不動産売却の確定申告を忘れたら:期限後申告と加算税の扱い
売った年の確定申告を忘れていたと気づいたら、今から期限後申告で出せます。 税務署が決定をするまでは提出でき、早く出すほど無申告加算税の率は低く、延滞税の日数も短くなります。ただし、3,000万円控除などの特例は申告書に書いて初めて使えるので、「利益が出たのか」「特例を使えたのか」を先に整理してから出すのが順番です。
申告が必要だったかを先に確かめる
忘れていた売却が、そもそも申告の対象だったかを最初に見ます。国税庁は、売却額から取得費と譲渡費用を引いた譲渡所得に利益がある人は、原則として確定申告が必要としています。次の表で、自分がどれに近いかを当てはめてください。
| 状況 | 申告 | 補足 |
|---|---|---|
| 利益が出ていた(特例を使わない) | 必要 | 期限後申告で出す。加算税・延滞税の対象 |
| 利益は出たが、3,000万円控除などで税額がゼロになる見込み | 必要 | 特例は申告書への記載と添付書類が条件。税額ゼロでも出す |
| 売却額が取得費と譲渡費用を下回り、赤字だった | 原則は不要 | 赤字を他の所得と通算できるのは居住用財産の特例だけ。使いたいなら申告が要る |
| 計算していないのでどちらか分からない | まず計算する | 取得費が不明なら売却額の5%で試算できる |
利益の計算のしかたは不動産売却の確定申告:やり方・期限・必要書類を順番に解説にまとめています。相続した家なら、取得費と取得日は亡くなった人のものを引き継ぐので、親が買ったときの資料を探すところから始まります。
期限後申告の出し方:4つの手順
期限後申告で必要な内容は、期限内の申告と同じです。国税通則法18条3項は、期限後申告書にも、期限内に出すべきだった申告書の記載事項と添付書類を求めています。
- 書類を集める。 売買契約書、売った不動産の登記事項証明書、取得時の売買契約書や領収書、仲介手数料などの領収書、引渡し日が分かる書類です。相続不動産は、相続時の遺産分割協議書や戸籍も要ることがあります。
- 譲渡所得の内訳書を作る。 売った金額、取得費、譲渡費用、特例の適用欄を埋めて税額を出します。書き方は譲渡所得の内訳書の書き方:相続した不動産を売った場合の記載例で扱います。
- 申告書を出す。 申告書は所轄の税務署へ、e-Tax、郵送、持参のいずれかで出します。出す年分は「売った年分」で、期限後申告でも年分は変わりません。出し方に迷うときは、税務署の代表番号に電話して、期限後申告であることを伝えて確かめます。
- 納税する。 国税庁によると、期限後申告で納める税金の納期限は申告書を提出した日です。延滞税も併せて納めます。納付の準備ができていないときは、不動産売却の税金が払えない:納付の相談・猶予と今からできることを先に読んでください。
なお、売った年の翌年の2月16日から3月15日までが、原則の申告期間です(国税庁 No.3102)。期限日が土日なら翌日になります。この期間を過ぎて出す申告が、期限後申告です。
無申告加算税と延滞税:率と計算例
期限後申告には、無申告加算税と延滞税がかかる場合があります。性格が違う2つなので分けて見ます。
| 出すタイミング | 税率 |
|---|---|
| 法定申告期限から1か月以内に自主的に出し、納税額の全額を法定納期限までに納めている等の条件を満たす | かからない |
| 調査の事前通知を受ける前に、自主的に出した | 納付税額の5% |
| 調査の事前通知後、調査による決定を予知する前に出した | 50万円まで10%、50万円超300万円まで15%、300万円超25% |
| 税務署の調査を受けた後、または決定を受けた後 | 50万円まで15%、50万円超300万円まで20%、300万円超30% |
無申告加算税は、期限後申告で新たに納める国税が対象です。正当な理由があるときは課されない、と国税通則法66条に定められています。
延滞税は、納期限に遅れた日数に応じた利息のような税金です。国税庁によると、2026年(令和8年)の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。延滞税の利息は法定納期限(原則3月15日)の翌日から納付の日まで日割りで増えます(国税通則法60条)。期限後申告では、年2.8%と年9.1%を分ける2か月の区切りを、申告書を提出した日の翌日から数えます(国税庁 No.9205)。年が変わると割合も変わるので、国税庁の延滞税のページで年ごとに確かめてください。
筆者の計算例です。期限後申告で納める国税が90万円だったとします。
- 無申告加算税:調査の事前通知前に自主的に出せば90万円×5%=4万5,000円。事前通知後で予知前なら、50万円×10%+40万円×15%=11万円。調査後なら50万円×15%+40万円×20%=15万5,000円(端数処理で数百円ずれることがあります)。
- 延滞税:年2.8%の期間が30日なら、90万円×2.8%×30日÷365日=約2,070円。年9.1%の期間が30日なら、同じ式で約6,730円。
なお、前年か前々年にも無申告加算税や重加算税を課されたことがあると、率に10%が上乗せされる扱いがあります(国税庁 No.2024)。
同じ90万円でも、自分から出すか、調査を受けてからかで、加算税が4万5,000円から15万5,000円まで開きます。数字は目安なので、実際の額は申告後に税務署が決めるところに従います。
特例が使えなくなる場合と、使える場合
「忘れたら特例が全部なくなるのでは」という心配はよく出ますが、条文を読むと分かれ方は特例ごとに違います。
3,000万円特別控除(租税特別措置法35条)。 12項は、適用を受ける旨の記載と、譲渡所得の計算明細書などの添付がある確定申告書に限って適用すると定めています。所得税法2条は、確定申告書に期限後申告書を含むと書いているので、期限後に出す申告書にも記載と添付をすれば条文の要件には当たります。13項には、確定申告書の提出がなかった場合でも、やむを得ない事情があると税務署長が認めるときに適用できる定めもあります。期限後でも使える余地はありますが、使えるかどうかの判断は税務署が行うため、出す前に電話で確かめると安心です。
譲渡損失の繰越控除(No.3370)。 買換えで出た損失を翌年以後に繰り越す特例は、損益通算を受けた年の書類つき期限内申告書を出していることが条件です。この特例を使う予定だった人は、期限を過ぎると要件を満たせない場合があるので、早めに税務署か税理士に確かめます。
相続した空き家・取得費加算の特例。 どちらも、売る時期の期限と添付書類が決まっています。売却の期限は申告とは別に数えます。要件は相続した空き家の3000万円控除:特別控除の要件と2027年末の期限で確かめてください。
税務署から連絡が来ていたら
税務署から文書が届いているときは、その文書が「お尋ね」なのか、調査の事前通知なのかで加算税の率が変わります(上の表)。届いた文書の差出人と、調査という言葉があるかを確かめ、書かれた連絡先に電話します。内容の読み方は不動産売却の後に届くお尋ね:回答の書き方と申告が要るかの判断で扱っています。
自分で申告書を作る自信がないときは、売った金額と取得費を整理してから不動産売却の確定申告の税理士費用と、税理士に頼むべきケースで頼み方を選びます。
よくある質問
Q. 売った年から何年もたっています。それでも申告できますか?
期限後申告は、税務署から決定を受けるまでは提出できると国税通則法18条に定められています。年数が経っていても、まず売った年分の申告書を作って出す流れは同じです。一方、税務署が更正や決定をできる期間にも定めがあり(通則法70条)、申告しないまま待てば済むという意味ではありません。年数が長いほど延滞税が積み上がるので、早く動くほど負担は小さくなります。
Q. 利益が出ていたか自信がありません。申告は要りますか?
売った金額から取得費と譲渡費用を引いて、利益が残るかどうかで決まります。国税庁は、利益がある人は原則として確定申告が必要としています。取得費が分からなければ売った金額の5%を取得費にできるため、計算を試すところから始められます。計算の途中で迷うなら、国税相談専用ダイヤルか税理士に確かめます。
Q. 3,000万円控除で税額がゼロになるなら、申告しなくてもよいのでは?
特例は確定申告をすることで受けられる仕組みなので、税額がゼロになる場合でも申告書を出します。出さないままだと、控除を使えるかどうかの判断が始まりません。申告書を出したうえで、結果として納める税金がなければ加算税も延滞税もかかりません。
Q. 無申告加算税を払わずに済む方法はありますか?
国税庁は、期限後申告でも、法定申告期限から1か月以内に自主的に出し、納税額の全額を法定納期限までに納めているなど一定の条件を満たすと、無申告加算税がかからないと案内しています。期限から1か月を過ぎた場合は、調査の事前通知を受ける前に自分から出せば、率がいちばん低い区分になります。
出典・参考にした公的な情報
- No.2024 確定申告を忘れたとき(国税庁)
- No.9205 延滞税について(国税庁)
- 国税通則法 第18条・第66条・第70条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 租税特別措置法 第35条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 所得税法 第2条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不動産等を売却した方へ(確定申告特集)(国税庁)
- No.3102 譲渡所得の申告期限(国税庁)
- No.3370 マイホームの買換えで譲渡損失が出たとき(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。