空き家を放置するとどうなる?毎年のお金と、段階ごとの責任
空き家を放置すると、①建物の傷みが進んで修繕費が膨らむ ②市区町村の勧告で固定資産税の住宅用地特例が外れ、毎年の税が上がる ③売るときの3,000万円特別控除の期限を過ぎ、数百万円の税が増える ④倒壊や落下で近所に損害を出すと、所有者として賠償を求められうる、という形で負担が積み上がります。どれも急には起きず、年数と状態に応じて段階的に進みます。この記事では、放置の「結果とお金」を数字で見ます。市区町村の措置の細かい流れは別の記事にまとめているので、ここでは要点だけ触れます。
空き家を放置するとどうなるか:行政の措置は3段階で進む
空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)は、空き家の所有者等に、周辺へ悪影響を出さないよう適切に管理する努力義務を課しています(5条)。努力義務そのものに罰則はありませんが、状態が悪くなると措置が進みます。
- 指導:管理不全空家等(放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家)になると、指導を受けます(13条1項)。この段階では固定資産税の特例は外れません。
- 勧告:指導後も改善されないと勧告を受け、敷地が住宅用地の特例から外れます(13条2項、22条2項、地方税法349条の3の2)。
- 命令・代執行:特定空家等が勧告に従わないと命令(22条3項)、違反すれば50万円以下の過料(30条)、さらに行政代執行で、解体などの費用が所有者の負担になりえます。
どの段階で何が起き、件数がどのくらいかは管理不全空家・特定空家とは:勧告で固定資産税が上がる流れにまとめています。空き家になって何年で指定されるという決まりはなく、年数ではなく状態で個別に判断されます。指導の連絡が来た時点が、費用を抑えて手を打てる機会です。
放置の年数ごとに進む傷み方
家は人が出入りして換気や通水をするから保たれます。以下は一般的な傾向で、家の構造や気候、雨漏りの有無で進み方は大きく違います。
| 放置の長さ | 起きやすいこと | 手を打つ目安 |
|---|---|---|
| 数か月 | 室内に湿気がこもる。郵便物がたまり、雑草が伸び始める | 月1回の換気・通水、郵便受けの整理 |
| 1年前後 | 雨どいに落ち葉が詰まる。排水管の水が切れて臭いが上がる。庭木の枝が隣へ伸びる | 屋根・雨どいの点検、年1〜2回の剪定 |
| 数年 | 小さな雨漏りが続き、天井・床・柱の傷みやカビが広がる。動物やシロアリが入りやすくなる | 建物の状態を専門家に見てもらう |
| 長期 | 屋根材や外壁の落下、塀の傾きなど、人に害が及ぶ傷みが出る。売るにも貸すにも、修繕費が先に必要になる | 修繕して残すか、解体を含めて出口を決める |
早く直すほど安く済む傷みが多いので、「いつか決める」までの間にも、最低限の手入れは続けておきます。月1回の点検項目は空き家の管理方法:月1回の点検項目と管理サービスの選び方にあります。
放置のお金:毎年出るお金と、特例を逃す損の計算例
放置している間も、固定資産税(市街化区域などでは都市計画税も)、電気・水道の基本料金、火災保険料は出ていきます。年間の目安の組み立ては空き家の維持費:固定資産税・光熱費・保険・管理費の年間の目安にあります。ここでは、放置が長いほど増える2つのお金を計算します。
**1つ目は、特例が外れたときの固定資産税の増加です。**土地の評価額1,200万円・家屋の評価額150万円の空き家で、土地はすべて200㎡以下、税率は標準の1.4%、都市計画税は含めないとして計算します(筆者の計算)。
| 状態 | 土地 | 家屋 | 年の合計 |
|---|---|---|---|
| 特例あり | 1,200万円×1/6×1.4%=28,000円 | 150万円×1.4%=21,000円 | 49,000円 |
| 勧告で特例が外れた(上限まで上がった場合) | 1,200万円×70%×1.4%=117,600円 | 21,000円 | 138,600円 |
差は最大で年89,600円で、3年続けば約27万円になります。実際は負担調整で数年かけて上がることが多く、これは最大値です。計算の前提は空き家の固定資産税:6倍になると言われる理由と住宅用地特例にあります。
**2つ目は、売るときの3,000万円特別控除を逃す損です。**相続した家を売ると、利益(譲渡所得)に所得税・復興特別所得税・住民税がかかりますが、要件を満たせば最高3,000万円(相続人が3人以上なら2,000万円)を差し引けます。売る期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、制度も2027年12月31日までの売却が対象です。
売値2,000万円、取得費が分からず売値の5%(100万円)を概算取得費とし、仲介手数料などの譲渡費用が100万円かかった場合(筆者の計算)。
| 特例を使う | 特例を使えない | |
|---|---|---|
| 譲渡所得 | 2,000万円−100万円−100万円=1,800万円 | 同じ1,800万円 |
| 控除 | 3,000万円(所得は0円になる) | なし |
| 所得税 | 0円 | 1,800万円×15%=270万円 |
| 復興特別所得税 | 0円 | 270万円×2.1%=5.67万円 |
| 住民税 | 0円 | 1,800万円×5%=90万円 |
| 税の合計 | 0円 | 約365.7万円 |
相続した家の所有期間は亡くなった人から引き継ぐので、5年を超える長期譲渡の税率で計算しています。この例のとおり、期限を過ぎると税が数百万円単位で増えることがあります。期限の数え方は相続した空き家の3000万円控除:特別控除の要件と2027年末の期限に例があります。決められないまま3年目の年末が来ることが、放置で最も大きな損になりやすい場面です。
倒壊・落下・越境:近所への責任
行政の措置とは別に、民事の責任もあります。民法717条は、建物や塀の設置・保存に欠陥があって他人に損害を与えたとき、まず占有者が、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償する責任を負うと定めています。誰も住んでいない空き家では、所有者である相続人が責任を問われる立場になりえます。
| 場面 | 起きうる損害 | 防ぐための手入れ |
|---|---|---|
| 台風・強風 | 瓦やトタンが飛んで車や家を傷つける | 屋根・雨どいの点検、浮いた部材の固定 |
| 地震 | ブロック塀が倒れて通行人がけがをする | 塀のひび・傾きの確認、危険なら撤去 |
| 庭木の成長 | 枝が隣の敷地や道路にはみ出す | 年1〜2回の剪定 |
| 雑草・害虫 | 隣家への虫や動物の被害 | 草刈り、ごみの撤去 |
越境した枝は、催告しても相当の期間内に切らないと、2023年4月から隣の人が自分で切り取れるようになりました(民法233条3項)。近所の人から苦情が来たときの手順は空き家の苦情が来たら:越境する枝・雑草・動物の対処と責任を見てください。
放置をやめる最初の一歩
「どうするか決められない」ことは放置の理由にはなりますが、何もしない理由にはなりません。決める前でもできることから始めます。
- 現状を記録する:外回り・屋根・塀・庭・室内を写真に撮り、日付を残します。修繕が要る場所の優先順位がつけられます。
- 名義と連絡先を整える:相続登記がまだなら進め、相続人の中で市区町村や近所からの連絡を受ける窓口を一人決めます。
- 近所に連絡先を伝える:両隣と向かいの家に、何かあったときの連絡先を渡しておくと、苦情が行政に行く前に直接届きます。
- 売却期限を書き出す:相続開始日から数えて、3,000万円特別控除の期限(3年を経過する日の属する年の12月31日と、制度の期限2027年12月31日の早いほう)をカレンダーに入れます。
- 出口を考える:家族が使う予定がないなら、売る・貸す・解体する・国に引き取ってもらうの中から選びます。比べ方は相続した空き家はどうするか:売る・貸す・管理・手放すの判断と手順で、家族での決め方は親が亡くなった後の実家をどうするか:家族で決める5つの論点で整理しています。
- 屋根・外壁・塀に、破損や傾きがないか
- 庭木や雑草が、隣地や道路にはみ出していないか
- ごみ・不用品が敷地に積まれていないか
- 郵便受けがあふれていないか、戸締まりはできているか
- 市区町村から文書や連絡が来ていないか(来ていれば、指導か勧告かを確かめる)
- 相続開始から何年たったか(3,000万円特別控除の期限まで何か月か)
売る方向で考えるなら、最初に相場の目安を知ることで「維持し続ける費用」と比べられるようになります。複数の不動産会社の査定を取る方法がありますが、査定額は各社の見込みで、その値段で売れることを示すものではありません。査定の根拠を聞いて比べること、申し込むと複数の会社から連絡が来ることがあること、売るかどうかは査定を見てから決めてよいことを知ったうえで使ってください。
よくある質問
Q. 空き家を何年放置すると特定空家に指定されますか?
法律に「何年で指定」という決まりはありません。特定空家等かどうかは、倒壊のおそれ、衛生上の害、景観の悪化などの状態を見て、市区町村長が個別に判断します。年数より状態が問われるので、空いている期間が短くても、屋根や塀が傷んでいれば早めの手入れが要ります。
Q. 市区町村から空き家についての文書が届いたら、まず何をすればよいですか?
文書が「助言・指導」なのか「勧告」なのかを確かめ、書かれている担当課に連絡して、指摘された箇所と期限を聞きます。そのうえで、修繕・草木の手入れ・売却などの対応予定を伝えます。勧告の前の段階で手を打てば、固定資産税の住宅用地の特例が外れずに済みます。
Q. 相続人が何人もいて、誰が管理するか決まっていません。連絡は誰に来ますか?
国土交通省のガイドラインは、所有者等が複数いる場合はできる限り全員に指導等を行うとしています。遺産分割や相続登記が済んでいないと、相続人のそれぞれに連絡が届くことがあります。窓口になる人を家族で決め、市区町村に伝えておくと対応が一本化できます。
出典・参考にした公的な情報
- 空家等対策の推進に関する特別措置法 第5条・第9条・第13条・第14条・第22条・第30条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方税法 第349条の3の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)(国土交通省)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)(国土交通省)
- 民法 第233条・第264条の9・第264条の14・第717条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
- No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(国税庁)
- No.3258 取得費が分からないとき(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。