不動産の買取と仲介の違い:査定から売り方を選ぶ判断材料と流れ
この記事のもくじ
不動産の買取は、不動産会社が自分で買主になって、あなたの家や土地を買い取る売り方です。仲介は、不動産会社に買主を探してもらい、見つかった個人や法人に売る売り方です。買取は「早く・手間なく・不具合の責任を負わずに」売りやすい代わりに、価格は仲介で売れた場合より低くなるのが一般的です。どちらが合うかは、売りたい期限、建物の状態、価格をどこまで優先するかで決まります。迷ったら、仲介の査定と買取の査定を両方受けて、手取りで比べるのが出発点です。
不動産の買取とは:仲介との違いを表で比べる
買取と仲介の違いは、誰が買主になるかから生まれます。買取では会社が自ら当事者(買主)になり、仲介(法律上は媒介)では会社は売主と買主の間に立つだけです。不動産会社は広告や注文を受けたとき、自分が当事者なのか、代理か媒介かを明らかにする義務があります(宅建業法34条)。チラシや電話の相手が「買い取る」のか「買主を探す」のかは、最初に聞いて確かめます。
| 比べる点 | 買取 | 仲介 |
|---|---|---|
| 買主 | 不動産会社(宅建業者) | 会社が探した個人・法人 |
| 価格の決まり方 | 会社が直した後の再販や活用の見込みから逆算して提示 | 売り出し価格を決め、買主との交渉で決まる |
| 価格の水準 | 仲介で売れた場合より低くなるのが一般的 | 相場に近い価格を目指せるが、売れるまで決まらない |
| 売れるまでの期間 | 条件が合えば、決済日を相談して決めやすい | 買主が見つかるまでの期間が読めない |
| 仲介手数料 | 会社が直接買う取引では媒介がないため発生しない | 成約時に支払う(上限は告示で決まる) |
| 内見・広告 | 会社の担当者が現地を見るだけ | 購入希望者の内見に対応し、広告に出る |
| 契約不適合責任 | 売主が負わない特約を結ぶことが多い | 個人の買主と、範囲や期間を特約で決める |
| 残置物(家具など) | そのままの引き取りを相談できる場合がある | 引き渡しまでに片付けるのが基本 |
仲介手数料の上限は、宅建業法46条に基づく国土交通省の告示で決まっています。買取業者が直接買う取引にはこの報酬が生じませんが、別の会社が間に入って買取業者を紹介する形なら、その会社への仲介手数料がかかります。上限の計算は仲介手数料の上限と計算式にまとめています。
契約不適合責任は、引き渡した物件が契約の内容と合わないとき、買主が売主に修補・代金減額・損害賠償・解除を求められるしくみです(民法562条〜564条)。買主は不適合を知った時から1年以内に売主へ通知する必要があります(同566条)。買取では、この責任を売主が負わない特約を結べることが多く、状態の分からない古い家を手放す人にとって大きな違いになります。ただし、知っていて告げなかった不具合は特約があっても責任が残ります(同572条)。考え方は売主の契約不適合責任と免責の考え方で詳しく扱います。
買取と仲介のどちらが向いているか:場面ごとの分かれ道
次の表は、よくある場面ごとに検討の順番を整理したものです。どちらが正解と決めるものではなく、比べる候補を絞るための材料です。
| 場面 | 先に検討する売り方 | 理由と確かめること |
|---|---|---|
| 価格を優先でき、売るまでに時間がある | 仲介 | 買主を探す期間を取れる。売り出し価格と値下げの条件を最初に決める |
| 住み替えや納税など、代金が要る日が決まっている | 買取と仲介の両方 | 仲介で売れなかった場合の期限を決め、買取の提示を比べておく |
| 築年数が古く、雨漏りなどの状態が分からない | 買取と仲介の両方 | 契約不適合責任の特約の差を比べる |
| 近所に知られずに売りたい | 買取 | 広告と内見がない。仲介でも広告の範囲を相談できる |
| 実家に荷物が大量に残っている | 買取 | 残置物ごと引き取るか、その費用をいくら差し引くかを確かめる |
| 共有名義・再建築不可・借地など買主が限られる | 訳ありを扱う買取と仲介 | 一般の査定で値が付きにくい。持分や権利関係を先に整理する |
相続した家の場合は、売る前に相続登記(不動産の名義を相続人に変える登記)を済ませる必要があります。買主へ名義を移す登記の前提になるためです。査定は登記の前でも受けられることが多いので、登記の準備と並行して進めると時間を無駄にしません。相続から売却までの順番は相続不動産の売却の流れ、住む・貸す・売るの比べ方は相続した不動産はどうするかの判断材料を参照してください。
訳ありの物件は、別に記事を用意しています。空き家なら空き家の買取で仲介で売れない家を業者に売る判断、住宅ローンが残っているなら住宅ローンが残っている家を売る方法から読むと、ここでの一般論より具体的な確認点が分かります。
査定から売り方を選ぶ流れ:5つの手順
買取か仲介かは、査定を受ける前に決める必要はありません。次の順番で進めると、数字を見てから選べます。
- 相場の目安を自分で調べる。国土交通省の不動産情報ライブラリで、近くの取引価格や成約価格を地図で見られます。取引ごとの事情で通常と違う価格が混じることがあるため、1件ではなく何件かの幅で見ます。調べ方は家を売るといくらになるかの成約価格の調べ方にあります。
- 仲介の査定を2〜3社に頼む。机上査定で候補を絞り、売ると決めたら訪問査定に進みます。違いは机上査定と訪問査定の使い分けで説明しています。
- 買取の査定を1〜2社に頼む。仲介の会社に「買取の場合の価格も出せますか」と聞く方法と、買取を専門に扱う会社に頼む方法があります。
- 根拠を聞いて並べる。媒介契約で価格に意見を述べる会社には、その根拠を明らかにする義務があります(宅建業法34条の2第2項)。どの取引事例を使ったか、建物をどう評価したかを聞き、同じ表に書き込みます。査定額のしくみは不動産の査定とは何かと査定額の決まり方、高すぎる査定の見分け方は査定が高すぎる会社への根拠の聞き方で扱います。
- 手取りで比べて決める。仲介は売れた価格から仲介手数料などを引いた額、買取は提示額から残置物の撤去や測量など売主負担の費用を引いた額で比べます。
手取りの比べ方の例を、筆者の計算で示します。仲介で3,000万円で売れた場合、仲介手数料の上限は105万6,000円(税込。告示の区分から計算)です。このとき仲介の手取りの目安は約2,894万円で、買取の提示額がこれをどれだけ下回るか、その差を「早さ・手間・責任を負わない安心」の対価と考えて払えるかを判断します。仲介の価格は売れるまで確定しないので、値下げした場合の額でも比べておくと判断を誤りにくくなります。
査定にお金がかかるかどうかは不動産の査定の費用と無料の理由、データだけで出すAI査定の使い方はAI査定のしくみと使いどころを参照してください。
買取業者と不動産会社の確かめ方:トラブルを避ける
不動産を業として売買・仲介する会社には、宅地建物取引業の免許が要ります(宅建業法3条)。名刺やサイトにある免許番号を、国土交通省の宅地建物取引業者情報検索で商号・所在地と照らし合わせます。会社選びの確認点は不動産会社の選び方と免許番号の確かめ方、買取業者に絞った確認点は不動産の買取業者の選び方にまとめています。
買取で特に知っておきたいのは、自宅を不動産会社に売った売主には、クーリング・オフがないことです。宅建業法37条の2のクーリング・オフは、宅建業者が自ら売主となる取引の買主のための制度で、売主の側には使えません。国民生活センターも、自宅の売却契約はクーリング・オフできないとして、内容が分からないまま契約しないよう注意を呼びかけています。同センターの公表には、業者が夜まで居座って署名させた例や、安い価格で売らされて解約に高額の解約料を求められた例が載っています。
宅建業者は、勧誘で利益が確実だと誤解させる断定的な説明や、相手を威迫することを禁じられています(宅建業法47条の2)。施行規則16条の11では、判断に必要な時間を与えないこと、契約しない意思を示した人への勧誘の継続、深夜・長時間の勧誘なども禁止されています。
断るときの言い方:「今回は売りません。今後の勧誘もお断りします。」
その場で署名を求められたら、「家族と相談して書面で返事をします」と伝えて持ち帰ります。突然のチラシや電話の扱いは不動産の買取チラシ・営業電話の確かめ方と断り方、しつこい勧誘を受けた場合の相談先は自宅の買取・リースバックの強引な勧誘の断り方と相談先を読んでください。
ここまでの判断材料をそろえたうえで、仲介の査定を複数社から集める方法の一つに、不動産一括査定があります。買取の提示額まで取れるかはサイトによって違うので、買取の査定は別に1〜2社へ頼み、一括査定のサイトが買取に対応しているかは申し込み画面で確かめます。使う前に次の3点も確かめておきます。
- 査定額は売れる値段ではない(根拠を聞いて比べるための材料)
- 申し込むと、複数の会社から電話やメールで連絡が来ることがある
- 売るかどうかは、査定を受けた後に決めてよい
一括査定のしくみと申し込む前の確認点は不動産一括査定とは何かと使い方、媒介契約の種類の違いは媒介契約の3種類の比較、買取を選んだ後の段取りは不動産の買取査定から入金までの流れと不動産の買取相場と価格の比べ方で扱います。
査定・会社選び・買取の記事の読み方
このハブの記事は、知りたいことの順に次の5つに分かれます。迷ったら、いまの状況に近い行の先頭の記事から読みます。
| 知りたいこと | 入口の記事 | あわせて読む記事 |
|---|---|---|
| 査定のしくみ | 不動産の査定とは | 机上査定と訪問査定、査定の費用、査定が高すぎる会社への根拠の聞き方、AI査定、匿名で相場を知る方法、査定依頼メールの例文 |
| 一括査定の使い方 | 不動産一括査定とは | デメリットと対処、サイトの選び方、断り方、電話なしで使う方法、実家の売却で使う、土地の一括査定、マンションの一括査定 |
| 会社選びと媒介契約 | 不動産会社の選び方 | 媒介契約の3種類、レインズの確かめ方、相見積もりのマナー、専任媒介の解約、売り出し価格の決め方、内見の準備、売却の相談先、委任状の書き方 |
| 買取とリースバック | 買取査定から入金までの流れ | 買取相場、買取業者の選び方、買取チラシ・営業電話、強引な勧誘への対処、リースバックの比較、空き家の買取 |
| 売れないとき・トラブル | 売れない場合の見直し | 売却トラブルの型と相談先、契約不適合責任 |
売る理由が相続なら、税の特例の期限も売り方の選び方に関わります。相続した空き家を売る場合の特例は相続した空き家の3000万円控除の要件と期限で確かめてから、売る時期を決めてください。
よくある質問
Q. 買取と仲介の両方に査定を頼んでもよいですか?
頼んでかまいません。査定を受けても売る義務はなく、仲介の査定額と買取の提示額を並べて初めて、買取でどれだけ価格が下がるかが分かります。頼むときに「仲介と買取の両方で検討しています」と伝えておくと、会社側も両方の数字を出しやすくなります。
Q. 買取で売った後に不具合が見つかったら、売主が直すのですか?
契約で売主の契約不適合責任を負わない特約を結んでいれば、原則として修補や代金減額を求められません。ただし売主が知りながら告げなかった不具合は、特約があっても責任を免れません(民法572条)。知っている不具合は告知書に書いておきます。
Q. 相続登記が済んでいなくても買取の査定は受けられますか?
査定は価格の意見なので、登記の前でも頼めることが多いです。ただし売買で買主へ名義を移すには、先に相続登記で相続人の名義にしておく必要があります。査定と並行して登記の準備を進めると、売ると決めた後に待つ時間が減ります。
出典・参考にした公的な情報
- 宅地建物取引業法 第3条・第34条・第34条の2・第37条の2・第46条・第47条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法施行規則 第16条の11(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第562条〜第564条・第566条・第572条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(告示)(国土交通省)
- 宅地建物取引業者情報検索(国土交通省)
- 不動産情報ライブラリ(国土交通省)
- 高齢者の自宅の売却トラブルに注意(2021年6月24日)(国民生活センター)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。