相談先と専門家の選び方 / 比較

遺産整理業務とは:信託銀行の費用の決まり方と士業に頼む場合の違い

この記事のもくじ
  1. 遺産整理業務とは:銀行が相続人の代理で手続きをまとめるサービス
  2. 費用の決まり方:手数料表で確かめる4つの項目
  3. 登記と相続税申告は提携する士業が担う
  4. 信託銀行と司法書士・税理士に直接頼む場合の比べ方
  5. 勧められたときに判断するための質問リスト

遺産整理業務は、信託銀行などが相続人の代理として、財産の調査・遺産分割協議書の作成の手配・預金の解約や名義変更までをまとめて行うサービスです。 費用は銀行ごとの手数料表で決まり、遺産の額に応じた料率や最低額があるか、登記や相続税申告の報酬が別にかかるかで総額が変わります。登記は司法書士、相続税の申告は税理士の仕事なので、銀行のサービスでもこの部分は提携する資格者が担います。勧められた費用が妥当かは、司法書士・税理士に直接頼んだ場合の見積もりと並べて判断します。

遺産整理業務とは:銀行が相続人の代理で手続きをまとめるサービス

信託銀行などの金融機関は、内閣総理大臣(金融庁)の認可を受けて、信託業とあわせて一定の業務を営めます。その中に「財産に関する遺言の執行」や「財産の整理又は清算」に関する代理事務が挙げられています(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律1条1項4号・7号ロ)。遺産整理業務・遺言信託は、この枠組みで提供されているサービスです。認可を受けた金融機関は、金融庁の「信託兼営金融機関」の一覧で確かめられます。

サービスの範囲は銀行ごとに違いますが、一般に次の流れを代理でまとめます。

  1. 戸籍を集めて相続人を確かめる。
  2. 預金・有価証券・不動産などの財産を調べ、財産目録を作る。
  3. 相続人全員の合意をもとに、遺産分割協議書の作成を手配する。
  4. 預金の解約・払戻し、有価証券の名義変更や売却を行い、相続人に分配する。
  5. 不動産の相続登記や相続税の申告は、提携する司法書士・税理士につなぐ。

司法書士にも、相続人の依頼で預金の解約や分配までを代理する「遺産承継」の業務があり、日本司法書士会連合会の報酬アンケートに設例が載っています。同じような範囲を、銀行に頼むか司法書士に頼むかの違いと考えると比べやすくなります。代行サービス全体の種類は相続手続きの代行サービスで頼める範囲で整理しています。

費用の決まり方:手数料表で確かめる4つの項目

遺産整理業務の手数料は、銀行が定める手数料表で決まります。公的な統計や上限の決まりはないため、勧められたら手数料表の写しをもらい、次の4つを確かめます。

確認表:遺産整理業務の手数料表で見る4項目
項目 確かめること 総額への影響
①基本の手数料の決め方 遺産の額に料率を掛けるのか、固定額か。料率を掛ける対象は遺産全体か、銀行が扱う財産だけか 遺産が大きいほど差が開く
②最低額 遺産が少なくても払う最低の手数料があるか 遺産が小さいほど割高になる
③別にかかる費用 相続登記の司法書士報酬、相続税申告の税理士報酬、登録免許税、戸籍代、不動産の調査費 「手数料」以外の請求が上乗せされる
④途中でやめた場合 解約できる時期と、それまでの作業の精算方法 他の依頼先に切り替えにくい

計算の仕方を見るための例です(筆者の計算。料率・最低額は仮の数字で、どの銀行の料金でもありません)。「遺産の額×1%、最低100万円」という形の手数料表があったとすると、遺産5,000万円なら5,000万円×1%=50万円ですが、最低額の100万円が適用されます。遺産2億円なら2億円×1%=200万円です。同じ形の表でも、遺産が小さい家ほど最低額が効いて割高になりやすいことが分かります。ここに③の登記・申告の報酬が加わります。

登記と相続税申告は提携する士業が担う

銀行のサービスとして申し込んでも、法律で資格者に限られた仕事は、銀行の職員ではなく資格者が行います。

手続き 誰の仕事か 根拠
相続登記の申請の代理・法務局に出す書類の作成 司法書士(と弁護士) 司法書士法3条・73条
相続税の申告書の作成・税額の計算の相談 税理士(と国税局長に通知した弁護士) 税理士法2条・52条
相続人どうしの争いの交渉・調停の代理 弁護士 弁護士法72条

そのため見積もりでは、「登記と申告を担当する事務所の名前」と「その報酬が銀行の手数料に含まれるか、別に請求されるか」を確かめます。提携先の報酬が別なら、同じ事務所に直接頼んだ場合の見積もりも取れます。

信託銀行と司法書士・税理士に直接頼む場合の比べ方

比べるときは、手続きの範囲をそろえ、合計額と手間の両方で見ます。

比べる点 信託銀行の遺産整理業務 司法書士・税理士に直接頼む
窓口 銀行の担当者が一つの窓口になる 手続きごとに事務所とやり取りする(遺産承継業務なら司法書士が窓口になる)
手数料の決まり方 銀行の手数料表(料率・最低額など) 事務所ごとの報酬基準。司法書士は依頼前に報酬の基準を示す(司法書士法施行規則22条)
登記・申告 提携する司法書士・税理士が担当 依頼した資格者が担当
向いている場面 財産の種類が多く、相続人が遠方で窓口を一つにしたい 財産が実家と預金程度で、手続きの数が限られる

司法書士の報酬の公表データとして、日本司法書士会連合会の2024年3月のアンケートがあり、預金の解約・振込まで代理する「遺産承継」の設例の平均額も載っています。条件と金額は相続の司法書士費用(報酬と実費の内訳と見積もりの確かめ方)に置きました。設例の条件つきの数字なので、そのまま自分の家に当てはめず、同じ条件で見積もりを取って並べます。相見積もりの取り方と比べる表は相続の費用の見積もりの取り方にあります。

代行サービスや士業の事務所を候補にする場合も、見積書で「どの手続きを、どの資格者が、いくらで」行うかを確かめる点は同じです。

勧められたときに判断するための質問リスト

銀行の窓口で遺産整理業務を勧められても、その場で申し込む必要はありません。次の質問の答えをもらい、持ち帰って家族で比べます。

  • 手数料表の写しをもらえるか。料率を掛ける財産の範囲はどこまでか。
  • 最低額はいくらか。自分の家の遺産額だと、手数料はいくらになるか。
  • 司法書士・税理士の報酬は手数料に含まれるか。提携先の事務所名は。
  • 完了までの期間と、途中でやめた場合の精算方法。
  • 相続人全員の署名が必要な書類は何か。

亡くなった人が遺言で遺言執行者を銀行に指定している場合は、遺産整理業務ではなく遺言の執行として手続きが進みます。遺言執行者の役割は遺言執行者とはで確かめてください。なお、銀行や役所を名乗って「手続きの手数料」を振り込ませようとする連絡は詐欺の可能性があります。見分け方は相続手続きを名乗る詐欺の手口にまとめています。預金を自分で手続きする流れは預金の相続手続きにあります。

よくある質問

Q. 銀行に預金がある場合、遺産整理業務を頼まないと解約できませんか?

頼まなくても、相続人が銀行所定の相続手続きをすれば解約や名義変更ができます。遺産整理業務は、その手続きを代理でまとめて行うサービスで、使うかどうかは相続人が選びます。手続きの流れは[預金の相続手続きの流れと必要書類](/yokin-souzoku/)で確かめられます。

Q. 遺言信託と遺産整理業務は同じものですか?

別のものです。遺言信託は、生前に遺言の作成や保管、亡くなった後の遺言の執行を銀行に頼む契約です。遺産整理業務は、遺言がない場合などに、相続人が亡くなった後で手続きの代理を頼む契約です。勧められたのがどちらのサービスかを確かめ、その手数料表で見積もりを取ります。

Q. 相続人どうしでもめている場合も頼めますか?

相続人の間で分け方の争いがあると、相続人全員の合意を前提にした手続きは進められません。争いの交渉や調停の代理は弁護士の仕事です(弁護士法72条)。先に[相続で弁護士に頼むべき場面](/souzoku-bengoshi/)で、争いを解決する道を確かめてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続手続きの代行サービスとは:頼める範囲・費用・資格者の確かめ方

相続の費用の見積もりの取り方:相見積もりで比べる項目と依頼文例

相続手続きを名乗る詐欺の手口:還付金・遺産受け取りの電話への対処

遺言執行者とは?指定された人の役割と、いない時の家庭裁判所での選任