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自筆証書遺言と公正証書遺言の違い:費用・検認・2026年改正の比較表

この記事のもくじ
  1. 比較表:作り方・費用・検認・保管・無効になりやすさ
  2. 費用の違い:計算のしかたと例
  3. メリットとデメリット:向いている人の分かれ目
  4. 両方作ったときはどうなる?後の遺言が優先される部分
  5. 2026年改正で何が変わる予定か(2026年10月時点で施行前)

自筆証書遺言と公正証書遺言のいちばんの違いは、誰が作るかです。自筆証書遺言は本人が全文を手書きし、費用はかかりませんが、方式の誤りや紛失のおそれは本人が負います。公正証書遺言は公証人が証人2人の立会いのもとで作り、手数料はかかりますが、方式の不備が起きにくく、原本は公証役場側で保管され、亡くなった後の家庭裁判所の検認も要りません。自筆証書遺言を法務局に預ける制度を使うと、保管と検認の差は小さくなります。この記事では3つを一つの表で比べ、メリット・デメリット、両方作った場合の扱い、2026年に成立した改正で何が変わる予定かを分けて示します。

比較表:作り方・費用・検認・保管・無効になりやすさ

比較表:自筆証書遺言(自宅保管・法務局保管)と公正証書遺言
比べる点 自筆証書遺言(自宅保管) 自筆証書遺言(法務局保管) 公正証書遺言
根拠 民法968条 民法968条+遺言書保管法 民法969条
作る人 本人が全文・日付・氏名を手書きし押印 同左。A4片面など法務省令の様式に合わせる 公証人が本人の口述をもとに作成
証人 不要 不要 2人以上
手書きできない人 作れない 作れない 作れる(署名できない場合の措置もある)
作るときの費用 なし 保管の申請1通3,900円 公証人手数料(財産の額による)+正本・謄本の交付手数料
本人の出向き 不要 本人が予約して法務局へ(代理・郵送不可) 公証役場へ。出張も可(日当・交通費が加わる)
内容の相談 なし 法務局は内容の相談に応じない 公証人に無料で相談できる
亡くなった後の検認 必要(民法1004条) 不要(遺言書保管法11条) 不要(民法1004条2項)
原本の保管 本人・家族 法務局(原本は死亡後50年、画像は150年) 公証役場側(電子化後は公証人連合会のシステム)
死亡後に存在を調べる方法 自宅などを探す 遺言書保管事実証明書(1通800円) 平成元年以降の分は全国の公証役場で無料検索

表のうち、費用と手間は自筆証書遺言が軽く、確実さは公正証書遺言が厚い、という関係になっています。法務局保管は、その中間に位置づけると分かりやすいでしょう。

費用の違い:計算のしかたと例

自筆証書遺言は作るだけなら費用はゼロです。法務局に預ける場合は保管の申請が1通3,900円で、亡くなった後に相続人が遺言書情報証明書を取ると1通1,400円かかります。自宅保管の場合は、亡くなった後に家庭裁判所の検認が要り、遺言書1通につき収入印紙800円と郵便切手、遺言者の出生から死亡までの戸籍などをそろえる手間がかかります。

公正証書遺言の手数料は公証人手数料令で決まっています。2026年10月時点の公証人手数料令の別表のうち、遺言でよく使う部分は次のとおりです。

財産を受け取る人ごとの価額 手数料
500万円超〜1,000万円以下 20,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 26,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 33,000円
5,000万円超〜1億円以下 49,000円

計算は、受け取る人ごとに額を出して合計し、財産全体が1億円以下なら「遺言加算」の13,000円を足します。例として、妻に自宅など3,000万円、長女に預金1,000万円を相続させる場合は、妻の分26,000円+長女の分20,000円+遺言加算13,000円=59,000円です(筆者の計算)。これに、原本が横書きで3枚(縦書きは4枚)を超える分の加算(1枚300円。手数料令25条)、正本・謄本の交付(電子データなら1通2,500円、書面なら1枚300円)が加わります。公証人が病院などへ出向く場合は、日当(1日2万円、4時間以内なら1万円)と交通費が、病床で作る場合は手数料の50%の加算がありえます。費用の組み立てと、専門家に頼んだ場合の総額は公正証書遺言の費用:公証人手数料の計算と専門家に頼む場合の総額で詳しく扱います。

メリットとデメリット:向いている人の分かれ目

自筆証書遺言 公正証書遺言
メリット 費用がかからない。思い立った日に1人で書ける。内容を誰にも知られずに作れる。何度でも書き直しやすい 公証人が方式と内容を整えるので不備が起きにくい。手書きが難しくても作れる。検認が要らない。原本の紛失・改ざんの心配が小さい
デメリット 方式の誤りで無効が争われやすい。自宅保管だと紛失・隠匿のおそれ。検認の手間を相続人に残す。内容の誤りを誰も指摘しない 手数料がかかる。証人2人の手配が要る(公証役場で紹介も受けられる)。公証役場とのやり取りに日数がかかる

選び分けの目安は次のとおりです。

  • 自筆証書遺言が向く:財産が自宅と預金程度で、渡す相手もはっきりしている。まずは早く1通作っておきたい。費用をかけたくない。この場合も、法務局に預けると紛失と検認の負担を減らせます。
  • 公正証書遺言が向く:不動産が複数ある、相続人以外に遺贈する、先妻の子と後妻がいるなど争いの火種がある。高齢で、後から判断する力を疑われる心配がある。手書きが負担。

なお、公正証書遺言でも、作った時の判断する力をめぐって無効が主張されることはあります。どんな場面で争いになるかは公正証書遺言でももめる?争いになる原因と無効が主張される場面を、法務局保管の弱点は自筆証書遺言の法務局保管のデメリット:内容は審査されない点などを参考にしてください。

両方作ったときはどうなる?後の遺言が優先される部分

自筆証書遺言と公正証書遺言の両方を作ることはできます。ただし、内容がぶつかる部分は、日付が後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。方式の上下はなく、公正証書遺言の後に書いた自筆証書遺言が優先する部分もありえます。遺言は、いつでも遺言の方式に従って撤回できると定められているためです(1022条)。

両方ある状態が招きやすい問題は次の3つです。

  1. 片方しか見つからない。 後の自筆証書遺言が見つからないまま、前の公正証書遺言で手続きが進むことがあります。
  2. どこがぶつかるか分かりにくい。 一部だけ違う内容だと、相続人の間で読み方が分かれます。
  3. 自筆の方に方式の誤りがある。 後の遺言が無効と争われると、前の遺言との関係まで問題が広がります。

内容を変えたいときは、新しい遺言の中で「前の遺言の全部を撤回する」と書いたうえで全体を書き直すと、読み違いが起きにくくなります。公正証書遺言の書き換えの手順は公正証書遺言の書き換え:撤回・新しい遺言の作り方と費用の目安にまとめています。

2026年改正で何が変わる予定か(2026年10月時点で施行前)

2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、6月24日に公布されました。遺言に関係する主な変更は、施行の時期が段階に分かれています。2026年10月23日時点で、施行日を定める政令は出ていません。

変更の中身 施行の時期(公布からの期限) 今の扱い
自筆証書遺言・秘密証書遺言などの押印を任意にする 1年以内の政令で定める日 押印が要件。施行前に押印なしで書いた遺言は前の決まりで判断される
証人になれない人に、受遺者の従業員(法人なら役員も)を加える 1年以内の政令で定める日 現行の欠格(未成年者、推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族など)
録音・録画による特別方式の遺言を設ける 1年以内の政令で定める日 死亡の危急時の遺言は証人3人以上など現行の方式
パソコン等で作ったデータを法務局に預ける「保管証書遺言」を設ける 3年以内の政令で定める日 作れない。いまある法務局の保管制度は手書きの遺言だけが対象

公布日から数えると、押印の任意化などは遅くとも2027年6月まで、保管証書遺言は遅くとも2029年6月までに始まる計算です(筆者の計算)。今から遺言を作る人は、自筆なら押印まで、公正証書なら公証役場の案内どおりに作れば足ります。改正の中身と、施行を待つべきかの考え方は遺言書の押印不要はいつから?2026年の民法改正の中身と施行時期で詳しく見ていきます。方式ごとの書き方の入口に戻るときは遺言書の種類と書き方:自筆証書・公正証書・法務局保管の選び方を、何を書けば効力があるかは遺言書の効力:書いて意味があること・ないことと無効になる典型を見てください。

よくある質問

Q. 自筆証書遺言を法務局に預ければ、公正証書遺言と同じくらい安全ですか?

紛失や改ざんを防げて検認も要らなくなる点は、公正証書遺言に近づきます。ただ、法務局は方式の外形を見るだけで、内容の相談には応じず、有効性も保証しません。誰に何を残すかの書き方の誤りや、判断する力が争われる心配までは減らせない点が、公証人が内容を整える公正証書遺言との違いです。

Q. 公正証書遺言を作った後に、自筆証書遺言で内容を変えられますか?

できます。民法は遺言の撤回や変更を「遺言の方式に従って」行うと定めていて、前の遺言と同じ方式である必要はありません。ただし、手書きの遺言のほうが後から見つからなかったり、方式の誤りで効力が争われたりすると、相続人が混乱します。書き換えるなら、新しい遺言も公正証書で作るほうが争いの種を残しにくくなります。

Q. 費用の差はどのくらいですか?

自筆証書遺言は紙とペンだけで作れ、法務局に預ける場合は1通3,900円です。公正証書遺言は財産の額と受け取る人の数で手数料が決まり、たとえば妻に3,000万円・子に1,000万円なら基本の額は59,000円です(筆者の計算)。専門家に原案づくりを頼めば、その報酬が別にかかります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

遺言書の種類と書き方:自筆証書・公正証書・法務局保管の選び方

遺言書の効力:書いて意味があること・ないことと無効になる典型

自筆証書遺言を法務局に預けるデメリット:内容が審査されない点ほか

公正証書遺言の費用:2025年10月改正後の手数料の計算と専門家の報酬