相談先と専門家の選び方 / 悩み整理

相続で他の相続人の弁護士から手紙が届いたら:最初にやる5つのこと

この記事のもくじ
  1. 最初にやる5つのこと
  2. 手紙の種類ごとの読み方
  3. 返事のしかた:放置と即答のどちらも避ける
  4. 自分も弁護士に相談すべき場面

相続で他の相続人の弁護士から手紙が届いたら、慌てて電話で即答せず、かといって放置もせず、次の5つを順にやります。①差出人が本当に弁護士か確かめる、②何を求められているかを読む、③期限が法律上のものか相手の決めたものかを分ける、④資料と記録をそろえる、⑤自分も弁護士に相談するかを決める。 弁護士の手紙は、相手が本気で話を進めようとしている合図ではあっても、すぐに何かを失うものとは限りません。読んで、分けて、記録を残してから返事をすれば、ほとんどの場合は間に合います。

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最初にやる5つのこと

  1. 差出人を確かめる。 弁護士は日本弁護士連合会の名簿に登録されている人だけがなれます(弁護士法8条)。手紙にある氏名・事務所・所属弁護士会を見て、その弁護士会のサイトや電話で登録を確かめます。手紙に書かれた電話番号ではなく、自分で調べた番号で確かめるのがこつです。相続を名目にした詐欺の手口は相続手続きを名乗る詐欺の手口と対処にまとめています。
  2. 求められていることを書き出す。 「誰の代理人か」「何を求めているか」「いつまでに」「どう返事をするか(書面・電話)」の4点を、手紙とは別の紙に書き出します。
  3. 期限の種類を分ける。 手紙の「○月○日までにご回答ください」は、差出人が決めた回答期限です。これとは別に、遺留分の請求の1年(民法1048条)のように法律で決まった期間があります。どちらの期限なのかを分けて考えます。
  4. 資料と記録をそろえる。 手紙と封筒(消印・配達記録)、これまでの相手とのやりとり、遺言書や遺産の資料を1つのファイルにまとめます。受け取った日も書いておきます。
  5. 自分も相談するかを決める。 下の「相談すべき場面」に当てはまれば、返事の前に弁護士に相談します。
早見表:弁護士からの手紙を受け取ってから返事をするまで
  1. 受け取った日を記録する
  2. 差出人の登録を自分で調べた連絡先で確かめる
  3. 求められていること・回答期限・返事の方法を書き出す
  4. 法律上の期間(遺留分の1年など)が関わるかを確かめる
  5. 資料をそろえ、必要なら自分の側で相談する
  6. 書面で返事をする(受け取った旨と、いつまでに答えるか)

手紙の種類ごとの読み方

弁護士からの手紙は、書かれている中身によって急ぐ度合いが違います。よくある型を並べます。

手紙の型 書かれていること(例) まず見る点 急ぐ度合い
代理人に就いた知らせ 「○○さんの代理人になった。今後の連絡は弁護士へ」 誰の代理人か、何の件か 低い。受け取った旨を返せば足りることが多い
遺産分割の提案 分け方の案、遺産の一覧、回答期限 遺産の一覧に漏れや評価の偏りがないか 中。署名・押印の前に中身を確かめる
遺留分侵害額の請求 「遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求する」 請求額の計算の元、財産の評価 中〜高。支払いの話に進むので早めに相談
預金の使い込みなどの返還請求 引き出しの日付・金額、返還の要求 引き出しの理由を示す記録が手元にあるか 高。説明の資料を集め、自分の側でも相談
調停の申立ての予告 「回答がなければ家庭裁判所に調停を申し立てる」 回答期限、提案の中身 高。期限内に返事の方針を決める

遺留分侵害額の請求は、遺産そのものではなく金銭の支払いを求める権利として定められています(民法1046条)。相手がこの請求をしてきた場合、計算の元になる財産の評価や、過去の贈与の扱いが争点になりやすいので、金額だけを見て応じるかを決めないようにします。

返事のしかた:放置と即答のどちらも避ける

放置すると、相手は「話し合いができない」と考えて、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てる流れになりやすくなります(民法907条2項)。調停になると家庭裁判所から書類が届き、期日に出席して話す場になります。

即答すると、手紙に同封された同意書や遺産分割協議書に、中身を確かめないまま署名してしまうおそれがあります。いったん合意した分け方を後から変えるのは簡単ではありません。

そこで、最初の返事は「受け取ったこと」と「いつまでに答えるか」だけを書面で伝えるのが落ち着いたやり方です。

文例(最初の返事):「○月○日付のお手紙を○月○日に受け取りました。内容を確認し、必要に応じて専門家にも相談したうえで、○月○日までに書面でお返事します。今後の連絡は書面か、下記のメールアドレスでお願いします。」

自分の弁護士に依頼したら、その後のやりとりは自分の弁護士を通して行います。相手の弁護士は相手の代理人です。こちらの立場で助言する弁護士は、自分で依頼した弁護士だけです。相手の弁護士に「どうすればいいですか」と尋ねても、相手に有利な答えが返る前提で聞くことになります。

自分も弁護士に相談すべき場面

次のどれかに当てはまるなら、返事の前に自分の側で相談します。

  • 遺留分侵害額の請求や、預金の返還の請求を受けた
  • 提案された分け方が、自分の法定相続分から大きく離れている
  • 遺産の一覧に、自分の知らない財産や知っている財産の書き漏れがある
  • 「回答がなければ調停を申し立てる」と書かれている
  • 相手やその家族から脅すような言葉がある(身の安全が先。危険が迫れば110番。進め方は相続で親族から脅し・嫌がらせを受けたときに身の安全を守る方法)

相談先の探し方と、弁護士に頼むべきかの見分け方は相続で弁護士に頼むべきとき:もめている・交渉が要る場面の見分け方、依頼先を選ぶときの面談の確かめ方は相続の弁護士選びで失敗しないために:面談で確かめる8つの点にまとめています。

すでに調停を申し立てられた後なら、裁判所から届いた書類を持って相談に行きます。弁護士会によっては、調停や審判になっている家庭の事件について1回に限り無料で相談できる制度を設けています(大阪弁護士会の家事当番弁護士制度など。お住まいの弁護士会にあるかは電話予約で確かめます)。調停の進み方は遺産分割調停の流れ:申立ての費用・書類・期間と1回目の準備、遺留分の請求の段階は遺留分侵害額請求の流れ:話し合いから調停・訴訟までの段階と準備で確かめられます。

よくある質問

Q. 相手の弁護士に電話して、事情を説明してもいいですか?

連絡すること自体はかまいませんが、相手の弁護士は相手の代理人で、こちらの味方として助言する立場にはありません。電話で話した内容が相手側の主張の材料になることもあるので、事実の確認や受け取った旨の連絡にとどめ、提案への返事は書面にするほうが行き違いを防げます。

Q. 手紙に書かれた回答期限を過ぎたらどうなりますか?

手紙の回答期限は、差出人が決めた目安であることが多く、過ぎたこと自体で権利を失うものとは限りません。ただ、返事がないと話し合いができないとみなされ、家庭裁判所の調停を申し立てられる流れになりやすくなります。間に合わないときは、期限までに「検討中で、いつまでに返事をする」と伝えておきます。

Q. 手紙に「相続放棄をしてほしい」と書かれていたら応じるべきですか?

相続放棄は家庭裁判所に申述する手続きで、相手の求めに応じて決めるものではありません。借金の有無、自分の取り分、期限を確かめたうえで、自分で判断します。迷う場合は、署名や返事をする前に自分の側で専門家に相談します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続の弁護士選びで失敗しないために:面談で確かめる8つの点

遺産分割調停の流れ:申立ての費用・書類と1回目の期日の準備

遺留分侵害額請求の流れ:話し合いから調停・訴訟までの段階と準備

相続で弁護士に頼むべきとき:もめている・交渉が要る場面の見分け方