相続登記を自分でする手順:書類集めから法務局への申請まで
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相続登記は、司法書士に頼まず相続人が自分で申請できます。法務局が公開している「登記手続ハンドブック」では、①戸籍の証明書を集める、②遺産分割協議書を作る、③登記申請書を作る、④法務局に出す、⑤完了の書類を受け取る、の5つのステップで説明されています。申請書の様式と記載例は法務局のサイトから無料でダウンロードでき、分からない点は予約制の手続案内で質問できます。この記事では、5つのステップを順に、何をどこで用意するかまで具体的に示します。
相続登記を自分でする流れ:法務局の5つのステップ
ハンドブック(遺産分割協議編)が示す順番を、作業の中身と行き先に置き換えると次のとおりです。遺言がある場合や、法定相続分どおりに登記する場合は、ステップ②が不要になったり書類が変わったりします。
| ステップ | やること | 行き先・入手先 |
|---|---|---|
| ① 戸籍の証明書の取得 | 亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍を集める | 本籍のある市区町村(本人・配偶者・父母・子などは最寄りの窓口でも可) |
| ② 遺産分割協議・協議書の作成 | 誰がどの不動産を取得するか話し合い、全員が実印を押す | 相続人どうし(法務局は内容の相談に応じない) |
| ③ 登記申請書の作成 | 法務局の様式に、不動産の表示や課税価格を書く | 法務局サイトの様式、登記事項証明書、固定資産課税明細書 |
| ④ 登記申請書の提出 | 不動産の所在地を管轄する法務局へ出す | 窓口に持参、郵送、オンライン |
| ⑤ 登記完了 | 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る | 窓口、または返信用封筒で郵送 |
① 戸籍を集める(つまずき:古い戸籍が読めない・転籍が多い) → ② 協議書を作る(つまずき:相続人の1人と連絡が取れない) → ③ 申請書を作る(つまずき:課税価格に「課税標準額」を書いてしまう) → ④ 管轄の法務局に出す(つまずき:最寄りの法務局に出してしまう) → ⑤ 完了書類を受け取る(つまずき:登記識別情報通知書は再発行されない)
期限も頭に置いておきます。相続登記は、相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、2024年4月1日より前の相続で未登記のものは、最短で2027年3月31日(令和9年3月31日)が期限です。起算日の考え方は相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記にまとめています。
ステップ①②:戸籍を集め、遺産分割協議書を作る
最初の山場は戸籍集めです。登記では、戸籍によって「所有者が亡くなったこと」と「ほかに相続人がいないこと」を証明します。そのため被相続人については、死亡の記載がある最新の戸籍から結婚前の親の戸籍まで、一つずつさかのぼって取ります。相続人の戸籍は、被相続人が亡くなった日以後に証明されたものが必要です。さかのぼり方は相続手続きの戸籍謄本の集め方で、窓口ごとの請求のしかたまで説明しています。
戸籍がそろったら、法務局で「法定相続情報一覧図」の写しを無料で交付してもらうと、その後が楽になります。登記の申請書に法定相続情報番号を書けば、戸籍の束の代わりになるからです。銀行や税務署の手続きでも使える場面があるため、相続手続きがいくつも残っている人ほど効果があります。作り方は法定相続情報証明制度の手続きを見てください。
次に不動産の情報を集めます。
- 登記事項証明書:どこの法務局でも取れ、書面請求は1通600円。所在・地番・家屋番号などを申請書に写すために使う
- 固定資産課税明細書:毎年市区町村から届く。「価格」または「評価額」の欄が課税価格のもとになる
- 名寄帳:親が持っていた不動産を市区町村ごとに一覧で確かめる。私道の持分の漏れを防ぐ(名寄帳で親の不動産を漏れなく調べる取り方)
遺産分割で取得者を決める場合は、協議書に相続人全員が実印を押し、その印鑑証明書を添えます。ハンドブックでは、この印鑑証明書に「作成後3か月以内」といった制約はないとされています。協議の進め方や書き方は法務局では相談できないため、遺産分割協議書の書き方とひな形で全体の手順を確かめてから作ります。
ステップ③:申請書は2026年10月5日以降用の様式で作る
申請書は、法務局の「不動産登記の申請書様式について」のページから、場合に合った様式をダウンロードして作ります。用意されているのは、法定相続、遺産分割、遺産分割(数次相続)、公正証書遺言、自筆証書遺言、相続人に対する遺贈の6種類です。
注意したいのは、2026年10月5日(令和8年10月5日)から様式が変わったことです。この日以降の申請では、登記名義人になる人の国籍等を申し出ることになり、様式のページにも「R8.10.5以降に申請する場合」の版が別に載っています。2026年4月に出たハンドブックや、ネットで拾った古い記入例をそのまま写すと、この欄が抜けます。
申請書に書く主な項目は次のとおりです。
- 登記の目的:「所有権移転」
- 原因:被相続人が亡くなった日と「相続」(協議が成立した日ではない)
- 相続人:被相続人の氏名、取得する人の住所・氏名、押印(認印で可)
- 取得する人の氏名ふりがな、生年月日、国籍等、メールアドレス
- 平日の日中につながる電話番号
- 添付情報、申請日と申請先の法務局
- 課税価格と登録免許税
- 不動産の表示(登記事項証明書のとおり)
各欄の書き方と、課税価格の端数の処理は相続登記の申請書の書き方で、記載例に沿って一つずつ説明しています。登録免許税の計算と、価格100万円以下の土地の免税は相続登記の登録免許税へ。
ステップ④⑤:窓口・郵送・オンラインで出し、完了書類を受け取る
申請先は、不動産の所在地を管轄する法務局です。住んでいる場所の近くの法務局ではありません。管轄は法務局サイトの「管轄のご案内」で調べられます。出し方は3つあり、自分の都合で選べます。
| 出し方 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 窓口に持参 | 管轄の法務局が近い人 | 受け取りに行くときは申請書に押した印鑑を持参する |
| 郵送 | 不動産が遠方にある人、平日に動けない人 | 封筒に「不動産登記申請書在中」と書き、書留で送る |
| オンライン | マイナンバーカードとICカードリーダライタを持つ人 | 戸籍などの書面は後から郵送か持参。オンラインだけでは完結しない |
郵送の細かい手順は相続登記を郵送で申請する方法、オンラインの準備は相続登記のオンライン申請で扱います。
登記が終わると、登記完了証と登記識別情報通知書が交付されます。郵送で受け取るときは、宛名を書いた返信用封筒と切手を申請書と一緒に出します。両方を受け取るなら本人限定受取郵便、登記完了証だけなら書留です。どちらの書類も再発行・再交付はされないため、届いたら他の権利書類と一緒に保管します。
途中で手が止まったら、管轄の法務局の手続案内(予約制・1回20分以内)で質問できます。予約の取り方と、20分で聞き切るための準備は法務局の相続登記の相談にまとめました。
自分でやるか、司法書士に頼むかの分かれ道
法務局のハンドブックは「比較的単純な相続のケース」を想定しています。次のような事情があると、戸籍の読み取りや申請書の組み立てが一気に難しくなります。
| 事情 | 何が難しくなるか | 関連する記事 |
|---|---|---|
| 祖父母名義のまま、途中でさらに相続が起きている | 申請書の書き方と、さかのぼる戸籍が増える | 数次相続の相続登記 |
| 登記されていない建物がある | 相続登記の前に表題登記が必要になることがある | 未登記建物の相続登記 |
| 相続人に認知症の人がいる | 遺産分割協議ができず、手続きが止まる | 相続人に認知症の人がいる場合の相続登記 |
| 封をした自筆の遺言がある | 家庭裁判所の検認を済ませてからでないと使えない | 自筆証書遺言の検認 |
登記の申請書を他人のために作ったり、代わりに申請したりする仕事は、司法書士と弁護士に限られています(司法書士法73条、法務省の特設ページ)。資格のない人が他人の依頼を受けて業として行うことは、司法書士法で禁じられています。自分の分は自分で、難しい所は資格者に、と分けて考えるのが安全です。
戸籍の収集から相続登記までをまとめて任せたい人には、相続手続きの代行サービスという選択肢もあります(PR)。頼むかどうかの判断材料は相続登記は司法書士に頼むべき?自分でできる人と頼むべき人へ。
よくある質問
Q. 相続登記を自分でやると、費用はいくらかかりますか?
かかるのは実費だけで、中心は登録免許税(固定資産課税台帳の価格の1,000分の4)です。たとえば土地と建物の価格の合計が1,500万円なら、1,500万円×0.4%=6万円になります(筆者の計算)。ほかに戸籍の証明書、登記事項証明書、印鑑証明書などの手数料と郵送料がかかります。
Q. 平日に法務局へ行けなくても、自分で相続登記できますか?
できます。書面の申請書は郵送で出せ、完了後の書類も返信用封筒を同封すれば郵送で受け取れます。法務局の手続案内も電話やウェブ会議で受けられるので、平日に休みを取りにくい人でも進められます。
Q. 相続人のうち1人だけで申請してもかまいませんか?
相続登記は相続人が単独で申請できる登記です(不動産登記法63条2項)。ただし、申請人にならなかった相続人には登記識別情報が通知されません。扱いは[相続登記に権利証はいる?なくても申請できる理由と登記識別情報](/touki-kenrisho/)にあります。
出典・参考にした公的な情報
- 登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)令和8年4月(法務局)(法務省)
- 不動産登記の申請書様式について(法務局)(法務省)
- 所有権移転登記申請書(遺産分割)記載例 令和8年10月5日以降に申請する場合(法務局)(法務省)
- 相続登記の申請義務化特設ページ(法務省)(法務省)
- 不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)(法務局)(法務省)
- 不動産登記法 第63条・第76条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条・第73条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。