不動産売却の税金と特例 / Q&A

譲渡所得税がかからない場合:利益なし・特例適用でも申告は要る?

この記事のもくじ
  1. 税金がかからない2つの場合と、申告の要否
  2. 売却益が出ない場合:計算と、取得費が小さくなる落とし穴
  3. 3,000万円特別控除で税額が0円になる場合:申告が欠かせない理由
  4. 控除しても利益が残る場合は、税額が出る
  5. 税金がかからなくても、申告の前後で確かめること

不動産を売っても譲渡所得税がかからないのは、大きく2つの場合です。売った金額が取得費と譲渡費用の合計以下で、利益(譲渡益)が出ない場合と、利益は出ても特別控除で課税される金額が0円になる場合です。申告の要否は両者で分かれます。前者は納める税額が出なければ申告書を出す義務は生じませんが、後者は確定申告をして初めて特例を受けられるので、税額が0円でも申告が要ります。

税金がかからない2つの場合と、申告の要否

譲渡所得は、土地・建物の売却では給与などと分けて計算します(分離課税)。式は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除」です。この結果が0円以下か、0円になれば、所得税・復興特別所得税・住民税のどれも課税されません。ただし、どちらの形で0円になったかで、手続きの扱いが変わります。

早見表:譲渡所得税がかからない場合と申告の要否
状況 税額 申告
売却益が出ない(譲渡価額が取得費+譲渡費用以下) 0円 納める税額がなければ原則として不要。赤字の特例を使う場合は必要
利益は出たが、3,000万円特別控除などで課税譲渡所得が0円 0円 必要(申告して初めて特例を受けられる)
控除しても利益が残る 税額あり 必要(期限は翌年3月15日)

国税庁の確定申告の説明では、所得金額の合計から所得控除を引いた額に対する税額が、配当控除額と年末調整で受けた住宅借入金等特別控除額の合計を超える人が、申告をする必要があります。売却益が出ず、給与など他の所得も申告が要らない範囲の人は、この条件に当たりません。個別の申告要否の判断は、税務署か税理士の仕事ですので、迷ったら譲渡所得税の相談窓口の使い方を確かめてください。

売却益が出ない場合:計算と、取得費が小さくなる落とし穴

売った金額が、買ったときの費用と売るためにかかった費用の合計より低ければ、譲渡益は出ません。数字の例で見ます(筆者の計算)。

  • 譲渡価額 1,800万円
  • 取得費 1,900万円(土地代と、建物の購入額から減価償却相当額を引いた額の合計)
  • 譲渡費用 100万円(仲介手数料や印紙税など)
  • 譲渡所得=1,800万−1,900万−100万=−200万円(利益なし)

注意したいのは、取得費が「買った値段そのまま」ではない点です。自宅などの建物は、買った年から売った年までの減価償却相当額を引いた額が取得費になります(土地は減価償却しません)。このため、買った値段より安く売っても、計算上は利益が出ることがあります。建物の取得費の計算は不動産売却の税金計算の減価償却で数字つきで説明しています。

逆に、売った費用は取得費とは別に譲渡費用として引けます。仲介手数料、売主が負担する印紙税、測量費、取壊し費用などです。引ける費用の範囲は不動産売却の税金で引ける費用で確かめてください。

取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます(国税庁)。4,000万円で売れば取得費は200万円と扱われ、ほとんどの場合、利益が大きく出る計算になります。親が買った家を相続した場合などは、契約書・通帳・当時の資料を探し直す価値があります。探し方は取得費不明の不動産売却の税金にまとめています。

3,000万円特別控除で税額が0円になる場合:申告が欠かせない理由

売却益が出ていても、特別控除で課税される金額が0円になることがあります。代表は次の2つです。

  • 住んでいた家を売る場合の、居住用財産の3,000万円特別控除(所有期間の長短を問わず使える)
  • 相続した実家(被相続人の居住用財産)を売る場合の、空き家の3,000万円特別控除

数字の例(筆者の計算)。譲渡価額4,000万円、取得費1,000万円、譲渡費用200万円なら、譲渡所得は2,800万円です。3,000万円の特別控除は譲渡所得の額が限度なので、控除後は0円になり、税額も0円です。

ここで申告をしなかったとします。特例を受けないものとして計算すると、所有期間が5年を超える場合の税率(所得税15%、復興特別所得税、住民税5%で合計約20.315%)で、2,800万円×20.315%=約569万円になります(筆者の計算)。控除を受けるかどうかは申告の有無で決まるので、金額が大きいほど、申告をしない選択は重くなります。

なお、居住用財産の買換え特例(特定の居住用財産の買換え特例)で税額が0円になる場合は、課税が将来に繰り延べられているだけで、非課税になったわけではありません。この特例も、確定申告をして受けるものです。国税庁は、居住用財産の3,000万円控除も空き家の3,000万円控除も、確定申告書に一定の書類を添えて申告することで受けられると説明しています。主な添付書類は次のとおりです。

  1. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  2. 登記事項証明書など(不動産番号を明細書に書けば省略できる)
  3. 売買契約書の写し(空き家の特例では、1億円以下を示す書類として)
  4. 空き家の特例では、市区町村長が出す「被相続人居住用家屋等確認書」

2026年中に引渡しをした売却なら、申告期間は2027年2月16日から3月15日までです。申告の手順は不動産売却の確定申告、各特例の要件は自宅を売った時の譲渡所得税の3000万円控除と相続した空き家の3000万円控除に書いています。

控除しても利益が残る場合は、税額が出る

特別控除は上限が3,000万円なので、利益がそれより大きければ差額に課税されます。たとえば、同じ4,000万円で売って取得費が分からず、概算の5%(200万円)、譲渡費用200万円とすると、譲渡所得は3,600万円です。3,000万円を控除しても600万円が残り、約20.315%で約121.9万円の税額になります(筆者の計算。600万円×20.315%=1,218,900円)。

空き家の特例では、家屋と敷地を取得した相続人が3人以上なら、1人あたりの上限が2,000万円です(2024年1月1日以後の譲渡)。この上限は人数で変わるので、共有の場合は空き家の3000万円控除を共有名義で使うで確かめてください。

税金がかからなくても、申告の前後で確かめること

譲渡所得税が0円になっても、次の点は残ります。

  • 住民税・国民健康保険料:特別控除後の金額で保険料を計算する市区町村もあれば、軽減の判定では控除前の金額を使う市区町村もあり、扱いは自治体ごとに違う。詳しくは不動産売却の翌年の住民税・国民健康保険料を参照。
  • 扶養控除・配偶者控除:売った人の合計所得金額に譲渡所得が入るため、売った人を扶養に入れている家族がいる場合、控除が受けられなくなることがある(国税庁の手引き)。
  • 申告を忘れた場合:特例を使うつもりで申告をしなかったときは、不動産売却の確定申告を忘れたらで期限後の手続きを確かめる。

申告が必要かどうかを迷う段階では、次の順で確かめると整理できます。

  1. 売却益が出るか(譲渡価額−取得費−譲渡費用)を計算する。取得費が不明なら5%で仮に置き、探した結果で見直す。
  2. 益が出るなら、居住用・空き家など使える特例の要件を一つずつ確かめる。
  3. 特例を使うなら、申告が欠かせない前提で書類(確認書など)の取得日数から逆算する。
  4. 益が出ないなら、赤字の特例(不動産売却が赤字のとき)を使うかを決める。使わない場合は、他に申告が要る所得がないかを確かめる。

文例(税務署への電話):「令和○年に相続した実家を売りました。売却益が出るかどうかの計算はこれからです。特別控除を使う場合に確定申告で添付する書類と、申告が必要になる条件を教えてください。」

国税の一般的な相談の電話番号と受付時間は譲渡所得税の相談窓口にまとめています。個別の税額の計算や申告書の作成は税理士の業務で、相談先の選び方は相続の専門家の違い、窓口全体は相続手続きの無料相談窓口一覧にまとめています。税金全体の仕組みは不動産売却の税金で確認できます。

よくある質問

Q. 売却益が出なかったら、確定申告はしなくてよいのですか?

国税庁の説明では、確定申告が必要になるのは、所得金額の合計が所得控除の合計を超え、その超えた額に対する税額が、配当控除額と年末調整で受けた住宅借入金等特別控除額の合計を上回る人です。売却益がなく、ほかにも申告が必要な所得がなければ、譲渡所得のための申告書を出す義務は生じません。ただし、赤字を他の所得と通算する特例([不動産売却が赤字のとき](/jouto-sonshitsu/))を使う場合は申告が要ります。

Q. 3,000万円控除を使うと税額が0円になります。申告しなくても大丈夫ですか?

大丈夫ではありません。国税庁は、この特例は一定の書類を添えて確定申告をすることが必要だと説明しています。申告しなければ特例を受けられないので、税額が0円になる場合こそ申告が欠かせません。

Q. 親から相続した家を、親が買った値段が分からないまま売ります。税金はかかりませんか?

買った値段が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできますが、実際の購入額より小さくなることが多く、利益が出やすくなります。空き家の3,000万円特別控除などの特例に当たれば税額が0円になることもあります。どの特例に当たるかは、要件を一つずつ確かめて決めます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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