相続放棄を兄弟まとめてする方法:同時に申述する書類と費用
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相続放棄を兄弟まとめてするには、兄弟それぞれが自分の申述書を書いて記名押印し、同じ家庭裁判所に同時に出します。被相続人の戸籍など共通の書類は1通で足り、裁判所もそう案内しています。一方で、収入印紙800円分は申述人1人ごとに必要で、兄の1人が委任状で弟妹の分を代わりに申述することはできません。この記事では、親が亡くなって子の全員で放棄する場合と、亡くなった人の兄弟姉妹の全員で放棄する場合に分けて、共用できる書類、順番の決まり、費用の計算例を示します。
兄弟でまとめて申述するときの基本:申述書は1人1通
「兄弟まとめて」には、立場の違う2つの場面があります。どちらに当たるかで、必要な戸籍と順番が変わります。
| 場面 | 兄弟の立場 | 相続の順位 | 主な注意 |
|---|---|---|---|
| A 親が亡くなった | 被相続人の子(第1順位) | 配偶者(もう一方の親)と一緒に相続人 | 未成年の兄弟がいると親の申述の順番が問題になる |
| B 子のいない兄弟姉妹が亡くなった | 被相続人の兄弟姉妹(第3順位) | 子・父母・祖父母がいない場合に相続人 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要 |
どちらの場面でも、次の3つは1人ずつです。
- 申述書:申述人ごとに1通。申述人の記名押印は本人がします。
- 収入印紙800円分:申述人ごとに申述書に貼ります。
- 申述人自身の戸籍謄本:兄弟でも結婚して別の戸籍になっていれば、それぞれの戸籍が要ります。
申述書の作成を誰か1人が手伝い、書類をまとめて郵送する段取りを受け持つことはできます。ただ、家庭裁判所の手続きで代理人になれるのは、法令上の代理人のほかは弁護士で、弁護士でない人は家庭裁判所の許可を受けた場合に限られます(家事事件手続法22条)。申述書の書き方は相続放棄申述書の書き方で、欄ごとに説明しています。
共用できる書類と、委任状が使える場面
裁判所の案内には「同じ書類は1通で足ります」とあり、甲府家庭裁判所も複数の申述人が同時に申し立てる場合は共通の書類は1通でよいとしています。兄弟で同時に出すと、次のように書類が減ります。
| 書類 | 場面A(子の全員) | 場面B(兄弟姉妹の全員) |
|---|---|---|
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍附票) | 共通で1通 | 共通で1通 |
| 被相続人の死亡の記載がある戸籍 | 共通で1通 | 出生から死亡までのすべてを共通で1組 |
| 被相続人の父母・祖父母の死亡の記載がある戸籍 | 不要 | 共通で1組 |
| 申述人の戸籍謄本 | 1人ずつ(同じ戸籍なら1通) | 1人ずつ(同じ戸籍なら1通) |
| 申述書・収入印紙 | 1人ずつ | 1人ずつ |
- 1人ずつ:申述書3通(それぞれ印紙800円分を貼り、本人が記名押印)
- 1人ずつ:兄・弟・妹の戸籍謄本(別の戸籍なら3通)
- 共通で1通:父の除籍謄本、父の住民票の除票
- 申述先が指定する郵便切手
委任状が役立つのは、戸籍を集める段階です。本籍地の市区町村の窓口では、委任を受けた代理人が戸籍を請求できます。場面Bで亡くなった兄弟の戸籍を本籍地に請求するときは、兄弟姉妹は一人ひとりが自分の名前で理由を示して請求できるので(戸籍法10条の2)、1人が代表して取れば兄弟の委任状は要りません。委任状が要るのは、自分では窓口に行けず、家族などに代わりに行ってもらう場合です。その場合の委任状は、たとえば次のように書きます。書式は請求先の市区町村の案内に従ってください。
委任状の例:「私は、○○(住所・氏名)を代理人と定め、被相続人○○(本籍・筆頭者・死亡年月日)の戸籍謄本・除籍謄本の請求と受領を委任します。使い道:相続放棄の申述のため。令和○年○月○日 委任者(住所・氏名・押印)」
一方、亡くなった父母の戸籍は、子である兄弟それぞれが広域交付で取れます。ただし広域交付は本人が窓口に行く方法で、代理人や郵送では使えません。立場ごとの範囲は相続放棄の必要書類:立場ごとの戸籍の範囲と取り寄せの順番を見てください。
親が先に放棄する場合・未成年の兄弟がいる場合の順番
場面Aで、もう一方の親が生きていて、兄弟に未成年者がいる場合は順番に注意します。未成年の子の相続放棄は、親権者である親が法定代理人として申述します。裁判所の案内では、未成年者と法定代理人が共同相続人で、未成年者だけが申述する場合(法定代理人が先に申述している場合を除く)や、複数の未成年者の一部だけを代理する場合は、特別代理人の選任が必要です。
この決まりから、裁判所の案内で特別代理人が要らないとされているのは、親が先に申述し、その後に親が未成年の子の分を代理して申述する場合です。親と子の全員が同じ日に申述書を出す場合の扱いは、案内に書かれていません。同時に出す予定なら、申述先の家庭裁判所に電話で、特別代理人が要るかどうかを確かめます。
子の一部だけを放棄させる、親は放棄せず子だけ放棄させるといった場合は、親権者などが特別代理人の選任を子の住所地の家庭裁判所に申し立てる流れになります(子1人につき収入印紙800円分。裁判所の特別代理人選任のページによる)。どれに当たるかは、出す前に申述先の家庭裁判所に確かめます。
場面Bでは、兄弟姉妹は先の順位の人がいない場合に初めて相続人になります。被相続人の子が放棄して父母・祖父母も放棄(または死亡)した後でなければ、兄弟姉妹は相続人ではありません。先の順位の人が放棄した後は、そのことを知った時から3か月が兄弟姉妹の期限になるので、先の順位の人に受理の連絡をもらう約束をしておきます。順位の移り方は相続放棄したら次は誰が相続人?次順位への連絡と全員放棄の流れで説明しています。
費用の考え方:人数分かかるものと1回で済むもの
兄弟まとめての費用は、「人数分」と「共通で1回」に分けて考えます。
| 区分 | 費目 |
|---|---|
| 人数分 | 収入印紙800円分、申述人の戸籍謄本、専門家に頼む場合の報酬(事務所の基準による) |
| 共通で1回 | 被相続人の戸籍・除籍、被相続人の住民票の除票、郵送代 |
| 申述先で確かめる | 連絡用の郵便切手の額(人数で変わるかを含めて申述先の一覧で確かめる) |
筆者の計算で、場面Aの兄弟3人(父の死亡の記載は除籍謄本1通750円、兄弟はそれぞれ別の戸籍で1通450円と置き、切手・郵送代・住民票の除票の手数料は除く)を比べます。
- 同時に出す:印紙800円×3人=2,400円、父の除籍謄本750円、兄弟の戸籍謄本450円×3通=1,350円。合計4,500円。
- 別々に出す(共通の書類も1人ずつ用意):1人あたり800円+750円+450円=2,000円で、3人で6,000円。
差の1,500円は、父の除籍謄本を3通取るか1通で済ませるかの違いです。手数料の標準は戸籍謄本1通450円・除籍謄本1通750円で、実額は市区町村の手数料表で確かめます。司法書士・弁護士に頼む場合の報酬が人数でどう増えるかは事務所ごとの基準によるので、見積書で「申述人1人あたり」か「まとめていくら」かを確かめます。比べ方は相続放棄の費用:自分でやる実費と司法書士・弁護士に頼む場合を見てください。
兄弟で意見が分かれたとき・もめたときの進め方
相続放棄は一人ひとりの判断で、兄弟の誰かが他の兄弟に放棄させることも、止めることもできません。意見が分かれたときは、次の順で整理します。
- 期限を全員で共有する:起算日は人ごとに違うことがあるので、いちばん早い人の期限を基準にします。
- 財産と借金の分かっている範囲を共有する:督促状や通帳の写しを全員が見られるようにします。
- 放棄する人としない人を決める:放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされ(民法939条)、残った人の相続分が増えます。借金があれば、残った人の負担の割合も増えます。
- 放棄する人は、申述したことと受理されたことを残る人に伝える:受理証明書の写しを渡せば、残る人の相続手続きにも使えます。
照会書が届いたときは、兄弟でも一人ひとりが自分の事実で答えます。答え方は相続放棄の照会書が届いたらで説明しています。遺産の分け方そのものでもめている、ほかの相続人から強い言葉で放棄を迫られているといった場合は、放棄の前に弁護士へ相談します。窓口は相続手続きの無料相談窓口一覧、手続き全体は相続放棄の手続き:期限・費用・申述から受理通知までの5段階で確かめてください。
よくある質問
Q. 兄が委任状をもらって、弟や妹の分もまとめて申述できますか?
できません。家庭裁判所の手続きで代理人になれるのは、法令上の代理人(未成年の子の親など)のほかは弁護士で、弁護士でない人は家庭裁判所の許可を受けた場合に限られます(家事事件手続法22条)。委任状が役立つのは、本籍地の市区町村で戸籍を代わりに請求するときです。申述書の記名押印は兄弟それぞれがします。
Q. 兄弟で期限が違うことはありますか?
あります。3か月の期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から一人ひとり数えます(民法915条1項)。同居していた兄と、遠方で後から死亡を知った妹では起算日がずれることがあります。まとめて出すなら、いちばん早く期限が来る人に合わせて準備します。
Q. 兄弟の1人が放棄しないと言っています。どうなりますか?
相続放棄は各自の判断で、ほかの兄弟が強制することはできません。放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされるので(民法939条)、残った人の相続分が増え、借金があればその負担の割合も増えます。放棄しない人がいるなら、その人に財産と借金の状況を伝えてから申述するのが無用な行き違いを防ぎます。
出典・参考にした公的な情報
- 相続の放棄の申述(申述人・必要書類・注意書き)(裁判所)(最高裁判所)
- 特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)(裁判所)(最高裁判所)
- 相続放棄の申述(甲府家庭裁判所)(甲府家庭裁判所)
- 家事事件手続法 第22条・第201条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第887条・第889条・第890条・第915条・第939条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 戸籍法 第10条の2・第120条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)(法務省)(法務省)
- 地方公共団体の手数料の標準に関する政令(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。