公正証書遺言の証人は誰に頼む?なれない人と公証役場の紹介
公正証書遺言の証人2人は、財産をもらわない友人・知人に頼む、司法書士などの専門家に頼む、公証役場に紹介してもらうの3通りで手配できます。財産を受け取る家族や、その配偶者・子・孫は証人になれません(民法974条)。日本公証人連合会は、適当な証人が見当たらないときは公証役場で紹介できるので遠慮なく申し出てほしいと案内しています。この記事では、なれない人の線引きを家族の続柄で示し、頼み方と費用の考え方を整理します。
証人になれない人は?(民法974条の一覧)
公正証書遺言には「証人2人以上の立会い」が要ります(民法969条1号)。日本公証人連合会によれば、実務では証人が3人以上になることはなく、2人で作ります。証人の役目は、遺言者の真意を確かめ、手続きが決まりどおりに行われたことを担保することです。
民法974条は、次の人は証人・立会人になれないと定めています(2026年10月23日時点の現行条文)。
- 未成年者
- 推定相続人と受遺者、これらの配偶者と直系血族
- 公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人
推定相続人とは、いま遺言者が亡くなったら相続人になる人のことです。配偶者は常に相続人になり、子がいれば子、子がいなければ親などの直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹が相続人になります(民法887条・889条・890条)。受遺者は、遺言で財産をもらう人です。この線引きを家族の続柄に当てはめると次のようになります。
| 候補者 | 子がいる人の場合 | 子がなく親も亡い人の場合 |
|---|---|---|
| 配偶者 | なれない(推定相続人) | なれない(推定相続人) |
| 子・子の配偶者・孫 | なれない(推定相続人とその配偶者・直系血族) | ― |
| 遺言者の兄弟姉妹 | 財産を受け取らなければ一覧に当たらない | なれない(推定相続人) |
| 甥・姪 | 財産を受け取らず、受け取る人の配偶者・直系血族でなければ一覧に当たらない | なれない(推定相続人である兄弟姉妹の直系血族) |
| 友人・知人・近所の人 | 財産を受け取らず、成年なら一覧に当たらない | 同左 |
| 財産をもらう団体の職員 | 現行の一覧には当たらない(改正後は下の注意を参照) | 同左 |
証人になれない人が加わって作られると、「証人2人以上」という方式(民法969条)を満たしていたかが争われるもとになります。遺言は民法の方式に従わなければできない(同960条)ので、証人選びは方式の一部と考えて慎重に行います。
- 未成年か → はい:なれない
- 遺言で財産をもらうか → はい:なれない
- いま亡くなったら相続人になる人か → はい:なれない
- 相続人になる人・財産をもらう人の配偶者か、親・子・孫など直系血族か → はい:なれない
- 公証人の親族・書記・使用人か → はい:なれない
- どれにも当たらない → 現行の974条では証人になれる(迷ったら公証人に確かめる)
2026年の民法改正で、なれない人が広がる予定
2026年6月に成立した民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)では、974条が見直されます。法務省の概要資料によると、受遺者だけでなく、**受遺者の被用者(受遺者が法人なら、その被用者と役員)**も証人になれなくなります。高齢者施設などへの遺贈を念頭に置いた見直しです。
この部分は2026年10月時点で施行前です。施設や団体に財産を遺贈する遺言を考えていて、その職員に証人を頼む予定の人は、作成の時期と施行日の関係を公証人に確かめてください。改正全体の中身は遺言書の押印不要はいつから?2026年の民法改正の中身と施行時期で扱っています。
頼める人の3つの選択肢と、費用の考え方
| 選択肢 | 向いている人 | 費用の考え方 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 友人・知人 | 信頼できて、家族と利害関係のない人がいる | お礼は人それぞれ。公証人手数料には含まれない | 遺言の内容を知られる。日程を合わせる手間がある |
| 専門家(司法書士・行政書士・弁護士など) | 案文の相談から任せたい | 報酬に証人の分が含まれることがある | 見積もりに「証人2人」が入っているか確かめる |
| 公証役場の紹介 | 頼める人がいない・家族に知られたくない | 謝礼は公証人手数料とは別。額は紹介を頼むときに確かめる | 早めに申し出て日程を合わせる |
専門家に頼む場合の報酬の目安は、見積もりに「証人2人」が入っているかによって変わります。報酬の目安と、公証人手数料を合わせた総額の計算は公正証書遺言の費用にまとめています。
自分で証人を手配するときは、証人予定者の氏名・住所・生年月日が分かる資料(運転免許証のコピーなど)を事前に公証人に出します。ほかに集める書類は公正証書遺言の必要書類:本人・相続人・財産ごとに用意するものの表で確かめられます。
証人に頼むときの伝え方と、当日の役割
知人に頼むときは、何をしてもらうのかを具体的に伝えると引き受けてもらいやすくなります。
文例(知人への依頼):「公証役場で遺言を作るので、証人の1人をお願いできないでしょうか。〇月〇日の〇時から、〇〇公証役場で立ち会っていただきます。事前に、お名前・ご住所・生年月日が分かるもの(運転免許証のコピーなど)を公証役場に出す必要があります。遺言の内容はその場で聞くことになりますが、ほかの人には話さないでいただけると助かります。」
当日、証人は遺言者が内容を述べる場に立ち会い、公証人が読み聞かせるか画面で見せる内容に間違いがないことを確かめて、電子サインをします。日本公証人連合会は、証人は遺言者の依頼で立ち会うことから、明示の約束がなくても遺言者に対して秘密保持の義務を負うと解され、公証役場が紹介した証人も同じだと説明しています。公証人自身にも、取り扱った事件を漏らしてはならない義務があります(公証人法4条)。
ウェブ会議で作成する方式(リモート方式)について、日本公証人連合会は、証人だけがウェブ会議で参加する場合の扱いにも触れています。証人が遠方にいる場合でも、使えるかどうかは公証人の判断なので、早めに相談します。なお、秘密証書遺言も公証人1人と証人2人以上の前で手続きをするので(民法970条)、証人の考え方は同じです。
公正証書で作っても、相続人の間で争いがまったく起きないわけではありません。争いが起きやすい場面と備え方は公正証書遺言でももめる?争いになる原因と無効が主張される場面にまとめています。作成の全体の流れは公正証書遺言の作り方:公証役場への相談から当日の署名までの流れから確かめてください。
よくある質問
Q. 遺言執行者に指定する人は、証人になれますか?
民法974条の証人になれない人の一覧に、遺言執行者そのものは挙がっていません。ただし、その人が推定相続人や財産を受け取る人、その配偶者・直系血族に当たるなら、執行者かどうかに関係なく証人になれません。専門家を執行者にする場合は、その人が証人を兼ねられるかを依頼のときに確かめます。
Q. 証人は遺言の内容を全部聞くことになりますか?
聞きます。公正証書遺言は、遺言者が証人2人の前で内容を述べ、読み聞かせか閲覧で確かめる方式なので、証人は内容を知ることになります。日本公証人連合会は、紹介した証人を含めて証人は遺言者に対して秘密保持の義務を負うと説明しています。家族に知られたくない内容なら、家族と付き合いのない専門家や紹介の証人を選ぶ方法があります。
Q. 子どもがいる場合、自分の兄弟姉妹は証人になれますか?
子がいれば兄弟姉妹は推定相続人ではないので、財産を受け取らず、子や受け取る人の配偶者・直系血族でもなければ、974条の一覧には当たりません。子がいなくて親も亡くなっている人では、兄弟姉妹が推定相続人になるので証人になれません。自分の家族の続柄で迷うときは、相談の段階で公証人に確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第887条・第889条・第890条・第960条・第969条・第970条・第974条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 公証人法 第4条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 2 遺言 Q1・Q5・Q6(証人の人数・手配・秘密保持)(日本公証人連合会)(日本公証人連合会)
- 11 必要書類 Q2(証人の確認資料)(日本公証人連合会)(日本公証人連合会)
- 1 公正証書 Q7(リモート方式の要件)(日本公証人連合会)(日本公証人連合会)
- 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)概要資料(法務省)(法務省)
- 司法書士の報酬(報酬アンケート 2024年3月実施)(日本司法書士会連合会)(日本司法書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。