暦年贈与のサービス:信託銀行の手続き代行の仕組みと手数料
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信託銀行などの暦年贈与のサービスは、商品によって毎年の贈与契約の段取り(契約書のひな形・案内)と振込を手伝うものと、資金を信託に預けて受益権を渡す形のものがあります。贈与そのものは親子の契約で(民法549条)、110万円を超えたときの贈与税の申告は受け取った人がする手続きです。申告書の作成や自分の場合の税額の相談を業として引き受けられるのは税理士なので(税理士法2条・52条)、銀行のサービスにはふつう含まれません。手数料は各行の手数料表で決まるため、何を任せられて、何が自分に残るかを確かめてから、自分でする場合と比べます。
暦年贈与のサービスで任せられること・任せられないこと
信託銀行など、内閣総理大臣の認可を受けた金融機関は、信託業とあわせて、財産の管理や、財産の取得・処分に関する代理または媒介、代理事務などの業務を営めます(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律1条)。暦年贈与の手続きを手伝うサービスもこうした銀行の商品の一つですが、どこまでを銀行が担うかは商品ごとに違います。商品説明書を読むときは、贈与の流れを分けて見ると比べやすくなります。
| 贈与の流れ | 銀行のサービスで確かめること | サービスに含まれない場合に担う人 |
|---|---|---|
| 1. その年の贈与額と相手を決める | 毎年あらためて意思を確認する手順があるか | 親(あげる人)と子・孫(もらう人) |
| 2. 贈与契約書を作る | ひな形の提供か、書類の作成・送付までか | 親子で作成(必要なら行政書士) |
| 3. 署名・受諾の記録 | 双方の署名をどう集めるか、控えは誰が持つか | 親子で保管 |
| 4. 振込 | 振込元・振込先の口座の条件(同じ銀行の口座が要るか) | 親が自分で振り込む |
| 5. 贈与税の申告(110万円超) | 申告は含まれないのがふつう。提携先の紹介の有無 | もらう人本人、または税理士 |
| 6. 記録の保管と毎年の案内 | 履歴の書面が出るか、翌年の案内が来るか | 親子で保管 |
表の5のとおり、贈与税の申告書を作ったり、「この金額なら申告不要」と個別に判断したりすることは、税理士でない人には有償・無償を問わずできません。サービスの案内に税の説明があっても、それは制度の一般的な説明です。自分の場合の税額は、税務署で一般的な計算方法を聞くか、税理士に確かめます。
三菱UFJ信託と三井住友信託の商品:公式ページに書かれていること
「暦年贈与 信託銀行」で調べると、仕組みの違う2種類の商品が出てきます。次の表は、2026年10月23日に各行の商品ページ(三菱UFJ信託銀行の「暦年贈与信託 おくるしあわせ」、三井住友信託銀行の「暦年贈与サポート信託」)で確かめた、その商品自身の説明です。条件や手数料は変わることがあり、三井住友信託の手数料の表示は2024年1月1日現在のものなので、申込みの前に最新の商品概要説明書と手数料の案内で確かめてください。
| 項目 | 三菱UFJ信託銀行「暦年贈与信託 おくるしあわせ」 | 三井住友信託銀行「暦年贈与サポート信託」 |
|---|---|---|
| 仕組み | 元本保証の金銭信託に資金を預け、贈与する人が書面で指定した相手に、指定した金額の受益権を渡す | 贈与契約書に基づき、贈与する人の同行の普通預金口座から、贈与を受ける人の同行の普通預金口座へ入金する |
| 金額・期間 | 信託金額500万円以上3,300万円以下(贈与する人1人につき1契約)、信託期間5年以上30年以下 | 契約期間は5年(続けるには別の手続き)。毎年1月〜11月に贈与し、契約書は11月末日までに提出 |
| 相手の範囲 | 契約時に、受益者の候補を3親等以内の親族から指定 | 贈与を受ける人は3親等内の国内居住の親族で、同行に普通預金口座がある人 |
| 手数料 | 管理報酬は無料。運用報酬は、金銭信託5年ものの運用収益から予定配当額を差し引いた額 | 「かかりません」(ページ上の表示日は2024年1月1日現在。表の確認日の2026年10月23日より前の表示) |
| 贈与の回数 | 原則として年1回 | 毎年の贈与契約書ごと |
三菱UFJ信託銀行は、贈与契約書の作成や振込みといった贈与手続きが不要になる点を特長に挙げています。一方で、まとまった金額(500万円以上)を信託に預ける形なので、手元の資金や運用報酬の仕組みを先に確かめる必要があります。同じページには、贈与額によっては他の相続人の遺留分を侵害することがあるため、法務上の取扱いは弁護士等の専門家に相談するよう書かれています。どの贈与が遺留分の計算に入るかは生前贈与と遺留分:何年前の贈与まで遺留分の計算に入るかで確かめられます。
三井住友信託銀行のほうは、契約書への署名捺印は贈与する人と受ける人の本人がするもので、贈与の手続きが完了した後は取消しや払戻しに応じられない、と注意書きがあります。受ける人の通帳と届出印は、受ける人本人が管理するよう明記されています。贈与税の取扱いは税務署や税理士に相談するよう案内されており、申告まで引き受ける商品ではありません。
手数料表で確かめる5つの項目
手数料は銀行・商品ごとに決まっていて、公的な基準や統計はありません。上の2商品のように手数料が無料でも、運用報酬の有無や口座の条件に違いが出ます。比べるときは、金額の大小より先に、次の項目を並べます。
- 申込み・契約時の手数料:最初にかかる額と、それに含まれる手続き。
- 毎年の手数料:贈与1件ごとか、契約1件ごとか。孫が複数いる場合の数え方。
- 振込の手数料:同じ銀行の口座どうしと、他行あての違い。
- 口座の条件:贈与する人・受け取る人が、その銀行に口座を持つ必要があるか。預かり資産の額などの条件があるか。
- やめるとき・亡くなったときの扱い:途中で解約する場合の手数料、贈与する人が亡くなった場合の契約の終わり方。
自分で暦年贈与をする場合にかかるのは、振込の手数料と、贈与契約書を作る手間です。たとえば親が成人した子に毎年100万円を振り込むだけなら、贈与税はかからず申告も要りません(国税庁 No.4402)。一方、親から18歳以上の子への200万円の贈与なら、(200万円−110万円)×10%=9万円の贈与税がかかり、翌年2月1日〜3月15日に申告と納税をします(No.4408・No.4429、筆者の計算)。サービスの手数料を、こうした自分でする場合の手間と比べて判断します。
定期贈与とみなされないために:サービスを使っても残る注意
暦年贈与で気をつけたいのが、毎年の贈与ではなく「まとめた一つの約束」と見られることです。「毎年100万円ずつ10年間」と最初に約束すると、約束をした年に10年分の権利の贈与とみられるというのが国税庁の説明です(No.4402 の Q&A。詳しくは暦年贈与の契約書の書き方)。
サービスの申込みの書類に、何年分・毎年いくらの贈与をあらかじめ約束する文言がないかを確かめます。毎年その年の贈与額を決めて、その年の契約書を作る流れになっているほうが、記録の上でも分かりやすくなります。
もう一つは名義預金の問題です。贈与は、あげる人の意思表示と、もらう人の受諾で成立します(民法549条)。受け取った子が口座の存在を知らない、通帳と印鑑を親が持ち続けている、といった状態では、サービスを使っていても贈与が成立していないと見られることがあります。もらった口座は、もらった本人が管理します。毎年の契約書の書き方は暦年贈与の契約書の書き方:ひな形と毎年作る理由・保管の仕方にひな形を載せています。
文例(契約書の本文):「贈与者〇〇は、令和〇年〇月〇日、受贈者〇〇に対し、現金〇〇円を贈与することを約し、受贈者はこれを受諾した。贈与者は、令和〇年〇月〇日までに受贈者名義の口座に振り込む。」
相続税の加算と、終わった制度・続く制度
銀行のサービスを使っても、相続税の生前贈与加算の扱いは変わりません。相続や遺贈で財産を取得する人が受けた贈与は、相続開始が2026年12月31日までなら3年以内の分が、2027年1月1日以後の相続から段階的に延び、2031年1月1日以後は7年以内の分が相続税の計算に足し戻されます(No.4161)。相続で財産を取得しない孫への贈与は、原則としてこの加算の対象になりません。
信託銀行で扱われてきた制度には、すでに終わったものもあります。教育資金の一括贈与の非課税(金融機関との教育資金管理契約を使う制度)は2026年3月31日で終わり、それより後に新しく使うことはできません(No.4510)。いま銀行で「教育資金の贈与」の案内を受けた場合は、終わった制度の説明ではないかを確かめます。必要なつど直接支払う教育費は、扶養義務者からの通常必要なものなら贈与税がかからない扱いがあります(No.4405)。
サービスを使うか自分でするかの分かれ道
| 向いている | 向いていない・先に確かめたい |
|---|---|
| 孫が多く、毎年の振込と書類の管理が負担 | 贈与先が子1人で、振込と契約書を自分で作れる |
| 子が遠方に住み、署名や控えのやり取りに手間がかかる | 手数料を払っても、税の相談は別に税理士へ頼む必要がある |
| その銀行にすでに親子の口座がある | 親の物忘れが出始めていて、毎年の意思確認ができるか不安 |
最後の「親の判断能力」は特に大切です。贈与は契約なので、贈与する時に親に意思能力がなければ無効になります(民法3条の2)。サービスの契約が続いていても、親が判断できなくなれば、その年の贈与はできなくなります。親の物忘れが気になり始めた人は親が認知症になったら暦年贈与はできない?意思能力と代わりの方法を先に読んでください。暦年贈与の基本は暦年贈与とは?毎年110万円の贈与のやり方と7年加算の影響で、銀行以外の相談先は生前贈与の相談先:税務署・税理士・司法書士・銀行の違いと費用で比べています。
よくある質問
Q. 銀行のサービスを使えば、税務署から名義預金と言われることはなくなりますか?
サービスを使ったかどうかで決まるのではなく、毎年の贈与が契約として成立しているか(あげる人の意思表示と、もらう人の受諾)、もらった人が自分の財産として管理しているかで判断されます。銀行の手続きは記録を残す助けにはなりますが、受け取った子が通帳を管理せず、親が引き続き使っていれば、サービスを使っていても同じ問題が残ります。
Q. 毎年同じ日に同じ金額を振り込むと、定期贈与になりますか?
日付や金額が同じかどうかより、毎年その年の契約として結んでいるかが分かれ目です。最初に「10年間毎年100万円」と約束すると、約束した年に10年分の権利の贈与とみられます。気になる場合は、年ごとに金額や時期を決め直して契約書を作ります。
Q. 贈与する親が亡くなったら、サービスはどうなりますか?
贈与は親子の契約なので、あげる人が亡くなれば、その後の年の贈与は行われません。サービスの契約の終わり方や手数料の精算は銀行ごとに決まっているので、申込みの前に約款や商品説明書で確かめます。なお、亡くなる前の一定期間の贈与は、相続で財産を取得する人については相続税の計算に足し戻されます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第3条の2・第549条・第550条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- タックスアンサー No.4402 贈与税がかかる場合(Q&A 毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合)(国税庁)
- タックスアンサー No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)(国税庁)
- タックスアンサー No.4429 贈与税の申告と納税(国税庁)
- タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁)
- タックスアンサー No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税(国税庁)
- タックスアンサー No.4405 贈与税がかからない場合(国税庁)
- 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律 第1条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 税理士法 第2条・第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。