不動産売却の税金と特例 / Q&A

換価分割の税金:代表相続人が売って分ける時に贈与税にしない書き方

この記事のもくじ
  1. 換価分割で税金が問題になる場面
  2. 贈与税にならない考え方
  3. 譲渡所得は各相続人が割合に応じて申告する
  4. 協議書の条項の例
  5. 計算例:割合が法定相続分と違う場合(筆者の計算)
  6. 各相続人が使える特例

換価分割で代表相続人の名義で家を売り、代金を分ける場合、売る前に協議書へ「換価して、この割合で分ける」と書いておくことが、贈与税の心配を避け、各相続人が譲渡所得を申告する割合を定める支点になります。ここでは、贈与税にならない考え方、申告する割合の決まり方、協議書の書き方、計算例を順に示します。進め方の全体は相続不動産の換価分割の進め方:家を売って分ける時の登記と税金にあります。

換価分割で税金が問題になる場面

換価分割は、遺産の不動産を売ってお金に換え、そのお金を相続人で分ける遺産分割の方法です。相続人が複数いて誰も家を引き継がない場合に使われます。税金の問題が出るのは、次の2点です。

  • 贈与税: 代表者の名義で売って、代金を兄弟に渡すと、代表者から兄弟への贈与に見えないか。
  • 譲渡所得税: 売った利益の申告を、代表者が全部するのか、各相続人がそれぞれするのか。

どちらも、売る前に取得割合を決めたかが分かれ目です。

贈与税にならない考え方

贈与税がかかるのは、個人から贈与により財産を取得したときです(国税庁 No.4402)。遺産分割で取得した財産は、相続による取得なので、贈与税の対象ではありません。民法909条は、遺産の分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じると定めています。

そのため、換価分割では、次の流れを書面で見えるようにします。

  1. 相続人全員で、不動産を換価して代金を分ける遺産分割をすると決める。
  2. 売主を代表者にする理由(手続きの便宜)と、代金を分ける割合を書く。
  3. 売った後に、書いたとおりの割合で分ける。

この流れを協議書で裏づければ、分ける代金は遺産分割で決まった各人の取り分だと説明できます。協議書がなく、代表者が自分の判断で兄弟に金額を配った形だと、贈与と見られないかが問題になります。最終的な判断は、税務署か税理士に確かめます。

譲渡所得は各相続人が割合に応じて申告する

国税庁の質疑応答事例(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)は、遺産の土地を換価した場合の譲渡所得の申告を、次のように分けています。

早見表:換価の時の状況と譲渡所得の申告の割合
換価の時の状況 譲渡所得の申告の割合
換価時までに、代金の取得割合を決めていた その取得割合に応じて、各相続人が申告
取得割合を決めておらず、後日に分ける 換価時の所有割合である法定相続分に応じて申告
後日に分けるが、申告期限までに代金が分けられ、全員がその割合で申告した その申告が認められる
法定相続分で申告した後に分け方が決まった 更正の請求はできない

この表の読み方のポイントは、売る前に割合を決めておくことです。決めていれば、各相続人がその割合で売ったものとして扱われ、申告も同じ割合です。決めなければ、法定相続分で申告し、その後に分け方が決まっても申告の割合は直せません。

質疑応答事例は、未分割の遺産を換価した場合を扱っています。代表者名義で相続登記をして売る場合に同じ扱いになるかは、協議書の文面と一緒に国税相談専用ダイヤルか税務署で確かめてから売り出すと安全です。窓口の使い方は譲渡所得税の相談窓口:税務署の電話相談と確定申告会場の使い方にあります。

協議書の条項の例

協議書には、換価の目的、売主、割合、費用の精算、分配の時期を書きます。協議書の作成は、司法書士・弁護士・行政書士の仕事で、下の条項例は考え方を示すものです。そのまま写して使わず、実際の書面は専門家に確かめてもらってください。

条項の例:「相続人〇〇は、下記の不動産を、売却して代金を相続人間で分けるために取得する。〇〇は、売却代金から売却に要した費用を差し引いた残額を、〇〇が2分の1、△△が4分の1、□□が4分の1の割合で、売却代金の受領後1か月以内に各相続人の指定する口座へ振り込む。この売却代金の取得割合に応じて、各相続人は売却による譲渡所得を申告する」

条項の最後の一文のように、申告の割合も書いておくと、協議書と申告書がそろいます。協議書の作り方の一般的な流れは遺産分割協議書の書き方でも確かめられます。

計算例:割合が法定相続分と違う場合(筆者の計算)

子3人の兄・弟・妹が相続した実家を、3,000万円で売った場合です。協議書で、兄2分の1、弟4分の1、妹4分の1と定めました。売却費用(仲介手数料など)は合計120万円、取得費は購入資料がなく、売却額の5%とします。

兄(1/2) 弟(1/4) 妹(1/4)
譲渡代金 1,500万円 750万円 750万円
取得費(5%) 75万円 37.5万円 37.5万円
譲渡費用 60万円 30万円 30万円
譲渡所得 1,365万円 682.5万円 682.5万円
実際に受け取る額(代金−費用) 1,440万円 720万円 720万円

検算:譲渡所得の合計は1,365+682.5+682.5=2,730万円。全体の計算(3,000万円−150万円−120万円=2,730万円)と一致します。受け取る額の合計は1,440+720+720=2,880万円で、売却額から費用を引いた額と一致します。

取得割合が法定相続分(各3分の1)と違っても、売る前に協議書で決めていれば、この割合で申告するのが質疑応答事例の考え方です。取得費は、相続した不動産では亡くなった人の取得時のものを引き継ぎます(No.3270)。

各相続人が使える特例

譲渡所得には、相続人ごとに次の特例を検討します。

  • 相続した空き家の3,000万円特別控除(No.3306)。 家屋と敷地を取得した相続人が3人以上なら、1人あたりの上限は2,000万円です。国土交通省は、相続登記が未了または換価分割を行っている場合、相続人の数の確認に遺産分割協議書等が必要としています。売却代金1億円以下の判定は、他の相続人の売却分と合算します。
  • 取得費加算の特例(No.3267)。 相続税が課された人が、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売った場合に、相続税の一部を取得費に加算できます。空き家の特例とはどちらか一方です。

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(No.4205)。売却が間に合わなくても、相続税の申告は期限内に行います。譲渡所得の申告は、売った年の翌年2月16日から3月15日までに各相続人が行います。親の取得費と取得日の引継ぎは相続不動産の売却益の税金:親の取得費と取得日を引き継ぐしくみで説明します。

よくある質問

Q. 代表者が代金を全部受け取って、あとで兄弟に分けたら贈与税がかかりますか?

贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です(国税庁 No.4402)。売る前の協議書で、換価して代金を決めた割合で分けると定めてあれば、分ける代金は遺産分割で決めた取り分と整理できます。協議書がなく、代表者が自分の判断で配った形だと、贈与に当たるかが問題になりかねません。個別の判断は税務署か税理士に確かめます。

Q. 協議書で決めた割合が法定相続分と違っていてもよいですか?

遺産分割は、相続人の協議で割合を自由に決められます(民法907条)。国税庁の質疑応答事例は、売る時までに代金の取得割合を定めていれば、その割合を所有割合として各相続人が申告するとしています。法定相続分と違う割合にするなら、売る前に書面にしておくことが大切です。

Q. 売ったあとで分け方を決めると、申告はどうなりますか?

国税庁の質疑応答事例では、換価の時に取得割合が決まっていなければ、法定相続分に応じて申告します。申告期限までに代金が分けられ、全員がその割合で申告したときは認められます。法定相続分で申告した後に分け方が決まっても、更正の請求はできないと説明されています。

Q. 相続税の申告も、売ったあとにまとめてできますか?

相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内で、家が売れたかどうかで延びません。売却を待たず、期限内に申告と納付を済ませる前提で進めます。売却の時期によっては、取得費加算の特例や空き家の3,000万円控除の期限が関わるので、順番を税理士に確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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