相続手続きを名乗る詐欺の手口:還付金・遺産受け取りの電話への対処
この記事のもくじ
相続や還付金の手続きを名乗って「ATMへ行って」「電子マネーを買って番号を教えて」「遺産を受け取るために先に手数料を振り込んで」と言われたら、詐欺を疑って電話を切ってください。 警察庁は、ATMの操作でお金が返ってくることはないと注意を呼びかけています。迷ったら一人で判断せず、消費者ホットライン188か警察相談専用電話 #9110に相談します。お金を渡すよう迫られている、相手が家に来るなど危険が迫っているときは110番です。
まず確かめること:お金・カード・暗証番号を求められたら手を止める
警察庁は、ATMでお金が返ってくることはないこと、法務省や裁判所が未納料金の名目で電子マネーの購入を求めることはないことを示しています。次のどれか一つでも当てはまったら、その場で話を終えて、下の窓口に相談します。
- ATMや携帯電話を持って銀行へ行くよう言われた。
- コンビニで電子マネーカードを買い、カード番号を教えるよう言われた。
- 「今日中」「期限が迫っている」と急がされた。
- 遺産・還付金・未払い年金を受け取る前に、手数料・税金・保証金を払うよう言われた。
- キャッシュカード・通帳・暗証番号を求められた、家に取りに来ると言われた。
- 海外の番号(「+」から始まる番号)や自動音声でかかってきた。
| 状況 | 相談先 | 番号・受付 |
|---|---|---|
| 危険が迫っている、相手が家に来る | 警察 | 110番 |
| 詐欺か分からない、話してしまった(緊急でない) | 警察相談専用電話 | #9110(平日8:30〜17:15が基本。都道府県警察で異なる) |
| 請求や契約の相談、払ってしまった | 消費者ホットライン | 188(近くの消費生活センターにつながる。相談は無料、通話料はかかる) |
ほかの相続の相談窓口は相続の無料相談窓口一覧にまとめています。
よくある手口:還付金・未払い料金・遺産の受け取り手数料
警察庁が整理している特殊詐欺の手口のうち、相続の場面で名前を使われやすいものを並べます。
| 手口 | 相手の言い方の例 | 実際の仕組み | 見分け方 |
|---|---|---|---|
| 還付金詐欺 | 「医療費や保険料の過払いがある」「未払いの年金がある。今日がATMで受け取る期限」 | ATMの操作で、実際は相手の口座に振り込まされる | ATMでお金が返ってくることはない |
| 架空料金請求詐欺 | 「未払いの料金がある。払わないと裁判になる」(SMSや、法務省・裁判所の名前を使ったはがき) | 電子マネーカードを買わせて番号を聞き出す | 法務省や裁判所が未納料金の名目で電子マネーを求めることはない |
| 遺産の受け取りに前払いを求める連絡 | 「遺産を受け取るには、先に手数料(税金)の振込みが必要」 | 存在しない料金を口実に金銭を求める点で、架空料金請求と同じ形 | 相続登記の登録免許税や裁判所の手数料は、自分で申請・申立てをした手続きの中で払うもの。電話やメールで急に求められる前払いは疑い、自分で調べた番号で窓口に確かめる |
| 預貯金詐欺・キャッシュカード詐欺盗 | 「口座が悪用されている。カードの交換が必要」 | カードや通帳をだまし取る、すり替えて盗む | 警察官・銀行協会の職員を名乗ってカードを用意させるのが、この手口の特徴 |
亡くなった直後は手続きが多く、「何か出し忘れがあったかもしれない」という不安が、急がせる電話に乗せられる隙になります。電話を受けたら「こちらから掛け直します」と言って切り、名乗られた機関の番号を、自分で公式サイトや封筒で調べてかけ直します。相手が教えた番号にはかけません。
相続を名目に強引に家の売却を迫る訪問や電話もあります。詐欺とは別の問題として、断り方と相談先を自宅の買取・リースバックの強引な勧誘への対処にまとめています。
本物の通知との見分け方:法務局・年金事務所から届くもの
相続の手続きでは、本物の通知や案内も届きます。「届いたら全部詐欺」と考えると、必要な手続きを逃すことがあります。本物かどうかは、お金の受け渡しの仕方で見分けられます。
- 法務局の「長期間相続登記がされていないことの通知」:所有者不明土地対策として、長い間相続登記がされていない土地の相続人の一人に、登記を検討してもらうために送られます。大阪法務局は、この事業に関連して費用の振込みや金銭の請求は一切しないと案内しています。相続登記の義務そのものは相続登記の義務化で確かめてください。
- 法務局を名乗る電話:大阪法務局は、「+」から始まる海外の番号から自動音声でかかる不審な電話に注意を呼びかけています(2024年12月時点の例)。法務局がこうした番号からかけることはないとしています。
- 未払いの年金:年金は亡くなった月の分まで支払われ、まだ受け取っていない分は遺族が「未支給年金」として請求できます。本物の手続きは、遺族が請求書と戸籍などの書類を年金事務所に出し、指定した口座に振り込まれる形です。電話でATMへ行くよう言われることはありません。手続きは親が亡くなった時の年金の手続きで確かめられます。
- 法務省の名前を使った文書:法務省は「法務省管理局」「民事訴訟通達センター」「法務省認可書」など、実在しない部署・文書の名前を使った架空請求に注意を呼びかけています。
電話を切った後にすること(払ってしまった・話してしまった場合)
払ってしまった、カードを渡してしまった場合は、時間がたつほどお金を取り戻しにくくなります。順番に動きます。
- 銀行・カード会社に連絡する:口座やカードの利用を止める。振り込んだ場合は、振込先の口座の凍結を依頼できるか相談する。
- 警察に相談する:#9110か最寄りの警察署。危険があれば110番。電話の着信履歴は消さずに、スマートフォンや電話機を持参する。
- 消費者ホットライン188に相談する:請求の中身や、今後の対応を一緒に整理してもらえる。
- 記録を残す:かかってきた日時・番号・名乗った名前・言われた内容・払った額と方法をメモにする。
記録の例:「10月20日14時ごろ、03-xxxx-xxxxから着信。『○○市役所の保険年金課の山田』と名乗る。『亡くなった父の医療費の還付金がある、今日が期限、ATMへ』と言われた。駅前のATMで指示どおり操作し、○○円を振り込んだ。」
話しただけでお金を払っていなくても、同じ相手から別の名目でかかってくることがあります。警察庁は、固定電話の番号表示・非通知拒否、国際電話の利用休止、知らない番号の着信拒否を勧めています。
家族を守る備え:一人暮らしの親や、遺された配偶者のために
相続の手続き中は、遺された配偶者が一人で電話を受ける場面が増えます。家族で次のことを決めておくと、急がせる電話への備えになります。
- お金・カード・暗証番号の話が出たら、家族に電話してから動く。
- 役所や銀行からの連絡は、こちらから公式の番号に掛け直す。
- ATMの1日の利用限度額を低くしておく(警察庁の対策例)。
- 相続の手続きを誰が担当しているかを親族で共有し、知らない名目の連絡が来たら担当者に回す。
相続の手続きをどこに相談すればよいか分からないときは、相続の相談先の選び方から目的に合う窓口を探せます。亡くなった人あての督促が届いて不安な場合は、相続した親の借金の督促が届いたらで、払う前に確かめることを整理しています。
本物の手続きを頼める窓口の見分け方は、相続手続きの無料相談窓口一覧と相続手続きの専門家の違いで確かめられます。代行サービスの仕組みと、頼める範囲の確かめ方は相続手続きの代行サービスとはを読んでください。
よくある質問
Q. 法務局から「相続登記がされていない」という手紙が届きました。詐欺ですか?
法務局は、長い間相続登記がされていない土地の相続人に、登記を促すお知らせを送っています。本物のお知らせもあるため、届いただけで詐欺とは言えません。ただし大阪法務局は、この通知に関連して費用の振込みや金銭を求めることは一切ないと案内しています。お金を求められたら、自分で調べた法務局の番号にかけて確かめます。
Q. 亡くなった親あての請求書や督促が届きました。払うべきですか?
払う前に、請求元が実在するか、請求の中身に心当たりがあるかを確かめます。法務省は「法務省管理局」など実在しない機関名を使った架空請求に注意を呼びかけています。一方で、裁判所からの本物の書類を放っておくと不利になることがあるので、裁判所の番号は自分で調べてかけ直します。相続した借金の督促への対応は別の記事で扱っています。
Q. 家族が電話で口座番号や暗証番号を話してしまいました。どうすればいいですか?
すぐに銀行の紛失・盗難の窓口に連絡して口座やカードを止め、警察に相談します(緊急は110番、相談は#9110)。キャッシュカードを渡してしまった場合も同じです。何を話したかをメモにまとめておくと、銀行と警察への説明が早く進みます。
出典・参考にした公的な情報
- 還付金詐欺(警察庁)
- 架空料金請求詐欺(警察庁)
- 特殊詐欺の手口と対策(警察庁)
- 長期間相続登記がされていないことの通知(お知らせ)について(大阪法務局)
- 大阪法務局職員を名乗る不審な電話にご注意ください(2024年12月27日更新)(大阪法務局)
- 法務省の名称等を不正に使用した架空請求に関する注意喚起(法務省)
- 未支給年金の請求(日本年金機構)
- 消費者ホットライン188(消費者庁)
- 犯罪被害者白書 資料9(警察相談専用電話(警察庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。