住み替えの税金:3,000万円控除と住宅ローン控除の併用の注意
この記事のもくじ
住み替えで旧居に居住用財産の3,000万円控除を使うと、新居の住宅ローン控除は受けられなくなります。併用できない範囲は「新居に入居した年とその前2年・後3年の計6年間」で、その間に旧居の売却について3,000万円控除、10年超所有の軽減税率、買換え特例のいずれかを受けていると、新居の住宅ローン控除が使えません(国税庁)。旧居の売却で売却益が出ない場合は、これらの特例を使う必要がないので、住宅ローン控除をそのまま使えます。売却益が出るときは、売却益の税金を減らす特例を取るか、住宅ローン控除を取るかを数字で比べて選びます。
住み替えで出てくる税の特例と、住宅ローン控除との関係
住み替えの旧居側で使える特例は3つあり、損が出たときの特例が1つ、新居側の住宅ローン控除が1つです。関係を表にまとめます。
| 特例 | 中身 | 住宅ローン控除との関係 |
|---|---|---|
| 居住用財産の3,000万円特別控除 | 売却益から最高3,000万円を引く。所有期間の長さは問わない | 併用できない |
| 10年超所有の軽減税率 | 所有期間10年超の居住用財産で、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は所得税10%(住民税4%) | 併用できない |
| 特定の居住用財産の買換え特例 | 売却益への課税を新居の売却時まで繰り延べる(非課税ではない) | 併用できない |
| 買換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除 | 旧居を売って損が出たとき、他の所得と通算し、残りを翌年以後3年内に繰り越す | 併用できる |
| 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) | 年末のローン残高の0.7%を所得税から引く(引ききれない分は一部が住民税から引かれる)。上限額と期間は住宅の区分と入居年で決まる | ― |
3,000万円控除と10年超の軽減税率は同時に使えます。一方、買換え特例は3,000万円控除・軽減税率とは併用できず、どれを取るかの選択になります。買換え特例の仕組みは譲渡所得税の買い替え特例:課税の繰り延べと3,000万円控除の選択で説明し、この記事は住宅ローン控除との関係に絞ります。
- 3,000万円控除:旧居で使うと新居のローン控除は不可
- 10年超の軽減税率:同じく不可
- 買換え特例:同じく不可(3,000万円控除・軽減税率とも併用不可)
- 譲渡損失の損益通算・繰越控除:ローン控除と併用可
- 旧居の売却益がなく、どの特例も使わない:ローン控除はそのまま使える
併用できない6年間の数え方
住宅ローン控除の要件には、居住年およびその前2年、その後3年の計6年間に、上の3つの特例(および交換の特例など)の適用を受けていないこと、という条件があります。旧居の売却年を基準に見ると、国税庁の案内(旧居側のページ)は「入居した年、その前年または前々年に旧居の特例を受けた場合」と「入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年に特例を受ける場合」の両方を、住宅ローン控除が受けられない場合として挙げています。
売却年と入居年を並べて、判定の例を作ります。旧居を2026年に売って3,000万円控除を使ったとします(筆者の例)。
| 新居の入居年 | 6年間の範囲 | 2026年の売却は範囲内か |
|---|---|---|
| 2022年 | 2020年〜2025年 | 範囲外(併用の制限にかからない) |
| 2023年 | 2021年〜2026年 | 範囲内(住宅ローン控除は受けられない) |
| 2026年 | 2024年〜2029年 | 範囲内(受けられない) |
| 2028年 | 2026年〜2031年 | 範囲内(受けられない) |
| 2029年 | 2027年〜2032年 | 範囲外(制限にかからない) |
なお、相続した空き家を売るときの3,000万円控除は別の特例です。住宅ローン控除との関係は、売る前に所轄税務署か税理士に確かめてください。
通常の住み替えでは、旧居を売る年と新居に入る年が近いため、たいてい範囲内に入ります。範囲の外に出すには売却と入居を3年以上ずらす必要がありますが、旧居の3,000万円控除は「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売ることが要件なので、両立は現実的ではありません。
売却益が出ない・出るとき:どちらを選ぶかの比べ方
売却益が出ない場合:売却額が取得費と譲渡費用の合計以下なら、そもそも譲渡所得税がかからず、3,000万円控除などの特例を使う理由がありません。特例を使わなければ併用制限の問題も起きず、新居の住宅ローン控除を受けられます。
売却益が出る場合:3,000万円控除を使えば、売却益が3,000万円までなら課税される額がゼロになります。ただし新居の住宅ローン控除を失います。比べるときは、次の3つを数字にします。
- 特例を使わなかった場合の譲渡所得税(所有期間5年超なら所得税15%+住民税5%、復興特別所得税を加えて約20.3%)
- 住宅ローン控除で戻る合計額の見込み(年末残高×0.7%、住宅の区分ごとの年間上限と期間)
- 住宅ローン控除の要件に当たるか(新居の床面積50㎡以上、返済期間10年以上のローン、その年の合計所得金額2,000万円以下など)
筆者の計算で例を示します。売却益が2,000万円、新居は中古の「その他の住宅」で、住宅ローン控除の上限が年14万円・期間10年の場合です。
| 選び方 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 3,000万円控除を使う | 2,000万円−3,000万円<0 のため課税される額はゼロ。住宅ローン控除は受けられない | 税金0円、ローン控除0円 |
| 特例を使わない | 2,000万円×(所得税15%+住民税5%)+復興特別所得税(所得税300万円×2.1%=6万3,000円)=406万3,000円 | 税金約406万円、ローン控除は最大140万円(14万円×10年) |
この仮の数字では、特例を使う場合と使わない場合の税金の差が約406万円で、ローン控除の最大140万円を足し引きしても約266万円の差が残ります(406万3,000円−140万円)。売却益が小さい場合は逆になります。同じ条件で売却益が300万円なら、特例を使わない税金は300万円×15%=45万円、住民税が15万円、復興特別所得税が45万円×2.1%=9,450円で、合計約60.9万円です。ローン控除の最大140万円のほうが大きいので、特例を使わずにローン控除を取る選び方になります(いずれも筆者の仮の計算)。住宅の区分(認定住宅か、省エネ基準に適合しているか、新築か中古か)によって上限額と期間が違うため、新居の条件は国税庁の住宅借入金等特別控除(新築等)と中古住宅の場合の表で確かめます。個人の税額を出して「こちらが得」と決めるのは税理士の仕事で、ここで示すのは比べ方までです。
売って損が出たとき:ローン控除と併用できる特例
旧居を売って損が出た場合は、買換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除を使えます。この特例は住宅ローン控除と併用できます(国税庁)。
- 旧居:売った年の1月1日で所有期間が5年を超える居住用財産
- 新居:売った年の前年1月1日から翌年12月31日までに取得し、床面積50㎡以上。取得した翌年12月31日までに入居し、取得した年の年末に返済期間10年以上のローンがあること
- 効果:損失を給与所得などと損益通算でき、引ききれない分は翌年以後3年内に繰り越せる
- 期限:2027年12月31日(令和9年12月31日)までの売却
売った年の前年・前々年に3,000万円控除や軽減税率を受けている場合は使えません。住宅ローンが残る家を残高より安く売る場合の別の特例(新居の取得が要らないもの)や、ローンの組み方は住み替えの住宅ローン:残債がある場合の住み替えローンと審査で扱います。
申告と確認先
3,000万円控除、軽減税率、買換え特例はいずれも、売った翌年に確定申告をして初めて適用されます。申告期間は原則として翌年の2月16日から3月15日です。売却の税金全体の考え方は不動産売却の税金:譲渡所得の計算・税率・特例の全体と確定申告、3,000万円控除の要件と期限は自宅を売った時の譲渡所得税の3000万円控除:要件と期限にあります。
特例の選択で金額が大きく変わる場面なので、売買契約の前に、税務署の電話相談や税理士に自分の数字で試算してもらうと安心です。相談窓口と受付時間は相続手続きの無料相談窓口一覧:登記・税・売却まで番号と受付時間で確かめられます。
よくある質問
Q. 3,000万円控除を使うと、住宅ローン控除はいつまで使えませんか?
期間が決まっているのは「新居に入居した年とその前2年・後3年の計6年間」のどこかで旧居の特例を受けたかどうかです。当てはまると、その新居については住宅ローン控除を受けられません。旧居の売却年と新居の入居年が近い通常の住み替えでは、ほぼこの6年間に入ります。
Q. 売却益が3,000万円以下で税金がゼロになる場合も、申告は必要ですか?
必要です。国税庁は、居住用財産の3,000万円控除について、一定の書類を添えて確定申告をすることで適用を受けられると案内しています。控除で課税される額がゼロになっても、申告しなければ特例は使えません。
Q. 売却益が出るかどうかが、新居のローンを組む時点で分かりません。
売却益は、売った価格から取得費と譲渡費用を引いて計算するため、売買契約が固まってから見通しを立てられます。ローンの申込みと税の特例の選択は別の手続きなので、契約書や購入時の書類をそろえて計算し、翌年の申告までに決めます。計算は税理士か税務署に頼む場面です。
出典・参考にした公的な情報
- No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁)(国税庁)
- No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁)(国税庁)
- No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例(国税庁)(国税庁)
- No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(国税庁)(国税庁)
- No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)(国税庁)(国税庁)
- No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)(国税庁)(国税庁)
- No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(国税庁)(国税庁)
- No.3102 譲渡所得の申告期限(国税庁)(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。