自宅を売った時の譲渡所得税の3000万円控除:要件と期限
この記事のもくじ
自宅を売ったときの譲渡所得税の3000万円控除(正式には居住用財産の譲渡所得の特別控除)は、売った利益から最高3,000万円を差し引ける制度です。所有期間の長さは問われず、短期でも使えます。ただし、使うには確定申告が必要で、「住まなくなってから3年目の年末までに売る」「親族には売らない」「前年・前々年に同じ特例を使っていない」といった要件があります。この記事では、国税庁 No.3302 に沿って、要件、期限、他の特例との関係を整理し、相続した空き家の3000万円控除と見分けるポイントも示します。
3000万円控除を使える家とは、どんな家ですか?
国税庁 No.3302 では、次のいずれかを売る場合が対象です。
- 現に住んでいる家屋
- 以前住んでいた家屋:住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 上の家屋とあわせて売る敷地や借地権
- 家屋を取り壊した後の敷地(下の条件を満たすもの)
- 災害で家屋が滅失した後の敷地(期限あり)
複数の家を持っているときは、主として住んでいた家屋だけが対象です。別荘や、この特例を受けるためだけに入居した家、新築期間中の仮住まいは対象外です。
期限の数え方の例(筆者の日付の例)です。2024年6月15日に引っ越して住まなくなった場合、3年を経過する日は2027年6月15日で、その日が属する年の12月31日、つまり2027年12月31日までに売れば対象です。この期限が、売るか貸すか迷っているうちに過ぎてしまう例が多いので、住まなくなった日をカレンダーに書いておきます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 契約の時期 | 家屋を取り壊した日から1年以内に、敷地の売買契約を結ぶ |
| 売る期限 | 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る |
| 取り壊し後の使い方 | 取り壊してから契約までの間、貸駐車場など他の用途に使わない |
使えない場合は、どんなときですか?
次のいずれかに当たると、3000万円控除は使えません(国税庁 No.3302)。
- 親子・夫婦などの特別の関係がある人へ売った:生計を一にする親族、売った後その家屋に同居する親族、内縁の人、特殊な関係のある法人も含まれます。
- 売った年の前年・前々年に、この特例(空き家特例を除く)や、マイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けている。
- 売った年・前年・前々年に、買換えの特例や交換の特例を受けている。
- 売った家屋や敷地に、収用等の特別控除など、他の特例を受けている。
家を2回、近い時期に売るときは、2の「前年・前々年」に注意します。1回使うと、翌年と翌々年は使えず、3年目から使えます。
他の特例とは、どう組み合わせますか?
自宅を売るときに検討する特例は、3000万円控除のほかにもあります。組み合わせの可否を整理します(国税庁の説明による)。
| 特例 | 3000万円控除との関係 | ひとこと |
|---|---|---|
| 所有期間10年超の軽減税率(No.3305) | 併用できる | 控除後の金額に、低い税率を適用する |
| 特定のマイホームの買換え特例(No.3355) | 併用できない | どちらか一方を選ぶ。買換え特例は課税の繰り延べ |
| 住宅ローン控除(新居) | この特例を受けると受けられない場合がある | 入居年とその前年・前々年に受けた場合など |
| 譲渡損失の損益通算・繰越控除 | 前年・前々年に受けていると使えない | 損失が出るときは別の特例を検討 |
買換え特例との比べ方は譲渡所得税の買い替え特例で扱います。住み替えで新居のローン控除と比べるときは住み替えの税金も参考になります。3000万円控除と買換え特例のどちらを選ぶかで、合計所得金額が変わり、家族の扶養控除や配偶者控除に影響する場合があります。
税額は、どのくらい変わりますか?
仮の数字で計算します。すべて筆者の計算で、実際は取得費や譲渡費用で変わります。
売却代金5,000万円、取得費と譲渡費用の合計が1,800万円なら、譲渡所得は3,200万円です。3000万円控除を使うと、課税される譲渡所得は200万円になります。所有期間が5年超の長期譲渡で、税率が所得税15%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)・住民税5%の合計約20.315%なら、税額は200万円×20.315%=約40万6,300円です(国税庁 No.3208)。控除を使わないと、3,200万円×20.315%=約650万円です。差は約609万円になります。
さらに、売った年の1月1日で家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていれば、所有期間10年超の軽減税率が併用できます(国税庁 No.3305)。課税譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は所得税10%・住民税4%になり、上の200万円には、所得税10%(20万円)、復興特別所得税(所得税額の2.1%、4,200円)、住民税4%(8万円)で、合計28万4,200円です。この場合は、控除なしより約622万円軽く、軽減税率なしの控除だけより約12万円軽くなります。
申告には、何を用意しますか?
3000万円控除は、確定申告をしなければ受けられません(国税庁の手引き)。申告期間は、売った年の翌年2月16日から3月15日です。
- 売買契約書、仲介手数料などの領収書(譲渡費用)
- 買ったときの契約書など、取得費が分かる書類
- 登記事項証明書(不動産番号の記載で省略できる場合あり)
- 譲渡所得の内訳書[土地・建物用](国税庁サイトで様式と記載例がある)
- 売買契約日の前日の住民票の住所と、売った家の所在地が違う場合は、戸籍の附票の写しなど居住の事実を示す書類
申告の全体の流れは不動産売却の確定申告のやり方で扱います。
相続した空き家の3000万円控除とは、何が違いますか?
名前が似ていますが、別の特例で、使える人も家も違います。
| 比べる点 | 自宅の3000万円控除(この記事) | 相続した空き家の3000万円控除 |
|---|---|---|
| 売る人 | 自分が住んでいた人 | 空き家を相続した相続人 |
| 対象の家 | 住んでいた家屋 | 昭和56年5月31日以前に建築、区分所有登記なし、被相続人が住んでいた家 |
| 期限の考え方 | 住まなくなってから3年目の年末 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日、かつ2027年12月31日まで |
| 売却代金の条件 | 国税庁 No.3302 に金額の上限の記載なし | 1億円以下 |
| 確認書 | 不要 | 市区町村の被相続人居住用家屋等確認書が必要 |
| 相続人3人以上のとき | 上限は3,000万円 | 1人2,000万円 |
相続した親の家に自分が住んでいなかった場合は、空き家の特例を検討します。要件は相続した空き家の3000万円控除の要件と期限にまとめています。相続したマンションの場合はマンションは空き家の3000万円控除の対象外?で確かめてください。
売却前に、家の価格帯を知っておくと、控除でどこまで利益が引けるかの見当がつきます。複数の不動産会社に査定を頼む方法があります。
よくある質問
Q. 税額が0になるなら、確定申告はしなくてよいですか?
3000万円控除は、確定申告をして初めて受けられる特例です。控除で課税される所得がなくなる場合でも、申告書と譲渡所得の内訳書を税務署へ出します。国税庁の手引きにも、確定申告をすることにより特例の適用を受けられると書かれています。
Q. 住み替えで新しい家を買う場合、住宅ローン控除は使えますか?
この特例を受けると、入居した年、その前年、前々年に受けた場合は、新居の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は受けられません。また、入居年の翌年から3年目までのいずれかの年に、住宅ローン控除の対象でない資産を売ってこの特例を受けた場合も、同様に受けられません。どちらが有利かは新居の借入額で変わるので、税理士に比べてもらいます。
Q. 子どもや孫に売った場合も対象になりますか?
親子や夫婦など、特別の関係がある人への売却は対象外です。生計を一にする親族、売った後その家に同居する親族、内縁の人、特殊な関係のある法人も含まれます。親族間で家を移すときは、売買でなく贈与などの形が別の税の対象になるため、先に税務署に相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁)
- No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁)
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
- No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例(国税庁)
- No.3208 長期譲渡所得の税額の求め方(国税庁)
- 租税特別措置法 第35条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。