相続の名義変更の期限:不動産・預金・車・公共料金の一覧と優先順
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相続に伴う名義変更で法律の期限があるのは、**不動産の相続登記(取得を知った日から3年以内)と車(事由があった日から15日以内)**の2つです(住所等変更登記は別の義務で、下の表にあります)。預金・株・電気やガスなどの公共料金・携帯電話には法律の期限はありません。ただし、相続放棄を決める3か月や相続税の10か月といった別の期限が先に来るため、「期限がない=後回しでよい」とはなりません。下の一覧で期限の有無を確かめ、優先順の表に沿って手を付けると、漏れと二度手間を減らせます。
名義変更の期限の一覧:期限があるもの・ないもの
| 対象 | 手続き先 | 法律の期限 | 根拠・メモ |
|---|---|---|---|
| 土地・建物(相続登記) | 不動産のある地域の法務局 | 取得を知った日から3年以内 | 不動産登記法76条の2。10万円以下の過料の定め |
| 遺産分割で法定相続分より多く取得した不動産 | 同上 | 分割の日から3年以内 | 同条2項 |
| 登記名義人の住所・氏名の変更 | 同上 | 変更から2年以内 | 76条の5(2026年4月1日施行)。5万円以下の過料の定め |
| 普通自動車 | 運輸支局 | 15日以内 | 道路運送車両法13条 |
| 軽自動車 | 軽自動車検査協会 | 15日以内 | 同法67条(車検証の記録事項の変更) |
| 預貯金 | 各金融機関 | なし | 遺産分割前は自由に引き出せない |
| 株・投資信託 | 各証券会社・信託銀行 | なし | 口座の調べ方から始めることが多い |
| 電気・ガス・水道 | 各社・水道局 | なし | 使い続けるなら名義と支払口座の変更 |
| 固定電話・携帯電話 | 各社 | なし | 承継か解約。解約まで料金はかかる |
この表のうち、相続登記の3年は「亡くなった日から3年」ではありません。相続の開始を知り、かつ自分が不動産を取得したことを知った日から数えます。また、2024年4月1日より前に始まった相続で登記していない不動産も義務の対象で、その期限は最短で2027年3月31日です。2026年10月23日時点で、この最短の期限までは約5か月です。
車の15日は、条文上「その事由があった日から」です。普通車は道路運送車両法13条、軽自動車は同法67条の定めで、どちらも15日以内です(軽自動車検査協会の名義変更の案内ページには日数の記載がないため、条文で確かめました)。相続では、遺産分割で誰が車を引き継ぐかが決まってから手続きをする流れになるので、分割が決まったら早めに動きます。普通車と軽自動車では手続き先も書類も違います。具体的な書類は車の相続手続きで扱っています。
期限がある名義変更:不動産の相続登記と車
不動産の相続登記は、2024年4月1日に義務になりました。正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。法務省の説明では、登記官が義務違反を把握するとまず申請するよう催告し、その期間内に申請がなければ裁判所に通知され、過料の額は裁判所が決めます。期限を1日過ぎたらすぐ過料になる仕組みではありませんが、催告を待たずに早めに進めるほうが安心です。
遺産分割の話し合いがまとまらず3年に間に合わないときは、法務局に「相続人申告登記」を申し出ると、申し出た人は申請義務を果たしたものとみなされます。ただし、売却や担保に入れるには、あとで正式な相続登記が要ります。義務化の細かな要件、正当な理由の例、相続人申告登記の書類は相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記にまとめているので、ここでは一覧と順番にとどめます。
もう1つの法改正が、住所等変更登記の義務化です。2026年4月1日から、登記名義人の住所や氏名が変わったら2年以内に変更登記を申請する義務ができました。相続で家を自分の名義にしたあとに引っ越した場合も対象になるので、「相続登記を済ませたら終わり」ではない点を覚えておきます。2026年4月1日より前に住所や氏名が変わっていて登記していないものも対象で、その場合の期限は2028年3月31日です(法務省のQ&A)。仕組みは住所変更登記の義務化とスマート変更登記で確かめられます。
法律の期限がない名義変更:預金・株・公共料金・携帯電話
預金。 名義変更(または解約して払い戻し)に法律の期限はありません。全国銀行協会は、亡くなった人の預金は原則として遺産分割が終わるまで引き出せず、2019年の改正で仮払い制度ができたと説明しています。仮払いで引き出せるのは、口座ごとに「相続開始時の残高×3分の1×自分の法定相続分」で、同じ金融機関からは150万円が上限です。10年以上取引がない預金は休眠預金になりますが、金融庁の案内では移管後も取引のあった金融機関で引き出せ、相続人も所定の手続きで払い戻せます。手順は預金の相続手続きの流れと必要書類にあります。
株・投資信託。 これも法律の期限はありません。どの証券会社に口座があるかが分からないことが多いので、郵便物や取引報告書から探し、見つからなければ口座の開設先を調べる手続きを使います。調べ方と移管の流れは株の相続手続きで扱っています。
公共料金・携帯電話。 名義変更も解約も各社との契約の手続きで、法律の期限はありません。急ぐ理由は2つあります。1つは、亡くなった人の口座は遺産分割が終わるまで原則として払い戻しができない扱いなので、その口座からの引き落としに頼り続けられないこと。もう1つは、使っていない回線や契約も、解約するまで料金がかかり続けることです。実家に誰も住まないなら、電気・ガスは解約、水道は空き家の管理に使うかどうかで決めます。
期限がなくても先に来る期限。 相続放棄をするかどうかは、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に決めます(民法915条)。相続財産を処分すると単純承認したものとみなされることがある(民法921条)ため、放棄を考えているうちは、預金の解約や車の売却に手を付けないのが安全です。相続税がかかる場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納税をします。
どれから手を付けるか:名義変更の優先順
期限の有無だけで順番を決めると、生活に響く手続きが後ろに回ったり、放棄の判断の前に財産に手を付けたりします。次の4段階で考えると整理できます。
| 段階 | 目安の時期 | やること | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 亡くなった直後〜3か月 | 財産と借金を調べる。放棄するか決まるまで解約・売却をしない | 処分が単純承認とみなされることがある |
| 2 | すぐ〜1か月 | 公共料金・電話の名義と支払方法を変える、または解約 | 引き落としが止まる・料金がかかり続ける |
| 3 | 遺産分割が決まったら | 車(15日以内)、不動産の相続登記(3年以内) | 法律の期限と過料の定めがある |
| 4 | 相続税の申告に間に合うように | 預金・株の名義変更・払い戻し | 期限はないが、納税資金や申告の残高確認に使う |
年金の受給停止や健康保険の手続きは名義変更ではありませんが、亡くなってすぐに届け出が必要になります。日本年金機構は、年金を受けている人が亡くなったら「すみやかに」提出するよう案内していて、遅れると受け取りすぎた年金の返還を求められることがあります(機構にマイナンバーが収録されている人は、死亡届を原則省略できます)。届け出の順番は相続手続きでまずやることで確かめます。全体の期限を一枚で見たいときは相続の期限一覧が正本です。
名義変更で共通して使う書類と、自分でやるか頼むか
手続き先は違っても、求められる書類はほぼ共通です。先にまとめてそろえると、窓口を回る回数が減ります。
- 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(遺言がある場合は遺言書)
- 相続人の印鑑証明書(海外在住の人は署名証明)
- 法定相続情報一覧図の写し(法務局で無料で交付される。戸籍の束の代わりに使えるかは提出先ごとに確かめる)
提出先ごとの書類の違いは相続手続きの必要書類一覧で早見表にしています。法務局の窓口の手続案内(予約制)を使えば、相続登記は自分で申請することもできます。一方、不動産が何か所にもある、相続人が多い、平日に時間が取れないといった場合は、手続きの一部を頼む選択肢もあります。相続登記の申請書の作成と代理は司法書士(司法書士法3条)、相続税の申告書の作成と代理は税理士(税理士法2条)の仕事なので、頼むときは「どの手続を、どの資格者が、いくらで」担当するかを見積書で確かめます。
名義変更が全部終わったら、協力してくれた兄弟や親族に、分けた内容と書類の保管先を伝えて区切りをつけます。伝え方は次の相続手続きのお礼と完了報告の文例で扱います。海外に住む相続人がいて書類のやり取りが必要な場合は、ひとつ前の法定相続人が海外在住の場合の手続きを先に読んでください。
よくある質問
Q. 名義変更をしないままだと罰則はありますか?
法律で過料の定めがあるのは不動産です。正当な理由なく相続登記の申請を怠ると10万円以下の過料が科される可能性があり、法務省の説明では、登記官からの催告に応じなかった場合に裁判所へ通知される流れです。預金・株・公共料金・携帯電話は契約先との手続きで、名義を変えないこと自体に過料の定めはありませんが、引き落としが止まる・解約が遅れて料金がかかり続けるといった不便は起きます。
Q. 法改正で名義変更の期限が変わったのは何ですか?
2024年4月1日から相続登記が義務になり、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内の申請が求められるようになりました。それより前の相続も対象で、期限は最短で2027年3月31日です。2026年4月1日からは、登記名義人の住所・氏名が変わったときの変更登記も2年以内の義務になりました。
Q. 兄弟のうち1人が先に名義変更を進めてもよいですか?
遺産分割協議がまとまる前は、預金を1人が全額引き出すことは原則できず、使えるのは仮払い制度の範囲です。不動産は相続人の1人が法定相続分どおりの登記を申請する方法がありますが、全員の共有になるので、売る・貸すときに全員の協力が要ります。誰の名義にするかは協議で決めてから動くほうが、やり直しが少なくて済みます。
出典・参考にした公的な情報
- 不動産登記法 第63条・第76条の2・第76条の3・第76条の5・第164条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相続登記の申請義務化について(法務省)
- 住所等変更登記の申請義務化(よくある質問)(法務省)
- 道路運送車両法 第13条・第67条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第909条の2・第915条・第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 亡くなった親の預貯金、すぐに引き出すことは可能ですか?(全国銀行協会)
- 長い間、お取引のない預金等はありませんか?(休眠預金)(金融庁)
- No.4205 相続税の申告と納税(令和8年4月1日現在法令等)(国税庁)
- 年金を受けている方が亡くなったとき(日本年金機構)
- 法定相続情報証明制度について(法務局)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 税理士法 第2条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。