離婚で家を売却する流れ:財産分与・ローン・売るタイミング
離婚で家を売るときは、まず「誰の名義か」「ローンがいくら残っているか」「財産分与で家をどう扱うか」の3点を整理し、そのうえで離婚の前に売るか、後に売るかを選びます。売却代金からローン残高と売る費用を引き、残ったお金を分ける方法は、どちらが住み続けるかを決めなくても進められる選択肢の一つです。財産分与を家庭裁判所に求められる期限は離婚から5年(2026年3月31日以前(令和8年3月31日以前)に離婚した場合は2年)で、家の売却が長引くと先に期限が来ることがあります。ここでは、確かめる順番、財産分与での家の扱い、売る時期の比べ方、売却の流れを順に示します。
最初に確かめるのは名義・ローン・査定額の3点
話し合いを始める前に、家の数字を一枚の紙にそろえます。感情が絡む話題なので、数字を先に置くと論点が減ります。
- 名義:法務局で取れる登記事項証明書の甲区(所有者の欄)で、単独名義か共有名義か、共有なら持分がいくつずつかを確かめる
- ローン:借入先から残高証明書を取り、誰が債務者か、連帯債務者や連帯保証人がいるかを契約書で確かめる
- 査定額:不動産会社に家の査定を頼み、売れそうな価格の幅をつかむ(査定額は売れる値段ではない)
登記事項証明書の乙区には抵当権(ローンの担保)が載ります。不動産適正取引推進機構の手引は、登記記録は手数料を払えば(所有者でなくても)登記事項証明書を取り寄せられ、甲区が所有権の移り変わり、乙区が抵当権などの所有権以外の権利だと説明しています。夫婦のどちらかが一人で取りに行ってよい書類なので、先に揃えておけます。
査定額とローン残高を並べると、行き先が分かれます。査定額がローン残高と売る費用の合計を上回れば、売って返済してもお金が残る普通の売却です。下回るときは、足りない分をどう埋めるかという別の問題になり、離婚で家がオーバーローンのときの選択肢で整理しています。
名義とローンの組み合わせでも、話の難しさは変わります。
| 名義 | ローンの立場 | 売却の前に確かめること |
|---|---|---|
| 夫婦の共有 | 夫婦それぞれが債務者、または一方が連帯債務者 | 共有者全員の意思。ローンは売却代金で一括返済する前提で話す |
| 一方の単独名義 | 名義人が債務者、もう一方が連帯保証人 | 売った代金の分け方。連帯保証が外れる時期を借入先に確かめる |
| 一方の単独名義 | 名義人だけが債務者 | 財産分与の対象になるか(夫婦で築いた財産か、結婚前や相続の財産か) |
| 名義人と債務者が別の人 | 名義人以外が返済している | 借入先の契約で、住まない人が債務者のままでよいか |
財産分与で家はどう扱われるか
財産分与は、離婚した人の一方が相手に財産の分与を求められる制度です(民法768条1項)。協議がまとまらないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を求められます。法務省は、制度の性質を、夫婦が共同生活で形成した財産の公平な分配、離婚後の生活保障、離婚原因への損害賠償の3つに分け、基本になるのは最初の財産の清算だと説明しています。
家庭裁判所が分与の可否と額、方法を決めるときの考慮要素は、民法768条3項に並んでいます。婚姻中に取得し維持した財産の額とそれぞれの寄与の程度、婚姻の期間、生活水準、協力と扶助の状況、年齢、心身の状況、職業と収入などです。条文は、婚姻中の財産の取得や維持についての寄与の程度が異なることが明らかでないときは、等しいものとすると定めています。法務省も、家庭裁判所の審判では、共働きでも専業の場合でも2分の1ずつに分けるよう命じられることが多いと説明しています。
家が分与の対象かどうかは、取得の経緯で整理します。
- 結婚後に夫婦の収入で買った家:名義が一方だけでも、夫婦の財産として対象になる(法務省の説明)
- 結婚前から一方が持っていた家、相続や贈与で一方が受け取った家:夫婦で築いた財産とは別に考えられ、対象外になることがある
- 頭金の一部を親が出した家:誰の資金がどれだけ入ったかの資料(振込記録など)を集める
ローンが残る家は、査定額からローン残高を引いた差額を軸に考えるのが基本の見方です。差額が大きく残るなら、その分をどう分けるかが分与の中心になります。差額がなく、残高のほうが大きい家は、分ける財産よりも、返す債務をどう分担するかの話に近づきます。個別の分け方や金額を決めるのは当事者の協議か家庭裁判所で、交渉や書面づくりは弁護士の仕事です(弁護士の探し方は専門家の違いと頼み分け)。
売るタイミング:離婚前に売るか、離婚後に売るか
家の扱いは大きく三つに分かれます。売却代金を分ける、一方が住み続けて相手に代わりの財産を渡す、売らずに当面そのままにする、の三つです。ここでは売る二つの時期を比べます。
| 項目 | 離婚前に売る | 離婚後に売る |
|---|---|---|
| 売主の足並み | 夫婦が同じ家に住みながら進めるため、連絡は取りやすい | 別居や離婚後は連絡の手間が増え、内見や書類で協力が要る |
| 税の特例 | 共有なら持分ごとに3,000万円特別控除を判定する | 出ていった人は、住まなくなってから3年目の年末までに売る必要がある |
| 代金の分け方 | 売却前に書面で決めやすい | 離婚協議書や調停の結果に沿って分ける |
| 注意点 | 離婚の話し合いが長引くと、売却の時期を逃すことがある | 財産分与の請求期限(離婚から5年)が先に来ることがある |
税の特例の条件は、国税庁の説明で次のように決まっています。居住用財産の3,000万円特別控除は、現に住んでいる家、または住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家が対象です。親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象になりません。共有の家は共有者ごとに判定し、控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、特例を受けられる人1人につき最高3,000万円です。出ていく人がいるなら、いつ住まなくなるかの日付を、売却の予定表に書いておきます。
離婚が決まる前の売却では、夫婦で一緒に不動産会社へ相談できるのが利点です。共有名義の家は、共有者の一部だけでは家全体を売れません。契約書には共有者全員が売主として載ります。全員の意思が割れたままでは進まないので、売る方針だけでも先にそろえます。
離婚後の売却では、売る前に、売却代金の分け方を離婚協議書などに書いておくのが基本です。たとえば次の項目を決めます。
項目の例:売却代金からローン残高と売却費用(仲介手数料、抹消登記の費用など)を差し引いた残りを、○対○の割合で分ける。売れないときは、○か月ごとに売出価格を見直す。引渡しに合わせて、○月○日までに荷物を出す。
売るのでなく、一方が住み続ける選択肢もあります。その場合は、住み続ける人が家の名義とローンをどう引き継ぐかが論点です。住宅金融支援機構は、返済途中で住宅を他人に譲り渡すときは融資金の全額を返す取扱いが原則で、離婚などの事情があるときは返済中の金融機関に申し出るよう案内しています。機構の承諾を得て債務を引き継げる場合は、譲り受けた人がその住宅に住み、機構の債務を返済することが条件で、審査の結果によっては認められないこともあります。他の金融機関でも、借入先の承諾が要る点は同じです。
家を現物で渡す財産分与は、渡した側に譲渡所得の課税が生じることがあります。国税庁は、分与した時点の時価が収入金額になると説明しています。税金の違いは離婚で家を売却する時の税金にまとめています。
売却の流れ:離婚と並行して進める手順
売却そのものの手順は通常の売却と変わりません。離婚の話し合いと並べて進めるときは、次の順で動くと、決める順番が前後しにくくなります。
- 登記事項証明書、残高証明書、固定資産税の納税通知書、購入時の契約書をそろえる
- 不動産会社に査定を頼む。査定額に開きがあれば、根拠を聞いて比べる
- 売却代金の分け方、住み続けるか売るかの方針を、夫婦で(または代理人を通して)話し合う
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ。専任媒介契約の有効期間は3か月までで、更新も3か月までと定められている
- 買主が見つかれば売買契約を結ぶ。共有名義なら全員が売主として署名押印する
- 決済と引渡し。決済日には、立ち会う司法書士が登記に必要な書類を確かめてから残代金が支払われ、ローンの抵当権の抹消も行われる
- 受け取った代金を、取り決めた割合で分ける。売った年の翌年2月16日から3月15日の間に、必要な人が確定申告をする
業者を選ぶ段階では、複数社の査定を比べると、根拠の違いが見えます。宅建業者は、媒介契約に書く価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにする義務があります(宅建業法34条の2第2項)。売却全体の期間の目安は不動産売却の流れと期間で、媒介契約の種類は媒介契約の種類と選び方で確かめられます。
仲介手数料の上限は、売買代金に応じた計算式で決まっています。分け方を決めるときに費用の見込みが要るので、上限の式は仲介手数料の上限と計算式を見ます。
夫婦の間に暴力や脅しがあるときは、売却の話より安全の確保が先です。連絡の取り方も含めてDVがある離婚で家を売却するときの順番に分けて書いています。相談窓口は相続・不動産売却の無料相談窓口一覧にまとめています。
離婚の方針が固まる前でも、家の価格帯をつかむために複数社の査定を比べる方法があります。査定額は実際に売れる値段とは別のもので、各社の見込みです。申し込むと複数の不動産会社から連絡が入ることがあり、売却に進むかどうかは、査定の結果を見てから夫婦で決めて構いません。各社に査定の根拠を聞いて比べます。
よくある質問
Q. 離婚前と離婚後では、どちらで家を売るほうがよいですか?
どちらが有利かは、名義、ローンの有無、住み続ける人、使える税の特例で変わります。判断の材料は三つです。夫婦で売る意思がそろっているか、出ていく人が3,000万円特別控除の期間(住まなくなってから3年目の年末まで)に収まるか、財産分与の請求期限(離婚から5年)に間に合うかを順に見ます。
Q. 家の名義が夫(妻)だけでも、財産分与を求められますか?
求められます。法務省は、財産分与の対象は夫婦の共有名義の財産に限らず、一方の名義でも夫婦の協力で形成された財産なら対象になると説明しています。ただし結婚前から持っていた家や相続した家は、夫婦で築いた財産とは別に考えられるため、取得の経緯を整理しておきます。
Q. 財産分与の話し合いがまとまる前に、家を売ってもよいですか?
共有名義なら、共有者である夫婦が足並みをそろえないと家全体は売れません。単独名義でも、売った代金は財産分与で分ける話の対象になりえます。先に売ると決めた場合は、代金からローンと費用を引いた残りをどう分けるかを、売る前に書面で決めておくと後で争いになりにくくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 財産分与(父母の離婚後の子の養育に関するルール・離婚Q&A)(法務省)
- 民法 第251条・第768条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁)
- No.3308 共有のマイホームを売ったとき(国税庁)
- No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき(国税庁)
- 返済途中で住宅を他人に譲り渡すとき(住宅金融支援機構)
- 不動産売買の手引(令和7年度版)(不動産適正取引推進機構)
- 宅地建物取引業法 第34条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。