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公正証書遺言でももめる?争いになる原因と無効が主張される場面

この記事のもくじ
  1. 公正証書遺言でももめる4つの原因
  2. 「覆す」とはどういうことか:無効の主張が出る場面
  3. 話し合いで決まらないとき、どこで扱われるか
  4. 相続人に認知症の人がいるときの公正証書遺言

公正証書遺言があっても、相続でもめることはあります。公証人が関与するので方式の不備で無効になるおそれは小さいものの、遺留分の請求、作成時の判断能力(遺言能力)の争い、遺言に書かれていない財産、受け取る人が先に亡くなった場合の4つは、公正証書でも争いの火種として残ります。どれも「公正証書だから安心」と考えて準備を省いたときに起きやすいものです。以下で原因ごとの起き方と、話し合いで決着しないときに争いを扱う場を整理します。個別の事案でどちらが正しいかの判断は弁護士の仕事なので、この記事では判断の材料までを示します。

公正証書遺言でももめる4つの原因

原因 何が起きるか 根拠 作る側の備え
遺留分 取り分が少ない相続人が、多く受け取った人に金銭を請求する 民法1042条・1046条 遺留分を意識した配分、理由を付言で伝える
遺言能力 「作った時に判断できる状態ではなかった」と無効を主張される 民法963条・3条の2 元気なうちに作る。体調が不安なら早めの日程
書かれていない財産 その財産だけ相続人全員の遺産分割協議が要る 民法907条 「その他一切の財産」の行き先も決めておく
受け取る人の先の死亡 その部分が効力を失い、協議が必要になる 民法994条・995条、日本公証人連合会Q2 予備的な遺言を同じ証書に入れる

遺留分の請求は、遺言を無効にする話ではなく、遺言は有効なまま金銭で調整する仕組みです。遺言で「長男に全部」と決めても、遺留分を侵害された配偶者や他の子は、多く受け取った人に侵害額に当たる金銭を請求できます(民法1042条・1046条)。公証人が関与していても、この請求は防げません。請求できる人、割合、期限の数字は遺言書があっても遺留分は請求される?に任せ、この記事では「公正証書でも請求は残る」という点だけを押さえます。

書かれていない財産は、遺言を作った後に増えた預金や、存在を忘れていた口座・土地などで起きます。遺言に行き先がない財産は、相続人全員の協議で分けることになり(民法907条)、ここで意見が割れると、遺言があっても結局は話し合いと調停に戻ります。

受け取る人が先に亡くなる場合について、日本公証人連合会は、長男に相続させるとした部分は長男が先に亡くなると無効になり、相続人間で改めて協議しなければ帰属が決まらないと説明しています。予備的な遺言を同じ公正証書に書いても手数料は増えないので、作成時に入れておくのが備えになります。

整理表:その争いは「無効」の話か「取り分」の話か
  • 遺言そのものを無効と主張する:遺言能力がなかった、口授がなかった、証人がなれない人だった(民法963条・969条・974条)
  • 遺言は有効のまま取り分を争う:遺留分侵害額の請求(民法1046条)
  • 遺言が及ばない部分を分ける:書かれていない財産、効力を失った部分(民法907条・994条)

「覆す」とはどういうことか:無効の主張が出る場面

「公正証書遺言を覆す」と言われるとき、中身は上の整理表の3つに分かれます。このうち遺言そのものを無効と主張するのは、主に次の場面です。

  1. 遺言能力:民法963条は、遺言をする時に能力があることを求め、3条の2は意思能力がない状態でした法律行為を無効としています。公証人は遺言者が判断能力をもって真意を述べていることを確かめて作りますが、後から医療や介護の記録をもとに争われることがあります。
  2. 方式:証人2人以上の立会いと、遺言者から公証人への口授が要件です(民法969条)。証人になれない人が立ち会っていた場合(同974条)などが問題にされます。
  3. 作成の経緯:特定の家族が強く関与していた、本人の意思と違う内容だった、といった事情が主張されることがあります。日本公証人連合会によると、当日は遺言者が真意を述べられるよう利害関係人には席を外してもらう運用です。
  4. 後から別の遺言が出てきた場合:前の遺言と食い違う部分は、後の遺言で撤回したものとみなされます(民法1023条)。公正証書が最新とは限らず、あとで書かれた自筆の遺言が見つかると、どちらが有効かが問題になります。これは無効の主張ではなく、新旧の遺言の関係を整理する話です。

認知症の診断があったかどうかだけで決まるわけではありません。日本公証人連合会は任意後見契約の案内の中で、認知症であるからといって直ちに判断能力が欠けていると評価されるわけではなく、判断能力は行為の内容によって相対的に判断されると説明しています。逆に言えば、診断がない場合でも、作成時の状態によっては争点になりえます。無効が認められるかどうかは裁判所が証拠から判断することで、記事や周りの人が決められるものではありません。遺言の効力の一般的な考え方は遺言書の効力:書いて意味があること・ないことと無効になる典型で整理しています。

話し合いで決まらないとき、どこで扱われるか

公正証書遺言は家庭裁判所の検認が要らない(民法1004条2項)ので、検認の場で争いが表に出ることはありません。そもそも検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。争いになったときに使われる場は、争いの中身で分かれます。

争いの中身 主な場 手がかり
遺留分の金銭の請求 家庭裁判所の遺留分侵害額の請求調停(収入印紙1,200円分と郵便切手) 調停の申立てだけでは請求の意思表示にならないので、内容証明郵便などで別に意思表示をすると裁判所が案内
遺言に書かれていない財産の分け方 家庭裁判所の遺産分割調停(不成立なら審判) 相手方の住所地などの家庭裁判所に申し立てる
遺言そのものの有効・無効 民事訴訟。第一審は、請求の価額が140万円を超えれば地方裁判所(裁判所法24条・33条) 家庭に関する事件は、訴える前に家庭裁判所の調停を申し立てるのが原則(家事事件手続法244条・257条)

遺言の効力をめぐる争いで、まず調停を申し立てる必要があるか、どの手続きを選ぶかは、事案の中身で変わります。相手方との交渉や手続きの代理は弁護士の仕事なので、争いが見えた段階で相談します。調停の流れは遺留分侵害額請求の流れ:話し合いから調停・訴訟までの段階と準備と遺産分割調停の流れ:申立ての費用・書類・期間と1回目の準備で扱っています。弁護士に頼むべき場面の見分け方は相続で弁護士に頼むべきとき:もめている・交渉が要る場面の見分け方を見てください。

相続人に認知症の人がいるときの公正証書遺言

「公正証書遺言があり、相続人の一人が認知症」という家族では、遺言で行き先が決まっている財産と、決まっていない財産で状況が変わります。

  • 遺言で行き先が決まっている財産:受け取る人や遺言執行者が、遺言の正本・謄本を使って名義変更を進めます。認知症の相続人の署名や実印は通常求められません。
  • 遺言に書かれていない財産:相続人全員の協議が要ります。意思能力がない状態でした協議は無効になりうる(民法3条の2)ため、その相続人に代わる人として成年後見人などを選ぶ申立てを検討します。
  • 遺留分:認知症の相続人にも遺留分はあります。本人に判断が難しい場合、後見人がついていれば、後見人が本人の利益のために請求するかを判断することになります。

作る側から見ると、相続人に認知症の人がいる、またはなりそうなときほど、すべての財産の行き先を遺言で決め、遺言執行者を指定しておく意味が大きくなります。手続きが止まる場面の詳しい整理は相続人に認知症の人がいる相続手続き:止まる場面と進め方の選択肢にまとめています。

作る段階でできる備えを、最後にまとめます。

  • 財産の一覧を作り、「その他一切の財産」の行き先まで書く
  • 受け取る人が先に亡くなった場合の予備的な遺言を入れる
  • 遺言執行者を指定し、正本・謄本の保管場所を伝えておく
  • 取り分に差をつける理由を、付言で家族に伝える
  • 体調に不安があるなら、作成を先延ばしにしない

遺言者が亡くなった後に公正証書遺言を探して取り寄せる方法は、公正証書遺言は死亡したらどうする?検索システムと写しの請求方法で説明しています。

よくある質問

Q. 公正証書遺言は、無効だと言われたら覆りやすいのですか?

公証人が方式を守って作るので、方式の不備を理由とする無効は起きにくいと日本公証人連合会は説明しています。一方、作成時に遺言の能力があったか(民法963条)は後から争われることがあり、最終的に判断するのは裁判所です。どちらが認められるかは事案ごとに異なるので、主張する側・される側とも弁護士に相談して見通しを聞きます。

Q. 公正証書遺言があっても、相続人全員で別の分け方にできますか?

遺言と違う分け方を相続人全員の合意で行う話は、遺言書と違う遺産分割の記事で扱っています。遺言執行者がいる場合は、執行を妨げる行為が制限される(民法1013条)ため、執行者を含めた調整が必要になります。合意ができれば争いは起きませんが、一人でも反対すれば遺言が基準になります。

Q. 相続人の一人が認知症だと、公正証書遺言があっても手続きは止まりますか?

遺言で行き先が決まっている財産は、受け取る人や遺言執行者が名義変更を進められるので、認知症の相続人が話し合いに加わる必要は通常ありません。止まりやすいのは、遺言に書かれていない財産を分けるときです。その相続人に意思能力がなければ協議に参加できないため、成年後見の申立てなどを考えることになります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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