不動産売却の流れ / 悩み整理

DVがある離婚で家を売却する:安全を守る順番と相手と会わない手続き

この記事のもくじ
  1. 安全の確保が先、家の話は後
  2. 住所を知られないための二つの手続き
  3. 保護命令:相手の接近や退去を求める手続き
  4. 相手と会わずに家を売る:代理人を通す考え方
  5. 相談先の選び方

危険が迫っているときは、家の話より先に110番に通報してください。 緊急ではないが相談したいときは、DV相談+(0120-279-889、電話は24時間、チャットは12:00〜22:00)、DV相談ナビ(#8008、近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる。受付は各センターの時間内で、24時間ではありません)、警察相談専用電話(#9110、平日の日中が基本で、都道府県で異なります)が使えます。窓口の一覧は相続・不動産売却の無料相談窓口一覧にもあります。

家の売却は、安全を確保し、住所を守る手続きを済ませてから、相手と会わずに進められる形にして始めます。急ぐ必要はありません。この記事では、順番、住所を守る二つの手続き、保護命令、代理人を通した売却の考え方を示します。

安全の確保が先、家の話は後

家のことを考え始めると、「今のうちに売ってしまいたい」「相手に家を売られるのが怖い」と気持ちが急ぎがちです。順番を決めておくと、判断を誤りにくくなります。

手順:安全を守る順番
  1. 安全の確保:避難先、周囲の人、相談窓口につながる(危険なときは110番)
  2. 住所を守る手続き:住民票等の支援措置、登記の代替措置を、相談機関と相談しながら進める
  3. 保護命令を考える:相手の接近や、同居中の家からの退去を求める必要があるか
  4. 家とローンの数字を集める:名義、ローン残高、査定額。相手と会わずにできる範囲で
  5. 代理人を決める:交渉は弁護士。売却は不動産会社、登記は司法書士

相談窓口は、住所を守る手続きの入口にもなります。総務省のDV等支援措置では、まず警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などに相談し、住民登録のある市区町村に申出書を出す流れです。窓口の使い分けに迷う場合は、DV相談+か#8008で、今の状況に合う窓口を聞いてください。

住所を知られないための二つの手続き

家と住所は結びついています。住民票と、不動産の登記の二か所に、住所の情報が載ります。それぞれに別の手続きがあります。

住民票・戸籍の附票:DV等支援措置

DV等支援措置は、住民基本台帳の一部の写しの閲覧、住民票の写し等の交付、戸籍の附票の写しの交付を制限する制度です。対象は、配偶者からの暴力(DV)の被害者のほか、ストーカー行為等や児童虐待の被害者などです。同じ住所に住む家族も、あわせて申し出られます。

  • 申出先:住民票のある市区町村(戸籍の附票は本籍地の市区町村)。内閣府は、転入手続きと同時に申し出るよう案内しています
  • 確認の方法:市区町村が、警察や配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などの意見を聴いて、必要性を確かめる
  • 期間:確認結果を知らせた日から1年。期間終了の1か月前から延長を申し出られる
  • 加害者と分かっている人からの請求:不当な目的があるものとして、閲覧や交付をしない扱い

住民票を移すと現住所が相手に知られるおそれが強いなど、異動できない事情があるときの児童手当や国民健康保険の扱いは、内閣府の「新しい生活を始めたい」のページに書かれています。窓口で、その事情を伝えます。

不動産の登記:代替措置(公示用住所)

登記記録には、所有者の住所が載ります。不動産適正取引推進機構の手引は、登記記録は手数料を払えば、所有者以外でも登記事項証明書を取り寄せられると説明しています。売却や住所変更で、自分の住所が新しく登記に載るとき、その住所が証明書に出て、取り寄せた相手に知られるおそれがあります。

法務省は、2024年4月1日(令和6年4月1日)から、登記事項証明書等における代替措置を始めています。

  • 対象:登記記録に載っている自然人で、住所が明らかになると生命・身体に危害が及ぶおそれがある場合など。DV、ストーカー、児童虐待の被害のおそれが例に挙がっている
  • 内容:登記事項証明書の住所を、本人と連絡が取れる「公示用住所提供者」の住所(または事務所等の所在地)に置き換える。住所そのものを消すのではなく、別の住所を表示する仕組み
  • 申出先:全国のどの登記所(法務局、地方法務局、その支局・出張所)でもよい。登記記録に載っている本人だけが申し出られる。書面で出し、オンラインは使えない
  • 添付する書類:印鑑証明書、措置要件を述べる陳述書とその裏づけ(DV支援措置の通知、診断書など)、公示用住所提供者の承諾書など。事実確認の面談が行われることもある

売却で新しく住所が記録される登記(所有権の移転など)を申請するときは、代替措置の申出を同時に出し、書面に相互の関係を書く取扱いが定められています。住所変更登記の義務化とも関わるので、期限や過料は住所変更登記の義務化で確かめつつ、登記を申請する前に、法務局か司法書士に代替措置のことを伝えます。

保護命令:相手の接近や退去を求める手続き

裁判所の保護命令は、配偶者や生活の本拠を共にする交際相手からの身体への暴力などを防ぐため、被害者の申立てに基づき、裁判所が加害者に一定の行為を禁じる命令です。違反すると、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象になります。

種類は六つです。申立人への接近禁止命令(1年間)、電話等禁止命令、子への接近禁止命令、子への電話等禁止命令(子が15歳以上なら子の同意が要る)、親族等への接近禁止命令、退去等命令です。このうち家に関わるのは退去等命令で、申立人と生活の本拠を共にしている住居から退去し、その付近に近づかないことを命じます。期間は原則2か月で、建物の所有者または賃借人が申立人だけなら6か月です。

申立てには、事前に配偶者暴力相談支援センターか警察署に相談した事実が必要です。相談していない場合は、公証役場で宣誓供述書を作る方法があります。申立手数料は収入印紙1,000円と郵便切手で、申立先は相手方の住所、申立人の住所・居所、暴力が行われた地のいずれかを管轄する地方裁判所です。要件に当たるかの判断は裁判所が行い、申立書の書き方は、窓口か弁護士に相談します。

相手と会わずに家を売る:代理人を通す考え方

住所を守る手続きと並行して、家の数字を集めます。自分が所有者や債務者になっている範囲の書類(登記事項証明書、ローンの残高証明書、固定資産税の納税通知書)は、相手に知られずに取れる部分もあります。相手が単独名義で、自分が共有者でも債務者でもない家は、手元に資料が少ないのが普通です。

売却を進める役割は、資格で分かれます。

役割 担当 注意
相手との交渉、財産分与や代金の分け方の協議 弁護士 報酬を得て法律事務を扱えるのは弁護士だけです(弁護士法72条)
家の売却の仲介 宅建業者(不動産会社) 連絡先と住所を伝える前に、連絡方法の希望を伝える
登記の申請、決済の立会い 司法書士 決済日に、司法書士が登記に必要な書類・情報を確かめてから残代金が支払われる

代理人にお願いするときは、最初の連絡で、次のように伝えると伝わりやすくなります。

「DVの被害があり、相手に住所や連絡先を知られたくありません。連絡は私の携帯電話のメッセージだけにしてください。現住所は伝えられません。売却を進めるうえで、住所を伝えずに済む方法と、住所が必要になる場面を先に教えてください。」

一括査定サイトなどに申し込むと、入力した連絡先や住所が複数の不動産会社に渡ります。住所を守る手続きが終わる前は、査定の申込みを急がないでください。

売却の細かい流れは離婚で家を売却する流れに、売却益にかかる税金は離婚で家を売却する時の税金にあります。財産分与の請求は、離婚から5年(2026年3月31日以前(令和8年3月31日以前)に離婚した場合は2年)が家庭裁判所に申し立てられる期限です。安全の確保や手続きに時間がかかっても、この期限は意識しておきます。

相談先の選び方

相談先は、悩みの段階で使い分けます。

  1. 今の安全と避難:110番、DV相談+、#8008、市区町村の窓口
  2. 住所を守る手続き:配偶者暴力相談支援センター、警察、住民登録のある市区町村、法務局
  3. 保護命令の申立て:弁護士、または地方裁判所の窓口
  4. 家とお金の協議:弁護士(法テラスの案内は相続・不動産売却の無料相談窓口一覧にあります)

弁護士の探し方や頼み分けは、窓口一覧と合わせて確かめてください。つらい状況が続くときは、身近な人に話すことも大切です。一人で決めずに、窓口に今の状況を話すところから始めてください。

よくある質問

Q. 売却の手続きで、避難先の住所を相手に知られませんか?

不動産の登記記録には所有者の住所が載り、手数料を払えば所有者以外でも登記事項証明書を取り寄せられます。法務省の代替措置を申し出ると、証明書の住所を、連絡が取れる人の住所(公示用住所)に置き換えられます。契約書や決済でどの住所を使うかは、不動産会社と司法書士に最初に伝えて相談します。

Q. 相手が家の共有者のとき、会わずに家を売れますか?

共有名義の家は、共有者全員の意思がそろわないと家全体は売れません。相手と直接話さずに進めるには、弁護士など代理人を通す方法があります。代理人がした意思表示は本人に直接効力が生じます(民法99条)。相手との交渉や、売却代金の分け方の協議は弁護士の仕事です。

Q. DV相談+と#8008は、どう使い分けますか?

DV相談+は電話が24時間で、チャット相談もあります。#8008(DV相談ナビ)は、近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる番号で、受付は各センターの時間内です。どちらも、家やお金の判断の前に、安全の確保と今後の支援の紹介を受ける入口として使えます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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