管理不全空家・特定空家とは:勧告で固定資産税が上がる流れ
管理不全空家(法令上は「管理不全空家等」)は、管理が行き届かず、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家で、2023年12月13日施行の空家法改正で新しく加わった区分です。市区町村長は指導、改善されなければ勧告ができ、勧告を受けると敷地の固定資産税・都市計画税の住宅用地特例が外れます。特定空家は、倒壊のおそれなど周りへの悪影響が大きい段階で、勧告の先に命令と代執行があります。指導の段階で連絡に応じて改善すれば、勧告には進まずに済みます。
管理不全空家・特定空家とは:2つの段階の違い
空家法は、居住その他の使用がされていないことが常態である建物とその敷地を「空家等」とし(2条1項)、悪影響の大きさで2つの段階に分けています。所有者や管理者には、周辺に悪影響を及ぼさないよう適切に管理する努力義務があります(5条)。
| 管理不全空家等(13条) | 特定空家等(2条2項・22条) | |
|---|---|---|
| 状態 | 管理が不十分で、放置すれば特定空家等になるおそれがある | 放置すれば倒壊等の保安上の危険や衛生上の有害のおそれがある、または著しく景観を損なっている、周辺の生活環境の保全のため放置が不適切、のいずれか |
| 市区町村長ができること | 指導→勧告 | 助言・指導→勧告→命令→代執行 |
| 固定資産税の住宅用地特例 | 勧告で外れる | 勧告で外れる |
| 命令・過料 | なし | 命令に違反すると50万円以下の過料(30条) |
国土交通省のガイドラインは、判断の参考として段階ごとの例を挙げています。たとえば衛生面では、排水設備から汚水が流れ出ているのが特定空家等の例、排水設備が壊れているのが管理不全空家等の例です。景観面では、屋根や外壁の著しい色あせ・破損が特定空家等、補修されないまま色あせや破損が見られるのが管理不全空家等の例です。周囲に家や道路がない場合は措置の必要性が低いとされるなど、周辺の状況も考えて、最終的には市区町村が個別に判断します。条文に「1年空いたら」といった期間の決まりはありません。
指導から勧告・命令・代執行までの流れ
- 管理不全空家等:指導(口頭も可。書面が望ましい)→ 勧告(書面)→ ここで終わり(命令・代執行はない)
- 特定空家等:助言・指導 → 勧告(相当の猶予期限つき)→ 命令前の通知書と意見書の機会 → 命令(標識で公示)→ 行政代執行(費用は所有者負担)
- 例外:災害などで緊急のときは命令を経ずに代執行(緊急代執行)、所有者が分からないときは公告して代執行(略式代執行)
- どの段階でも、求められた措置をすれば手続きは止まり、勧告は撤回される
管理不全空家等の勧告には、特定空家等と違って猶予期限は要件とされていません。命令や代執行が後に続かないためです。特定空家等の命令の前には、命じようとする措置の内容と理由、意見書の提出先と期限を書いた通知書が交付され、受け取った日から5日以内なら公開の意見聴取を求められます(22条4項・5項)。代執行の費用は所有者の負担で、国税滞納処分の例により徴収されます。「市が解体してくれる」仕組みではありません。
市区町村長は、所有者を調べるため、固定資産税の課税のために持っている所有者の情報を内部で使えます(9条1項・10条1項)。特定空家等の措置のために必要な範囲では、立入調査もでき、その5日前までに所有者へ通知します(9条)。
国土交通省・総務省の調査では、2024年度(令和6年度)の件数は次のとおりでした(2025年3月31日時点)。
| 措置 | 管理不全空家等 | 特定空家等 |
|---|---|---|
| 指導(特定空家等は助言・指導) | 2,545件 | 4,026件 |
| 勧告 | 378件 | 600件 |
| 命令 | ― | 101件 |
| 代執行 | ― | 行政71件・略式81件・緊急9件 |
指導の件数に比べて勧告は少なく、多くは指導の段階で改善や処分に進んでいることが読み取れます。
勧告で固定資産税が上がる仕組みと、戻し方
勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地は、地方税法349条の3の2の「住宅用地」から除かれます。住宅用地特例では土地の課税標準が評価額の6分の1(200㎡以下の部分)に下がっているので、外れると土地の税が大きく上がります。上がり方の計算は空き家の固定資産税:6倍になると言われる理由と住宅用地特例に例を載せています。
ガイドラインが示している扱いは次のとおりです。
- 勧告の前に知らせる:指導の際に、勧告すれば特例から外れることを所有者に示すよう、市区町村に求めています。
- 撤回で戻る:勧告に係る措置がされたら、市区町村は勧告を撤回し、要件を満たす家の敷地は特例の対象に戻ります。
- 悪化しても続く:管理不全空家等として勧告を受けたまま状態が悪化して特定空家等になっても、撤回されない限り特例から外れたままです。特定空家等としての措置は、改めて助言・指導から始まります。
- 所有者が変わったとき:相続や売買で特定空家等の所有者が変わると、新しい所有者に対して改めて助言・指導から手続きを経ます。ただし、前の所有者への勧告や命令を知っていた場合は、猶予期限が短く設定されることがあります。
住宅用地かどうかは毎年1月1日の状況で判定されます。勧告を受けたら、どの年度分から特例が外れるかを資産税の担当課に聞き、措置を終えたら早めに報告して撤回を求めるのが、税の上乗せを短くする方法です。
市区町村から連絡が来たときの返し方
ガイドラインは、相続で空き家を取得して自分が所有者だと気づいていない人もいるとして、まず連絡して事情を聞くことを市区町村に勧めています。最初の連絡は、法律上の指導ではなく聞き取りのこともあります。連絡が来たら、次の順で動きます。
- 書面の種類を確かめる:「指導」「勧告」のどちらか、根拠の条文(13条か22条か)、求められている措置、期限を確かめます。
- 現地の状態を記録する:自分で見に行くか、近所の人や管理を頼める人に写真を撮ってもらいます。
- 担当課に連絡して意向を伝える:改善する意思、時期、困っている事情(遠方に住んでいる、費用が出せない、相続人の間で決まっていない)を伝えます。
- 措置をして報告する:修繕・伐採・清掃などを終えたら、写真を付けて報告し、管理不全空家等でなくなったことを確かめてもらいます。
文例(担当課への返信):「○○市○○町の空き家の所有者(相続人)の○○です。ご連絡いただいた外壁の破損と庭木の越境について、○月末までに修繕と剪定を行う予定です。私は○○県に住んでいるため、作業後に写真を添えてご報告します。相続人がほかに2人おり、売却を含めて話し合っています。」
相続人が複数いる場合、ガイドラインは原則としてすべての所有者等に指導等を行うとしています。遺産分割が終わっていない相続人にも連絡が来ることがあるので、誰が窓口になるかを家族で決めておきます。相続放棄をした場合の扱いは相続放棄した空き家はどうなる?保存義務の範囲と手放すまでの流れを見てください。
指導を受けた空き家の選択肢
ガイドラインは、遠方に住んでいて自分で対策できない所有者などには、空家等管理活用支援法人(市区町村長が指定するNPOなど。2025年3月末で95法人)や助成制度を紹介することを市区町村に勧めています。空家法12条も、市区町村に所有者への情報提供や助言に努めるよう定めています。指導の連絡は、相談の入口として使えます。
| 選択肢 | 向いている場合 | 次に読む |
|---|---|---|
| 修繕・剪定をして管理を続ける | 当面は売らない・貸さない、手を入れれば使える | 空き家の管理方法:月1回の点検項目と管理サービスの選び方 |
| 解体する | 建物の傷みが大きく、使う予定がない | 空き家の解体補助金の探し方:対象・上限・申請のタイミング |
| 売却する | 相続人の間で売る方向で一致している | 空き家の売却の流れ:古家付き・更地・買取の選び方と注意点 |
| 手放す方法を比べる | 売れにくい、誰も引き継ぎたくない | 相続した土地や家がいらない:3か月以内か後かで変わる判断の順番 |
解体すると勧告の問題はなくなりますが、更地になれば住宅用地特例は使えません。指導を受けた後に放っておくと何が起きるかの全体像は空き家を放置するとどうなる?毎年のお金と、段階ごとの責任にまとめています。
よくある質問
Q. 管理不全空家として指導を受けたら、すぐに固定資産税が上がりますか?
指導の段階では、住宅用地特例は外れません。外れるのは、指導の後も改善されず、市区町村長から勧告を受けたときです。ガイドラインは、勧告すると特例の対象から外れることを、指導の段階で所有者にあらかじめ示すよう市区町村に求めています。指導の書面に書かれた改善の内容と期限を確かめ、勧告の前に手を打つのが大切です。
Q. 勧告を受けた後に修繕したら、固定資産税は元に戻りますか?
勧告に係る措置をしたことが確認されると、市区町村は勧告を撤回し、要件を満たす家の敷地は住宅用地特例の対象に戻ります。ガイドラインは、撤回したら税務の部署に速やかに伝えるよう求めています。どの年度分から戻るかは1月1日の状況で決まるので、工事が済んだら写真と届出書で早めに報告してください。
Q. 特定空家に指定されたことは、どうやって知らされますか?
特定空家等への措置は、助言・指導から始まり、勧告は書面で行われます。命令の前には、措置の内容と意見書の提出先・期限を書いた通知書が届き、受け取った日から5日以内なら公開の意見聴取を求めることもできます。いきなり命令や代執行から始まることは、災害などの緊急代執行や、所有者が過失なく分からない場合の略式代執行を除き、予定されていません。
出典・参考にした公的な情報
- 空家等対策の推進に関する特別措置法 第2条・第5条・第9条・第10条・第12条・第13条・第22条・第23条・第30条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)(国土交通省)
- 地方税法 第349条の3の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)(国土交通省・総務省)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(国土交通省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。