車の相続手続き:名義変更・廃車・売却の必要書類と運輸支局の流れ
この記事のもくじ
亡くなった人(被相続人)の名義の車は遺産の一つで、乗り続ける・売る・廃車にするのどれを選んでも、まず相続人の名義に移すか、相続人が手続きする形になります。普通車は運輸支局(自動車検査登録事務所)、軽自動車は軽自動車検査協会と窓口が分かれ、そろえる書類も違います。この記事では、車検証の確認から窓口での申請まで、選ぶ道ごとに必要書類と手数料を並べます。
車の相続手続きは乗り続ける・売る・廃車から選ぶ
最初に車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄を見ます。関東運輸局の案内のとおり、所有者がローン会社や販売店など第三者になっている車は、被相続人の財産として相続が発生しません。その場合は所有者の会社に連絡し、残りの支払いと名義の扱いを聞くところから始めます。
所有者が被相続人本人なら、相続人が、乗り続ける・売る・廃車にするの3つから選びます(しばらく乗らないなら、廃車の手前の一時抹消登録もあります)。どの道でも、手続きの窓口は使用の本拠の位置(車を置く場所)を管轄する運輸支局か自動車検査登録事務所で、関東運輸局の本局では受け付けていません。
| 選ぶ道 | 運輸支局での手続きの名前 | 手数料(自動車検査登録印紙) |
|---|---|---|
| 相続人の1人が乗り続ける | 単独相続(移転登録) | 700円 |
| 相続人全員の共有にする | 共同相続(全員の印鑑証明書が要る) | 700円 |
| 買い手に売る | 相続と第三者への名義変更を同時に申請 | 1,400円(申請書2枚分) |
| しばらく乗らない | 相続と一時抹消登録を同時に申請 | 相続700円+一時抹消500円 |
| 解体して廃車にする | 永久抹消登録(相続人1人が代理で申請) | 無料 |
普通車の移転登録には、道路運送車両法13条で、所有者の変更があったとき、新しい所有者は「その事由があった日から15日以内」に移転登録を申請する、と定められています。相続では遺産分割で引き継ぐ人が決まって初めて新しい所有者が定まるため、この15日をいつから数えるかは、書類をそろえる前に管轄の運輸支局へ電話で聞いておくと安心です。分け方の話し合い全体の進め方は遺産分割協議書の書き方とひな形で扱っています。
普通車の名義変更:運輸支局の手順と必要書類
相続人の1人が引き継ぐ「単独相続」を例に、運輸支局での手順を順に並べます。書類は関東運輸局が示す一覧に沿っています。管轄が変わる場合はナンバープレートの交換があるため、車両を運輸支局に持ち込みます。
- 相続人を確かめる書類をそろえる。 戸籍謄本(戸籍の全部事項証明書)で、死亡の事実と相続人全員が分かるようにします。法務局で交付される法定相続情報一覧図の写しがあれば、戸籍の束の代わりになります。
- 誰が引き継ぐかを示す書類を用意する。 遺産分割協議書(相続人全員の実印)か、次の章の遺産分割協議成立申立書、または遺言書・調停調書・審判書など。相続人が1人だけなら不要です。
- 引き継ぐ人の印鑑証明書を取る。 発行から3か月以内のものです。
- 車庫証明を取る。 自動車保管場所証明書は証明日から40日以内のものが必要です。車検証の使用の本拠の位置と新しい使用者の住所が同じなら要りません。
- 窓口で申請書(OCRシート第1号様式)と手数料納付書を出す。 手数料納付書に700円分の自動車検査登録印紙を貼ります。印紙は運輸支局の近くで売っています。
| 書類 | 誰のもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 自動車検査証(車検証) | 被相続人名義の車 | 有効期間内のもの |
| 戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し | 被相続人と相続人全員 | 相続人が1人のときも、ほかに相続人がいないか確かめるため改製原戸籍を求められることがある |
| 遺産分割協議書など | 相続人全員 | 車以外の財産も書いた協議書は、原本と写しを出し、照合後に原本が返される |
| 印鑑証明書・実印(または実印を押した委任状) | 引き継ぐ人 | 発行から3か月以内 |
| 車庫証明 | 引き継ぐ人 | 証明日から40日以内 |
| 使用者の住民票 | 使用者 | 所有者と使用者が違うときだけ |
相続人に未成年者がいて、親も相続人である場合は、親と子の利益がぶつかるため家庭裁判所で特別代理人を選んでもらい、その人が協議書に押印します。相続放棄をした人がいるときは、家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書の原本と写しを出します。戸籍の集め方は相続手続きの戸籍謄本の集め方、一覧図の作り方は法定相続情報証明制度とはにまとめています。
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印)
- 遺産分割協議成立申立書(車の価格が100万円以下と分かる査定証などを添えたときだけ)
- 遺言書(公正証書遺言以外は家庭裁判所の検認済み)/遺言書情報証明書
- 遺産分割の調停調書/審判書(確定証明書つき)/判決謄本(確定証明書つき)
- 相続人が1人だけなら、この書類は不要
価格が100万円以下の車は簡易な申立書で済む
運輸支局の一覧には、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」を使える場合が載っています。条件は、相続する車の価格が100万円以下だと分かる査定証か、査定価格を確かめられる資料の写しを添えることです。この書面を使うと、引き継ぐ人が相続人であることさえ確かめられれば、ほかの相続人の確認は要らないとされています。
つまり、年式の古い車や走行距離の多い車なら、相続人全員に実印を押してもらい印鑑証明書を集める手間を省ける可能性があります。査定証は、中古車の買取店や販売店などに査定を頼んで書面でもらいます。申立書の様式は運輸支局の窓口で配られているので、記入の仕方も窓口で聞けます。
ただし、申立書で済ませても、遺産全体の分け方を相続人で話し合う必要がなくなるわけではありません。車を誰が引き継いだかは、ほかの遺産を分けるときに家族で共有しておきます。車のほかに預金や不動産がある場合は、まとめて1通の遺産分割協議書にしておくと、運輸支局・銀行・法務局で同じ書類を使い回せます。
家族への連絡の例:「父の車は、査定で○万円と出たので、運輸支局の簡易な申立書で私の名義にします。ほかの財産の分け方とあわせて、来月の話し合いで確認させてください。」
売る・廃車にするときの流れ
売る場合は、相続の名義変更と買い手への名義変更を同じ日に窓口へ出せます。申請書(第1号様式)を2枚使い、1枚は相続、もう1枚は買い手への譲渡に使うので、印紙は1,400円分です。相続人の側は譲渡証明書に実印を押し、印鑑証明書を出します。買い手の側は印鑑証明書・実印(または委任状)・車庫証明を用意します。買取店に売る場合も、相続の書類(戸籍・協議書など)がそろっていないと名義を移せないので、先にこの章までの書類をそろえておきます。
しばらく乗らない場合は、相続と一時抹消登録を同時に申請します。前後2枚のナンバープレートを返し、印紙は相続700円と一時抹消500円です。また乗るときは中古新規登録をします。
解体して廃車にする場合は、相続人の1人が代理で永久抹消登録を申請でき、手数料はかかりません。戸籍は死亡の事実と申請する相続人が分かるもので足り、申請書にはリサイクル券番号(移動報告番号)を書きます。車検の残りが1か月以上あれば自動車重量税の還付を受けられ、申請書に申請する相続人の口座を書きます。永久抹消では証明書が出ないので、廃車の証明が要る場合は登録事項等証明書を別に請求します。
相続放棄を考えている人は、ここで手を止めてください。民法921条は、相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認したものとみなす、と定めています。車を売る・廃車にすることがこれに当たりうるため、放棄するかどうかを決める前に相続放棄の手続きを読み、判断がつかなければ専門家に相談します。
軽自動車は軽自動車検査協会で手続きする
軽自動車(四輪)は、関東運輸局の案内のとおり軽自動車検査協会での手続きです。窓口は、新しい使用者が車を置く場所を管轄する協会の事務所・支所・分室になります。
軽自動車検査協会の名義変更の案内(2026年10月23日に確認)では、相続の場合に求められる書類は次のとおりで、普通車より少なく済みます。手数料(自動車検査証記録事項の変更)は無料です。名義変更の期限は、道路運送車両法67条により、使用者が変わるなどの事由があった日から15日以内です。協会の案内ページには日数の記載がないので、条文で確かめた内容です。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 相続を証明する書面 | 戸籍謄本等または法定相続情報一覧図(コピー可。複数ページは全ページ)。死亡診断書は原則使えない |
| 自動車検査証 | 原本 |
| 申請書 | 自動車検査証変更記録申請書(軽第1号様式など) |
| 住所を証する書面 | 使用者や住所が変わる場合だけ。住民票の写し(マイナンバーの記載なし)か印鑑証明書で、発行から3か月以内 |
| ナンバープレート | 管轄が変わる場合だけ(プレート代は別) |
| 申請依頼書 | 新しい使用者以外が手続きする場合 |
協会の案内には、普通車のような遺産分割協議書の提出は挙がっていません。それでも、誰が引き継ぐかは家族の間で決めておく必要があるので、話し合いの結果はメモか協議書に残します。協会の案内には、軽自動車税の申告(報告)は協会以外の窓口、つまり市区町村の税の窓口での手続きになる場合がある、とも書かれています。名義を移したあとの税の通知がどこに届くかは、市区町村の税の窓口に問い合わせます。
車のほかに名義を移すもの(不動産・預金・公共料金など)の期限と優先順は相続の名義変更の期限、生命保険の受取人をめぐる問題は生命保険の受取人が相続で問題になる時で扱っています。車の手続きを自分で進めたあと、ほかの手続きもひとりでできるかを知りたい人は、相続手続きを自分でやる方法へ進んでください。
よくある質問
Q. 車検が切れたままの車でも相続の手続きはできますか?
関東運輸局の案内では、すぐに乗るなら車検を受けてから相続の手続きをし、すぐに乗らないなら相続と一時抹消登録を同時にする流れが示されています。車検切れのまま第三者に名義を移す場合も、先に一時抹消登録をしてから所有者の変更を記録する形です。どの手続きが合うか迷うときは、車検証を手元に置いて管轄の運輸支局に相談します。
Q. 車をどうするか決まるまで、そのまま置いておいてもいいですか?
遺産分割で誰が引き継ぐか決まるまでは、新しい所有者が定まらないため、置いておく間の保管と保険の扱いを家族で決めておきます。普通車には所有者の変更から15日以内という移転登録の定めがあるので、分け方が決まったら早めに申請します。相続放棄を考えている人は、売却や廃車の前に放棄の手続きの説明を読んでください。
Q. 他の相続人が遠くに住んでいて、運輸支局に一緒に行けません。
相続人全員がそろって出向く必要はありません。普通車なら、引き継ぐ人が遺産分割協議書(全員の実印)か、100万円以下の車なら遺産分割協議成立申立書を用意すれば、その人ひとりで申請できます。本人が行けないときは、実印を押した委任状で代理の人に頼めます。
出典・参考にした公的な情報
- 自動車の相続による手続き(関東運輸局)(国土交通省 関東運輸局)
- 共同相続(相続人全員が相続する場合)の必要書類(関東運輸局)(国土交通省 関東運輸局)
- 単独相続(相続人のうち一人が相続する場合)の必要書類(関東運輸局)(国土交通省 関東運輸局)
- 第三者への名義変更(相続と同時に手続きする場合)(関東運輸局)(国土交通省 関東運輸局)
- 一時抹消登録(相続と同時に手続きする場合)(関東運輸局)(国土交通省 関東運輸局)
- 永久抹消登録(相続人が代理で申請する場合)(関東運輸局)(国土交通省 関東運輸局)
- 軽四輪自動車の登録手続き(関東運輸局)(国土交通省 関東運輸局)
- 名義変更(売買・譲渡・その他)(軽自動車検査協会)(軽自動車検査協会)
- 道路運送車両法 第13条・第67条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 法定相続情報証明制度について(法務局)(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。