相続の手続きと期限 / 手順

相続手続きを自分でやる方法:ひとりで進められる範囲と専門家の境目

この記事のもくじ
  1. 自分でできる相続手続きと、資格者の領域の境目
  2. 自分で進める順番:7つの段階
  3. 無料で使える公的な案内窓口
  4. 自分でやるか頼むかの見分け方

相続手続きの多くは、相続人が自分で進められます。法律が資格者以外に禁じているのは「他人から頼まれて仕事として」登記や申告、法律事務を扱うことで、相続人が自分の相続の手続きを自分でするのは禁じられていません。この記事では、自分でできる手続きと資格者に頼む領域を表で分け、無料で使える公的な案内窓口と、ひとりで進める順番を示します。

自分でできる相続手続きと、資格者の領域の境目

司法書士法73条が禁じているのは、司法書士でない人が登記の代理や法務局に出す書類の作成などを業務として行うことです。税理士法52条も、税理士でない人が他人のために申告の代理や税額計算の相談を行うことを禁じています。どちらも「他人のため」の規制なので、相続人が自分の分を自分でするのとは別の話です。相続登記については、不動産登記法63条2項で相続による移転の登記は登記を受ける人が単独で申請できると定められています。

下の表は、主な手続きを「自分でできるか」と「頼むなら誰か」で分けたものです。表の「頼む先」は、その仕事を業務として引き受けられる資格を、条文に沿って書いています。

手続き 提出先 自分で 頼むなら
戸籍・除籍謄本の請求 市区町村 できる 登記などを頼む資格者に、戸籍集めを含めて頼める
法定相続情報一覧図の申出 法務局 できる(交付は無料) 司法書士・行政書士・税理士など(代理できる資格が法務局の案内に列挙)
預金の払戻し・解約 各金融機関 できる 司法書士などの遺産承継業務(口座の解約・振込の代理)
年金の停止・未支給年金の請求 年金事務所など できる(遺族が自分の名で請求) 年金事務所の窓口で説明を受けながら自分で出すのが基本
遺産分割協議書の作成 (各手続きに添付) できる 行政書士・司法書士・弁護士
相続登記 法務局 できる(本人申請) 司法書士・弁護士
相続税の申告 税務署 できる 税理士(国税局長に通知した弁護士も)
相続放棄の申述 家庭裁判所 できる 書類作成は司法書士、代理は弁護士
相続人どうしの交渉・調停の代理 ― 自分の分は自分で話せる 弁護士だけ(弁護士法72条)

相続人の間で話がまとまらないときの交渉や調停の代理は、弁護士法72条で弁護士の仕事とされています。行政書士は遺産分割協議書のような権利義務に関する書類を作れますが、行政書士法1条の3第2項で、他の法律が制限する登記申請書や相続税の申告書は作れません。資格ごとの細かな違いは相続手続きの専門家の違いにまとめています。

自分で進める順番:7つの段階

ひとりで進めるときは、後の手続きで使う書類を先に作る順番にすると、同じ書類を何度も取り直さずに済みます。下の順番は、遺言の有無で分かれ道があるものの、多くの家庭にそのまま当てはまる形です。全体の流れを図で見たい人は相続手続きの順番も参考にしてください。

  1. 遺言書があるかを確かめる。 自宅・貸金庫を探すほか、法務局に預けた自筆証書遺言は、相続人が遺言書保管事実証明書(1通800円)を請求すれば保管の有無が分かります。
  2. 戸籍を集めて相続人を確定する。 亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍です。戸籍証明書は1通450円、除籍は1通750円が政令の標準額です。
  3. 法定相続情報一覧図を作る。 戸籍の束と自分で書いた一覧図を法務局に出すと、認証文つきの写しが無料で交付されます。以後は銀行や法務局に戸籍の束の代わりに出せる場合があります(使えるかは提出先に確かめる)。
  4. 財産と借金を書き出す。 通帳・郵便物・固定資産税の通知などから一覧表を作ります。借金が多そうなら、この時点で相続放棄の期限を確かめます。
  5. 遺産の分け方を話し合い、協議書にする。 相続人全員の署名と実印、印鑑証明書をそろえます。
  6. 名義を移す・払い戻す。 預金・証券・車・不動産(相続登記)に順番の決まりはないので、お金が要る時期と期限の近いものから並べます。
  7. 税金の申告をする。 亡くなった年の所得の準確定申告と、遺産の額によっては相続税の申告です。

段階1から3は、ほぼ書類集めで、時間はかかっても判断はあまり要りません。迷いが出やすいのは段階4と5で、財産の評価や分け方に意見が割れたときです。相続税がかかるかどうかは、まず相続税の基礎控除の式で一次判定してから、申告を自分でするか決めます。

自分で進めるときの書類の流れ

戸籍の束 → 法定相続情報一覧図(法務局・無料)→ 銀行・証券会社・法務局・税務署へ同じ一覧図を出す 遺産分割協議書(全員の実印)+印鑑証明書 → 預金の払戻し・相続登記・車の名義変更に共通で使う

無料で使える公的な案内窓口

自分でやる人の味方は、手続きの書き方を教えてくれる公的な窓口です。どれも「手続きの説明」をする場で、書類を代わりに作ったり、あなたに有利な分け方を判断したりはしません。使い方のこつは、自分で書いた下書きと集めた書類を持って行き、具体的な箇所を質問することです。

窓口 相談できること できないこと
法務局の登記手続案内 相続登記の申請書の書き方、添付書類(完全予約制・1回20分以内。電話・対面・ウェブ会議) 申請書の作成代行、遺産分割の内容の判断
税務署の電話相談・面接相談 相続税・準確定申告の一般的な取扱い(面接は電話で予約) 申告の代理、地方税(固定資産税など)
家庭裁判所の家事手続案内 相続放棄の申述書の書き方など手続きの方法(東京家裁では無料・予約不要。運用は裁判所ごと) どうすべきかの法律相談
年金事務所 年金の停止、未支給年金・遺族年金の請求(予約して対面、郵送、電子申請) 受給できるかの見込みの約束

電話番号と受付時間は、相続手続きの無料相談窓口一覧に1か所でまとめています。

自分でやるか頼むかの見分け方

自分でやれるかどうかは、作業量より「判断の要る場面があるか」で決まります。次のチェックに当てはまる数が多いほど、資格者に頼む部分を増やすほうが早く終わります。

  • 相続人に連絡のつかない人、海外に住む人、未成年者、認知症の人がいる
  • 亡くなった人より前に亡くなった相続人がいる(数次相続・代襲相続)
  • 不動産が複数の市区町村にある、または古い相続で名義が祖父母のまま
  • 遺産の額が基礎控除を超えそうで、相続税の申告や特例の判断が要る
  • 相続人の間で分け方に意見の違いがある、または話し合いに応じない人がいる
  • 期限(相続放棄の3か月、相続税の10か月)までの時間が短い

上から5つ目に当てはまるなら、交渉は弁護士の領域です。相続登記だけを自分でしたい人は、書類集めから申請までを相続登記を自分でする手順で詳しく扱っています。

頼む場合の費用の目安として、公的な団体の調査があります。日本司法書士会連合会が2024年3月に行った報酬アンケートでは、相続による所有権移転登記(土地1筆・建物1棟、評価額合計1,000万円、戸籍5通の請求、遺産分割協議書と相続関係説明図の作成、相続人3人のうち1人が取得という設例)の平均は74,888円でした。これは報酬だけの額で、登録免許税や戸籍代などの実費は別にかかります。条件が違えば額も変わるので、見積もりで内訳を確かめます。

代行サービスを選ぶなら、「全部まとめて」という言葉より、どの手続きを、どの資格者の名前で、いくらで行うかを見積書で確かめます。登記は司法書士、相続税の申告は税理士、もめごとの交渉は弁護士が担う手続きなので、提携の資格者が誰かを聞いておきます。サービスの種類と確かめ方は相続手続きの代行サービスとはで比べています。

手続きの全体は相続手続きの流れと期限で確認できます。

よくある質問

Q. 平日に役所や銀行へ行けない会社員でも、自分で進められますか?

郵送で済む手続きが多いので、平日の窓口に行く回数は減らせます。戸籍の郵送請求、法定相続情報一覧図の申出と受け取り、年金の届出、相続登記の申請は郵送でもできます。銀行は金融機関ごとに来店か郵送かが分かれるので、最初に各行の相続の窓口に電話して、郵送で受け付けるかを聞きます。

Q. 途中まで自分でやって、残りだけ専門家に頼むことはできますか?

できます。戸籍集めと財産の一覧づくりまでを自分で済ませ、相続登記だけ司法書士に、相続税の申告だけ税理士に頼む人もいます。頼むときは、集めた戸籍や一覧図を渡せば同じ書類を取り直す手間が省けるので、何を渡せるかを見積もりの段階で伝えます。

Q. 法務局や税務署で、書類を代わりに書いてもらえますか?

法務局の登記手続案内も税務署の相談も、手続きの説明をする窓口で、申請書や申告書を代わりに作る場所ではありません。書類の作成や代理を仕事として引き受けられるのは、登記なら司法書士と弁護士、相続税の申告なら税理士です。自分で書いた書類を持参して、書き方の誤りを質問する使い方が向いています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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