相談先と専門家の選び方 / 悩み整理

相続手続きは誰に頼む?財産と家族の状況で決める依頼先の選び方

この記事のもくじ
  1. 相続手続きは誰に頼む?3つの質問で依頼先を絞る
  2. 質問1:家族の間に争いや、連絡の取れない人がいるか
  3. 質問2:亡くなった人の名義の不動産があるか
  4. 質問3:相続税がかかりそうか
  5. 組み合わせ別の依頼先と、まとめて頼むときの確かめ方

相続手続きを誰に頼むかは、「家族の間に争いがあるか」「不動産があるか」「相続税がかかりそうか」の3つの質問で決まります。争いがあれば弁護士、不動産があれば司法書士、相続税がかかりそうなら税理士です。3つとも「いいえ」なら、自分で進めるか、書類づくりだけを行政書士や司法書士に頼めば足ります。資格ごとの違いを条文から知りたいときは相続手続きの専門家の違い(弁護士・司法書士・税理士・行政書士の頼み分け)を見てください。

相続手続きは誰に頼む?3つの質問で依頼先を絞る

依頼先を「相続に強い事務所」という評判から探すと、必要のない資格者に頼んで、あとで別の事務所を探し直すことになりがちです。先に自分の家の状況を3つの質問に当てはめると、頼む資格が決まり、探す範囲が狭まります。

流れ図:3つの質問で依頼先を決める
  1. 家族の間に争いや、連絡の取れない人・話し合いを拒む人がいるか → はい:弁護士に相談(交渉・調停の代理)
  2. 亡くなった人の名義の土地・建物があるか → はい:司法書士(相続登記)。自分で申請する道もある
  3. 遺産の合計が相続税の基礎控除を超えそうか → はい:税理士(相続税の申告)
  4. 3つとも「いいえ」 → 自分で進める、または行政書士・司法書士に書類づくりだけを頼む

質問の順番にも意味があります。争いがあると、遺産の分け方が決まらず、登記も相続税の申告の中身も決まりません。だから争いの有無を最初に確かめます。

質問1:家族の間に争いや、連絡の取れない人がいるか

次のどれかに当てはまるなら、弁護士の領域です。

  • 遺産の分け方で、ほかの相続人が納得せず話し合いが進まない
  • 遺言の内容に不満があり、遺留分を請求したい、または請求された
  • 生前の預金の引き出しや使い込みが疑われる
  • ほかの相続人に弁護士がつき、手紙が届いた
  • 連絡を拒まれている、居場所が分からない相続人がいる

弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件の代理や和解を扱うことを禁じています。司法書士・税理士・行政書士・代行会社は、ほかの相続人との交渉を代わりに引き受けられません。「話し合いには同席できないが、書類は作れる」という線引きなので、争いがある段階で書類づくりの専門家に頼んでも、手続きは前に進みません。

一方で、意見の違いはあっても話し合いの場が保てているなら、まず相続人全員で財産の一覧を共有し、法定相続分を目安に話してみる段階です。弁護士に頼むか迷うときの見分け方は、相続で弁護士に頼むべきとき(もめている・交渉が要る場面の見分け方)で詳しく扱っています。

質問2:亡くなった人の名義の不動産があるか

土地・建物があるなら、相続登記(不動産の名義を相続人に変える登記)が要ります。2024年4月1日から相続登記は義務になり、相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります。登記の申請の代理を仕事として受けるのは主に司法書士です(司法書士法3条・73条)。

ただし、相続人が自分の家の登記を自分で申請することは禁じられていません。法務局は、自分で申請する人のために予約制の登記手続案内を設けています。自分でするか頼むかは、次の点で考えます。

自分で申請しやすい 司法書士に頼んだほうがよい
不動産が1か所で、相続人が少ない 不動産が複数の市町村にある、山林や私道がある
平日に法務局や役所へ行ける 平日に動けない、実家が遠い
遺言どおり、または協議がまとまっている 祖父の代から名義が変わっていない、未登記の建物がある(建物の表題登記は土地家屋調査士の仕事)

司法書士に頼むときの報酬の平均額は、日本司法書士会連合会のアンケートの設例の条件つきで相続の司法書士費用に載せています。登録免許税などの実費は別です。自分でする手順は相続手続きを自分でやる方法(ひとりで進められる範囲と専門家の境目)にまとめています。

質問3:相続税がかかりそうか

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。遺産の合計がこの額を超えなければ、相続税はかからず申告も要りません。超えるときは、配偶者の軽減や小規模宅地等の特例で税額がゼロになる場合でも、特例を使うために申告が要ります。筆者の計算では、法定相続人が3人なら3,000万円+600万円×3=4,800万円です。相続放棄をした人も、基礎控除の人数には数えます。

国税庁の発表では、令和6年分に亡くなった人のうち相続税の課税対象になった割合(課税割合)は10.4%でした。多くの家は基礎控除の内側に収まりますが、自宅の土地と預金を足すと超える家もあります。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」に財産の額を入れると、申告が要るかの目安を確かめられます。

基礎控除を超えそうなら、税理士の出番です。税理士法52条は、税理士でない者が相続税の申告書の作成や、具体的な税額の計算の相談を行うことを禁じています。土地の評価や特例を使うかどうかで納める額が変わるため、申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)から逆算して、早めに相談します。判断の材料は相続で税理士は必要か(相続税がかかる人・かからない人の分かれ目)にあります。

組み合わせ別の依頼先と、まとめて頼むときの確かめ方

3つの質問の答えを組み合わせると、依頼先は次のようになります。

争い 不動産 相続税 依頼先の組み合わせ
なし なし かからない 自分で、または行政書士・司法書士に書類だけ
なし あり かからない 司法書士(登記)。登記に使う協議書も司法書士にまとめられる
なし なし かかる 税理士(申告)
なし あり かかる 税理士と司法書士。順番は税理士に早めに
あり どちらでも どちらでも まず弁護士。分け方が決まったら登記・申告へ

税理士と司法書士の両方が要る家は、どちらに先に声をかけるかで迷います。答えは相続は司法書士と税理士どっちが先?頼む順番と両方必要なケースにまとめました。

複数の資格が必要な家では、司法書士・税理士などが同じグループにいる事務所や、相続手続きの代行サービスにまとめて任せる選択肢もあります。窓口が1つになるのは便利ですが、見積もりの段階で次の3点を確かめます。

  1. 登記は司法書士、申告は税理士、というように、どの手続きを、どの資格者の名前で行うか
  2. 基本料金に入る手続きと、別料金になる手続き(金融機関の数、不動産の数、戸籍の通数)
  3. 争いが起きたときに、どう引き継がれるか(弁護士の紹介か、契約の終了か)

行政書士法19条は、資格のない者が「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て書類を作ることを制限しています。資格者の名前が見積書に出てこないサービスは、契約の前に担当者を聞いておきます。代行サービスの仕組みは相続手続きの代行サービスとは(頼める範囲・費用・資格者の確かめ方)で説明しています。

よくある質問

Q. 相続人が自分ひとりでも、専門家に頼んだほうがよいですか?

相続人が1人なら遺産分割の話し合いがないので、争いの心配はありません。不動産があれば相続登記、相続税の基礎控除を超えそうなら申告が要るので、その2つを自分でするか頼むかで決めます。預金だけなら、各金融機関の相続の案内に沿って、相続人が自分で進めることもできます。

Q. 銀行や証券会社の手続きだけを、まとめて頼むことはできますか?

預金の解約や名義の書き換えをまとめて引き受ける「遺産承継業務」を扱う司法書士事務所や、信託銀行の遺産整理業務があります。費用の決まり方がそれぞれ違うので、[遺産整理業務とは(信託銀行の費用の決まり方と士業に頼む場合の違い)](/isan-seiri-gyomu/)で比べてから選びます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続手続きの専門家の違い:弁護士・司法書士・税理士・行政書士の頼み分け

相続は司法書士と税理士どっちが先?頼む順番と両方必要なケース

相続手続きを自分でやる方法:ひとりで進められる範囲と専門家の境目

相続手続きの代行サービスとは:頼める範囲・費用・資格者の確かめ方