準確定申告の書き方:付表の記載例と年金だけの人の申告書
準確定申告の書き方は、ふつうの確定申告書とほぼ同じです。違うのは、申告書の標題に「準確定」と書き足すこと、氏名の頭に「被相続人」と書くこと、そして相続人が2人以上なら**「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」(付表)**を付けて、税金や還付金を相続人ごとに割り振ることの3点です。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは作れないので、紙に手書きするか、e-Taxソフトなどで作ります。この記事では、国税庁の付表の書き方に沿って欄ごとの記載例を示し、年金だけを受け取っていた人の申告書を筆者の例で書いてみます。
準確定申告の書き方:ふつうの確定申告書との3つの違い
準確定申告そのもの(誰が、いつまでに出すか)の説明は準確定申告とは?4か月の期限・必要な人・やり方にまとめています。ここでは「書き方」に絞ります。
| 書く場所 | 書き方(国税庁の付表の書き方から) |
|---|---|
| 申告書の標題 | 「令和□□年分の所得税及び復興特別所得税の 申告書」の余白に「準確定」と書く |
| 住所・氏名欄 | 亡くなった人の住所・氏名を書き、氏名の頭に「被相続人」と書く |
| 相続人が1人で付表を省く場合 | 住所・氏名欄を2段にし、上段に亡くなった人(氏名の上に死亡年月日)、下段に相続人(氏名の頭に「相続人」と書いて署名) |
| 個人番号 | 全ての相続人等の個人番号を書き、本人確認書類を提示か写しを添付。亡くなった人の個人番号は書かなくてよい |
| 所得・控除の欄 | 1月1日から死亡日までの所得と、死亡日までに支払った保険料・医療費などだけを書く |
所得控除の数え方にも決まりがあります。医療費控除・社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除は、死亡日までに亡くなった人が支払った分だけが対象です。配偶者控除や扶養控除は死亡日の現況で判定し、月割りはしません。
もう1つ、2026年に亡くなった人の申告で気をつける点があります。国税庁のタックスアンサー(コード1199)によると、令和8年分(2026年分)の基礎控除の引上げは2026年12月1日に施行されます。2026年11月30日以前に令和8年分の準確定申告書を出す場合は、改正前の基礎控除の金額で計算し、12月1日以後に更正の請求をすれば改正後の金額を当てはめられるとされています。申告書の基礎控除欄に書く額は、出す日で変わるということです。
年金だけの人の申告書:筆者の記載例
公的年金を受け取っていた人の例で、申告書のどこに何を書くかを示します。数字は仕組みを示すための筆者の例です。
筆者の例:(被相続人)相続 太郎、78歳、2026年5月20日死亡。2026年中に受け取った公的年金は200万円(源泉徴収票の支払金額)。源泉徴収税額は、仕組みを示すための仮の数字で12,345円とする。ほかの所得なし。相続人は妻と長男・長女の3人。
- 申告が要るか、還付の申告かを見分ける:所得税法121条3項は、公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら確定申告書を出さなくてよいと定めています。準確定申告の義務(125条1項)は、確定申告書を出さなければならない場合にかかる仕組みなので、この例は「出す義務はないが、還付を受けるために出せる」側(125条2項)です。年金のほかに家賃収入などが20万円を超えていれば、出す義務がある側になります。
- 年金の雑所得を計算する:国税庁のタックスアンサー(コード1600)は、公的年金等に係る雑所得を「収入金額から公的年金等控除額を引いて」求めると案内しています。控除額は年齢と収入で変わる速算表で決まり、速算表は同ページの図で確かめられます。この例(年金収入200万円)は、65歳以上で収入330万円未満の区分に当たります。この区分の控除額は最低保障額の110万円なので、年金の雑所得は200万円−110万円=90万円です(令和8年4月1日現在の国税庁コード1600の速算表)。自分の家の人の年齢と収入が別の区分になるときは、速算表で控除額を確かめてから書いてください。収入金額等の「公的年金等」欄に2,000,000、所得金額等の欄に900,000と書きます。
- 所得控除を書く:死亡日までに引き落とされた介護保険料などの社会保険料、死亡日までに支払った医療費を書きます。基礎控除も引きます(前の節のとおり、出す日で額が変わります)。この例は所得が90万円以下で、基礎控除などを引くと課税所得はなくなる計算です。医療費の扱いは次の記事で詳しく扱います。
- 源泉徴収税額を書く:年金の源泉徴収票の源泉徴収税額を「源泉徴収税額」欄に写します。課税所得がなく税額は0円となるので、源泉徴収された12,345円がそのまま還付される税金として計算されます。
- 第3期分の税額欄:「還付される税金」の行に額を書きます。この第3期分の税額を、付表の「2」欄に転記します(付表の書き方では、納める税金なら黒字、還付なら赤字の欄として扱います)。
なお、亡くなった後に遺族が受け取る未支給年金は、国税庁のタックスアンサー(コード1605)で遺族自身の一時所得の収入とされています。亡くなった人の準確定申告には入れません。
付表の書き方:欄ごとの記載例
付表は、相続人が2人以上のとき、誰がいくら納める(受け取る)かを示す書類です。国税庁の書き方に沿って、上の例(還付される税金を12,345円とします)で書くと次のようになります。
| 付表の欄 | 書くこと | 筆者の例 |
|---|---|---|
| 標題の「_年分」 | 確定申告書と同じ年分 | 令和8年分 |
| 1 死亡した者の住所・氏名等 | 確定申告書の住所欄に書いた住所 | 亡くなった人の住所、死亡年月日 |
| 2 死亡した者の納める税金又は還付される税金 | 確定申告書の第3期分の税額を転記 | 還付される税金12,345円 |
| 3 相続人等の代表者の指定 | 税務署からの書類を代表して受け取る人。なるべく指定する | 妻 |
| 5 相続人等に関する事項 | 一緒に申告するかに関係なく、相続を放棄した人を除く全員の住所・氏名(署名)・個人番号・続柄 | 妻・長男・長女 |
| 5 相続分 | 法定相続分なら「法定」、遺言で決めた相続分なら「指定」を○で囲み、割合を書く | 妻1/2、長男1/4、長女1/4 |
| 5 相続財産の価額 | 各人が取得する積極財産の相続時の時価。未分割なら総額に相続分を掛けた額 | 各人の額 |
| 6 各人の還付金額 | 還付される税金を相続分で分ける(1円未満切捨て) | 妻6,172円、長男3,086円、長女3,086円 |
| 7 還付される税金の受取場所 | 各人の受取口座(本人名義) | 各人の口座 |
納める税金がある場合は、「各人の納付税額」欄に、税額に各人の相続分を掛けた額を100円未満切捨てで書きます。例えば納める税金が45,600円なら、妻22,800円、長男11,400円、長女11,400円です(筆者の計算)。
一緒に申告できない相続人がいるときの書き方の例:その人の住所欄の頭に「申告せず」と書き、氏名を○で囲みます。その人は別に確定申告書と付表を出すことになるので、申告の内容を連絡します。
還付金を代表者がまとめて受け取る場合は、付表とは別に「委任状(準確定申告書用)」を出します。還付金を誰が受け取るかは準確定申告の医療費控除と還付金の受け取り方でも触れています。
e-Taxで出すとき・紙で出すときの違い
国税庁の「準確定申告のe-Tax対応について」によると、e-Taxで出せるのは2020年分(令和2年分)以後の準確定申告書です。紙とe-Taxでは、付けるものが少し違います。
| 項目 | 紙で出す | e-Taxで出す |
|---|---|---|
| 作る道具 | 申告書の様式に手書き | e-Taxソフトなど(作成コーナーは不可) |
| 付表 | 相続人が1人なら省略可 | 相続人が1人でも付表のデータを送る |
| 相続人の確認 | 付表に各人が署名 | 相続人が2人以上なら、各人が署名した「準確定申告の確認書」をPDFにして送る |
| 還付金の代表受取 | 委任状を添付 | 署名した委任状をPDFにして送る |
| 使うIDと電子証明書 | なし | 相続人代表のID(利用者識別番号)と電子証明書(1名分) |
| 氏名欄 | 「被相続人」と書く | 「(被相続人)国税 太郎」または「(被相続人)国税 太郎 (相続人)国税 花子」の形で全角30文字以内(国税庁の記載例) |
提出先は、亡くなった人の死亡当時の納税地を所轄する税務署です。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内で、付表の書き方には「死亡した日が6月20日なら10月20日まで」という例が載っています。
書き終えたら確かめること
- 標題に「準確定」、氏名の頭に「被相続人」と書いた
- 所得は1月1日から死亡日まで、控除は死亡日までに支払った分だけにした
- 亡くなった後の未支給年金を入れていない
- 2026年分は、出す日(11月30日以前か12月1日以後か)に合った基礎控除の額にした
- 付表の相続分の合計が1になり、相続を放棄した人を入れていない
- 全ての相続人等の個人番号と本人確認書類をそろえた
- 還付金を代表者が受け取るなら委任状を付けた
そろえる書類(源泉徴収票、医療費の領収書など)は準確定申告の必要書類と集め方で確かめられます。所得の種類が多い、相続人が多くて付表をまとめにくい、という場合の頼み先は準確定申告は誰に頼むかの比べ方を参考にしてください。
「準確定申告 書き方」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 準確定申告書は確定申告書等作成コーナーで作れますか?
作れません。国税庁は、作成コーナーでは準確定申告書を作成できないと案内しています。紙の確定申告書に手書きで記入するか、e-Taxソフトなど作成コーナー以外のソフトで作ってe-Taxで送ります。
Q. 相続人が1人だけでも付表は要りますか?
紙で出す場合、付表の書き方では、相続人が1人のときは付表を省略して差し支えないとされています。その代わり申告書の住所・氏名欄を2段にし、下段に相続人の住所と氏名を書きます。e-Taxで出す場合は、相続人が1人でも付表のデータを送る必要があります。
Q. 亡くなった月の年金は準確定申告に入れますか?
亡くなった人が生前に受け取った年金は、源泉徴収票に載る分を準確定申告に入れます。亡くなった後に遺族が受け取る未支給年金は、国税庁の案内では遺族自身の一時所得の収入になり、準確定申告には入れません。
出典・参考にした公的な情報
- No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)(国税庁)
- 死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表 書き方(国税庁)
- 確定申告書等・申告書付表等の記載要領・一覧(国税庁)
- 所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について(国税庁)
- No.1600 公的年金等の課税関係(国税庁)
- No.1605 遺族の方に支給される公的年金等(国税庁)
- No.1199 基礎控除(国税庁)
- 令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A(令和8年5月)(国税庁)
- 所得税法 第121条・第125条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。