相続手続きの代行サービスとは:頼める範囲・費用・資格者の確かめ方
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相続手続きの代行サービスとは、戸籍集め・財産の調査・遺産分割協議書の作成・預貯金の解約・相続登記・相続税の申告などを、まとめて、または一部だけ引き受けるサービスです。司法書士事務所・行政書士事務所・税理士事務所や、それらの資格者がそろった事務所のほか、信託銀行や民間の会社も扱っています。ただし、登記の代理は司法書士(と弁護士)、相続税の申告書の作成は税理士、相続人どうしの交渉は弁護士、と誰の名で行うかが法律で決まっている手続きがあります。この記事では、代行を頼める範囲、費用の目安の調べ方、見積書の比べ方を順に示します。
誰が・誰の名で行うか:手続きごとの担い手
代行を検討するとき、最初に見るのは「その手続きを、どの資格者が行うか」です。根拠の条文とあわせて並べます。
| 手続き | 仕事として引き受けられる人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 戸籍の収集・相続人の調査 | 司法書士・行政書士・弁護士など(各資格の業務に必要な範囲) | 司法書士法3条、行政書士法1条の3 |
| 争いのない遺産分割協議書の作成 | 行政書士・司法書士(登記に使う書類として)・弁護士 | 行政書士法1条の3・19条 |
| 相続登記の申請 | 司法書士・弁護士 | 司法書士法3条・73条 |
| 相続税の申告書の作成・申告の代理 | 税理士(と国税局長に通知した弁護士) | 税理士法2条・52条 |
| 相続人どうしの交渉・調停の代理 | 弁護士 | 弁護士法72条 |
| 預貯金の解約・名義変更の手続き | 各金融機関の定める書類で、相続人本人または委任を受けた人。資格者や信託銀行が遺産整理・遺産承継の業務として受ける例もある | 金融機関の案内による |
行政書士法19条は、行政書士でない者が、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、権利義務に関する書類の作成を業として行うことを禁じています。2026年1月1日に施行された改正で「いかなる名目によるかを問わず」の文言が入りました。資格のない会社が「サポート料」などの名目で遺産分割協議書を作る形には注意が要るので、書類を誰の名で作るかを確かめます。
代行を頼める範囲と、自分でやる部分
代行サービスに頼んでも、相続人本人にしかできないことが残ります。依頼前に、自分の役目を把握しておくと、「丸投げしたつもりが進んでいない」というずれを防げます。
| 段階 | 代行に頼めること | 自分でやること |
|---|---|---|
| 相続人の確定 | 戸籍の取り寄せ、相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成 | 委任状への署名、家族関係の聞き取りへの回答 |
| 財産の調査 | 不動産の登記事項証明書・評価証明書の取得、残高証明の請求 | 通帳・郵便物など手がかりの提供 |
| 遺産分割 | 合意した内容を協議書にする | 分け方を相続人で話し合って決める、署名・押印、印鑑証明書の取得 |
| 預貯金 | 解約・払戻しの手続き(委任を受けて) | 必要書類への署名 |
| 不動産 | 相続登記の申請(司法書士) | 登記の内容の確認 |
| 税金 | 相続税の申告(税理士) | 財産の資料の提出、内容の確認 |
自分でやる道も現実的です。法務局の登記手続案内は、自分で登記を申請する人に申請書の作り方などを案内しています(予約制で、書類を代わりに作る窓口ではありません)。法定相続情報証明制度を使えば、戸籍の束の代わりに使える一覧図の写しを無料で交付してもらえます。どこまで自分でできるかは相続手続きを自分でやる方法:ひとりで進められる範囲と専門家の境目で順に確かめられます。
費用の目安の調べ方:報酬と実費を分ける
代行の費用は、専門家の報酬と、誰に頼んでもかかる実費に分けて考えます。
実費の例(筆者の計算を含む):
- 相続登記の登録免許税:不動産の価額の1,000分の4。評価額1,000万円の土地・建物なら、1,000万円×4/1,000=4万円
- 戸籍証明書:政令の標準額で1通450円、除籍の証明書は1通750円(実際の額は市区町村の条例で決まる)
報酬には公的な料金表がありません。目安を知るには、資格者の団体が公表している調査を、条件ごと読むのが確かです。
- 司法書士:日本司法書士会連合会が2024年3月に報酬アンケートを行っています。相続登記と、預金の解約・振込まで代理する遺産承継の設例の平均額は、条件とあわせて相続の司法書士費用に載せています。
- 行政書士:日本行政書士会連合会が令和7年度(2026年1月実施)の報酬額統計を公表しています。協議書の作成などの平均・最頻値は相続の行政書士費用で読めます。
どちらも報酬だけの額で、登録免許税などの実費は別です。設例より不動産や相続人が多ければ額は変わるので、「相場」としてではなく、見積もりを見るときの物差しとして使います。手続き全体の費用の内訳は相続手続きの費用:自分でやる実費と専門家に頼む報酬の内訳で詳しく扱います。信託銀行の遺産整理業務を勧められている人は、遺産整理業務とは:信託銀行の費用の決まり方と士業に頼む場合の違いも見比べてください。
見積書の比べ方:「どの手続を・誰が・いくらで」
代行サービスの見積書は、合計額より先に、手続きごとの行を見ます。
- 手続きの一覧があるか。 戸籍収集、協議書、預貯金の解約(何か所)、相続登記(何筆)、相続税の申告、が行ごとに分かれているか。
- 担当する資格者が書かれているか。 登記は司法書士、申告は税理士の名前や事務所名があるか。提携先に回す場合は、その費用が見積もりに含まれるか別かも確かめます。
- 報酬と実費が分かれているか。 登録免許税・戸籍代・郵送料が報酬と混ざっていないか。
- 追加料金の条件。 不動産や金融機関の数が増えたとき、相続人が遠方・海外にいるときの加算。
- 自分の役目。 署名・押印・印鑑証明書など、本人がやることが書かれているか。
文例(見積もりの依頼):「父の相続手続きの代行を検討しています。相続人は3人、不動産は自宅の土地1筆・建物1棟、預金は2つの銀行です。分け方は合意しています。手続きごとの報酬と実費を分け、登記と申告をどの資格者が担当するかも書いた見積書をいただけますか。」
同じ条件で2〜3か所から見積もりを取ると、手続きごとの差が見えます。相見積もりの取り方は相続の費用の見積もりの取り方:相見積もりで比べる項目と依頼文例にまとめています。
代行より先に別の相談が要る場面
次の場面では、代行サービスより先に、それぞれの専門家への相談が要ります。
- 相続人どうしで分け方がまとまらない。 交渉や調停の代理は弁護士の仕事です。代行サービスは、合意ができた後の手続きを進める役目と考えます。見分け方は相続で弁護士に頼むべきとき:もめている・交渉が要る場面の見分け方で確かめられます。
- 借金が多く、相続放棄を考えている。 相続財産を処分すると、単純承認とみなされて放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)。預貯金を解約して払戻しを受け、使ってしまう場合などが当たりうるので、代行を頼んで手続きを進める前に、放棄の期限と手順を確かめます。
- 相続税がかかるか分からない。 申告が要るかの一次判定は、基礎控除の式で自分でもできます。式の使い方は相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定する方法にあります。
どの専門家にどの順で頼むかを全体で見たいときは、相続手続きの専門家の違い:弁護士・司法書士・税理士・行政書士の頼み分けを参考にしてください。
よくある質問
Q. 相続手続きを全部丸投げすることはできますか?
戸籍集めから預貯金の解約、相続登記、相続税の申告までをまとめて引き受ける事務所はあります。ただ、遺産分割協議書への署名・押印や印鑑証明書の取得など、相続人本人にしかできないことは残ります。どこまでが「おまかせ」で、何を自分でやるのかを、見積もりの段階で一覧にしてもらいます。
Q. 資格のない代行会社に頼んでも問題ありませんか?
相続登記の申請は司法書士(と弁護士)、相続税の申告書の作成は税理士、相続人どうしの交渉は弁護士の仕事と法律で決まっています。資格のない会社が窓口になる場合は、それぞれの手続きをどの資格者がその人の名で行うのかを見積書と契約書で確かめます。
Q. 代行の口コミはどこまで当てにできますか?
口コミは書いた人の手続きの中身や財産の多さが分からないので、費用や期間の比べ方には向きません。比べるなら、自分の財産と相続人の数を伝えて出してもらった見積書どうしを、手続きの項目ごとに並べるほうが確かです。
出典・参考にした公的な情報
- 司法書士法 第3条・第73条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 行政書士法 第1条の3・第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 税理士法 第2条・第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士の報酬(報酬アンケート 2024年3月実施)(日本司法書士会連合会)
- 登記手続案内(法務省)
- 法定相続情報証明制度(法務局)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。