は相続放棄しても受け取れるもの:生命保険・遺族年金・未支給年金で整理しています。
相続人でない孫が受取人の場合は、さらに2つの点に気をつけます。
- 相続税額の2割加算:配偶者と一親等の血族(子・父母)以外の人は、相続税額に2割が加算されます。孫は、親の代わりに相続する代襲相続人でなければ加算の対象です(No.4157)。
- 生前贈与の加算:相続や遺贈で財産を取得した人は、被相続人から一定期間内に受けた暦年課税の贈与が相続財産に加算されます(No.4161)。死亡保険金を受け取った孫も「遺贈で取得した人」に当たるため、生前に受けた贈与が加算の対象になりえます。
契約形態で税の種類が変わる:相続税になるのはどの形か
死亡保険金に相続税がかかるのは、亡くなった人が保険料を負担していた場合です。保険料を負担した人と受取人の組み合わせで、税の種類が変わります(国税庁タックスアンサー「死亡保険金を受け取ったとき」)。
| 被保険者 | 保険料を負担した人 | 受取人 | かかる税 | 非課税枠 |
|---|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 子 | 相続税 | 使える(子が相続人なら) |
| 父 | 子 | 子 | 所得税(一時所得など) | 使えない |
| 父 | 母 | 子 | 贈与税 | 使えない |
保険料を父と子が一緒に負担していた場合は、払い込まれた保険料の総額のうち父が負担した割合に当たる部分だけが、相続税の対象(みなし相続財産)になります(相続税法3条1項1号)。たとえば保険料の6割を父、4割を子が負担していて、子が保険金2,000万円を受け取った場合、相続税の対象は1,200万円です(筆者の計算)。残りの800万円は相続税の対象にならず、子が自分で負担した保険料に対応する部分として、上の表の2行目(所得税)の考え方で扱いを確かめます。
契約者の名義と、実際に保険料を払っていた人が違うこともあります。税の種類は名義ではなく負担した人で決まるので、保険料の引き落とし口座の記録を確かめます。
死亡退職金の非課税枠と、申告で書くところ
勤務先から支払われる死亡退職金にも、死亡保険金とは別に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります(No.4117)。対象は、亡くなった後3年以内に支給が確定したものです。死亡保険金の枠と死亡退職金の枠は別々に使えるので、法定相続人3人なら、それぞれ1,500万円ずつ非課税になります。
申告するときの書き方と順番は次のとおりです。
- 保険会社の支払明細書で、受取人・金額・契約者・保険料の負担者を確かめる。
- 申告書の第9表(生命保険金などの明細書)に保険金ごとに書き、非課税金額を計算する。
- 課税される金額を第11表(相続税がかかる財産の明細書)に移す。
- 死亡退職金は第10表(退職手当金などの明細書)で同じように計算する。
保険金が民法上「遺産分割の対象になるのか」という手続き面の扱いは、生命保険は相続財産?受取人固有の財産と相続税での扱いの違いで説明しています。非課税枠のほかに税額から差し引ける控除は、相続税の控除一覧:配偶者・未成年者・障害者・相次相続の早見表で並べて確かめられます。
自宅がマンションの場合に土地の評価を下げる特例はマンションでも小規模宅地等の特例は使える?敷地権の面積の考え方で扱っています。
「相続 生命保険 非課税枠」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 非課税枠は受取人1人ごとに500万円ですか?
いいえ。非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で家族全体の枠として1つ計算し、相続人が受け取った保険金の割合で分けます。相続人が3人いて、1人だけが保険金を受け取った場合は、その1人が1,500万円の枠をまるごと使えます。
Q. 保険金が非課税枠以内なら、相続税の申告は要りませんか?
非課税枠を引いた後の課税価格の合計(債務・葬式費用の控除後、生前贈与の加算を含む)が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、申告は要りません。超えて申告するときは、保険金の非課税部分も申告書の第9表に書いて計算します。非課税だから書かなくてよい、ということにはならないので注意します。
Q. 勤務先から受け取った弔慰金にも非課税枠はありますか?
弔慰金は、業務上の死亡なら亡くなった時の普通給与の3年分、業務外の死亡なら半年分までが相続税の対象外です(国税庁 No.4120)。それを超える部分は死亡退職金として扱われ、死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の計算に入ります。
出典・参考にした公的な情報
- No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(国税庁)
- No.1750 死亡保険金を受け取ったとき(国税庁)
- No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金(国税庁)
- No.4120 相続税の課税対象になる弔慰金(国税庁)
- No.4157 相続税額の2割加算(国税庁)
- No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁)
- 相続税法 第3条・第12条・第15条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。