不動産売却の税金と特例 / 基本ガイド

不動産売却の税金:譲渡所得の計算・税率・特例の全体と確定申告

この記事のもくじ
  1. まず知っておく結論:税金は「利益」にかかる
  2. 税額の出し方:計算の流れと目安
  3. 税率:長期と短期、所有期間の数え方
  4. 税金を減らせる特例の全体像
  5. 確定申告までの流れと、住民税のこと
  6. 自分で進めるか、税理士に頼むか

家や土地を売ったときの税金は、売った金額ではなく、売って出た利益にかかります。この利益を譲渡所得といい、「売った金額−(取得費+譲渡費用)」で求め、そこから特別控除があれば引いた残りに税率をかけます。税率は、売った年の1月1日で持っていた期間が5年を超えていれば長期で約20.315%、5年以下なら短期で約39.63%です(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)。税額を見積もる全体像を示し、詳しくは各記事へ案内します。

まず知っておく結論:税金は「利益」にかかる

4,000万円で売っても、取得費と譲渡費用が4,200万円なら利益はなく、譲渡所得税はかかりません。反対に、安く手に入れた土地なら、同じ売却額でも利益と税額が増えます。

国税庁のタックスアンサーによると、土地・建物を売った所得は、給与所得などとは分けて計算します(分離課税)。式は次のとおりです。

  • 譲渡所得の金額=売った金額(譲渡価額)−(取得費+譲渡費用)
  • 課税される譲渡所得の金額=譲渡所得の金額−特別控除額

利益を判断する材料は3つです。

  1. 売った金額:売買契約書に書かれた代金です。
  2. 取得費:買ったときの代金や手数料などを基に計算します。建物は年数に応じて減らします。
  3. 譲渡費用:仲介手数料、売主が負担した印紙税、測量費など、売るために直接かかったお金です。

用語としての「譲渡所得税」は、所得税・復興特別所得税・住民税をまとめて呼ぶ言い方です。法律上の名前は「譲渡所得」への所得税と住民税で、別名の税金があるわけではありません。意味の整理は譲渡所得税とは:不動産を売った利益にかかる所得税・住民税に、計算の手順は譲渡所得税の計算方法:売却額−取得費−譲渡費用−控除の手順にあります。

税額の出し方:計算の流れと目安

次の表は、計算の流れを示す筆者の仮の例です。

早見表:不動産売却の税金を出す5つのステップ
ステップ やること 例(筆者の計算)
1 売った金額を確定する 4,000万円
2 取得費を出す(購入代金+手数料。建物は年数で減らす) 2,500万円
3 譲渡費用を足す(仲介手数料など) 150万円
4 利益を出し、特別控除があれば引く 4,000−2,500−150=1,350万円
5 税率をかける 長期なら1,350万円×約20.315%≒約274万円

表の最後の行は、長期の場合です。同じ利益でも、短期なら1,350万円×約39.63%で約535万円になり、税額が倍近くに増えます。検算は、1,350×0.20315=274.25万円、1,350×0.3963=535.0万円です。

取得費の中身は少し複雑です。購入したときの代金のほか、登記費用や不動産取得税なども含まれます。建物は、自宅などの非業務用なら、「取得価額×0.9×償却率×経過年数」で求めた減価償却費相当額を引きます。償却率は木造0.031、鉄筋コンクリート造0.015などです。買ったときの書類が残っていない場合は、売った金額の5%を取得費にできる扱いがあり、詳しくは取得費不明の不動産売却の税金:5%の概算と取得費の探し方で示しています。

譲渡費用の範囲は、仲介手数料、売主負担の印紙税、土地を売るための建物の取壊し費用、貸家を売るときの借家人への立退料などです。修繕費や固定資産税は、売るための直接の費用ではないので含まれません。抵当権抹消登記費用・引越し代・遺品整理費用のようにページに名前がない費用は、通達の考え方で仕分けた表を不動産売却の税金で引ける費用:仲介手数料など譲渡費用に入るものに載せています。

税率:長期と短期、所有期間の数え方

税率は、売った年の1月1日で所有期間が5年を超えるかどうかで分かれます。

区分 所有期間(売った年の1月1日現在) 所得税 住民税 復興特別所得税を含めた合計
長期譲渡所得 5年超 15% 5% 約20.315%
短期譲渡所得 5年以下 30% 9% 約39.63%

合計の数字は、所得税に復興特別所得税(所得税額の2.1%)を足して計算した値です(15%×1.021+5%、30%×1.021+9%)。国税庁のページに書かれているのは内訳の税率なので、合計は筆者の計算です。

ここで間違えやすいのが数え方です。「買ってから5年」ではなく、売った年の1月1日を基準にします。2026年に売る場合は、2020年12月31日以前に取得していれば長期になります。引渡しの時期が年末年始にまたがると、売る年が変わって、税率の区分も変わることがあります。

相続や贈与で手に入れた不動産は、亡くなった人(被相続人)や贈与した人の取得日と取得費を引き継ぎます。相続してすぐ売っても、親が20年前に買ったものなら長期の扱いになります。この点は相続不動産の売却益の税金:親の取得費と取得日を引き継ぐしくみで詳しく扱います。税率の早見表と所有期間の数え方は譲渡所得税の税率:長期20.315%・短期39.63%と所有期間の数え方に分けています。

なお、復興特別所得税の期間や率は、令和8年度の税制改正(2026年3月31日に成立・公布)で見直されました。2026年中に売る場合は従来どおり2.1%で、2027年以後も復興と防衛の内訳が変わるだけで合計は2.1%のままという計算です。

税金を減らせる特例の全体像

利益が出ても、特例で税金が小さくなる、または0になることがあります。主なものを表にまとめます。

特例 対象 ポイント 詳しい記事
居住用財産の3,000万円特別控除 自分が住んでいた家(敷地とあわせて) 利益から最高3,000万円を引く。所有期間は問わない 自宅を売った時の譲渡所得税の3000万円控除:要件と期限
所有期間10年超の軽減税率 売った年の1月1日で、家屋と敷地の所有期間が10年超の居住用財産 6,000万円以下の部分は所得税10%・住民税4%。数えるのは居住期間ではなく所有期間 同上
被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除 相続した亡き親の家など 令和9年(2027年)12月31日までの譲渡。相続人3人以上は2,000万円 相続した空き家の3000万円控除:特別控除の要件と2027年末の期限
取得費加算の特例 相続税を払った人が相続した不動産を売る 払った相続税の一部を取得費に足す 取得費加算の特例:相続税を払った人が売却益の税金を減らすしくみ
特定の居住用財産の買換え特例 住み替え 課税を将来に繰り延べる(非課税ではない) 譲渡所得税の買い替え特例:課税の繰り延べと3,000万円控除の選択
譲渡損失の損益通算・繰越控除 住宅ローンが残る家を売って赤字 給与などと通算できる 不動産売却が赤字のとき:損益通算できる特例と確定申告の要否

特例には期限があるものが多く、空き家の特例、買換え特例、赤字の特例はいずれも令和9年(2027年)12月31日の譲渡までです。延長されるかは、毎年12月ごろに出る税制改正大綱で確かめます。延長を前提に売却の時期を決めるのは避けてください。

また、特例どうしの併用には制限があります。たとえば空き家の特例と取得費加算の特例はどちらか一方で、居住用の3,000万円控除と買換え特例も併用できません。どれが自分の売却に当てはまるかは、家の使い方(自分が住んでいた家か、相続した家か)で入口が分かれます。

確定申告までの流れと、住民税のこと

不動産を売った年の翌年の2月16日から3月15日(期限の日が土日の年は翌平日)までに、確定申告をします。税務署から納付書は送られてこないので、振替納税などで自分で納めます。

  1. 売買契約書、登記事項証明書、購入時の契約書などの書類を集める。
  2. 取得費と譲渡費用を整理して、譲渡所得の内訳書[土地・建物用]に書く。
  3. 特例を使う場合は、特例ごとの添付書類を足す。
  4. 確定申告書を作り、期限までに提出し、納税する。

特例を受けるときの重要点は、利益が3,000万円控除で全額消えて税額が0になっても、特例を受けるには確定申告が必要だということです。国税庁の手引きにも「確定申告をすることにより」特例を受けられると書かれています。申告の手順と必要書類は不動産売却の確定申告:やり方・期限・必要書類を順番に解説にあります。

住民税は、所得税の確定申告をすれば、別に申告する必要はありません。申告の内容をもとに市区町村から通知が届きます。納める時期や、翌年の保険料などへの影響は不動産売却の翌年の住民税・国民健康保険料:上がるしくみと備えに整理しています。また、売った人を扶養に入れている家族がいる場合は、譲渡所得が合計所得金額に入るため、扶養控除や配偶者控除が受けられなくなることがあります。

払う時期の細かい点は譲渡所得税はいつ払う?売った翌年3月の申告・納付と住民税の時期、納付が難しいときの動きは不動産売却の税金が払えない:納付の相談・猶予と今からできることで扱います。

自分で進めるか、税理士に頼むか

計算式と手順は国税庁のサイトで公開されているので、売った物件が1つで、書類もそろっていれば、自分で申告する人もいます。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、画面の案内に沿って内訳書まで作れます。

一方で、次のような場合は、税理士に頼む選択肢があります。税務書類の作成や税務相談は税理士の仕事(税理士法2条・52条)で、この記事は個別の税額を判定するものではありません。

  • 購入時の書類がなく、取得費の出し方で迷っている。
  • 相続した不動産で、取得費加算と空き家特例のどちらが有利かを比べたい。
  • 共有名義や、複数の物件を同じ年に売った。
  • 買換え特例や損益通算など、要件が細かい特例を使いたい。

費用の目安と頼むべきケースは不動産売却の確定申告の税理士費用と、税理士に頼むべきケースで整理しています。

税金の電話相談は、国税相談専用ダイヤルでも受け付けています。譲渡所得の一般的な取り扱いについて聞く窓口で、番号と受付時間は相続手続きの無料相談窓口一覧:登記・税・売却まで番号と受付時間にまとめています。

売却の種類別に読む順番

売るものによって、先に読む記事が変わります。

悩みの入口別に読む

困っていることからも探せます。

よくある質問

Q. 不動産を売ると、売った金額にそのまま税金がかかりますか?

かかりません。税金がかかるのは、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた「利益」の部分です。利益が出なければ、譲渡所得にかかる所得税と住民税はかかりません。

Q. 売却の税金は、いつ、どこに払いますか?

売った年の翌年の2月16日から3月15日(期限の日が土日の年は翌平日)の間に、確定申告をして所得税を納めます。住民税は、申告の内容をもとに市区町村から通知が届きます。

Q. 税金の計算は、自分でできますか?

計算式は国税庁が公開しており、取得費や売却額の書類がそろっていれば自分で試算できます。ただし特例を使えるかの判断や、申告書の作成を他人に頼むときは、税理士の仕事になります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

譲渡所得税とは:不動産を売った利益にかかる所得税・住民税

譲渡所得税の計算方法:売却額−取得費−譲渡費用−控除の手順

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自宅を売った時の譲渡所得税の3000万円控除:要件と期限