不動産売却の契約の流れ:手付金・違約金・契約不適合責任の注意
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不動産売却の契約は、買付の申込みを受ける → 条件を調整する → 重要事項の説明を買主が受ける → 売買契約を結ぶ(手付金を受け取る) の順に進み、契約書に署名する前の確認でほとんどが決まります。売主が特に見るのは3つで、手付金とそれを使った解除の期限、約束を破ったときの違約金、引き渡した後の契約不適合責任です。この記事は、契約書のどの欄を何のために確かめるかを、順番に説明します。
不動産売却の契約の流れ:買付の申込みから契約締結まで
買主が見つかってから契約までの順番です。日数は目安で、買主の住宅ローンの審査や、条件の調整の長さで変わります。
- 買付の申込み:買主が購入の希望を書面(買付証明書など)で伝える。価格、手付金の額、引き渡しの希望日、ローンを使うかが書かれる。
- 条件の調整:価格の交渉、引き渡しの日、残す設備、修繕の範囲を話し合う。仲介の会社が間に入る。
- 契約書案の確認:契約の前に、会社から契約書案と重要事項説明書の案を受け取り、売主も目を通す。
- 重要事項の説明:宅地建物取引士が、取得する側である買主に、書面を交付して説明する(宅建業法35条)。売主は説明の根拠になる資料を出す側。
- 売買契約の締結:売主と買主が署名・押印し、買主が手付金を払う。売主は契約書に収入印紙を貼る。
- 決済・引き渡しへ:契約で決めた日に、残りの代金の受け取りと所有権の移転登記を行う(不動産売却の決済と引き渡し:当日の流れとお金が入るタイミング)。
契約の前に、書類がそろっているかも確かめます(不動産売却の必要書類:査定・契約・決済の段階別チェックリスト)。売主の側から見ると、契約書の署名は、買主の申込みを受けて条件に合意する場面です。署名の前に「待ってほしい」と言ってよく、契約書案は事前に受け取って読む時間を頼めます。
手付金の扱い:不動産売却の契約で渡される金額と手付解除
手付金は、売買契約のときに買主が売主へ渡すお金です。民法では、手付を渡した後でも、相手が契約の履行に着手するまでは、次の方法で契約を解除できます(民法557条)。
| 解除する人 | 解除の方法 | お金の動き |
|---|---|---|
| 買主 | 手付を放棄して解除 | 渡した手付は戻らない |
| 売主 | 受け取った手付の倍額を現実に提供して解除 | 手付に同額を足して買主に払う |
たとえば手付が200万円なら、売主から解除するときは400万円(受け取った200万円に200万円を足した額)を買主に払います(筆者の計算)。売主が軽い気持ちで解除できる額ではないことが分かります。
売主が見る点は次のとおりです。
- 手付解除の期日:民法は「相手が履行に着手するまで」としていますが、何が履行の着手に当たるかは争いになりやすいため、契約書で「令和○年○月○日までは手付解除ができる」と日を決めることが多くなっています。期日の欄を確かめます。
- 手付金の額:額は売主と買主の合意で決まります。不動産会社が自ら売主になる取引には「手付は代金の2割まで」という制限がありますが(宅建業法39条)、個人が売主で会社が仲介する取引は対象外です。額の根拠は仲介の会社に聞きます。
- 手付金の行き先:契約書に、決済のときに代金の一部に充てる、と書かれているかを見ます。
文例:「手付金の額と手付解除の期日の欄は、どういう考えで案を作ったのか教えてください。期日までに買主から解除の申出があった場合の手続きも、あらかじめ知りたいです。」
違約金の決め方:不動産売却の契約で約束を破ったとき
手付解除の期日を過ぎて、どちらかが契約を守らないとき(買主が代金を払わない、売主が引き渡さないなど)に備えて、契約書には違約金の定めが置かれるのが通例です。民法でも、当事者は債務の不履行に備えて損害賠償の額を前もって決めておくことができます(民法420条)。
確かめる点は次の3つです。
- 違約金の額:「代金の○%」「○○万円」などの形で書かれる。個人が売主の取引には、会社が売主の場合の「2割まで」という制限(宅建業法38条)は当てはまらないため、契約書に書かれた額がそのまま基準になる。
- どちらが払うか:売主の違反と買主の違反で、同じ額か、書き分けられているか。
- 解除の条件:催告しても直らない場合に解除できる、と書かれているか。
違約金は、売主が約束を守れなくなる場面でも関わります。たとえば、売る家に付いている抵当権を決済までに外せないとき、共有者の1人が決済に来ないとき、引き渡し日までに荷物を出せないときです。契約を結ぶ前に、この3つが守れる見通しがあるかを自分で確かめます(住宅ローンが残っている家を売るには:残債の確かめ方と売り方、共有名義の不動産の売却:全員の同意が要る場面と持分だけ売る方法)。
なお、媒介契約(不動産会社に仲介を頼む契約)にも、他の会社を通して契約したときなどの違約金の定めがあります。これは売買契約の違約金とは別のもので、標準媒介契約約款では約定報酬額に相当する額が定められる場面があります(媒介契約の種類:一般・専任・専属専任の違いと選び方の比較表)。
- 手付金:契約時に買主が払う。期日までなら、買主は放棄、売主は倍額で解除できる(民法557条)
- 違約金:期日を過ぎてから契約を守らないときに払う額。契約書で決める(民法420条)
- 契約不適合責任:引き渡した家に契約の内容と違う点があったときの売主の責任。通知の期間と免責は契約書で決める
売主の契約不適合責任:引き渡した後に責任を負う範囲
契約不適合責任は、引き渡した家の種類・品質・数量が契約の内容と合わないときに、買主が売主へ求められる責任です。2020年4月の民法改正で、「瑕疵担保責任」にかわって整理されました。買主は、次の4つを求められます(民法562条〜564条)。
| 買主の求め | 内容 |
|---|---|
| 追完の請求 | 修理や不足分の引き渡しなど、契約の内容に合う状態にすることを求める |
| 代金の減額 | 相当の期間を定めて追完を求めても直らないとき、不適合の程度に応じて減額を求める |
| 損害賠償 | 売主に落ち度があるときなどに求める |
| 契約の解除 | 契約の目的を達成できない程度のときなどに求める |
売主が注意するのは、何が「契約の内容」かです。契約書や告知書に「雨漏りの跡がある」「給湯器は故障している」と書いてあれば、それは契約の内容に入っているので、買主はそれを理由に責任を問いにくくなります。逆に、知っているのに書かなかった不具合は、後で問題になりやすい部分です。
買主が知ってから1年の通知
種類・品質の不適合は、買主が不適合を知ってから1年以内に売主へ通知しないと、追完や減額、損害賠償、解除を求められなくなります(民法566条)。ただし、売主が引き渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この通知の制限は使えません。
免責の特約と、その限界
古い家を個人が売るときは、「契約不適合責任を負わない」「責任を負う期間を引き渡しから3か月とする」といった特約を結ぶことが多くあります。個人が売主で会社が仲介する取引では、これらの特約を結ぶこと自体は法律で禁じられていません(会社が売主の場合は、通知期間を引き渡しから2年以上とする特約を除き、買主に不利な特約をしてはならない=宅建業法40条)。
ただし、免責の特約を付けても、売主が知っていながら告げなかった事実と、売主が自ら第三者のために設定した権利(抵当権など)や譲り渡した権利については、責任を免れません(民法572条)。免責の特約は、知らなかった不具合を守るもので、知っていた不具合を隠す盾にはならない、と整理できます。
売る前の準備として、次の3つが役に立ちます。
- 知っている不具合は、告知書と設備表に書く。
- 建物の状態が心配なら、建物状況調査(インスペクション)を使う方法がある。媒介契約には、調査を行う者のあっせんの有無を書く欄があります(宅建業法施行規則15条の7)。調査は目視を中心にした劣化の状況の確認で、不具合がないことを保証するものではありません。費用は実施者の料金表で確かめます。
- 免責にするか、期間を短くするかは、買主との交渉の項目になる。どう書けば自分の責任の範囲が分かるかを、仲介の会社に聞く。
相続した古い家で、売主が状態をよく知らない場合の考え方は売主の契約不適合責任:相続した古い家を売る時の免責の考え方で扱います。
売買契約書で売主が見る欄のチェックリスト
署名の前に、次の欄を契約書で確かめます。
- 売買代金、手付金の額と、決済で代金に充てるか
- 手付解除の期日
- 違約金の額と、どちらがどの場合に払うか
- 引き渡しの日と、その日までに売主がすること(抵当権の抹消、荷物の撤去)
- 所有権の移転と、代金を受け取る日
- 公租公課(固定資産税など)の精算の決め方
- 買主がローンを使うとき、審査が通らなかった場合の定め
- 契約不適合責任の範囲、通知の期間、免責の有無
- 残していく設備と、撤去する設備
- 収入印紙(不動産売買契約書の印紙税は、2027年3月31日までの軽減措置がある。国税庁)
分からない条項は、署名の前に意味を聞きます。説明が不十分と感じたり、契約の勧誘が強引だと感じたりしたときは、不動産適正取引推進機構の電話相談で、取引の一般的な決まりを聞くことができます(番号と受付時間は不動産売却のトラブル:よくある5つの型と相談先の使い分けにまとめています)。契約書の条項について個別の法的な判断が要る場合や、買主との間で争いになった場合は、弁護士の仕事です(弁護士法72条)。
契約の前の段階、つまり売り出す価格や会社を決める前なら、複数の会社の見込みを並べる方法として一括査定があります。査定額は各社の見立てで、売れる価格の保証ではありません。申し込んだ後は、複数の会社から連絡が来ることがあります。
契約の後にすること
契約を結んだら、決済までの間に売主がやることが残っています。抵当権を外す書類を金融機関に頼む、荷物を整理して引っ越しの日程を決める、司法書士と決済の日に必要な書類を確かめる、といった準備です。前の段階は不動産売却の必要書類:査定・契約・決済の段階別チェックリスト、全体の流れは不動産売却の流れ:査定から引き渡しまでの7段階と期間・費用で確かめます。契約後の売却益の税金は、不動産売却の税金:譲渡所得の計算・税率・特例の全体と確定申告で見通しを立てます。
よくある質問
Q. 売主が受け取った手付金は、契約を解除したら返すのですか?
買主が手付を放棄して解除する場合、売主は受け取った手付をそのまま持てます。売主のほうから手付解除をするなら、受け取った手付に加えて同額、つまり倍の額を現実に提供します。いつまで解除できるかは契約書の手付解除の期日で決まるので、契約前に確かめます。
Q. 個人が売主のときも、手付は代金の2割までという決まりがありますか?
手付が代金の2割まで、違約金と損害賠償の予定の合計が2割までという制限は、不動産会社が自ら売主になる取引の決まりです(宅建業法38条・39条)。個人が売主で会社が仲介する取引には当てはまりません。額は売主と買主の合意で決まるので、契約書の金額が妥当かは仲介の会社に根拠を聞きます。
Q. 古い家で不具合を知らないときも、契約不適合責任を負いますか?
責任を負うかどうかは、契約書にどう書いたかと、売主が不具合を知っていたかで変わります。免責の特約を付けても、知っていて告げなかった事実の責任は免れません(民法572条)。知っていることは告知書に書き、知らないことは知らないと書いておくのが基本です。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第557条・第420条・第562条〜566条・第572条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法 第35条・第37条・第38条〜第40条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法施行規則 第15条の7・第15条の8(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.7108 不動産売買契約書に係る印紙税の軽減措置(国税庁)
- 標準媒介契約約款(国土交通省)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不動産取引に関する電話相談(不動産適正取引推進機構)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。