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売主の契約不適合責任:相続した古い家を売る時の免責の考え方

この記事のもくじ
  1. 契約不適合責任のしくみ:買主ができる4つのこと
  2. 個人の売主が免責特約を付ける考え方
  3. 相続した古い家:知っていることと知らないことを分ける
  4. インスペクション(建物状況調査)を使う
  5. 売る相手と売り方で、責任の決め方を比べる

契約不適合責任は、売った家が契約の内容と合っていなかったとき、売主が買主から修補・代金の減額・損害賠償・解除を求められるしくみです。個人が自分の家を売る場合も負います。ただし個人の売主は、契約書の特約で、責任を負わない旨や、責任を負う期間・範囲を決められます。相続した古い家では、売主が家の状態をよく知らないことが多いため、特約と告知書の書き方が実際の備えになります。なお、知っていたのに告げなかった不具合は、特約があっても責任が残ります。

契約不適合責任のしくみ:買主ができる4つのこと

引き渡された物が、種類・品質・数量について契約の内容に合っていないとき、買主は売主に次の請求ができます。

早見表:買主の4つの請求と民法の条文
買主の請求 中身 条文
追完の請求 修補や、不足分の引渡し 562条
代金の減額請求 相当の期間を定めて追完を催告し、されないとき不適合の程度に応じて減額 563条
損害賠償の請求 売主の責任が認められる場合 564条・415条
契約の解除 一定の要件を満たす場合 564条・541条・542条

買主に不適合の原因がある場合は、追完を請求できません(562条2項)。種類・品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に売主に通知しないと、これらの請求ができなくなります(566条)。引渡しから1年ではなく、知った時から数える点が重要です。たとえば2027年3月1日に引き渡し、買主が2027年9月10日に雨漏りに気づいたなら、通知の期限は2028年9月10日です(筆者の計算の例)。ただし売主が引渡しの時に知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この期間制限は使えません。

「瑕疵担保責任」は、2020年4月1日に施行された民法改正(債権法改正)より前の言い方です(法務省)。改正後は、「隠れた瑕疵」があったかではなく、契約の内容に合っているかが基準になります。つまり、契約書や告知書に「雨漏りがある」と書かれていれば、それは契約の内容の一部になり、後から不適合と主張されにくくなります。

個人の売主が免責特約を付ける考え方

免責特約は、売主の責任を軽くする契約上の取り決めです。決め方は大きく3つあります。

  1. 責任を負わない旨を定める。現状のまま引き渡す形です。
  2. 責任を負う期間を短くする。通知を受ける期間を、民法の「知った時から1年」より短く決める形です。
  3. 範囲を限る。給湯器やエアコンなどの設備を対象から外す、といった形です。

宅建業法40条は、宅建業者が自ら売主となる売買で、民法より買主に不利な特約を制限しています。個人の売主が個人の買主に売る仲介では、この制限は働かないので、特約の内容は当事者の話し合いで決まります。買取業者に売る場合も、業者は買主なので、40条の対象ではありません。

特約には限界があります。売主が知りながら告げなかった事実や、自分で第三者のために設定した権利は、特約があっても責任を免れません(民法572条)。免責に頼る前に、知っていることを告げるのが先です。免責の範囲は買主の納得にも関わるので、売主に有利な特約を強く求めると、買主が購入をためらうこともあります。契約書の特約欄の読み方は不動産売却の契約の流れにあります。

相続した古い家:知っていることと知らないことを分ける

相続した家では、売主が家に住んでいなかったため、雨漏りやシロアリの有無を知らないことが多くあります。知らないことは「知らない」と書き、知っていることは書く。この分け方が、告知書の基本です。

「知っている」範囲は、自分が見たことだけではありません。次のような材料も、売主が知った事実になりえます。

  • 亡くなった親から聞いていた話(雨漏りの修理、増改築、近隣との境界の話)
  • 残っていた修繕の領収書、見積書、図面、検査済証
  • 近所の人や管理会社から聞いた話
  • 自分で内部を見たときに気づいた点(床の傾き、においなど)

告知書は、媒介する不動産会社が売主に記入を求める書式です。宅建業者は、売主に告知書などへの記載を求めることで通常の調査義務を果たすとされています(国土交通省の人の死の告知に関するガイドライン)。同じガイドラインでは、賃貸には「概ね3年」の区切りがありますが、売買にはその区切りがなく、時間がたっても告げるべきとされる死があります。自然死でも特殊清掃が行われた場合は告げる対象で、そうでない自然死でも、買主から問われたときは告げる必要があると整理されています。個別の事案が当たるかは、媒介する不動産会社に確かめてください。

告知書に書く項目の例(売主が知っている範囲)
項目 書く内容
雨漏り・水漏れ いつ、どこで、修理したか
シロアリ・腐朽 被害や駆除の履歴、保証の有無
給排水・設備 故障や交換の履歴、使えない設備
傾き・ひび割れ 気づいた場所と時期
増改築 年と内容、図面や確認済証の有無
境界・越境 境界標の有無、隣地との取り決め
近隣・周辺 騒音、においなど、近隣とのトラブル
事故・死亡 知っている事実

書く前に、相続人が複数なら、全員が売主として署名することを前提に、全員で知っている情報を出し合います。兄弟のうち一人だけが親から聞いていた話もあるため、聞き取りは全員に行います。

インスペクション(建物状況調査)を使う

建物状況調査は、建築士が建物の基礎・柱・屋根・外壁など、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分を、目視を中心に調べるものです。宅建業法では、媒介契約書に、調査を行う者をあっせんするかどうかを書く欄があります。

調査には限界があります。国土交通省の標準媒介契約約款は、調査結果が瑕疵の有無を判定するものではなく、瑕疵がないことを保証するものでもないと注記しています。それでも、調べた結果を告知書に書き、契約書に添えれば、「契約の内容」を具体的にする資料になります。調査の費用は実施者の料金表で確かめ、複数社の見積もりを取ります。

売る相手と売り方で、責任の決め方を比べる

仲介で個人の買主に売る場合と、買取業者に売る場合では、責任の話し合い方が違います。仲介は、買主の購入の判断を支えるため、告知書と調査を厚くします。買取は、会社が状態を見たうえで価格を出すため、責任の範囲を契約書でどう定めるかが主な話題です。どちらも、知っていることを書面で伝える点は同じです。買取との違いは不動産の買取と仲介の違い、空き家での買取は空き家の買取にあります。

責任の有無や額は、事実と契約の内容によって決まり、最終的には当事者の合意か裁判所が判断します。具体的な請求を受けた場合は、弁護士に相談してください。相談先は相続手続きの無料相談窓口一覧にあります。売却後の請求やもめごとの類型は不動産売却のトラブルで整理しています。

古い家で状態に自信がなく、責任を負わない特約を結びやすい売り方を探すなら、不動産会社に買い取ってもらう方法があります。共有持分や再建築不可のように、一般の買主が付きにくい物件を扱う買取会社もあります。ただし、特約の有無や範囲は会社ごとに違い、価格は仲介で売れた場合の額とは別に、会社が再販を前提に出します。使う前に、次の3点を確かめてください。

  • 提示額は仲介の査定額とは別に比べる材料で、複数の会社に聞いて並べる
  • 契約不適合責任をどこまで負わないのかは、売買契約書の特約欄で決まる
  • 知っている不具合は、特約があっても告げておく(民法572条)

よくある質問

Q. 契約不適合責任を負わない特約があれば、売った後は何も請求されませんか?

特約の内容しだいです。責任を負わない旨の特約をしていても、売主が知りながら告げなかった事実や、自分が第三者のために設けた権利については、責任を免れません(民法572条)。知っていることを契約前に書面で伝えることが、特約を有効に使う前提になります。

Q. 昔の「瑕疵担保責任」と何が違いますか?

2020年4月1日に施行された民法改正で、売主の責任の基準が「隠れた瑕疵があるか」から「引き渡した物が契約の内容に適合しているか」に変わりました。買主が求められる内容も、修補などの追完、代金の減額、損害賠償、解除として条文に定められています。契約書や告知書に何を書くかが、基準を決める材料になります。

Q. 買取業者に売る場合も、契約不適合責任は問題になりますか?

買取業者に売る場合も、売買契約の売主として民法の規定は適用されます。業者が買主のときは、責任を負わない特約や、責任の期間を短くする特約を話し合える場合があります。契約書の特約欄でどう定めるか、知っている不具合を伝えたかを確かめてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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