相続人と遺産分割 / 手順

遺産分割協議書を自分で作成する手順:パソコンで作る時の注意7つ

この記事のもくじ
  1. 遺産分割協議書を自分で作成する6つの手順
  2. パソコンで作る時の注意7つ
  3. 相続人が遠方にいるとき:持ち回りと郵送の進め方
  4. 作った後の使い道と、自分で作るか頼むかの分かれ目

遺産分割協議書は、専門家に頼まなくても自分で作成できます。法律で決まった書式はなく、民法が求めているのは相続人全員が協議で分け方を決めることだけです(907条1項)。自分で作るときの手順は、①提出先に必要な書き方を聞く、②財産の資料をそろえる、③パソコンで下書きする、④全員に案を見てもらう、⑤人数分を印刷して署名と実印をもらう、⑥印鑑証明書を集める、の6段階です。下で、パソコンやエクセルで作るときにつまずきやすい7つの注意点と、相続人が遠方にいる場合の進め方を説明します。

遺産分割協議書を自分で作成する6つの手順

  1. 提出先を書き出し、必要な書き方を聞く。 法務局(相続登記)、金融機関、証券会社、税務署のどこに出すかを決めます。金融機関は自社の書式を用意していることがあり、全国銀行協会も「取引金融機関により必要書類が異なる場合がある」としています。
  2. 財産の資料をそろえる。 不動産は登記事項証明書、預金は通帳や残高証明書、株は証券会社の取引残高報告書を手元に置きます。協議書には、これらに載っている表記をそのまま写します。
  3. パソコンで下書きする。 法務局が公開している「遺産分割協議書の例」を土台にすると、必要な項目が漏れません。書き換え箇所と文例は遺産分割協議書のひな形の記事にまとめています。
  4. 全員に案を見てもらう。 署名押印の前に、メールや郵送で案を送り、誤字や合意と違う点がないかを確かめてもらいます。ここで直せば、刷り直しで済みます。
  5. 人数分を印刷し、署名と実印をもらう。 法務局の例のように、相続人の人数分を作って各自1通ずつ持つ形が一般的です。
  6. 印鑑証明書を集める。 協議書に押した実印の印鑑証明書を、提出先の数に合わせて集めます。通数の数え方は遺産分割協議書の必要書類で説明しています。

パソコンで作る時の注意7つ

チェックリスト:パソコン・エクセルで作るときの注意7つ
注意点 なぜ大事か やり方
1. 財産は登記事項証明書・通帳のとおりに写す 表記が違うと、同じ財産か照合できない 地番・家屋番号・口座番号を写したあと、書類と一字ずつ読み合わせる
2. 住所・氏名は印鑑証明書のとおりにする 実印と本人の結びつきを照合されるため 「1-2-3」を「一丁目2番3号」と書くなど、証明書の表記に合わせる
3. 亡くなった日は戸籍の死亡日にする 協議の日と混同しやすい 戸籍の記載を見て書く
4. 署名は本人の手書きにする 本人が内容を見て合意したことを示しやすい 氏名欄を空けて印刷し、各自が書く
5. 実印は欠けやにじみのないように押す 印鑑証明書の印影と照合される 下に厚紙を敷き、押した後に証明書と見比べる
6. 2枚以上になるときは契印する 差し替えを疑われないため ホチキスで留め、全員がつづり目にまたがるように実印を押す
7. 用紙と印刷をそろえる 長く保管し、何度も提出する書類のため A4の丈夫な紙に片面で印刷し、全員分を同じ版で刷る

注意点4について、法務局の例では前文に「それぞれに署名、押印し」と書かれています。氏名まで印刷してしまうと、後で「自分は見ていない」と言われたときに説明しにくくなるので、住所と氏名の欄は各自が手で書く形にしておくと安心です。

注意点7の用紙について、協議書そのものの紙の決まりは法令にありません。ただ、法務省民事局の手続案内は、登記申請書をA4の丈夫な紙に片面で印刷するよう求めています。協議書も同じA4・片面にそろえておくと、申請書と一緒に綴じやすくなります。

エクセルで作る場合は、セルの結合や改ページで条項の途中にページの区切りが入りやすい点に気をつけます。印刷前にPDFへ書き出し、ページの切れ目と、財産の表示が1つのページに収まっているかを確かめてください。訂正が必要になったときの直し方は協議書の押印で失敗したときの記事で説明しています。

相続人が遠方にいるとき:持ち回りと郵送の進め方

相続人が遠くに住んでいても、全員が1か所に集まる必要はありません。よく使われるのは次の2つの方法です。

方法 進め方 向いている場面
1通を順番に回す(持ち回り) 1通の協議書を、相続人Aから B、Cへと郵送で回し、全員が署名押印したら取りまとめ役に戻す 相続人が少なく、原本を1通にまとめたい
人数分を同時に送る 同じ内容の協議書を人数分印刷して各自に送り、全員が全通に署名押印して返送する 早く終えたい、各自が原本を持ちたい

どちらの方法でも、次の点を守ると行き違いが減ります。

  1. 送る前に、案の段階で内容に合意してもらっておく。
  2. 署名する場所、実印を押す場所、契印の位置に付箋を貼る。
  3. 印鑑証明書を何通、いつまでに返送するかを手紙に書く。
  4. 届いたかどうかを確かめられる郵便(書留など)で送り、返信用封筒を同封する。
  5. 協議書の日付は、最後の人が署名押印した日以降にする。

文例(同封する手紙):「先日お送りした案のとおりの遺産分割協議書を2通お送りします。付箋の箇所に住所とお名前を手書きし、ご実印を押してください。2枚目と1枚目のつなぎ目にも押印をお願いします。印鑑証明書2通とあわせて、〇月〇日までに同封の封筒でご返送いただけますか。」

相続人と連絡が取れない、返事がないという場合は、持ち回り以前の問題になります。その場合の進め方は兄弟と連絡が取れないときの記事にあります。

作った後の使い道と、自分で作るか頼むかの分かれ目

できあがった協議書と印鑑証明書は、相続登記の申請、預金の払戻し、株の名義変更、相続税の申告などで使います。提出先ごとに一緒に出す書類が違うので、遺産分割協議書の必要書類で確かめてから出してください。全体の流れを最初から確かめたいときは遺産分割協議書の書き方の全手順に戻ると、抜けている段階が見つけやすくなります。

自分で作るのに向いているのは、相続人の間で分け方の合意ができていて、財産が実家と数口の預金くらいにまとまっている家族です。反対に、相続人に未成年や認知症の人がいる、分け方に争いがある、財産の種類が多い場合は、専門家に頼むほうが結果的に早く終わることがあります。他人の依頼を受けて報酬を得て協議書を作ることは、行政書士などの資格者の業務とされているので(行政書士法1条の3・19条)、頼むときは資格者かどうかを確かめます。頼み先の違いは遺産分割協議書の依頼先の比較で整理しています。

協議書だけでなく、戸籍集めや相続登記、預金の解約まで手が回らないときは、相続手続きの代行サービスにまとめて頼む方法もあります(PR)。見積書で、どの手続を、どの資格者の名前で行うかを確かめてから選んでください。

よくある質問

Q. 遺産分割協議書はエクセルで作ってもいいですか?

作れます。協議書の形式に法律の決まりはないので、ワープロでもエクセルでもかまいません。ただしエクセルは印刷するとページの区切りが画面と変わりやすく、条項の途中でページが分かれることがあるので、PDFに書き出して全体の見え方を確かめてから印刷すると安心です。

Q. 自分で作った協議書の原本を法務局に出したら、銀行に出す分がなくなりませんか?

法務局では、添付書類の原本の還付を請求できます。コピーに「原本に相違ありません」と書き、登記申請書に押印した申請人が署名(記名)押印して、原本と一緒に出すと、調査が終わった後に原本を返してもらえます。相続関係説明図を出せば、戸籍の証明書はコピーなしで返してもらえます。ただし、登記申請のためだけに作った書類や一定の重要な書面は還付できないと法務省の手続案内に書かれているので、協議書を返してもらえるかは、出す前に法務局に問い合わせて確かめてください。銀行に出す分が足りなくなるのが心配なときは、人数分の協議書を作っておく方法があります。

Q. 自分で作った協議書を、法務局でチェックしてもらえますか?

法務局は、遺産の分け方や協議書の作り方の相談には応じないと案内しています。予約制の登記手続案内では、協議書を添えて出す相続登記の申請手続について聞けます。協議書の内容を確かめてほしいときは、行政書士・司法書士・弁護士に相談します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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