不動産売却の税金と特例 / Q&A

共有名義の不動産を売却した時の税金:持分ごとの申告と特例

この記事のもくじ
  1. 共有名義の売却は持分ごとに申告する
  2. 兄弟2人の計算例(筆者の計算)
  3. 3,000万円控除は共有者ごとの要件で判定する
  4. 代表者が代金を受け取る場合は、割合の決め方が分かれ目
  5. 自分の持分だけ売る場合と、共有者と連絡が取れない場合
  6. 申告前に確かめること

共有名義の不動産を売ったときの税金は、売却代金と取得費、譲渡費用を持分に応じて分けて、共有者それぞれが自分の分を確定申告するのが基本です。3,000万円控除などの特例は、共有者全員で1回ではなく、共有者ごとに要件を見て使います。兄弟で相続した家を売る場合を例に、分け方と注意点を順に示します。

共有名義の売却は持分ごとに申告する

国税庁の「譲渡所得の申告のしかた」には、共同で所有していた宅地を共有者とともに売った事例があります。共有持分は2分の1で、売買代金も費用も各人の持分(2分の1)に応じて受け取り、支払っています。この事例では、譲渡所得の内訳書に、自分の持分と他の共有者の住所・氏名・持分を書き、譲渡代金は全体の額と持分に応じた額を二段書きにします。

つまり、売買契約書の売主が共有者全員でも、申告書の上では次の流れになります。

早見表:共有者それぞれが申告書に書くこと
項目 共有者それぞれが書くこと
譲渡代金 全体の額と、自分の持分に応じた額
取得費 自分の持分に応じた額
譲渡費用 自分が持分に応じて負担した額
共有者の欄 他の共有者の住所・氏名・持分
申告書 自分の名前で、売った年の翌年に提出

国税庁の確定申告書等作成コーナーには、共有者がいる場合の入力のしかたの案内もあります。申告期間は、原則として売った年の翌年2月16日から3月15日です。

兄弟2人の計算例(筆者の計算)

兄と弟が相続した実家(土地と建物、持分は2分の1ずつ)を、4,000万円で売った場合を例にします。仲介手数料などの譲渡費用は合計150万円で、2人が持分どおり負担し、購入時の資料がなく取得費は売却額の5%(国税庁 No.3258)とします。

兄 弟
譲渡代金(持分に応じた額) 2,000万円 2,000万円
取得費(受け取った売却額の5%) 100万円 100万円
譲渡費用(持分に応じた額) 75万円 75万円
譲渡所得 1,825万円 1,825万円

検算:2,000万円−100万円−75万円=1,825万円。2人の合計は3,650万円で、全体の計算(4,000万円−200万円−150万円=3,650万円)と一致します。

この所得に特例を使わない場合の税率は、長期譲渡所得なら所得税15%、復興特別所得税(所得税額の2.1%)、住民税5%で、合計約20.315%です。1,825万円×20.315%は約370万円で、これが共有者それぞれにかかります。実際の税額は特例や所有期間で変わるため、計算例は考え方の確認用です。

3,000万円控除は共有者ごとの要件で判定する

3,000万円の特別控除には、マイホームの特例と、相続した空き家の特例があります。どちらも売る人ごとに要件を見ます。

特例 共有者の見方
マイホームの3,000万円特別控除(No.3302) 売る人が現に住んでいる家屋、または住まなくなって3年を過ぎた年末までに売る家屋が対象。住んでいなかった共有者は対象外になり得る
相続した空き家の3,000万円特別控除(No.3306) 相続人それぞれが要件を満たして控除を受ける。家屋と敷地を取得した相続人が3人以上なら、1人あたり上限2,000万円。売却代金1億円以下かの判定は、他の相続人の売却分と合算

先の計算例で、仮に兄がその家に住んでいて居住用の要件を満たしていたとします。控除は譲渡所得が限度なので、兄の1,825万円は全額が3,000万円の範囲に入ります。一方、住んでいなかった弟は居住用の特例の対象に当たらない場合があります。兄弟のどちらが何の特例を使えるかは要件ごとの判断になり、記事で結論は出せません。相続した空き家の特例の共有者の扱いは、空き家の3000万円控除を共有名義で使う:相続人ごとの控除額で詳しく扱っています。

国税庁の手引きは、3,000万円控除と買換え特例のどちらを選ぶかで合計所得金額が変わり、売った人を扶養に入れている家族の控除に影響することがあると注意しています。共有者ごとに選択が違ってよいので、兄弟で事前に話しておくとあとで困りません。

代表者が代金を受け取る場合は、割合の決め方が分かれ目

共有名義の売却では、手続きの都合で兄が代表として代金を受け取り、あとで弟に渡す形が多くあります。このとき問題になるのは、税務上の持分と、実際に取得する割合のずれです。

国税庁の質疑応答事例は、遺産分割がまとまる前に相続人が相続した土地を売った(換価した)場合の事例で、相続以外の理由で共有になった不動産には、そのまま当てはまりません。この事例は、換価の時までに代金の取得割合を決めていれば、その割合に応じて各相続人が譲渡所得を申告するとしています。決めていなければ、法定相続分に応じた申告になります。申告期限までに代金が分けられ、全員がその割合で申告した場合は認められる、とも説明しています。

売る前に、誰がいくらずつ受け取るかを書面にしておくのが、申告のずれを避ける準備です。協議書の書き方と、贈与税にならない考え方は換価分割の税金:代表相続人が売って分ける時に贈与税にしない書き方で整理します。売却の手続きそのものは共有名義の不動産の売却:全員の同意が要る場面と持分だけ売る方法を読んでください。

自分の持分だけ売る場合と、共有者と連絡が取れない場合

共有者の同意が取れないときでも、自分の持分だけを売ることは、所有者が自由に処分できるという民法206条の原則からできます。この場合の譲渡所得は、売った持分だけで計算します。売った金額は自分の持分の代金、取得費も自分の持分に対応する分、仲介手数料などの譲渡費用は自分が負担した分です。他の共有者の持分の税金は、その人の申告になります。ただし、持分だけを買う人は限られ、売れる価格が全体を売るときの持分割合より低くなることがあるため、税額の試算は実際の代金で行います。

共有者に連絡が取れないときは、民法262条の3が、裁判所の決定を使う道を用意しています。他の共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができないときに、共有者の請求で、裁判所が、所在等不明共有者の持分を特定の者に譲渡する権限を与える裁判をすることができます。この裁判には、請求した側を含む所在等不明共有者以外の共有者全員が、その特定の者に自分の持分の全部を譲渡することが条件になります。持分の代金は、不動産の時価相当額を持分で割った額を、所在等不明共有者が請求できると条文に書かれています。

税の面では、次の2点に気をつけます。

  • 裁判の手続きに時間がかかるので、売る時期が遅れると、引渡しの年が変わって申告する年と税率の区分(所有期間の判定日)が変わることがあります。
  • 売った代金のうち自分が受け取る額と、受け取り方の記録を残します。申告は共有者ごとに受け取る額と持分で行うため、記録がないと内訳書の収入欄が書けません。

手続きそのものは弁護士や司法書士の仕事です。裁判所の手続きの概要は法務省や裁判所の案内で確かめ、窓口の選び方は相続の専門家の違いでも比べられます。

申告前に確かめること

  1. 売買契約書の売主と持分が、登記事項証明書と合っているか。
  2. 相続した物件なら、亡くなった人の取得時期と取得費の資料があるか。
  3. 売却代金を誰がどの割合で受け取ったか、記録があるか。
  4. 使う特例ごとに、自分の要件と添付書類を確認したか。
  5. 他の共有者と、特例の選択(扶養への影響を含む)を話したか。

要件の確認や申告書の作成に自信がないときは、売却の前後で譲渡所得税の相談窓口:税務署の電話相談と確定申告会場の使い方の国税相談専用ダイヤルを使います。

よくある質問

Q. 共有者の1人が申告をしないと、私の税金にも影響しますか?

申告と納税は共有者それぞれの分を、それぞれが行います。自分の持分に応じた譲渡所得を計算して申告すれば、他の共有者が出さなかった分が自分の申告に混ざることはありません。ただし、空き家の3,000万円控除では売却代金1億円以下かどうかを他の相続人の売却分と合算して見るなど、共有者全体の売却を前提に判定する項目があります。

Q. 一緒に売った兄弟と私で、取得費の金額は同じですか?

実際に払った購入代金などが分かる場合は、持分に応じて按分して各自の取得費にします。相続した不動産の取得費は亡くなった人の取得時のものを引き継ぐため、同じ物件なら持分が同じ兄弟は同じ額になるのが通常です。取得費が分からないときの5%は、各自が受け取った売却額に対して計算します。

Q. 兄が代表で売却代金を受け取り、あとで私に渡す形でもよいですか?

代金を受け取る人と、申告する人が違う場合があります。国税庁の質疑応答事例は、売る時までに代金の取得割合を決めていれば、その割合を所有割合として申告するとしています。割合を決めていない状態で代金を渡すと、贈与と見られないか、申告の割合をどうするかが問題になります。詳しくは、換価分割の税金の記事で整理しています。

Q. 住んでいたのは兄だけです。3,000万円控除は私も使えますか?

マイホームの3,000万円特別控除は、売る人が自分の居住の用に供していた家屋かどうかなど、売る人ごとの要件で見ます。住んでいなかった共有者は、この特例の対象に当たらない場合があります。相続した家なら、空き家の3,000万円控除という別の特例を検討する形になり、こちらも相続人ごとに要件を見ます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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