相続税と申告 / 基本ガイド

相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像

この記事のもくじ
  1. 相続税とは:誰の・どんな財産にかかるか
  2. かかる人の目安:基礎控除を超えるかで一次判定
  3. 計算の流れ:課税価格から納める税額まで4段階
  4. 税額を減らす控除・特例と、増える場合
  5. 申告と納付:10か月の期限までの段取り
  6. これから変わること・相談先

相続税とは、亡くなった人(被相続人)から相続や遺贈で財産を受け取った人にかかる国の税金です。かかるのは、財産から債務と葬式費用を引いた正味の遺産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える家だけで、国税庁の統計では2024年(令和6年)に亡くなった人の10.4%でした。かかる場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納税をします。この記事は相続税の入口として、かかるかどうかの目安、税額が出るまでの計算の流れ、税額を減らす控除と特例、申告までの段取りを順に示し、詳しい記事へ案内します。

相続税とは:誰の・どんな財産にかかるか

相続税を納めるのは、亡くなった人ではなく財産を受け取った人です。相続人だけでなく、遺言で財産を受け取った人(受遺者)や、相続時精算課税で生前に贈与を受けた人も含まれます。

課税の対象になる財産は、名義や形を問わず「亡くなった人の財産と、それに近いもの」です。

区分 主なもの 扱い
本来の相続財産 預貯金、現金、土地・建物、株式・投資信託、車、貸付金 課税
みなし相続財産 亡くなった人が保険料を負担した生命保険金、死亡退職金 500万円×法定相続人の数を超える部分に課税
生前の贈与 相続開始前3年以内の暦年贈与(相続開始が2026年12月31日までの場合)、相続時精算課税の贈与 相続財産に足し戻す
非課税財産 墓地・墓石・仏壇・仏具、申告期限までに国などへ寄附した財産 課税しない
差し引くもの 借入金などの債務、通夜・火葬・読経料などの葬式費用 引く

家族名義の預金でも、亡くなった人のお金でつくり、実質的に亡くなった人のものと判断されれば相続財産に入ります。財産の漏れが申告の誤りにつながりやすいので、最初に財産を一覧にするところから始めます。

かかる人の目安:基礎控除を超えるかで一次判定

相続税がかかるかは、正味の遺産額と基礎控除を比べる一次判定でおおよそ分かります。基礎控除は相続人の人数で決まり、3人なら4,800万円です(筆者の計算)。

法定相続人の数 1人 2人 3人 4人
基礎控除 3,600万円 4,200万円 4,800万円 5,400万円

人数は民法の相続人をもとにしますが、相続放棄した人も数え、養子は実子がいれば1人、いなければ2人までに絞ります。数え方の決まりは相続税の基礎控除で一次判定する方法が基準のページで、家族の形ごとの人数と金額は基礎控除の早見表(相続人2人・3人・4人)にまとめています。

国税庁の「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、亡くなった人1,605,378人のうち、税額のある申告書が出たのは166,730人です。自分の家がどちらに入るかは、財産を種類ごとに見積もれば分かります。手順は相続税の申告はいくらから必要か、家や土地がある場合は不動産がある家の相続税の見積もり方を使ってください。内側に収まった家が気をつける点は基礎控除を超えない場合は申告不要かで扱います。

計算の流れ:課税価格から納める税額まで4段階

相続税の計算で一番の特徴は、各人の取得額にそのまま税率を掛けないことです。いったん「法定相続分どおりに分けた」と仮定して家全体の税額(相続税の総額)を出し、それを実際の取得割合で割り振ります。

図解:相続税の計算の4段階
  1. 各人の課税価格:取得した財産+みなし相続財産+精算課税の贈与−非課税財産−債務・葬式費用+加算対象期間内の贈与
  2. 相続税の総額:課税価格の合計−基礎控除=課税遺産総額。これを法定相続分で分けたと仮定し、各人分に税率を掛けて合計
  3. 各人の税額:相続税の総額×(各人の課税価格÷課税価格の合計)
  4. 各人の納付税額:2割加算をしてから、配偶者の軽減・未成年者控除などの税額控除を引く

税率は、法定相続分で分けたと仮定した各人の取得金額に応じて10%〜55%の8段階です。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% —
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

計算例(筆者の計算):課税価格の合計8,000万円、相続人は配偶者と子2人、特例は使わない前提です。

  1. 基礎控除は4,800万円、課税遺産総額は8,000万円−4,800万円=3,200万円
  2. 法定相続分で分けたと仮定:配偶者2分の1=1,600万円、子は4分の1ずつ=800万円
  3. 税率を掛ける:配偶者1,600万円×15%−50万円=190万円、子800万円×10%=80万円ずつ
  4. 相続税の総額=190万円+80万円+80万円=350万円
  5. 法定相続分どおりに取得した場合、配偶者の分175万円は配偶者の税額の軽減でゼロになり、子が87.5万円ずつ、家全体で175万円を納める

検算:1,600万円は1,000万円超3,000万円以下の区分で15%・控除50万円、800万円は1,000万円以下で10%。175万円+87.5万円×2=350万円。

5段階の計算を自分で追う方法は相続税の計算方法(5ステップ)、税率区分の使い方は相続税の税率表、遺産額と家族構成ごとの目安は相続税の早見表にあります。

税額を減らす控除・特例と、増える場合

基礎控除を超えても、次の控除や特例で税額が大きく下がる家は少なくありません。多くは申告書を出して使うことが条件です。

名前 中身 詳しい記事
配偶者の税額の軽減 配偶者が取得した正味の遺産額が1億6千万円か法定相続分相当額の多い方までは、配偶者に相続税がかからない 相続税の配偶者控除
小規模宅地等の特例 亡くなった人の自宅の土地は330㎡まで評価額を80%減らせる(取得する人の条件あり) 小規模宅地等の特例をわかりやすく
生命保険金・死亡退職金の非課税 それぞれ500万円×法定相続人の数まで非課税 生命保険の相続税の非課税枠
未成年者控除 18歳未満の法定相続人は、18歳になるまでの年数×10万円 相続税の控除一覧
障害者控除 85歳未満の障害者である法定相続人は、85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者は20万円) 相続税の控除一覧
債務・葬式費用の控除 借入金や葬式費用を遺産から引く(香典返し・法要の費用は引けない) 相続税の債務控除

反対に、税額が増える場合もあります。配偶者・父母・子以外の人(兄弟姉妹、甥・姪、孫養子など)が財産を取得すると、その人の税額に2割が加算されます。子が先に亡くなっていて代わりに相続する孫は加算されません。仕組みは相続税の2割加算とはで扱っています。

配偶者の軽減を最大まで使うと、配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)で子の税額が増えることがあります。一次と二次を通して考える順番は二次相続とはにまとめました。

申告と納付:10か月の期限までの段取り

相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。提出先は亡くなった人の住所地を所轄する税務署で、相続人が複数なら共同で1通出すこともできます。10か月の間には、ほかの期限も重なります。

時期の目安 やること 関係する記事
〜3か月 遺言書の有無と相続人の確認、財産と借金の調査、相続放棄するかの判断 相続の期限一覧
〜4か月 亡くなった人の所得税の準確定申告(所得があった場合) 準確定申告とは
〜6か月 財産の評価、一次判定、税理士に頼むかの決定 相続する不動産の評価方法
〜9か月 遺産分割協議(特例を使うには原則として期限までの分割が要る)、申告書の作成 相続税の申告の流れ
10か月 申告書の提出と納付(期限の日が土日祝日なら翌日) 相続税の納め方

財産ごとの評価は、土地は相続する土地の評価額の調べ方、株は相続した株の評価額、預金は預金の相続と相続税、現金はタンス預金の相続税、マンションはマンションの相続税評価額、家屋は相続税での家屋の評価額で確かめられます。

納付は金融機関や税務署の窓口での現金のほか、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード(手数料がかかる)で行えます。一度に払えないときは、要件を満たせば分割で払う延納や、財産で納める物納を申告期限までに申請します。選択肢の比べ方は相続税が払えない場合の選択肢で整理しています。

期限までに遺産分割がまとまらなくても、期限は延びません。いったん法定相続分などで分けたものとして申告し、分割後に直す流れになります(遺産分割がまとまらない時の相続税の申告)。期限を過ぎた場合の加算税と延滞税は相続税の申告をしないとどうなるかを見てください。

これから変わること・相談先

2026年10月時点で、相続税の計算に関わる見直しが2つ予定されています。

  • 生前贈与の加算期間の延長:2027年1月以後の相続から、足し戻す贈与の期間が3年より長くなり始め、2031年(令和13年)1月以後の相続では7年になります。延長された期間の贈与は、合計から100万円を引いて加算します。相続開始日ごとの期間は生前贈与の加算期間の早見表にあります。
  • 貸付用不動産の評価の見直し:財務省の令和8年度税制改正の大綱では、2027年1月1日以後の相続で、亡くなる前5年以内に取得・新築した貸付用不動産を通常の取引価額で評価する方向が示されています。国税庁の通達の改正を確かめてから適用されます。

改正の全体は相続税の改正の最新で、施行済みのものと予定のものに分けて整理しています。

相談先は、知りたいことで分かれます。制度の一般的な仕組みや申告書の書き方は、税務署の電話相談センターや面接相談(予約制)で聞けます(相続税の相談は税務署でできるか(電話相談センターと面接相談))。自分の家の財産の評価、どの特例をどう使うか、申告書の作成は税理士の仕事です。頼むかどうかの分かれ目は相続で税理士は必要かで確かめられます。

一次判定で基礎控除を超えた家が税理士を探す方法の一つに、紹介サービスがあります。登録の確かめ方は税理士紹介サービスを使う前に確かめる4つの点に載せています。財産の一覧と一次判定のメモを持って面談すると、費用の見積もりも具体的になります。

よくある質問

Q. 相続税は誰が払うのですか?

亡くなった人から相続や遺贈(遺言による贈与)で財産を取得した人が、それぞれ自分の取得分に応じて払います。相続人全員で一つの総額を出し、各人が取得した割合で割り振る仕組みなので、財産を何も受け取らなかった相続人には原則として納める税額は生じません。

Q. 相続税と贈与税はどう違いますか?

相続税は亡くなった人から相続などで受け取った財産に、贈与税は生きている人から贈与で受け取った財産にかかります。ただし、亡くなる前の一定期間に受けた贈与や、相続時精算課税を選んで受けた贈与は、相続税の計算に足し戻されます。贈与税の仕組みは贈与税の記事で扱います。

Q. 相続税の申告書は相続人がそれぞれ出すのですか?

財産を取得した人ごとに申告の義務がありますが、相続人が複数いる場合は共同で1通の申告書を出すこともできます。共同で出す場合でも、各人の取得額と税額は申告書の中で分けて計算します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定する方法

相続税の計算方法:課税価格から納める税額までの5ステップ

相続税の申告の流れ:10か月の期限までにやることのスケジュール

相続で税理士は必要か:相続税がかかる人・かからない人の分かれ目