相続手続きの費用:自分でやる実費と専門家に頼む報酬の内訳
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相続手続きの費用は、役所や法務局に払う「実費」と、専門家に払う「報酬」の2つに分けると見通せます。実費は戸籍の証明書が1通450円・除籍は750円(政令の標準額)、不動産の名義を変える相続登記の登録免許税が固定資産評価額の1,000分の4で、評価額1,000万円の家なら4万円です。専門家に頼むと、ここに報酬が上乗せされます。この記事では両方の内訳と、筆者の計算による合計の例、見積もりの比べ方を示します。
相続手続きの費用は「実費」と「報酬」に分けて考える
相続手続きは、戸籍を集めて相続人を確かめる段階、遺産を調べて分け方を決める段階、預金・不動産・株などの名義を変える段階に分かれます。それぞれに、公的な手数料や税金(実費)がかかり、専門家に頼んだ部分には報酬がかかります。
実費は自分でやっても専門家に頼んでも同じだけかかります。専門家の見積書を見るときに「報酬」と「実費(立替金)」が分けて書かれているかを確かめると、事務所どうしを公平に比べられます。
| 区分 | 主なもの | 誰がやっても同じか |
|---|---|---|
| 実費 | 戸籍・住民票・印鑑証明書などの証明書代、登記事項証明書、登録免許税、家庭裁判所の収入印紙、郵送料 | 同じ(自治体の条例で額が少し違うものがある) |
| 報酬 | 司法書士・行政書士・税理士・弁護士・代行サービスの手数料 | 依頼先ごとに違う(各事務所が自由に決める) |
| 自分でやる場合の負担 | 平日の役所・銀行・法務局への移動、書類作成の時間 | お金ではなく時間で払う |
どこまでを頼むかによって総額が大きく変わります。手続きの範囲と頼み先の分け方は相続手続きの代行サービスで頼める範囲と相続の専門家の違いと頼み分けで整理しています。
自分でやる場合の実費の一覧(戸籍・証明書・登録免許税)
下の表は、手続きでよく出てくる実費です。法令で額が決まっているものは条文の額、自治体が条例で決めるものはその旨を書いています。
| 費用 | 額 | 根拠・メモ |
|---|---|---|
| 戸籍謄本(戸籍証明書) | 1通450円 | 政令の標準額。実際の額は市区町村の条例 |
| 除籍謄本(除籍証明書) | 1通750円 | 同上。改製原戸籍の額は本籍地の手数料表で確かめる |
| 住民票・印鑑証明書・固定資産評価証明書 | 市区町村ごと | 条例で決まる。窓口の手数料表で確かめる |
| 登記事項証明書 | 書面請求1通600円、オンライン請求1通490円(郵送で受け取ると520円) | 登記手数料令 |
| 相続登記の登録免許税 | 不動産の価額×1,000分の4 | 価額は固定資産課税台帳の価格を基にできる。1,000円未満なら1,000円 |
| 法定相続情報一覧図の写し | 無料 | 法務局が戸籍の束の代わりになる一覧図を交付 |
| 相続放棄の申述 | 収入印紙800円(申述人1人)+郵便切手 | 家庭裁判所 |
| 遺言書の検認 | 収入印紙800円(遺言書1通)+郵便切手 | 家庭裁判所 |
登録免許税の計算では、課税標準(不動産の価額の合計)の1,000円未満を切り捨て、税額の100円未満を切り捨てます(国税通則法118条・119条)。税額が1,000円に満たないときは1,000円です(登録免許税法19条)。土地については免税の措置があり、課税標準の価額が100万円以下の土地の相続登記は、2027年3月31日(令和9年3月31日)までの登記なら登録免許税がかかりません(租税特別措置法84条の2の2)。建物は対象外で、申請書に免税の根拠の条文を書かないと受けられません。登記費用の詳しい内訳は相続登記の費用の内訳にまとめています。
戸籍は、亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの連続したものが要るため、転籍や結婚が多いと除籍・改製原戸籍の通数が増えます。通数の数え方は相続手続きの戸籍謄本の集め方で確かめてください。銀行や証券会社ごとに戸籍の束を出す手間は、無料の法定相続情報証明制度の一覧図で減らせます。
専門家に頼む場合の報酬:公表されている数字と調べ方
専門家の報酬は、どの資格も各事務所が自由に決めます。ただし調べ方は資格によって違います。
- 司法書士:日本司法書士会連合会が会員アンケートの結果を公表しています。2024年3月実施のアンケートで、相続登記の設例(土地1筆・建物1棟、評価額合計1,000万円、戸籍謄本等5通の請求、遺産分割協議書と相続関係説明図の作成、相続人3人のうち1人が単独で相続)の平均は74,888円でした。相続放棄の申述書の作成(戸籍等5通の請求を含む)は40,892円。預金の解約と振込まで代理する遺産承継の設例の額は相続の司法書士費用にあります。どれも報酬だけの額で、登録免許税などの実費は含みません。
- 司法書士の見積もりの義務:司法書士は依頼を受ける前に、報酬額の算定方法などの「報酬の基準」を示すことになっています(司法書士法施行規則22条)。見積もりを頼むのは、この決まりに沿った自然な依頼です。
- 税理士・弁護士:報酬の公的な統計はありません。事務所の料金表で、何を基準に報酬を決めるか(遺産総額か、財産の数か)と、加算される項目を確かめます。
アンケートの平均は条件をつけた設例の数字なので、「この額で頼める」という意味ではありません。相続人や不動産の数が増えると報酬も変わります。資格ごとの報酬の決まり方は相続の司法書士費用の内訳と相続税の税理士費用の決まり方で詳しく扱っています。
筆者の計算:実家と預金がある相続の内訳例
数字の動き方を見るための例です(筆者の計算。額は上の表と日司連アンケートの数字を当てはめたもので、実際の請求額ではありません)。
前提:亡くなった父の財産は、実家(土地と建物の固定資産評価額の合計1,000万円)と預金。相続人は子2人で、長男が実家を相続する。相続税はかからない(相続税がかかるかの見分け方は相続税の基礎控除での一次判定)。
| 項目 | 自分でやる場合 | 相続登記を司法書士に頼む場合 |
|---|---|---|
| 父の戸籍1通(450円)、除籍・改製原戸籍3通(750円として) | 2,700円 | 依頼先が取得(実費は同じ) |
| 相続人2人の戸籍(450円×2) | 900円 | 同上 |
| 登記事項証明書2通(書面600円×2) | 1,200円 | 同上 |
| 登録免許税(1,000万円×1,000分の4) | 40,000円 | 40,000円 |
| 上の小計 | 44,800円 | 44,800円 |
| 司法書士の報酬(設例の平均を当てはめた場合) | 0円 | 74,888円 |
| 合計 | 44,800円+条例で決まる証明書代・郵送料 | 119,688円+同左 |
検算:2,700+900+1,200+40,000=44,800円。44,800+74,888=119,688円。
自分でやる場合の差額は約7万5千円ですが、その分、法務局への相談予約・申請書の作成・補正への対応を自分で担います。預金の解約は銀行ごとに書類と来店が要るので、口座が多いほど手間が増えます。自分でできる範囲の見極めは相続手続きを自分でやる方法が参考になります。
見積もりを比べるときの見方と、費用を抑える順番
費用を抑えたいときは、全部を自分でやるか全部を頼むかの二択ではなく、手間が大きく専門性の高い部分だけを頼むのが現実的です。進め方の例を挙げます。
- 戸籍集めと法定相続情報一覧図の取得は自分でやる(郵送請求もできる)。
- 預金の解約は、銀行の案内に沿って自分でやる。
- 相続登記は、法務局の手続案内(予約制)を使って自分で申請するか、司法書士に頼むかを、上の差額と自分の時間で決める。
- 相続税の申告が要る場合は、税理士に頼むかを早めに決める(期限は相続の期限一覧)。
見積もりを複数取るときは、次の点を同じ条件にそろえて比べます。比べる項目と依頼の文例は相続の費用の見積もりの取り方にまとめました。
- 報酬と実費(立替金)が分かれているか。
- 不動産の数・相続人の数・金融機関の数が増えたときの追加料金。
- 登記は司法書士、申告は税理士など、どの手続きをどの資格者が担当するか。
- 交通費・日当・郵送料の扱い。
代行サービスを選ぶときも、見積書で「どの手続きを、誰が(どの資格者が)、いくらで」行うかを確かめます。費用を相続人の誰が負担するかは、依頼の前に相続人どうしで話しておくと後でもめにくくなります。決め方は相続の税理士費用は誰が払うかを参考にしてください。
よくある質問
Q. 相続手続きを全部自分でやると、費用はいくらくらいですか?
財産が預金だけなら、主な出費は戸籍などの証明書代と郵送料です。不動産があると登録免許税(固定資産評価額の1,000分の4)が加わり、評価額1,000万円なら4万円です(筆者の計算)。相続税の申告が要る場合は、税理士の報酬が別にかかることが多くなります。
Q. 専門家の報酬の「相場」はどこで分かりますか?
司法書士は日本司法書士会連合会が報酬アンケートの結果を公表しています(条件と平均額は相続の司法書士費用の記事にあります)。税理士・弁護士には公的な統計がないため、各事務所の料金表と見積書で比べます。いずれも報酬だけの額で、実費は別です。
Q. 費用は相続人のうち誰が払うのですか?
法律で負担者は決まっていないため、相続人どうしで決めます。取得する割合で分ける、遺産から先に払うなどの方法があり、[相続の専門家費用を誰が払うかの決め方](/souzoku-hiyou-dare/)で順に説明しています。
出典・参考にした公的な情報
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令(戸籍証明書・除籍証明書の標準額)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 登録免許税法 別表第一・第10条・第19条・附則第7条(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 租税特別措置法 第84条の2の2(相続登記の登録免許税の免税措置)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 相続登記の登録免許税の免税措置について(法務局)
- 国税通則法 第118条・第119条(課税標準・税額の端数計算)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 登記手数料令 第2条・第3条(登記事項証明書の手数料)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
- 法定相続情報証明制度について(法務局)
- 相続の放棄の申述(裁判所)
- 遺言書の検認(裁判所)
- 司法書士の報酬(報酬アンケート 2024年3月実施)(日本司法書士会連合会)
- 司法書士法施行規則 第22条(報酬の基準を示す義務)(デジタル庁 e-Gov法令検索)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。