相続登記と名義変更 / Q&A

法定相続情報証明制度のデメリット:作れない場合と使えない手続き

この記事のもくじ
  1. Q1 法定相続情報証明制度のデメリットは何?手間が減らない部分
  2. Q2 作れない場合はある?外国籍・数次相続・旧民法の相続
  3. Q3 金融機関や役所で使えない手続きはある?対応状況の確かめ方
  4. Q4 一覧図に載らないことは?遺産分割・相続放棄・遺言
  5. Q5 作った後の不便は?再交付と保管期間の制限

法定相続情報証明制度のデメリットは、大きく4つです。①出生から死亡までの戸籍を集める手間は、この制度を使っても減らない。②被相続人や相続人が外国籍などで日本の戸除籍謄本を出せない場合は、作れないことがある。③一覧図は亡くなった人1人ごとなので、数次相続(祖父の相続が終わらないうちに父も亡くなった場合など)では人数分の申出が要る。④提出先が受け付けない、または続柄の書き方によっては使えない手続きがあり、そのときは戸籍の原本を出す。逆に、提出先が1〜2か所しかないなら、作らずに戸籍の束で進めても困りません。下のQ&Aで、自分の場合に作るべきかを判断できるようにします。

Q1 法定相続情報証明制度のデメリットは何?手間が減らない部分

A. 一番大きいのは、「戸籍集めが楽になる制度」ではないことです。一覧図を作るには、亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸除籍謄本、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄抄本を、先にすべてそろえて法務局に出します。制度が省いてくれるのは、そろえた戸籍の束を、提出先ごとに何度も出し直す手間のほうです。

手続きを実際に進めると、時間がかかる場面は次の順に現れます。

  1. 戸籍を集める。 本籍地を何度も移した人や、戸籍の改製をまたぐ人は、複数の市区町村に請求が要ります。郵送でつなぐと、ここに一番日数がかかります。
  2. 一覧図を作る。 法務局の様式(Excel)を使えば、家族の形に合う記載例を書き換えるだけで済みます。
  3. 申出から交付まで待つ。 登記官が書類を確かめてから交付されるので、その間は戸籍の束も法務局にあります。

3の待ち時間の間、戸籍の束が手元にない点も見落としやすいところです。急ぐ手続きが1つだけあるなら、先に戸籍の束でその手続きを済ませ、返してもらってから申出をする順番も取れます。必要書類の一覧と申出の手順は法定相続情報証明制度の手続き:申出書と一覧図の書き方で確かめてください。

Q2 作れない場合はある?外国籍・数次相続・旧民法の相続

A. あることがあります。申出に必要な書類は、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本と相続人全員の戸籍謄抄本です(法務局の手続案内の必須書類)。一覧図は、この戸籍の記載から分かる相続人を登記官が確かめて認証する仕組みなので、被相続人や相続人が日本国籍を持たないなどの理由で戸除籍謄抄本を出せない場合は、この制度を利用できないと法務局は案内しています。外国籍の相続人が一部にいる場合に自分の家族が当てはまるかは、申出をする前に申出先の登記所へ電話で確かめるのが確実です。作れないと分かったら、相続登記や預金の手続きで、提出先ごとに戸籍に代わる書類として何を求めるかを確かめて出します。相続人の1人が海外に住んでいるだけで日本国籍の人は戸籍があるので別の話で、住所の扱いなどは相続人が海外在住の場合の手続きで整理しています。

数次相続(祖父の相続の手続きが終わらないうちに父も亡くなった、など)では、一覧図は被相続人1人ごとに作ります。祖父の分と父の分で、それぞれの申出が要ります。同じ申出人が同じ登記所に同時に2件以上申し出る場合、共通する書類は1通出せば足りると法務局は案内しています。祖父名義の家の登記を進める順番は数次相続の相続登記:祖父名義の家を登記する順番と中間省略で扱います。

旧民法の時代の相続(家督相続)でも、法務局は記載例を公開しており、作ること自体はできます。ただ、隠居や家督相続の記載を読み解く必要があり、戸籍の読み取りに時間がかかる場面です。

判断表:法定相続情報一覧図を作るか、戸籍の束で進めるか
状況 向いている方法 理由
銀行・証券会社・法務局など提出先が3か所以上 一覧図を作る 同時に進められ、戸籍の返却待ちが減る
相続税の申告もする 一覧図を作る(続柄は戸籍どおり) 申告にも写しを使える
提出先が相続登記だけ 戸籍の束でもよい 申請時に添付する戸籍は、登記所に原本の還付を申し出ると返してもらえる方法がある(法務局のハンドブックで確かめる)
相続人や被相続人が外国籍で日本の戸籍がない 作れないことがある 申出に戸除籍謄抄本が要る。申出前に登記所へ確かめる
数次相続で亡くなった人が2人以上 人数分の申出が要る 一覧図は被相続人1人ごと

Q3 金融機関や役所で使えない手続きはある?対応状況の確かめ方

A. 法務局は、写しを相続登記、預金の払戻し、相続税の申告、年金などの手続きに使えると案内する一方で、使えるかどうかや、写し以外に何が要るかは提出先の機関ごとに異なるので、各機関に問い合わせるよう書いています。金融機関の対応状況の一覧を法務局が出しているわけではないので、口座のある銀行に電話する時に、次の3点をまとめて聞くと一度で済みます。

文例:「亡くなった父の預金の相続手続きで、法定相続情報一覧図の写しを戸籍の代わりに出したいのですが、受け付けていただけますか。写しのほかに必要な書類と、写しは原本を返していただけるかも教えてください。」

注意したい落とし穴が2つあります。

続柄を「子」と書いた写し。 一覧図の続柄は、戸籍どおりに「長男」「長女」と書くのが基本です。申出人の選択で「子」と書くこともできますが、法務局は、その場合は相続税の申告などで使えないことがあると注意しています。書き方を決めるのは申出の前なので、相続税の申告がありそうなら戸籍どおりに書きます。

法定相続情報番号は不動産登記だけ。 令和6年(2024年)4月1日から、法務局の不動産登記の申請書に法定相続情報番号を書けば、写しの添付を省略できるようになりました。これは不動産登記の手続きに限った扱いで、銀行などでは番号では足りず、写しそのものを出します。

Q4 一覧図に載らないことは?遺産分割・相続放棄・遺言

A. 一覧図は、戸籍から分かる「被相続人と相続人の関係」を示すものです。次のことは載らないので、別の書類で示します。

載らないこと 別に出すもの(例)
誰がどの財産を受け取るか(遺産分割の結果) 遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書
相続放棄をしたこと 家庭裁判所の相続放棄申述受理通知書や受理証明書
遺言の内容 遺言書(検認済みのもの、公正証書遺言、法務局の遺言書情報証明書など)

相続放棄をした人も一覧図には氏名・生年月日・続柄が載ります。一覧図だけを見ると「放棄した人も相続人に見える」ので、提出先には放棄の書類を一緒に出します。一方、推定相続人から廃除された人は一覧図に書きません。

相続人の住所を一覧図に書いた場合、交付後にその相続人が引っ越しても、住所変更を理由に申出をやり直すことはできません。相続登記の住所証明として使う予定なら、引っ越しの予定がある相続人の住所は書かずにおき、登記の時に住民票の写しを出す方法もあります。

Q5 作った後の不便は?再交付と保管期間の制限

A. 一覧図は登記所で申出日の翌年から5年間保管され、その間は写しの再交付を受けられます。ただし、再交付を申し出られるのは、最初の申出書に申出人として名前を書いた人だけで、他の相続人は再交付を受けられません。兄弟の1人が申出人になり、別の兄弟が後で銀行の手続きを引き継ぐような場合は、申出書の通数を提出先の数から数えておくか、申出人から写しを渡してもらう段取りを決めておきます。

5年を過ぎた後に写しが要る手続きが出てきたら、改めて戸籍を集めて申出をし直すことになります。相続登記を先延ばしにしている間に保管期間が過ぎる、という形の二度手間が起きやすいので、写しを受け取ったら、相続登記を含めた手続きを続けて進めるのが効率のよい使い方です。制度でできることの全体は法定相続情報証明制度とは:一覧図を無料で作り手続きを早くする方法にまとめています。

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よくある質問

Q. 一覧図があれば遺産分割協議書はいりませんか?

いります。一覧図が示すのは「誰が相続人か」までで、誰がどの財産を受け取るかは載りません。遺産分割で取得する人を決めたなら、相続登記や預金の手続きでは遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書などを別に出します。

Q. 一覧図の写しに有効期限はありますか?

法務局の案内には、写しの有効期限の定めは書かれていません。ただし、提出先が「発行から○か月以内」の書類を求めることがあるので、出す前に提出先の条件を確かめます。古くなって受け付けてもらえない場合は、申出日の翌年から5年の保管期間内なら、当初の申出人が再交付を受けられます。

Q. 戸籍の束のままで手続きしてもかまいませんか?

かまいません。この制度は使うかどうかを選べる任意の制度で、使わなくても相続登記や預金の手続きはできます。提出先が少なく、戸籍を返してもらいながら順に回れるなら、戸籍の束で進めるほうが手間が少ないこともあります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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