相続税と申告 / Q&A

預金の相続と相続税:名義預金と判断される例と記録の残し方

この記事のもくじ
  1. 預金の相続税の評価:死亡日の残高と既経過利息
  2. 預金に相続税はいくらからかかる?基礎控除と比べる
  3. 名義預金と判断される例と、判断の材料
  4. 名義預金にしないための記録の残し方

預金は、亡くなった日の残高(定期預金などは解約したとしたら受け取れる利息を足した額)で相続財産に入ります(財産評価基本通達203)。名義が子や配偶者になっていても、亡くなった人がお金を出し、管理していた預金は亡くなった人の財産として相続税の対象になります。これが「名義預金」で、国税庁も申告書を作るときの誤りやすい事例に挙げています。この記事では、預金の評価の仕方、いくらから相続税がかかるかの考え方、名義預金と判断される材料、生前と相続後に残しておく記録を順に整理します。

預金の相続税の評価:死亡日の残高と既経過利息

預金の評価のしかたは、財産評価基本通達203に決まりがあります。

預金の種類ごとの相続税評価
預金の種類 評価額 必要な資料
普通預金・通常貯金など 死亡日の残高(既経過利息が少額なら残高のみ) 死亡日時点の残高証明書、通帳
定期預金・定期貯金・定額貯金 死亡日の残高+既経過利息−その利息から源泉徴収される税額 残高証明書、既経過利息の計算が分かる書類
家族名義でも亡くなった人に帰属する預金 上と同じ方法で評価して申告に含める 家族名義の通帳、入金の記録

既経過利息は、亡くなった日に解約したとしたら支払われる利息です。国税庁のチェックシートは「利息は、相続開始日に解約するとした場合の利率で計算し、その額から源泉所得税相当額を控除」すると説明しています。定期預金の約定の利率ではなく、期限前に解約したときの利率で計算する点に気をつけます。

同じチェックシートは、預貯金について次の確認も求めています。

  • 相続開始日(亡くなった日)の残高で計上しているか。手元の現金の残高も確かめたか
  • ゆうちょ銀行の貯金も入れているか
  • 名義は違っても、亡くなった人に帰属するもの(無記名の預金を含む)はないか
  • 日本国外の預金はないか

亡くなる直前に口座から引き出したお金は、亡くなった日に手元に残っていれば「現金」として申告に入ります。引き出した現金の扱いはタンス預金の相続税:現金が申告から漏れやすい理由と申告の仕方で説明しています。銀行への連絡や払い戻しの手続きそのものは預金の相続手続き:銀行への連絡から払い戻しまでの流れと必要書類にまとめています。

預金に相続税はいくらからかかる?基礎控除と比べる

「預金がいくらあると相続税がかかるか」という決まった金額はありません。相続税は、預金・不動産・株・生命保険金(非課税分を除く)などを合計し、借金や葬式費用を引いた額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるときにかかります(国税庁 No.4152)。

筆者が置いた例で見てみます。父が亡くなり、相続人は子2人、財産は預金3,500万円と、相続税評価額1,000万円の自宅だけ、借金と葬式費用は合わせて200万円とします。

  • 財産の合計:3,500万円+1,000万円=4,500万円
  • 借金と葬式費用を引く:4,500万円−200万円=4,300万円
  • 基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
  • 4,300万円は4,200万円を100万円上回る(筆者の計算。特例を使わない前提)

この例では、預金だけなら基礎控除を下回りますが、自宅を足すと超えます。自宅の土地に小規模宅地等の特例を使えると税額がゼロになることもありますが、その場合も申告は要ります。家族名義の預金が亡くなった人のものと判断されると、合計額がさらに増えるので、一次判定の前に名義預金を洗い出しておきます。基礎控除の数え方は相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定する方法にまとめています。

名義預金と判断される例と、判断の材料

国税庁の「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」の事例6は、次のような場面です。父の金庫から、父名義の通帳のほかに子名義の定期預金証書が見つかった。父の収入から預け入れ、父が管理・運用していた。子はこの預金の贈与を受けたことはない。子は父名義の財産だけを申告書に書いた、というものです。

国税庁の説明は「名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象」で、この子名義の定期預金も申告に含める必要があるとしています。

一方で、生前に本当に贈与が済んでいれば、その預金は名義人のものです。民法549条では、贈与は、あげる側が無償で財産を与える意思を示し、もらう側が受け入れることで成り立ちます。名義人が知らないうちに口座が作られ、お金が入っていただけでは、もらう側の受け入れがありません。判断の材料を表にすると次のとおりです。

見られる点 亡くなった人の財産とみられる材料 名義人の財産とみられる材料
お金の出どころ 亡くなった人の収入・預金から入れた 名義人の給与や、贈与を受けたお金
通帳・印鑑・カード 亡くなった人が持っていた 名義人が自分で持っていた
名義人の認識 口座があることを知らなかった 贈与を受けたと知っていた
使い方 名義人が引き出したことがない 名義人が自由に引き出して使っていた
贈与の記録 契約書も贈与税の申告もない 贈与契約書、110万円を超えた年の申告がある

配偶者名義の預金も同じ考え方です。生活費として渡されたお金は、通常必要な範囲で使う限り贈与税はかかりませんが(国税庁 No.4405)、使い残しを配偶者名義で積み立てた預金は、資金の出どころから亡くなった人の財産とみられる材料になります。

名義預金は調査で見つかりやすい財産です。国税庁の令和6事務年度の調査では、相続税の申告漏れ相続財産2,879億円のうち現金・預貯金等が837億円(29.1%)で、「その他」を除くと最も多く、贈与税の実地調査でも、申告漏れなどがあった財産(延べ件数)の62.9%が現金・預貯金等でした。

名義預金にしないための記録の残し方

生前に家族へお金を移すなら、「贈与が成り立っていたこと」を後から説明できる形で残します。

  1. 贈与のたびに契約書を作る:日付、あげる人・もらう人、金額を書き、双方が署名する。書き方は暦年贈与の契約書の書き方:ひな形と毎年作る理由・保管の仕方にあります。
  2. もらう人の口座へ振り込む:現金の手渡しより、振込の記録が残るほうが説明しやすい。
  3. 通帳・印鑑・カードはもらう人が持つ:あげた人が持ち続けると、管理していたのはあげた人とみられる材料になる。
  4. 年110万円を超えたら贈与税の申告をする:申告書の控えが贈与の記録になる。
  5. 相続開始前の加算期間を知っておく:贈与が成り立っていても、相続や遺贈で財産を受け取った人への加算期間内の贈与は相続税の計算に足し戻す。2026年中の相続では3年以内、2027年以後は段階的に延びて7年になる(国税庁 No.4161)。早見表は生前贈与の加算期間:3年から7年へ、相続開始日ごとの早見表にあります。

相続が起きた後の相続人は、次の順で整理します。

  • 家族全員の名義の口座を書き出し、亡くなった人の口座から入金された記録がないか通帳で確かめる
  • 入金があった口座について、上の表の5つの点を家族で聞き取り、メモに残す
  • 贈与契約書・贈与税の申告書の控えを探す
  • 判断が分かれる口座は、申告書を作る前に税理士に見てもらう

「贈与税の時効を過ぎたから大丈夫」と考える人もいますが、贈与が成り立っていなければ、そもそも時効の話になりません。この点は贈与税の時効は6年?成立しにくい理由と名義預金との関係で詳しく説明しています。

家族名義の預金が多い、入金の経緯がはっきりしない、という場合は、相続税に慣れた税理士に評価と申告を頼む選択肢があります。紹介サービスを使うときは、紹介料の有無と、相続税の申告の経験を確かめてから選びます。

「預金 相続 相続税」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。

よくある質問

Q. 子ども名義の口座に毎年110万円ずつ入れていました。これも名義預金になりますか?

金額だけでは決まりません。子どもが贈与を受けると知って受け取り、通帳や印鑑を自分で管理して使える状態だったなら、贈与として扱われる材料になります。親が通帳を持ち続け、子どもが口座の存在を知らなかった場合は、親の財産とみられる材料が増えます。贈与と認められても、相続開始前の加算期間内の贈与は相続税の計算に足し戻します。

Q. 申告した後で、家族名義の預金を入れ忘れていたことに気づきました。

税務署の調査の通知を受ける前に自分から修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません(延滞税はかかることがあります)。気づいた時点で、入金の記録を集めて亡くなった人の財産かどうかを整理し、修正申告の準備をします。手続きの違いは「相続税の申告の誤りに気づいたら:修正申告と更正の請求の違い」で確かめられます。

Q. 銀行の残高証明書には、既経過利息も書いてもらえますか?

相続税の申告用に、死亡日時点の残高と既経過利息の両方が分かる書類を頼むのが一般的な手順です。依頼の書式は銀行ごとに違うので、相続の窓口で「相続税の申告に使う」と伝えて、既経過利息の記載を一緒に頼めるか確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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