不動産売却の税金と特例 / 制度解説

譲渡所得税とは:不動産を売った利益にかかる所得税・住民税

この記事のもくじ
  1. 譲渡所得税は何にかかる税金か
  2. 他の所得と分けて計算する(分離課税)理由
  3. 税の内訳:所得税・復興特別所得税・住民税
  4. 利益がなければかからない、でも申告が要る場面がある
  5. 申告と納付の時期

譲渡所得税とは、土地や建物を売って出た利益(譲渡所得)にかかる、所得税・復興特別所得税・住民税の総称です。条文や国税庁のページに「譲渡所得税」という名前の独立した税金があるわけではありません。売った金額そのものではなく、そこから買ったときの費用と売るための費用を引いた「利益」だけが課税の対象で、利益がなければ税金はかかりません。この記事では、何にかかる税金なのか、なぜ他の所得と分けて計算するのか、内訳はどうなっているのかを整理します。

譲渡所得税は何にかかる税金か

譲渡所得とは、土地・建物などの資産を売ったり手放したりして得た利益のことです。不動産の場合、その利益に対して、国には所得税と復興特別所得税、住んでいる市区町村と都道府県には住民税を納めます。

利益の求め方は、国税庁のタックスアンサーに次のように書かれています。

  • 譲渡所得の金額=収入金額(売った金額)−(取得費+譲渡費用)
  • 課税される金額=譲渡所得の金額−特別控除額

つまり、課税の入口は売った金額ではなく利益です。たとえば3,000万円で売っても、取得費と譲渡費用が3,100万円なら利益はなく、譲渡所得税はかかりません。反対に、取得費が小さければ、売却額に近い金額が利益になることもあります。取得費の中身は不動産売却の税金計算の減価償却:建物の取得費の計算方法に、手元の数字で試算する手順は譲渡所得税の計算方法:売却額−取得費−譲渡費用−控除の手順にまとめています。

他の所得と分けて計算する(分離課税)理由

給与や事業の所得は、1年分を合算して税額を出す総合課税です。一方、土地・建物の売却益は、給与などとは分けて計算します。これを分離課税といいます。

分けて計算する大きな意味は2つあります。

  1. 売却益が大きい年でも、給与にかかる所得税の累進税率(収入が上がるほど税率が上がる仕組み)に押し上げられない。税率は所有期間で決まる一律の率になる。
  2. 赤字が出ても、原則として給与などとの損益通算ができない。ただし、マイホームの買換えや住宅ローンが残る家の売却には、損失を他の所得と通算できる特例がある。

つまり、「給料が高いから売却益の税率も高い」とはなりません。年収が違う人が、同じ利益を長期で得たときの税率は同じです。損失が出たときの扱いは不動産売却が赤字のとき:損益通算できる特例と確定申告の要否で扱います。

税の内訳:所得税・復興特別所得税・住民税

内訳は、所得税、所得税額に2.1%をかける復興特別所得税、住民税の3つです。長期(売った年の1月1日で所有期間が5年超)と短期(5年以下)で率が違い、長期の合計は約20.315%、短期は約39.63%です。率の早見表と所有期間の数え方は、譲渡所得税の税率:長期20.315%・短期39.63%と所有期間の数え方に置いています。この記事では、3つの税が何に当たるのかを順に見ます。

早見表:譲渡所得税の3つの税の納め先
税 計算のもと 納め先と時期
所得税 課税譲渡所得金額に率をかける 税務署へ。翌年2月16日〜3月15日の確定申告で納める
復興特別所得税 所得税額に2.1%をかける 所得税とあわせて税務署へ
住民税 課税譲渡所得金額に率をかける 申告の内容をもとに市区町村が通知。別の申告書は要らない

復興特別所得税は、所得税の額に対してかかる税です。上の合計の数字は国税庁のページに書かれた数字ではなく、内訳から出した筆者の計算です。

国税庁には、長期の計算例があります。売った金額が1億4,500万円、取得費が1億円、譲渡費用が500万円のとき、課税長期譲渡所得金額は4,000万円で、税額は次のとおりです。

項目 金額 計算
所得税 600万円 4,000万円×15%
復興特別所得税 12万6,000円 600万円×2.1%
住民税 200万円 4,000万円×5%
合計 812万6,000円 4,000万円の約20.315%

検算は、600万+12.6万+200万=812.6万円で、4,000万円×0.20315=812.6万円と一致します。

復興特別所得税については、令和8年度の税制改正(所得税法等の一部を改正する法律は2026年3月31日に成立・公布)で、令和9年(2027年)分以後は税率を1.1%に下げ、別に防衛特別所得税1%を設ける内容になりました。内訳は変わっても、合計は2.1%のままという計算です。2027年以降に売る予定のときは、国税庁の令和9年分の案内で内訳を確かめてください。

税率の使い分けは譲渡所得税の税率:長期20.315%・短期39.63%と所有期間の数え方で、売却税金の全体の見取り図は不動産売却の税金:譲渡所得の計算・税率・特例の全体と確定申告で見られます。

利益がなければかからない、でも申告が要る場面がある

利益(譲渡益)が出なければ、譲渡所得にかかる所得税と住民税は発生しません。ただし、次のように申告が必要になる場面があります。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除などの特例を使うとき:控除で税額が0になっても、特例を受けるために確定申告をする。
  • 売却損を、住宅ローンが残る家などの特例で他の所得と通算するとき:申告を行うことで通算や繰越控除の対象になる。

利益が出ているかどうかは、「売った金額が購入額より高いか」ではなく、取得費に建物の減価償却を反映し、譲渡費用を引いたうえで判断します。建物は年数が経つと取得費が減るため、買ったときより安く売ったつもりでも、計算上は利益が出ることがあります。

特例で税金が0になるのか、申告が要るのかは譲渡所得税がかからない場合:利益なし・特例適用でも申告は要る?で詳しく見ます。

申告と納付の時期

譲渡所得は、売った年の翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をします。譲渡した日は、原則として物件を引き渡した日で、売買契約の効力が生じた日を選ぶこともできます。契約と引渡しが年をまたぐときは、どちらの日で申告するかによって申告する年が変わります。

所得税と復興特別所得税を確定申告すれば、住民税のための別の申告は要りません。住民税は、申告の内容をもとに市区町村から納税通知が届きます。

譲渡所得の計算や特例の判断が複雑で、自分で進めるのが不安なときは、税理士に頼む選択肢があります。個別の税額の計算と申告書の作成は、税理士の業務です。

よくある質問

Q. 譲渡所得税という名前の税金が、別にあるのですか?

「譲渡所得税」という名前の独立した税金はありません。土地や建物を売った利益(譲渡所得)にかかる所得税と復興特別所得税、住民税をまとめて、一般にこう呼びます。

Q. 売って損をした場合も、税金を払うのですか?

利益が出ていなければ、譲渡所得にかかる所得税と住民税は発生しません。なお、土地・建物の譲渡損失は、一定の居住用財産の特例を除き、給与など他の所得とは通算できません。

Q. 不動産を売った利益は、給料と合算して税率が決まりますか?

合算しません。土地・建物の譲渡所得は、給与所得などとは分けて計算する分離課税で、税率は所有期間によって決まります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

不動産売却の税金:譲渡所得の計算・税率・特例の全体と確定申告

譲渡所得税の税率:長期20.315%・短期39.63%と所有期間の数え方

譲渡所得税の計算方法:売却額−取得費−譲渡費用−控除の手順