遺言書の押印不要はいつから?2026年の民法改正の中身と施行時期
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遺言書の押印不要(押印の任意化)は、2026年6月17日に成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)で決まりましたが、2026年10月23日時点ではまだ施行されていません。 施行日は政令で定める日とされ、押印の任意化を含む部分は、公布日(2026年6月24日)から1年以内に始まります。つまり、今、自筆証書遺言を書く人は、これまでどおり全文・日付・氏名を手書きし、印を押す必要があります。押印が不要になるのは施行日以後にする遺言からと解説されており、施行前に押印なしで書いた遺言は前の決まりで判断されると考えておくべきなので、「もうすぐ要らなくなるから」と押印を省くのは危険です。この記事では、改正の3段階と、それぞれの中身、今どうすればよいかを順に示します。
押印不要はいつから?施行の3段階と今の扱い
改正の遺言に関する部分は、システムの準備が要るかどうかで、施行の時期が分かれています。法務省は、改正法の公布日を2026年6月24日とし、施行日はいずれも「政令で定める日」と説明しています。2026年10月23日時点で、法務省のページにも、e-Govの法令の改正履歴にも、具体的な施行日はまだ載っていません。
| 段階 | 主な中身 | 施行の期限(公布から) | 筆者の計算による最も遅い時期 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 自筆証書遺言・秘密証書遺言・特別方式の遺言の押印を任意にする/証人になれない人の範囲を見直す/録音・録画による特別方式を設ける | 1年以内 | 2027年6月まで |
| 第2段階(遺言以外) | 成年後見制度の見直し(後見・保佐を補助に一元化) | 2年6か月以内 | 2028年12月まで |
| 第3段階 | パソコン等で作れる「保管証書遺言」を設ける | 3年以内 | 2029年6月まで |
表の「最も遅い時期」は、公布日に期間を足した上限で、施行日そのものではありません。政令で早く決まれば、それより前に始まります。施行日は政令で定められるので、遺言を作る前に、法務省のページ(「民法等の一部を改正する法律」について)で政令が出ていないかを確かめてください。
今の扱いをまとめると、次のとおりです。
- 自筆証書遺言:全文・日付・氏名の自書と押印が要件(現行968条1項)。財産目録はパソコン等で作れますが、各ページに署名と押印が要ります(同条2項)。
- 訂正:場所を示し、変更した旨を書き添えて署名し、変更の場所に押印する(同条3項)。
- 法務局での保管:様式の注意事項でも署名・押印が求められています。
押印の任意化で変わること・変わらないこと
改正後の968条1項は「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書しなければならない」となり、「これに印を押さなければならない」が削られます。法務省の概要資料は、遺言書の加除その他の変更の際の押印要件も廃止し、押印を任意とすると説明しています。
| 項目 | 現行(2026年10月時点) | 第1段階の施行後 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言の本文 | 全文・日付・氏名を自書し押印 | 全文・日付・氏名を自書(押印は任意) |
| 財産目録 | 自書不要。各ページに署名・押印 | 自書不要。各ページに署名(押印は任意) |
| 訂正 | 場所の指示・変更の付記・署名に加え、変更箇所に押印 | 指示・付記・署名は引き続き必要。押印の要件がなくなる |
| 秘密証書遺言 | 署名・押印し、同じ印で封印 | 押印の要件がなくなる |
| 全文の自書 | 必要 | 引き続き必要 |
変わらない点として大事なのは、全文を自分の手で書く決まりは残ることです。押印がなくなっても、パソコンで打った本文が自筆証書遺言として認められるようになるわけではありません。パソコン等で作った遺言を法的に有効にする道は、第3段階の保管証書遺言です。
施行前に書いた遺言の扱いも押さえておきます。押印が不要になるのは施行日以後にする遺言からと解説されています。施行前に押印を忘れた遺言は、施行後に相続が始まっても、押印が要る決まりで判断される可能性が高いので、経過措置の正確な文言は法務省の「新旧対照条文」で確かめてください。
公正証書遺言の押印は?いまは電子サインで作る
「公正証書遺言 押印 廃止」で調べる人も多いですが、公正証書遺言は2026年の民法改正の押印の話とは別の仕組みで作られています。日本公証人連合会の説明では、公正証書が電子化された後は、遺言の当日、遺言者と証人2人が遺言公正証書の原本となる電子データに電子サインをし、公証人が電子サインと電子署名をして完成します。遺言者が病気などで電子サインできない場合は、公証人がその旨を記録する扱いがあると、同連合会は案内しています。
公正証書遺言で押印の準備に迷ったら、作成を頼む公証役場の案内に従えば足ります。必要な本人確認の書類(印鑑登録証明書か、顔写真付きの身分証)は、事前の打合せで指示されます。作成の流れは公正証書遺言の作り方:公証役場への相談から当日の署名までの流れで扱います。
押印以外の改正:証人・録音録画の遺言・保管証書遺言
証人になれない人の見直し(第1段階)
現行の974条は、未成年者、推定相続人と受遺者、これらの配偶者と直系血族、公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人を、証人や立会人になれない人としています。改正後は、受遺者の従業員(受遺者が法人なら従業員と役員)も加わります。法務省の概要資料は、高齢者施設などへの遺贈を念頭に置いた見直しと説明しています。
録音・録画による特別方式(第1段階)
死亡の危急に迫った人などが、録音・録画で記録する方法で、証人1人以上の立会い(ウェブ会議での立会いも可)のもと遺言できる方式が設けられます。天災などで避けられない事変に遭った場面の方式も加わります。いずれも死亡の危急や天災などの場面に限った例外的な方式で、「元気なうちにスマホで録画すれば遺言になる」という意味ではありません。
保管証書遺言(第3段階)
改正後は、普通の方式が自筆証書・保管証書・公正証書・秘密証書の4つになります。保管証書遺言は、遺言の全文を記載した証書や電子データ(パソコン等で作成可)に署名などをし、法務局の遺言書保管官の前で全文を口述する方式です。法務省の概要資料では、オンラインでの保管申請やウェブ会議の利用ができ、亡くなった後の検認は不要、遺言の存在を指定した人に通知する仕組みも示されています。今ある「自筆証書遺言書保管制度」(手書きの遺言を法務局が預かる制度)とは別物で、施行前の今は作れません。今の保管制度については遺言書の法務局保管制度:申請の流れ・手数料3,900円・必要書類を見てください。
施行を待つべき?今、遺言を作る人の判断材料
改正を待つかどうかは、次の点で考えると整理しやすくなります。
- 遺言を作る理由が今あるか。 遺言は判断する力があるうちにしか作れず(民法963条)、体調はいつ変わるか分かりません。待つ間に作れなくなる心配があるなら、今の方式で作り、施行後に必要なら書き直します。遺言はいつでも書き直せます(1022条)。
- 手書きが負担かどうか。 全文の自書が負担なら、待つよりも、今使える公正証書遺言を考えます。
- 押印だけが面倒なのか。 押印の任意化は手書きの負担を減らしません。押印の手間だけで先延ばしにする理由は小さいといえます。
今から書く人のチェックリストです。
- 全文・日付・氏名を手書きしたか
- 氏名の後に印を押したか
- 財産目録をパソコン等で作った場合、各ページに署名と押印をしたか
- 訂正した場所に、968条3項の方式で署名・押印したか
要件の一つずつの意味は自筆証書遺言の要件:全文自書・日付・氏名・押印と財産目録の例外で、方式ごとの費用や検認の差は自筆証書遺言と公正証書遺言の違い:費用・検認・2026年改正の比較表で比べられます。同じ改正のうち、成年後見の見直しは成年後見とは?親が認知症になった時の財産管理と2026年改正の予定で扱っています。作る前に誰に相談するかは遺言書の作成の相談先:公証役場・司法書士・弁護士・信託銀行の違いで比べています。
よくある質問
Q. 改正が施行されたら、押印のない古い遺言書も有効になりますか?
改正法の附則で、施行の日より前にされた遺言は従前の例によるとされています。施行前に押印なしで書いた自筆証書遺言は、施行後も押印が要る決まりで判断されることになります。手元に押印のない遺言書があるなら、施行を待たずに押印して書き直すか、新しく作り直します。
Q. 施行されたら、押印はしないほうがよいのですか?
改正は押印を「要らなくする」のではなく「任意にする」もので、押してはいけないという決まりではありません。押印は、本人が書いたことを示す材料の一つにもなります。施行後に書く場合も、押すかどうかは自分で選べます。
Q. 保管証書遺言ができたら、今の法務局の保管制度はなくなりますか?
改正後の民法では、普通の方式が自筆証書・保管証書・公正証書・秘密証書の4つになり、自筆証書遺言は残ります。手書きの遺言を法務局に預ける今の制度と、新しい保管証書遺言は別の仕組みです。新しい方式の手数料や手続きの細部は、施行に向けた省令などで決まる予定です。
出典・参考にした公的な情報
- 「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について(法務省)
- 民法等の一部を改正する法律案(成立日・公布日・施行の区分)(法務省)
- 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)の概要(法務省)
- 民法 第968条・第974条・第976条・第1004条(現行と未施行の改正後)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 公証事務「遺言」(公正証書遺言の作成手順・電子サイン)(日本公証人連合会)
- 自筆証書遺言書保管制度 制度の概要(法務省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。