相続の税理士費用を誰が払うか:兄弟での分け方と遺産から出す方法
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相続の税理士費用や司法書士費用を誰が払うかは、法律で決まっていません。相続人どうしの話し合いで決めます。 考え方の中心になるのは、遺産を受け取る割合で按分する、遺産(預金)から先に払ってから残りを分ける、の2つです。この記事では4つの決め方と筆者の計算例、遺産分割協議書や相続人どうしのメールに合意を残す書き方を説明します。費用そのものの内訳は相続手続きの費用の内訳で扱っています。
法律に「誰が払う」の決まりはない:相続人どうしの合意で決める
民法885条は「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する」と定めています(相続人の過失による費用は除く)。ただし、相続税の申告を税理士に頼む報酬や、相続登記を司法書士に頼む報酬を、どの相続人がどの割合で負担するかを名指しで決めた条文はありません。
そのため実際には、次のような事情を材料に相続人どうしで決めます。
- 誰がどれだけ遺産を受け取るか(受け取る額が多い人ほど、手続きの恩恵も大きい)。
- その手続きが誰のためのものか(実家の相続登記は、実家を相続する人の名義にするための手続き)。
- 誰が窓口になって依頼し、立て替えるか。
相続税は、相続人全員の課税価格の合計から総額を計算し、それを各人が取得した財産(課税価格)の割合で按分して、一人ひとりが自分の分を納めます(国税庁 No.4152)。税額の負担がもともと取得割合に沿っているので、税理士費用も取得割合で分けると説明がつきやすくなります。
決め方は4通り:取得割合・法定相続分・遺産から精算・依頼した人
| 決め方 | やり方 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①取得割合で按分 | 遺産分割で受け取る額の割合で分ける | 相続税の申告がある、取り分に差がある | 分け方が決まるまで割合が確定しない |
| ②法定相続分で按分 | 民法の法定相続分で分ける | 取り分がほぼ法定相続分どおり | 取り分に差があると不公平感が出る |
| ③遺産から精算 | 預金などから先に払い、残りを分ける | 預金が十分あり、全員が同意している | 遺産分割協議書に書いておく |
| ④依頼した人・得をする人が負担 | 実家を相続する人が登記の報酬を払う など | 手続きが特定の人のためのもの | 他の手続きの費用とは分けて考える |
筆者の計算で比べます(金額は計算の仕方を見るための仮の数字で、報酬の相場ではありません)。相続人は子3人、税理士の報酬が66万円、遺産分割で長男50%・次男30%・長女20%を受け取る場合です。
| 相続人 | ①取得割合 | ②法定相続分(各3分の1) |
|---|---|---|
| 長男(50%) | 33万円 | 22万円 |
| 次男(30%) | 19.8万円 | 22万円 |
| 長女(20%) | 13.2万円 | 22万円 |
| 合計 | 66万円 | 66万円 |
検算:33+19.8+13.2=66万円。22×3=66万円。③の遺産から精算する方法をとり、預金から66万円を払った後で同じ割合で分けると、結果は①とほぼ同じになります。違いは「誰がいつ現金を出すか」で、③なら相続人が自分の財布から立て替えずに済みます。
遺産から払うときの流れと、遺産分割協議書への書き方
③の方法では、預金の払戻しに金融機関所定の相続手続きが要ります(口座は、金融機関が死亡を知ると取引が止まるのが一般的です)。流れは次のとおりです。
- 相続人全員で「手続き費用は遺産から払う」ことを合意する(メールなどで残す。下の文例)。
- 遺産分割協議書に、費用を遺産から払う旨を書く。
- 金融機関の手続きで払い戻した預金から、代表者が専門家に支払い、領収書を全員に共有する。
- 残った額を、協議書で決めた割合で分ける。
遺産分割協議書の一般的な書き方の例です(個別の事情に合わせた書き方は、依頼している司法書士・行政書士などに確かめてください)。
文例:「相続人全員は、本件相続手続きに要する費用(税理士報酬、司法書士報酬、登録免許税その他の実費)を、被相続人名義の預金から支払い、その残額を前条の割合により取得することに合意する。」
協議がまとまる前に支払期限が来る場合は、遺産分割前の預貯金の払戻し制度があります。各相続人は、口座ごとに「相続開始時の残高×3分の1×自分の法定相続分」まで、金融機関ごとに150万円を上限として単独で払い戻せます(民法909条の2・法務省令)。払い戻した分は、その人が遺産の一部を受け取ったものとみなされるので、後の分割で差し引きます。手続きは預金の相続の仮払い制度で確かめてください。
税理士と司法書士で分け方を変える考え方
全部の費用を同じ割合で分ける必要はありません。手続きの性質で分けると、納得を得やすくなります。
- 相続税の申告(税理士):申告書は相続人全員の財産をまとめて計算するので、全員の手続きです。①の取得割合が説明しやすい分け方です。
- 相続登記(司法書士):不動産を相続する人の名義にする手続きなので、④で不動産を受け取る人が負担する考え方があります。売って代金を分ける場合は、売却代金から払う形もとれます。
- 戸籍集め・相続人の確定:全員の手続きの土台なので、①か②で分けます。
相続税の申告で引ける葬式費用は、実際に負担することになった人の課税価格から差し引きます。負担が決まっていないときは、民法の相続分などに応じた負担として扱えます(相続税法基本通達13-3)。誰が何を負担したかを記録しておくと、申告の準備にも役立ちます。専門家の報酬が税金の計算で引けるかどうかは相続の費用が経費や控除になるかで扱います。
もめないための合意の残し方(メール文例)
費用のもめごとは、「立て替えたのに返ってこない」「勝手に高い事務所に頼んだ」という形で起きやすくなります。依頼する前に、見積額と分け方を全員に送り、返事をもらっておくと防げます。
文例(代表者から兄弟へ):「相続税の申告を○○税理士事務所に依頼しようと考えています。見積もりは報酬○○万円(税込)、実費は別です。見積書を添付します。費用は父の預金から払い、残りを遺産分割の割合で分ける形にしたいと思います。○月○日までに、賛成か、ほかの事務所の見積もりも取りたいかを返信してください。」
見積もりを複数取って比べたいという意見が出たときの進め方は相続の費用の見積もりの取り方にあります。分け方そのものでもめて話し合いが進まない場合は、交渉の代理は弁護士の仕事です(弁護士法72条)。相談先は相続の相談先の選び方から探せます。協議書全体の作り方は遺産分割協議書の書き方を参考にしてください。
よくある質問
Q. 相続放棄をした兄弟にも税理士費用を払ってもらえますか?
相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。遺産を受け取らない人に負担を求める根拠は通常ないため、残った相続人で分けるのが自然です。放棄を考えている人が遺産に手をつける前の注意は[相続放棄してはいけない行動](/houki-shite-wa-ikenai/)で確かめてください。
Q. 長男が立て替えた税理士費用は、あとで返してもらえますか?
立て替える前に、全員で負担の方法を決めておくのが確実な手当てです。遺産分割協議書に「手続き費用は遺産から支払う」と書いておけば、預金を分ける前に精算できます。話し合いがまとまらず請求が必要になったときは、個別の判断になるので弁護士に相談します。
Q. 税理士と司法書士の請求書の宛名は誰にすればよいですか?
依頼の契約を結んだ人が宛名になるのが一般的です。代表者1人が契約して遺産から払うのか、相続人全員の連名で依頼するのかを、見積もりの段階で事務所に伝えておくと、請求書と協議書の書き方がそろいます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第885条(相続財産に関する費用)・第909条の2(遺産分割前の預貯金の払戻し)・第939条(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- No.4152 相続税の計算(国税庁)
- 相続税法基本通達 第13条関係(13-3 その者の負担に属する部分の金額)(国税庁)
- 弁護士法 第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。