相続登記の必要書類:遺言・遺産分割・法定相続分の場合別の一覧
相続登記の必要書類は、どうやって不動産を取得したか(遺産分割・法定相続分・遺言)で変わります。3つの場合に共通するのは、亡くなった人(被相続人)の戸籍、相続人の戸籍、不動産を取得する人の住民票、それに申請書です。遺産分割ならこれに協議書と印鑑証明書が加わり、遺言なら協議書の代わりに遺言書を出し、被相続人の戸籍は死亡の記載があるものだけで足ります。下の一覧で自分の場合の列を確かめ、取得先と原本還付の方法まで順に見ていきます。
3つの場合で変わる相続登記の必要書類一覧
法務局の記載例(2026年10月5日以降に申請する場合)の注記をもとに、場合ごとの違いを表にしました。○は必要、△は条件つき、-は不要です。
| 書類 | 遺産分割 | 法定相続分 | 遺言(相続させる旨) |
|---|---|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍 | ○ | ○ | -(死亡の記載がある戸籍だけ) |
| 相続人の戸籍 | ○ 協議した相続人全員 | ○ 相続人全員 | ○ 取得する相続人 |
| 被相続人の住民票の除票か戸籍の附票 | △ 登記上の住所・本籍と違うとき | △ 同左 | △ 同左 |
| 遺産分割協議書 | ○ | - | - |
| 協議した相続人の印鑑証明書 | ○ | - | - |
| 遺言書 | - | - | ○ 自筆は検認済証明書つき |
| 取得する人の住民票の写し | ○ | ○ 相続人全員 | ○ |
| 国籍等を証する情報 | △ 日本国籍なら相続人の戸籍で足りる | △ 同左 | △ 同左 |
| 相続関係説明図 | △ 戸籍の原本を返してほしいとき | △ 同左 | △ 同左 |
| 委任状 | △ 代理人が申請するとき | △ 同左 | △ 同左 |
相続人の戸籍は、被相続人が亡くなった日以後に証明されたものが必要です。被相続人の戸籍と重なる部分は、同じものを二重に出す必要はありません。法定相続分で登記したあとに遺産分割をした場合の登記や、相続人以外への遺贈は、この表とは別の書類になります。
- 有効な遺言があり、その不動産を誰が取得するか書かれているか → はい:遺言の列
- 相続人で話し合って、取得する人を決めたか → はい:遺産分割の列
- 話し合いをせず、法定相続分どおりに共有で登記するか → はい:法定相続分の列(共有のデメリットは先に確認)
法定相続分の列を選ぶ前には、兄弟の共有になる影響を考えておきます。売るときに全員の同意が要るなど、後から困る点を相続登記で共有名義にしてよいかにまとめています。
共通して集める書類と取得先
どの場合でも集める書類を、取得先とあわせて並べます。手数料は市区町村が条例で決めるものが多いので、請求する窓口の案内で確かめてください。亡くなった親の権利証や登記識別情報は添付書類に入りません。見つからない場合の扱いは相続登記に権利証はいる?なくても申請できる理由と登記識別情報で説明しています。
| 書類 | 取得先 | 手に入れるときの注意 |
|---|---|---|
| 戸籍全部事項証明書・除籍謄本・改製原戸籍 | 本籍のある市区町村。本人・配偶者・父母・子などは本籍地以外の窓口でも請求できる | コンピュータ化されていない一部の戸籍は、本籍地以外では取れない |
| 住民票の写し | 住所地の市区町村 | マイナンバーが載っていないものを取る |
| 住民票の除票・戸籍の附票の写し | 最後の住所地・本籍地の市区町村 | 登記上の住所と本籍が載っているものを選ぶ |
| 印鑑証明書 | 各相続人の住所地の市区町村 | 協議書に押した実印と同じ印のもの |
| 固定資産課税明細書(または評価証明書) | 毎年市区町村から届く。紛失したら市区町村で証明書を取る | 添付書類ではないが、課税価格を書くのに使う |
| 登記事項証明書 | どこの法務局でも取れる。書面1通600円、オンライン請求で郵送なら520円 | 申請書の「不動産の表示」を写すために使う |
戸籍の集め方の詳しい順番は相続手続きの戸籍謄本の集め方で説明しています。戸籍を集め終えたら、法務局で法定相続情報一覧図の写しを無料で交付してもらう方法もあります。申請書に法定相続情報番号を書けば、被相続人と相続人の戸籍の添付に代えられ、一覧図に相続人の今の住所が載っていれば住民票の代わりにもなります。手続きは法定相続情報証明制度の手続きへ。
住民票は、申請書に取得する人の住民票コードを書けば添付を省けます。住民票コードは住民票の写しなどに載っている11桁の番号です。
場合ごとに足す書類と、つまずきやすい点
遺産分割の場合は、協議書に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添えます。ハンドブック(遺産分割協議編)の注記では、添付する印鑑証明書から、登記を申請する相続人本人の分は除かれています。協議書は原本を出しますが、返してほしいときは別に謄本(コピー)を付けます。協議書の項目や、他の手続きと合わせた通数の数え方は遺産分割協議書の必要書類で扱っています。
法定相続分の場合は、協議書も印鑑証明書も要りません。その代わり、相続人全員が持分を取得するので、住民票の写しは相続人全員の分が必要です。
遺言の場合は、遺言書が登記原因証明情報の中心になります。
- 公正証書遺言:公証役場で作った遺言書を出す(検認は不要)
- 自筆証書遺言:家庭裁判所の検認を済ませ、検認済証明書が付いたものを出す(自筆証書遺言の検認)
- 法務局に保管された自筆証書遺言:検認は不要。法務局で交付される遺言書情報証明書(1通1,400円)を原本の代わりに使える
被相続人の戸籍は、遺言の場合は死亡の事実が分かるものだけで足り、出生までさかのぼる必要はありません。遺産分割や法定相続分と比べて集める量がぐっと減る点は、遺言のある家の大きな違いです。
戸籍の収集から相続登記までを任せる選択肢として、相続手続きの代行サービスもあります(PR)。遺言か、協議か、法定相続分かで集める書類が変わるので、頼む前にその分け方を伝え、何を自分で集めて何を任せるかを決めておきます。登記の書類作成と申請は司法書士の業務なので、担当者も確かめます。
原本を返してもらう方法(原本還付)
法務局に出す添付書類は原本で、コピーでは受け付けられません。ただし、申請のときに頼めば、調査が終わったあとに原本を返してもらえます。戸籍の束や遺言書は他の手続きでも使うので、ほとんどの人が使う方法です。
- 戸籍の証明書は、「相続関係説明図」を付ければ、コピーを作らなくても返してもらえる
- 住民票などそれ以外の書類は、コピーに「原本に相違ありません」と書き、申請書に押したのと同じ人が署名(記名)押印する
- 複数枚のコピーは、ホチキスで留めて各ページのつなぎ目に契印をする
- 原本とコピーを一緒に出す。還付の請求書を別に作る必要はない
- 遺産分割協議書と遺言書は、原本の還付を受けたいなら、別にその謄本を付けて出す(法務局の記載例の注記)
その登記のためだけに作った書類(委任状など)は返してもらえません。郵送で申請して原本を返送してもらうときは、返信用封筒に入る厚さと切手代を見込んでおきます。
提出前のチェックリスト
法務局のハンドブックのチェックリストに、書類集めでよくある漏れを足しました。
- 被相続人の戸籍は、死亡の記載から出生(遺言の場合は死亡の記載)まで切れ目なくそろっているか
- 相続人の戸籍は、被相続人が亡くなった日以後に証明されたものか
- 登記上の住所と戸籍の本籍が違うとき、つながりを示す除票か附票を入れたか
- 協議書の実印と印鑑証明書の印は同じか、相続人全員が押しているか
- 自筆証書遺言は検認済証明書が付いているか(法務局保管なら遺言書情報証明書か)
- 住民票はマイナンバーの記載がないものか、または申請書に住民票コードを書いたか
- 原本を返してほしい書類に、コピーか相続関係説明図を付けたか
そろった書類を申請書にどう書き込むかは相続登記の申請書の書き方で、記載例に沿って説明しています。書類集め全体の流れを先に見たい人は相続登記を自分でする手順から読んでください。
よくある質問
Q. 遺産分割協議書に付ける印鑑証明書は、発行から3か月以内のものが必要ですか?
相続登記では不要です。法務局の記載例に、協議書に押した印の印鑑証明書は作成後3か月以内のものでなくても差し支えないと書かれています。ただし銀行など他の提出先では期限を設けていることがあるので、同じ証明書を使い回すときは提出先ごとに確かめます。
Q. 亡くなった親の登記上の住所が、最後の住所と違います。何を足せばいいですか?
登記記録上の住所と本籍が分かる、住民票の除票の写しか戸籍の附票の写しを足します。登記上の住所から最後の住所までのつながりが1通で示せないときは、つながりが分かるまで前の附票なども集めます。
Q. 権利証(登記識別情報)は相続登記に必要ですか?
法務局のハンドブックが挙げる相続登記の添付書類は、登記原因証明情報と住所証明情報で、権利証は入っていません。相続登記は相続人が単独で申請する登記だからです。権利証が見つからなくても、申請の妨げにはなりません。
出典・参考にした公的な情報
- 登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)令和8年4月(法務局)(法務省)
- 登記申請手続のご案内(相続登記②/法定相続編)(法務局)(法務省)
- 所有権移転登記申請書(遺産分割)記載例 令和8年10月5日以降(法務局)(法務省)
- 所有権移転登記申請書(公正証書遺言)記載例 令和8年10月5日以降(法務局)(法務省)
- 所有権移転登記申請書(自筆証書遺言)記載例 令和8年10月5日以降(法務局)(法務省)
- 法定相続情報証明制度について(法務局)(法務省)
- 自筆証書遺言書保管制度 相続人等の手続(法務省)(法務省)
- 登記手数料令 第2条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。