相続登記と名義変更 / Q&A

相続登記に権利証はいる?なくても申請できる理由と登記識別情報

この記事のもくじ
  1. 相続登記に権利証はいらない:単独申請だから不要になる仕組み
  2. 権利証が見つからないとき、役に立つとき
  3. 相続登記の後に届く登記識別情報:受け取り方と保管のしかた
  4. 登記識別情報も権利証もないまま売るときの方法

相続登記には、亡くなった親の権利証(登記済証)も登記識別情報も、原則として要りません。相続による登記は相続人が単独で申請できる登記で(不動産登記法63条2項)、権利証や登記識別情報の提出が求められるのは、売買のように登記の権利者と義務者が共同で申請する場合などだからです(22条)。法務局の相続登記のハンドブックでも、添付書類は戸籍の証明書や住民票などで、権利証は一覧に入っていません。相続登記が終わると、今度は相続人に新しい登記識別情報が通知され、これが以後の売却などで使う「権利証」の役割を果たします。

相続登記に権利証はいらない:単独申請だから不要になる仕組み

登記識別情報は、登記名義人本人による申請であることを登記官が確かめるための、12桁の符号です(法務局のハンドブック)。売買や贈与では、名義を手放す側(登記義務者)が本当に本人かを確かめるため、その人の登記識別情報を出させます。登記所が登記識別情報の扱いに切り替わる前に交付された紙の権利証(登記済証)も、提出されれば登記識別情報が提供されたものとみなされます(不動産登記法附則7条)。

相続では、名義を手放す側の被相続人はすでに亡くなっていて、相続人が単独で申請します。そのため、登記義務者の本人確認としての権利証は求められません。

早見表:登記の種類ごとに、権利証・登記識別情報が要るか
登記の種類 申請の形 前の名義人の権利証・登記識別情報
相続による所有権移転(法定相続分・遺産分割・遺言) 相続人が単独で申請(63条2項) 原則として要らない
売買・贈与による所有権移転 買主(もらう人)と売主(渡す人)の共同申請 売主(渡す人)のものが要る(22条)
相続登記の後に、相続した家を売る 買主と相続人の共同申請 相続人に通知された登記識別情報が要る

相続登記で実際に添付するのは、ハンドブックによると、被相続人の出生から死亡までの戸籍の証明書、相続人全員の戸籍の証明書、不動産を取得する相続人の住民票の写し、遺産分割をした場合は協議書と印鑑証明書などです。場合別の書類の一覧は相続登記の必要書類:遺言・遺産分割・法定相続分の場合別の一覧で確かめてください。

権利証が見つからないとき、役に立つとき

権利証が見つからなくても相続登記は進められますが、見つかった権利証は次の場面で役に立ちます。

  1. どの不動産を持っていたかの手がかりになる:権利証には物件の所在・地番・取得の日が書かれています。ただ、すべての不動産の権利証がそろっているとは限らないので、漏れを防ぐには名寄帳や所有不動産記録証明書と照らし合わせます。調べ方は相続登記の前に名寄帳で親の不動産を漏れなく調べる取り方で扱っています。
  2. 登記上の住所と戸籍のつながりを確かめる場面:被相続人の登記上の住所が戸籍の本籍と違うときは、同じ人だと示すため、登記上の住所が載った住民票の除票や戸籍の附票を添付します(ハンドブック)。古い住所でこれらが取れないときの扱いは、管轄の法務局の登記手続案内で相談します。その際、手元にある権利証や固定資産税の書類を持参して、何が使えるかを確かめます。
  3. 昔の取引の経緯を知る:誰からいつ買ったか、共有だったかが分かり、隣地との境界や共有者の確認の手がかりになります。

権利証そのものは、相続登記の後の売却では使いません。とはいえ、紙の権利証を不用意に手放す理由もないので、相続登記の書類と一緒に保管します。

法務局の手続案内で聞くときの例:「父の登記上の住所が本籍と違い、当時の住民票の除票が取れませんでした。手元に父の権利証と固定資産税の通知書があります。同一人物であることを示すには何を添付すればよいですか」

相続登記の後に届く登記識別情報:受け取り方と保管のしかた

相続登記が完了すると、登記によって自ら登記名義人になった申請人に、登記識別情報が通知されます(不動産登記法21条)。符号は不動産ごと、名義人ごとに決まるので、土地と建物を相続すれば別々に通知されます。

確かめること 内容
誰に届くか 申請人として登記名義人になった人。兄弟の1人が全員分を申請すると、申請人でない兄弟には通知されない(ハンドブック)
受け取り方 法務局の窓口(申請書に押したものと同じ印鑑を持参)か郵送(本人限定受取郵便)。登記完了証と一緒に交付される
受け取らないと 書面で受け取る人が登記完了から3か月以内に受領しないと通知を要しない扱いになり、書面は廃棄されうる(不動産登記規則64条)
再発行 登記識別情報通知書は再発行・再交付できない(ハンドブック)
通知を希望しない 申請時に申し出れば通知を受けないこともできる(規則64条1項1号)
盗み見られた・漏れた 名義人(その相続人を含む)は失効の申出ができる(規則65条)。有効かどうかの証明も手数料を払って請求できる(不動産登記令22条)

いまの通知書は、登記識別情報の部分を用紙の下部に折り込み、のり付けして隠す様式です(法務省)。封をはがした後は、符号を写真に撮ってスマホに残したり、他人に見せたりしないようにします。共有で登記した場合は、共有者それぞれが自分の分を保管します。共有で登記するときの注意は相続登記で共有名義にしてよい?兄弟で共有するデメリットと避け方で扱っています。

登記識別情報も権利証もないまま売るときの方法

相続した家を売るとき、相続人の登記識別情報が手元にない(届いていない、なくした)場合でも、売却はできます。登記識別情報を出せない正当な理由があるときに使える方法が、不動産登記法23条に定められています。

  1. 事前通知:登記官が、登記義務者(売る人)に申請があったことを通知し、期間内に「申請の内容は真実です」と申し出てもらう方法です(23条1項)。申し出がなければ登記は進みません。住所の変更の登記がされている場合は、前の住所にも通知が送られます(同条2項)。
  2. 資格者代理人による本人確認情報:登記の申請代理を業とする司法書士などが、売る人が本人であることを確かめた情報を提供し、登記官が相当と認めれば事前通知は省かれます(23条4項1号)。司法書士の報酬が別にかかります。
  3. 公証人の認証:申請書や委任状について、公証人から本人であることの認証を受ける方法です(23条4項2号)。

どの方法をとるかは、売買の決済の段取りと関わるので、仲介する不動産会社と、登記を頼む司法書士に早めに伝えます。相続登記そのものを自分で申請する流れは相続登記を自分でする手順:書類集めから法務局への申請までで、売却の全体の流れは不動産売却の流れ:査定から引き渡しまでの7段階で確かめてください。

よくある質問

Q. 親の権利証が見つかりません。法務局で再発行してもらう必要がありますか?

相続登記の添付書類に権利証は入っていないので、相続登記のために再発行を頼む必要はありません。なお、登記識別情報通知書は再発行・再交付ができないと法務局のハンドブックに書かれています。相続登記を済ませれば、その後の手続きでは相続人に通知される登記識別情報を使います。

Q. 相続登記が終わったら、親の古い権利証は捨ててもいいですか?

相続登記の後に家を売るときなどに使うのは、相続人に新しく通知された登記識別情報です。ただ、古い権利証には物件の所在や取得の経緯が書かれていて、土地の範囲や昔の取引を確かめる手がかりになります。登記完了証や新しい登記識別情報と一緒に保管しておくのが無難です。

Q. 兄が1人で相続登記を申請し、私には登記識別情報が届きませんでした。どうなりますか?

複数の相続人のうち1人が申請人になると、申請人にならなかった相続人には登記識別情報は通知されません。登記の名義には載っているので持分の権利には影響しませんが、将来その持分を売るときは、登記識別情報の代わりに事前通知や司法書士による本人確認情報などの方法をとることになります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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