離婚で家を売却する時の税金:財産分与と売却の順番で変わる扱い
離婚で家を売ったときの税金は、順番で変わります。売ってから代金を分ける場合は、名義人(共有なら持分ごとの各人)に譲渡所得の税金がかかります。家そのものを財産分与で渡す場合は、渡した側に、分与した時点の時価で譲渡所得の課税が行われます。 現金の分与は、多すぎる場合などを除いて贈与税の対象になりません。3,000万円特別控除は、夫婦など特別の関係にある人への売却には使えず、出ていった人は住まなくなってから3年目の年末までに売る必要があります。以下、よくある疑問に順に答えます。
売る順番で、税金はどう変わるのか
| やり方 | 譲渡所得税(所得税・住民税)がかかる人 | 贈与税 | 主な論点 |
|---|---|---|---|
| 売ってから代金を分ける | 売主(共有なら持分ごとの各人) | 通常かからない | 売却益の計算、3,000万円特別控除 |
| 家を財産分与で渡す | 渡した側(分与時の時価で譲渡したものとして計算) | 分与が多すぎる場合などに限られる | 分与時の時価の出し方、受け取る側の取得費 |
| 現金で分ける(家は売らない) | 家を売らなければ生じない | 通常かからない | ローン負担との組み合わせ |
譲渡所得は、売った代金から、買ったときの費用(取得費)と売るためにかかった費用(譲渡費用)を引いた差で出ます。国税庁は、土地・建物の譲渡所得を給与所得などとは分けて計算する分離課税と説明しています。式は、譲渡所得の金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)です。売却益がなければ譲渡所得税はかかりません。
売ってから代金を分ける場合は、いくらかかる?
売った年の1月1日現在で所有期間が5年を超える家は長期譲渡所得、5年以下は短期譲渡所得です。税率は、長期が所得税15%・住民税5%、短期が所得税30%・住民税9%で、所得税額に対して復興特別所得税2.1%が加わります。令和8年度の税制改正で、2027年1月1日以後に生じる所得については、復興特別所得税が1.1%に下がり、新しく防衛特別所得税1%が加わりました(国税庁の源泉徴収の案内)。合計は2.1%のままなので、下の計算は2026年中に売る場合も2027年以後に売る場合も同じです。
筆者の計算で仮の数字を入れます。売却価格4,500万円、取得費2,500万円、譲渡費用は仲介手数料の上限155万1,000円と印紙1万円の合計156万1,000円、長期譲渡所得とします。譲渡所得は4,500万円−2,500万円−156万1,000円=1,843万9,000円です。
| ケース | 税の特例 | 課税の対象 | 税額の目安 |
|---|---|---|---|
| 夫の単独名義で売る | 使えない場合 | 1,843万9,000円 | 約374万6,000円 |
| 夫の単独名義で売る | 3,000万円特別控除が使える場合 | 0円(控除後) | 0円 |
| 夫婦が2分の1ずつの共有で売る | どちらも使える場合 | 各人921万9,500円−控除 | 各人0円 |
| 夫婦が2分の1ずつの共有で売る | 出ていった側だけ使えない場合 | 使えない側が921万9,500円 | その側が約187万3,000円 |
検算:1,843万9,000円の15%は276万5,850円、その2.1%(復興特別所得税)は5万8,083円、住民税5%は92万1,950円で、合計374万5,883円です。共有で半分ずつなら、その半分の約187万3,000円になります。表は、取得費が分かり、他の特例を使わない仮定の数字です。取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費とみなす方法もあります。実際の税額は、契約書、購入時の資料、登記の資料で決まるため、申告の前に税務署か税理士に確かめます。
家を財産分与で渡すと、渡した側に税金が出るのか
財産分与が土地や建物で行われたときは、分与した人に譲渡所得の課税が行われます。収入金額は、分与した時点の土地や建物の時価です。売っていなくても、含み益がある家を渡すと、渡した側に税金が出ることがあります。受け取った側は、分与を受けた日にその時の時価で取得したものとして扱われ、後で売るときの長期か短期かの判定も、分与を受けた日が基準です。
財産分与で受け取る側には、通常は贈与税がかかりません。国税庁は、財産分与請求権に基づいて給付を受けたものと考えられるからだと説明しています。贈与税がかかる二つの場合は、先のFAQのとおりです。
家を渡す側が税金を払う仕組みは、現金で払える余裕がないと困ります。家の時価から売却益を見込み、税額を先に出してから、「家を渡す」か「売って現金で分ける」かを比べます。時価の出し方、分与額の決め方は個別の協議事項です(家庭裁判所への請求は離婚から5年。詳しくは離婚で家を売却する流れ)。
財産分与で家を渡す場合に3,000万円特別控除を使えるかは、国税庁のNo.3114(離婚して土地建物などを渡したとき)にも、特例の要件を説明するNo.3302にも書かれていません。No.3302は、親子や夫婦など特別の関係がある人に売った場合を対象外としていますが、財産分与の相手がこれに当たるかの説明は見当たらないため、使える前提で計画を立てないでください。申告の前に、所轄税務署か国税相談専用ダイヤルで確かめます。窓口の番号は相続・不動産売却の無料相談窓口一覧にあります。
3,000万円特別控除が使える時期と条件
居住用財産の3,000万円特別控除は、所有期間の長短を問わず使えます。国税庁の説明による主な条件です。
- 現に住んでいる家、または住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家であること
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものでないこと(生計を一にする親族、売った後で同居する親族、内縁関係の人なども含まれる)
- 売った年の前年・前々年に、この特例(空き家の特例は別)を受けていないこと
- 売った年、その前年、前々年に、マイホームの買換えや交換の特例を受けていないこと
- 確定申告をすること(申告しないと特例は受けられない)
離婚の場面では、次の三つが影響します。
- 離婚前に配偶者へ売る形は使えない:夫婦は特別の関係にあたるため、売却先が配偶者なら対象外です
- 出ていった側の期限:住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ります。別居を始めた日を記録しておきます
- 共有は一人ひとり判定:共有の家は共有者ごとに判定し、控除は特例を受けられる人1人につき最高3,000万円です。敷地だけの共有で家屋の持分がない人は、原則として特例を受けられません
住み続ける側は、現に住んでいる家として判定されます。10年を超えて所有した居住用財産には、別に軽減税率の特例(課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分は所得税10%)があり、国税庁は3,000万円特別控除と重ねて受けられると説明しています。所有期間が10年を超えるか、住まなくなってから3年目の年末までかなど、要件はNo.3305で確かめます。
申告の時期と窓口
譲渡所得は、売った年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告します。譲渡した日は、原則として引渡しの日で、売買契約の効力発生日を選んでもよいとされています。契約と引渡しが年をまたぐと、申告する年が変わります。共有の家を売った場合、確定申告書は共有者一人ひとりが提出します。
個別の税額の計算や、特例を使えるかの判断は、税理士の仕事です。他人の求めに応じて税務相談や申告書の作成を業とすることは、税理士でなければできません(税理士法52条)。この記事は一般的な仕組みの説明までです。弁護士、司法書士、税理士の頼み分けは専門家の違いと頼み分けで確かめられます。
財産分与そのものの交渉や、住まいをめぐる不安については、離婚で家がオーバーローンのときの選択肢と、暴力や脅しがある場合のDVがある離婚で家を売却するときがあります。
よくある質問
Q. 現金で財産分与を受けると、贈与税がかかりますか?
国税庁は、贈与税がかかる場合を二つに限っています。分与された財産が、夫婦の協力で得た財産の額などを考えても多すぎる場合は、その多すぎる部分に。離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合は、離婚でもらった財産すべてに。通常の分け方なら、受け取る側に贈与税は生じません。
Q. 財産分与で家をもらい、数年後に売ると、税金はどう計算されますか?
分与を受けた人は、分与を受けた日にその時の時価で家を取得したものとして扱われます。売ったときの長期か短期かも、分与を受けた日を基準に判定します。取得費の考え方が通常の購入とは違うため、分与時の時価が分かる資料(査定書など)を残しておきます。
Q. 売却益が出ないときは、確定申告をしなくてよいですか?
3,000万円特別控除を受けるには、確定申告をすることが必要です。控除によって税額がゼロになる場合でも、申告しなければ特例は受けられません。売却損が出て損益通算の特例を使うときも、申告が要ります。
出典・参考にした公的な情報
- No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき(国税庁)
- No.4414 離婚して財産をもらったとき(国税庁)
- No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)(国税庁)
- No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(国税庁)
- No.3211 短期譲渡所得の税額の計算(国税庁)
- No.3258 取得費が分からないとき(国税庁)
- No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁)
- No.3308 共有のマイホームを売ったとき(国税庁)
- No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁)
- No.3102 譲渡所得の申告期限(国税庁)
- 防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後の源泉徴収)(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。